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祝!2000年解禁 FLY FISHING in 気仙川(岩手県)
天候 気温 水温 ハッチ
7℃ 5℃〜6℃ やや強め ユスリカ、オナシカワゲラ

 3月18日(土)、2000年の記念すべき初釣行に行ってきた。 場所は岩手県の気仙川。 昨年末に加入したフライフィッシングクラブ、C.O.S.(Club On Sight)の有志が集まっての釣行である。参加者は川崎さん、山口さん、泉さん、星さん、田中さん、中村さん、谷口さん、小玉さん、細田さん、そして私の10人、結構な大所帯での釣行となった。

 この時期(3月初めから彼岸ぐらいまで)の気仙川は「ヒカリ」が釣れることで有名だ。 ヒカリとはヤマメが降海するために銀毛(銀化)した個体の東北地方での呼び名で、長良川を降海するアマゴをシラメと呼ぶのと同じである。 その個体の多くはメスで、冬場に産卵され孵化したヤマメが1年間河川内で成長し、翌年の春にヒカリとなって降海する。 そしてさらに1年後、海で成長したヤマメはサクラマスとなって川を遡上し、オスのヤマメとペアリングするという。
 ヤマメとの外見的な違いの最大の特徴は銀毛で、銀毛した魚体は手で触れると鱗がはがれやすい。そのほか幼魚化(スモルト化)した証である背びれの先端後部の黒色化などが挙げられる。
 今回の釣行の目的はもちろんこのヒカリだ。 ヒカリをミッジで狙う、その名もヒカリミッジング。 私自身#22より小さいフックサイズのフライは巻いたことも使ったこともなかったので、ミッジングに関しては全くの素人だ。 ホームページの掲示板等でC.O.Sメンバーの方に事前講習を受け、昨年のヒカリミッジングでの爆釣パターン#20〜#26の「グリフィスナット」、ユスリカアダルト、ユスリカピューパ、そしてユスリカラーバとソフトハックルを数個ずつ巻いて釣行の望んだ。

東北道長者原PAで関東、福島組と待ち合わせし一路気仙川へ、といきたいところだったが一関IC手前で事故があり通行止めをくらってしまった。 初めて顔を合わせる人もいたが、そこは共通の趣味を持つ者同士、通行止め渋滞の車の中でもロッドやリール、フライの話で盛り上がり、渋滞も全く苦にならなかった。 しばらくすると通行止めも解除となり、一関IC〜県道19号〜国道343号を通り9:30、無事気仙川に到着、釣券を購入し河原に降り立った。

早速ウェーダーに着替えてっと、その前に暖を取るための焚き火の準備をする事になった。 この日は気温はそこそこ上がったものの、風が冷たかったので暖を取れる火があるととても幸せな気分になる。 実際、川から上がってきたら真っ先に火に手をかざす人がほとんどだった。 火も起こったのでみんなゴソゴソとウェーディングの準備をし始めた。大勢で行く釣行ではお互いにどんなタックルを使っているのか気になるものだ。 自作のロッド、ビンテージのリール、新作のロッドなどなどちょっと拝借して試し振り、なんていう光景があちこちで見られた。 魚を釣るのももちろん楽しいが、こうしてワイワイガヤガヤ話すのもまた楽しくいろいろ勉強になる。

