_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 第二幕 一章 三話 超必殺、エーテルガン! _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 外からはいってくる光でいくらか明るいが、全体的に薄くらい店がそこにはあった。 金属の匂いが辺りを漂っていて、なんともいいがたい雰囲気である。 かと言って鎧や兜のような防具系が置いているわけではなかった。 人の手にのるような小さな物から、人と同じかそれ以上の物まで置いてある。 「おやっさん、これはここでいい?」 ショートヘアで幼さの残る少年が、金属類の入った重そうな木箱を抱えている。 足取りはおぼつかなく、右へ左へとふらついていた。 それもそのはず、少年の顔が見えないくらいの高さの荷物を持っていたからだ。 そんな中、おやっさんと呼ばれた中年の男性がその少年の方を向く。 「ああそこでいい……が、前から言ってるだろ。大きいものは小さく持てと。  もしこけて、また商品を台無しにしてもらったら、マイナスにするぞ」 煙草をくわえ、陳列されている商品を手にとってじっくり見ている。 何も異常がないのがわかると、商品を元の場所に戻す。 ガシャンと木箱を下ろすと少年は背伸びをする。 「ところでレイ、お前行かなくてもいいのか?」 背伸びをしたままおやっさんのほうを向くと軽く笑う。 「大丈夫だよ。今はそんなに大事な事をしてるわけじゃないしね。ここにいた方が勉強になるよ」 「ま、俺の知ったこっちゃないけどな。…ところでなに休んでる。まだしなきゃならんことはあるんだぞ」 「は〜い」 そういうとレイと呼ばれた少年は店の奥へと入っていった。 「なんか面白い物ないかな〜」 あれから適当にぶらついていたが、何も目新しいものはみつけられなかった。 ぶらぶらとさらに適当に歩きまわって、迷った事に気がつかないミークであった。 今まで色々見て回ってきたが、この街は商業の活気はないものの、穏やかな空気が流れていた。 子供たちの笑い声、それと一緒に遊ぶ大人達。 これでどうやって食い扶持を得ているのかが不思議なくらいだった。 実際は人の見えない所できちんとやっているらしいのだが。 ミナレインは他の国より資源が豊富であり、今だ開発途中の大陸にあるという事もあるが。 その時ミークの常人では聞き取れないような小声が耳にはいる。 バードなどの亜人は普通の人間より感覚が優れているため、こういう事もある。 どう考えても楽しく遊んでいるような声ではない。誰かに襲われているようだ。 そんな事を聞き過ごせるような性格ではない。暇だったし。 ミークは急いでその場所に向かった。 「うるせぇ!大人しくしてろ!」 なにやら見た感じ人の悪そうな青年達が、一人の少年を取り囲んでいた。 「やめろよ、放せってば!」 少年は青年達に取り押さえられ、動けない状態になっている。 「死なない程度に痛めつけておけ。どうせこいつはただの餌でしかないんだからな」 その中のリーダー格であると思われる、さらに人相の悪い男がつめたい口調で言葉を出す。 と、そこに出てきたのは他の誰でもないミークだった。 「こらそこ、なにやってんの!」 ビシッとどう見ても悪人面の男たちに指を指す。 走ってきたため息を切らせていて、多少格好悪い。 悪連中の中の一人がミークに近づく。 「ボウズ、いい子だからさっさと家に帰ってママのおっぱいでも飲んでな」 言ってる事までまさにわかりやすい悪役だった。 そして不運だったのが、『ボウズ』、その一言はミークを起こらせてしまう言葉の一つであった。 「ボクは女の子だよ!」 ミークは男の股座を思いっきり蹴り上げる。 そこはどんな武道の達人でも鍛える事の出来ないところだった。 あんまり鍛えて欲しくもないけど。 男は未知の生物に遭遇してしまったかのような叫び声を揚げ、地面を転がる。 「(どう見ても男にしか見えないが)お嬢ちゃん。見てなかった事にしてやるから早くどこかへいきな」 本人は微笑みながら言ってきたのだろうが、逆に怪しさがにじみ出ていた。 「や」 たった一言(一文字とも言う)で言葉を返されてしまった悪役その二は当たり前の如く逆上した。 「くそガキが、やさしい言葉をかけてやったらいい気になりやがって!」 