カメラオブスキュラをつくってみよう

授業の流れ
見本を見せる
工作と観察
すりガラスに景色が写るとはどういうことか
物体までの距離と像までの距離(作図)
絞りとピンボケ


工作
(ここをクリックして別ウインドウに図を出してください)

材料

カラー工作用紙(裏面が黒)30cm+×40cm+ … 1枚
虫眼鏡(プラスチック製の小型のもの) … 1個
透明プラシート(B4サイズを16等分) … 1枚
両面テープ(事務用によく使う薄手のもの) … 少々

そのほかに準備するもの

ぬれ雑巾、耐水サンドペーパー、金属製定規、カッターナイフ、彫刻刀(丸ノミ)、カッターマット(*1)

(*1) 刃物で下の物を傷つけないためのゴムマット。私の学校ではベニヤ板で代用しているが、ゴムよりもかえって気持ちよく切れるような気がする。(^^)

1・すりガラスをつくる
(1)準備
 あらかじめ、B4サイズの透明プラシートを16等分(たてよこ共4等分)に切断しておく。
(2)擦る
 机の上に濡れ雑巾を置き、そのうえに透明プラシートを置いて、片面を150番〜240番(*1)程度の紙ヤスリで水研ぎ(*2)する。周囲1cmほどの部分はどうでもよいが、それ以外がなるべく均一にすりガラス状になるようにする。(図1)
(3)乾燥
 片面が均一なすりガラスになったら、濡れ雑巾で表面のプラスチック粉をふき取り、自然乾燥させる。

(*1) 「**番」…ザラザラの粗さ・細かさの単位。数字が小さいほど粗い。
(*2) 「水研ぎ」…水で濡らした紙ヤスリで擦ること。濡らさないのは「から研ぎ」。なお、水研ぎする場合には必ず「耐水サンドペーパー」を使用すること。


2・箱をつくる
(1)けがく(*1)
 工作用紙に、図2の寸法(*2)でけがく。工作用紙をめいっぱいに使うので、見本をよく見て間違えないように注意すること。
(2)両面テープを貼る
 のりしろになる部分の灰色面に両面テープを貼っておく。ややはみ出るぐらいの大きさで貼っておくとよい。裏紙は、まだはがさないこと。
(3)切り抜く
 机の上にカッターマットを置き、その上で外周をカッターナイフで切り取る。なるべく正確に。
(4)折りぐせをつける
 切り抜いた髪を裏返し、折り曲げる部分に定規をあててボールペンでスジをつけ、定規を当てて折りぐせをつけておく。(図3)
(5)窓と指かけの加工
 1. 外箱の前面になる部分の中央付近に、カッターで直径20mm前後の穴を切り抜く。切り抜いたら、この窓の周囲(黒い面)に両面テープを貼っておく。まだ裏紙ははがさない。
 2. 外箱の上下面になる部分に、カッターで指かけ用の丸い切り込みをつくる。
 3. 内箱の背面になる部分に、周囲を15〜20mm残して窓を切り抜く。直線部分をカッターで切り、四隅は彫刻刀(丸ノミ)で突き切るとよい(*3)。切り抜いたら、この窓の周囲(黒い面)に両面テープを貼り、裏紙をはがす。ここに、先につくったすりガラスをザラザラの面が外になるようにしてしっかり貼り付ける。
(6)箱の組立て
 糊代の両面テープの裏紙をはがし、まず内箱を組み立てる。その内箱にかぶせるようにして外箱を組み立てる。(*4)
(7)レンズの取り付け
 (5)1.でつけた両面テープの裏紙をはがし、穴の中心とレンズの中心をなるべく合わせるようにして虫眼鏡をしっかり貼り付ける。

これで完成。

(*1) 「けがく(罫描く)」…材料に、下降する位置をかき込むこと。名詞は「けがき」。
(*2) 内箱が、外箱よりも2mmほど(紙の厚さぶん)小さくなっているのがポイント。また、箱の奥行きは、使用するレンズの焦点距離によって変える必要がある。
(*3) 角を丸くするのは「応力集中」を避けるため。ひらたく言うと、入り隅に角があるとそこから破れやすくなるので、それを避けるため。
 かつてコメット旅客機(イギリス製)が空中分解したのも、原子炉「もんじゅ」の温度計が折れたのも、角を丸くすることを怠ったため。コメットの時代はやむを得なかったのだと思うが、もんじゅの場合は「あまりに粗末な設計」と言わざるを得ない。誰か気づけよ。
(*4) こうすると、ぴったり組み合わさる大きさの箱が誰でもつくれる


観察
(クリックして図を出してください)

1・窓の外の風景にレンズを向けてみる
 内箱を抜き差しして、ピントが合う位置を探す。内箱をどのぐらい引き出すとピントが合うか。
 風景は、どのようにすりガラスに映るか。
2・隣の人にレンズを向けてみる
 内箱を抜き差しして、ピントが合う位置を探す。内箱をどのぐらい引き出すとピントがあうか。


・景色が映るとはどういうことか
 風景などがすりガラスに映ったものを「像(*1)」という。
 像ができるのは、物体からレンズに向かってきた光がレンズで曲げられ、すりガラス上に再び集まったということ。(図1)
・物体とレンズの距離と、像とレンズの距離
 近い物体から来る光は放射状に広がっている。遠い物体から来る光は広がり方が小さい。同じレンズを通って同じように曲がった場合、再び集まる位置がどうなるか考えてみよう。(図2)
・焦点距離と像の位置
丸みが強い凸レンズでは光が大きく曲げられる。丸みが弱い、ただのガラスに近いようなレンズでは光は少ししか曲がらない。この違いは「焦点距離」であらわされる。
 レンズの焦点距離と、物体からレンズまでの距離がわかれば、どこにどのような像ができるかを作図して突き止めることができる。
・ピンボケ
 すりガラスの位置が不適切だと、くっきりした像ができない。これがピンボケである。(図3A)
 レンズの周囲を覆って光の通り道を絞ると、光のにじみが小さくなり、ピンボケが目立たなくなる。(図3B)

(*1) 正確に言えば「実像」。ニンベンをつけるのを忘れないように。


カメラオブスキュラとは。

 「カメラ投影装置」などという訳語を見たこともあります。「カメラの先祖」です。
 まだ光を印画紙上に固定する手段が生まれる前の時代、風景画を描く画家が、立体の景色を平面にする手がかりとして使用していたそうです。当初はレンズを使わず、「ピンホールカメラ」のような装置だったものが、やがてレンズを使ったものに変わっていったとのことです。