今の言葉のどこにやさしさがあるのかはいまいち不明だ。 「どうしますか?」 先ほどつめたい言葉を言い放った男の横にいた悪役そのXが尋ねる。 「ふん。どうせ漫画みたいに自分が正義のヒーローだと思いこんでるガキだろう。  痛い目に見れば自分の愚かさにも気がつくさ。構わん、やれ…」 少年を取り囲んでいた悪役達は、少年を捕まえている者、悪役X、ボスを除いて、今度はミークを取り囲む。 「棟梁、こいつ犯っちゃっていいですか?」 どこにでもいる超ウルトラグレイトエターナルクソ馬鹿な悪役。 「おい、お前はロリコンか。こんなガキよりもっといい女がいるだろ」 「ってそこ!なんか非常にむかつくこと言ってない?あ〜、もう怒った」 「怒ったらなんだって言うだよ!」 取り囲んでいる男が勢いよく飛びかかる。 そんな何も考えない馬鹿はあっさりミークに蹴り飛ばされる。 それが相手をさらに逆上してしまう事になり、悪役達が一斉にミークに飛びかかった。 「あの程度につかまるスカポンタンさん、大丈夫?」 その辺りに山のように倒れている悪役をよそに捕らわれの少年を救出したミークだった。 その山の上には、パンツ以外を脱がされたボスが、情けない顔をして倒れていた。 「ありがとうございました、この世に存在してもいいのかと思うような、見ず知らずの馬の骨さん」 「当たり前の事をしただけだよ、捕らわれの貧弱金髪少年」 なんとなくもう一勝負ありそうな予感がした……。 所変わってファシーが寝ている部屋。 先ほどから苦しそうだった表情が嘘のように、落ちついている。 「う、うぅん……」 「おや、気がつきおったか」 ファシーが寝ているベッドのよこに座って、名にやら本を読んでいたタンバがファシーの方を向く。 ゆっくりと目を空けるファシー。 「あぁ、なんとなく寝不足…」 今いる場所を全く気にしていない。というか気がついてないだけかもしれないが。 「もう苦しくないじゃろう。まあワシのおかげじゃが」 「これはご丁寧に。あ、私ファシーっていいます。以後ごひいきに」 何をひいきするのか全く意味不明。 今の状況を理解していないのか、全く恐れたようには見えない。 自分が目覚めた時に知らない男がそばにいたというのに。 「連れの二人は外に出ているぞ。まあ今日一日は安静にしといたほうがいいじゃろう」 「そうなんだ。…で、なんで私ここにいるの?」 ここに来て気がつくファシーは大物かもしれない。 「あの嬢達の話しではな、ここに来たとたん倒れたらしい。まあ当てられたんじゃからしょうがないじゃろう」 「倒れた?当てられた?どういう事?」 「それはじゃな、この章の一話を見てくれ。かくかくしかじかの方がわかりやすいか?」 「どっちも同じと思うけど。…………なるほど。そういう事ね」 なにやら紙を見ていたファシーが頷く。 「ところで、その事なんじゃが、お嬢さんの両親はどこに住んでおるのか?  おっと、深い意味はないぞ。少しだけ知りたいだけじゃ」 「まあ、隠す事もないから。ミランドルのマリンだけど」 それは隠す事だと思うのだが…。 ファシーの返事を聞き、なにか考え出すタンバ。 (先天属性は、両親と風土によって決まる。あの辺りに飛び出だ力は無い。  しかも、当てられるという事は、両親ともに属性的に強くなければ普通はならない。  突然変異型なら、確信なんだが。これはまだ調べる必要があるな) いきなり考え出したタンバにファシーは危険な感じがした。 (もしかして、新手の宗教!?) 思い違いもはなはだしかった。 (こ、この感じは!) フェンリースはとうとう見つけた、そう思った。 長年こういった仕事についてると、ないと落ちつかないらしい。 多分フェンリースだけだろうが。 先述したが、ミナレインは完全な宗教国であるため、武器系統はほとんど所持してない。 当然取り扱っている店も数えるほどしかない。が、フェンリースはその数少ない店を見つけたのだ。 まだ日が高いため、余計に店の中の暗さが目立つ。 他の家とは全く雰囲気と言うか、門構えからして違っていた。 全体的に白の多いミナレインにある黒色の家。 青い屋根の中に、目立つ緑色の屋根。はっきり言って見た目からして危険そうであった。 空から見たらすぐにわかるだろう。 しかし、そんな事にひるむフェンリースではなかった。 迷いのない足取りで店の中に入っていった。 「邪魔するわよ」 フェンリースが店に店主に思える男がいたのでとりあえず声を出す。 「そう思うなら入ってくるな」 「撃つわよ」 すぐさま店のオヤジらしき人物に、腰につけてあった自作の銃を取りだし、構える。 「やれるモンならやってみやがれ」 二人の間にいきなりただならぬ緊張が走る。 ガラガラドッシャーン。 漫画でありそうなハデなコケ方をする少年。 「ちょ、ちょっとおやっさん。そんなけんかフッかけないでよ!」 急いで立ち上がると、慌ててフェンリースと店のオヤジの間に入る。 「す、すみませんお客様」 何度となく頭を下げている。 フェンリースは構えていた銃を元に戻す。 「ところで何用だ。うちは武器、ウェポンパーツ専門だ。あんたみたいな女の来る所じゃない」 「やっぱり撃つわ」 「あぁぁぁ、おやっさんやめてくださいって〜〜」 親父に泣きすがる少年。 少年の姿を見ているとやる気がなくなったフェンリースは、また銃を戻す。 よくテンションが上がったり下がったりする日であった。 「せっかく見つけた店なのよ。どうでもいいから品物見せなさいよ」 「あれ、この辺りにすんでるんじゃないんですか?」 「ええ。ちょっと野暮用で来たんだけど、どうもミナレイン自体にこういった所がなくてね。  長い間探してたのよ」 そう言いながら店のものを物色し始める。 「レイ、相手はまかせた。俺は休むからな」 また勝手なことを言って…と思いながらもオヤジを見送る。 「まあまあの物があるようね」 一通り見たフェンリースの正直な感想だった。 「当たり前ですよ。うちのおやっさんの作った物はどこにも負けません」 「あ!」 そのときフェンリースの目にある物が映った。 「これ、ジャイロじゃないの!?」 フェンリースの目が輝きだす。 いつもは大人びているのだが、こういった事では欲しいおもちゃを買ってもらった子供のようである。 「ジャイロを知ってるんですか?」 ジャイロ…ウェポンの安定性を保つために作られた道具の一つ。 コクピットのすぐ側につけなければならなかったため、邪魔という事で排除され既に製造されていない。 始めから作らなければいいのだが、高性能制御装置だったため結構使われていた。 今ではウェポンの操縦がうまくなってきたという事も、無くなった要因の一つだったが 主な要因はウェポンの性能が上がったからである。 なぜフェンリースが驚いているかと言うと、既に失った技術となったジャイロを 作る事が出来る人物がいる、という事なのである。 今では作りたくても、設計図が紛失したため作れなくなっている。 ちなみにウェポンが発見されてからほとんど年数が経ってない。 始めて設計した博士も既に死んでいる。 「これは僕が作ったんですよ。まあおやっさんに手伝ってもらったけど」 照れくさそうに笑うレイ。 「え?あなたが作ったの?若いのによくやるわね」 フェンリースはじっくりレイを見る。 (ふ〜ん、この子可愛い顔して結構やるじゃない。  この子も連れて帰ったら私の役に立つかもしれないわね) 「ねえ、あなたは今学生?」 思った事はすぐに行動に移すフェンリース。 「え?ボクですか?とりあえず学生ですけど行ってません。  ここにいるほうが勉強できるから。それがどうかしましたか?」 「あなた、私について来る気ない?」 「は?」 かくかくしかじか…。 いつもの略。 「……すみません。やっぱり僕はここにいたいです。それにボクにはそんな大層な事はできません」 「そう。あなたがそれを望んでいるなら無理に言わないわ」 「さ、さて他にほしい物はないですか?」 多少ぎこちない会話。 「そうね、何か重火器があったらいいんだけど」 「そうですね。あなたのような方が欲しがる物…………あ、あれがあった」 レイは店の奥に入っていく。そしてすぐに戻ってくる。 レイの手には大きな箱が握られていた。 「それは?」 「これはですね…」 厳重に閉じられた箱を少しずつ開けていく。 「なんでそんなに厳重に締まってるの?」 「当たり前ですよ」 やっとの事で箱を開ける。中には見なれた銃が入っていた。 銃と他になんのために使うかわからない腕輪が入っていた。 「これはおやっさんの作った銃の初期の物です。  そのため結構というかかなり危険な威力持ってて、これ渡せるような人がここにはいなかったから」 「そんな物を私に見せてもいいの?」 「はい。こう見えても人を見る目があるし、何よりこういうものは使ってナンボですしね」 フェンリースはじっくりとその中を見る。よく見ると何か違う。 「これ、普通の銃じゃないわね」 「わかりますか?これはエーテルガンですよ」 「エーテルガン!?」 エーテルガン…文字通り普通の弾の代わりに、エーテルを弾に込めて使う武器である。 本人にエーテルの力があるなしに関わらず効果は出るが、エーテルという物質を使うため 非常に存在的に不安定で、破壊力がある。 そのため扱える者がいなく、軍人でも使う者はほとんどいない。 フェンリースは差し出されたエーテルガンを、恐る恐る手に取った。 そしていろいろな角度から眺める。 そして一つ思った事があった。 「これ、弾をいれるところがないわ。どういうこと?」 普通なら銃弾を入れるカードリッジを取りつけるところがあるはずなのに、見当たらない。 「それに弾はありません。言うなれば、使う物自身が弾となるんでしょうかね」 「この銃口に入れというの?」 「入れるかどうかは見てわかるでしょう。それに必要なのはエーテル力ですよ。  ウェポンの操作の仕方は知ってますよね。  あれと同じで、エーテルによる直接リンクを行う事によって、効果を発揮するんです」 確かに直接的な繋がりがある分、威力は使うものの力に左右される。 だが、フェンリースが威力を発揮できるかどうかは、彼女自身がわかっていた。 「生憎ね。私、エーテル力が普通の人より弱いのよ」 そう言ってエーテルガンを返そうとする。 「それはよかった。。これは特別だといったでしょう。これも一緒に使うんですよ」 そう言って腕輪のような物を差し出した。蒼い色をした腕輪だった。 「おやっさん、こう言った物まで作れるんだから、かないませんよ。  この銃が特別製なのは、エーテル力の弱い人用に作られてるからなんですよ。  で、これが補助用の腕輪です。名前はまだ無いけど。ちょっとつけてみてくれませんか?」 そう言ってエーテルガンを置くと、手渡された腕輪をはめてみる。 「な、何これ!て、手が、手が燃えるように熱い!」 腕輪をはめた方の拳が火が出てしまいそうなくらいに熱く感じ出した。 しかし、その分他の力が抜けていく気がした。 「まさか…。でもこんなにが作れる人がいたなんて…」 「うちのおやっさんは世界一ですよ。  あなたの思っている通り、それはただのエーテル力増強装置じゃありません。  いくら個人のエーテル力が弱いといっても、体中にあるエーテル力をかき集めたら相当な物になります。  そうする事のできる腕輪なんですよ、それは」 一体どう言う理論で作られているのか、全く見当のつかないフェンリースだった。 しかし、これ以上つけることができなくなってきたので、腕輪を外すフェンリース。 「ふぅ…。これをつけたら一点に集中させる事はわかったけど、それからどうするの?」 「終わりですよ。後は撃てば効果が現れます。  今は慣れてないからそうなってますけど、慣れたらあまり気になら無くなりますよ。  それに慣れたら必要な時にだけ集中できるようになります。  一度撃ってみたらどうですか?あ、撃つなら外で、空に向かって撃ってくださいね」 「そうね。まずはやってみるわ」 そう言って、腕輪と銃を持って外に出る。 明るい所に出たると、いつも以上に外が明るく感じられたため、片手で目を覆う。 目が慣れてきた頃、腕輪をつけるフェンリース。 「くっ」 相変わらず、急激に腕輪をつけている利き手に熱がこもる。 そして、銃も熱くなっている手に持つと、銃口を空に向ける。 「さ…て、効果の程は?」 軽い気持ちでフェンリースがトリガーを引く。 ドォォォォォォォォォォォン! 周りの空気が振動する。その余波で砂ぼこりが立ち、無造作に置かれていたバケツなどが飛んでいく。 撃ったフェンリースにも強力な反作用がかかり、膝をつく。 辺りが静かになった後、体に力が入らないのか膝をついたまま立ちあがる事ができない。 しかも、ぶらりと腕が下がった拍子にエーテルガンを地面に落とす。 「な、なんだったの…。今の…」 空にあった雲がエーテルの衝撃でちぎれている。 「言うの忘れてましたけど、支給されたエーテル力を使うんじゃなくて、  自分のエーテル力使うわけですから、あまり強い力出したら死ぬかもしれませんよ」 「それを、早く…言い……な…さい…………」 フェンリースの意識はそこで途切れた。