ライズを探す・・・
ライズを探す・・・

 みなさん一通り準備を終え、いよいよ河岸へ。ライズがあちこちで確認できたので気分も盛り上がってきたようだ。 それぞれ思い思いのフライを結び、ライズを狙ってキャスティングを始めた。 キャスティングもライン操作も人それぞれでまたまた参考になる。私も#20のグリフィスナットを結びライズめがけてキャストを繰り返した。 う〜ん・・・渋い。ライズはあるのに反応がほとんどない。 それに無風状態だとライズがピタリと止まり、風が出て水面がさざ波立つと再びあちこちでライズが始まる。 今回のミッジングではこの風と水面のさざ波には苦戦を強いられた。 何よりフライが小さくて見えないのが厳しい。魚達は一体何を捕食しているのだろう? みんな同じ状況のようでフライをローテーションし始めた。 そんな中、小玉さんがようやくライズを取り、1匹目を手にすることができたようだ。 私も#22のピューパを模したソフトハックルに変えてリトリーブしているとコツコツとあたりがでてきた。 どうやらスティルボーンやフローティングピューパパターンでチョイチョイとアクションを加えるととたんに食いが良くなるようだ。 それでもなかなかフッキングまで至らず、あちこちで「う〜、また乗らね〜」と言う声が聞こえてくる。 私は相変わらずソフトハックルを引いて誘いを掛けていた。 とその時「コツッ!」という明確なアタリが!!軽くロッドをあおって合わせた次の瞬間、ロッドが軽くしなった。 今シーズン初の獲物、になるはずだったが、寄せきれず途中で痛恨のバラシ。 隣で見ていた中村さんも「今のは結構良い型だったね、水中で加えたフライをはずそうと頭を振っているのが見えたよ」とコメント。 確かにちらっと見えた魚体は結構大きかった。

それを聞いたら悔しさと共に俄然やる気が出てきた。 それからしばらくは風もあり、さざ波立った水面のフライを見つけられないという状況だったので、ソフトハックルを引いて誘う釣りを展開した。 対岸付近の下流に定期的なライズがあったので、そのライズを取るべくダウンクロスでキャストし、ライズポイントにフライが流れるようメンディングしてナチュラルに水面直下を流してやる。ライズポイントを通過する手前でラインを一握りづつ、約1秒間隔でリトリーブする。
 今度は「コツッ」ではなく、「クククッ」という感覚。しっかりフライをくわえてくれたようだ。 小さい魚体とはいえ、慎重に寄せて無事ランディングすることができた。 自分の思い描いたイメージ通りの展開でまず今シーズンの1匹目を手にすることができたことを幸せに思う。 ランディングネットには体長約12〜13cmの小さなヤマメが身を横たえていた。まだ銀毛している様子は見受けられない。しかし背鰭の先端が黒くなっている。中村さんに確認してもらったところ紛れもない「ヒカリ」とのこと。 これがあの「ヒカリ」か〜。 その姿をカメラに納め、来年にはサクラマスとなって再び出会えることを願ってリリースした。 その後、今回の釣行前にホームページの掲示板等で話題になった#22のグリフィスナットでもう1匹ヒカリを手にすることができた。

気仙のヒカリ
気仙のヒカリ

他のポイントを思い思いに攻めていたメンバーもヒカリの顔を拝めているようだ。 しばらくすると風もなくなり、釣りやすい状況となったが、それと同時にライズの方のめっきり少なくなってしまった。 釣れなくて寒いとなると考えることは皆同じ、昼食を取るためみんな河から上がってきた。 昼食のときも話題はフライフィッシングが中心で「長良川は厳しかった」とか「ヒカリのストマックの中はほとんどピューパ」とか、話を聞くだけでも飽きることはない。
 午後も午前の後半同様、風がほとんどなくライズも散発という状態が続いた。 1つのライズに集中して攻め続ける人、足を使って上流部へ釣り上がる人、みんな思い思いのスタイルでヒカリミッジングを楽しんでいるようだ。 私も少し上流部へ移動し、フラットな流れの中で散発的に起こるいやらしいライズをしばらく観察し、それを取るべくロッドを振った。 黒のミッジアダルトを結び、カーブキャストでライズの上流約1mにフライを着水させライズにフライを送り込んだ。フライがライズポイントを通過した瞬間、「ピシャッ!」と水しぶきが上がった。ライズの主は15cmほどのヒカリだった。先ほど同様、イメージ通りのタクティクスでライズを取ることができることほど気持ちいいことはない。

17:00を過ぎると日も傾きだし、気温もグッ下がってきた。 川を見渡すと私の他、下流部の星さん、上流部に向かった小玉さん、細田さん以外はロッドを納めたようである。 星さんと一緒に上流に向かい、そのことを2人に伝えて納竿するつもりが上流部のライズに足が止まり、再び釣り始めてしまうのはやはり釣りバカの運命なのだろうか? そしてそういうとき限って必ず釣れないのもまた運命。 さすがにあきらめてライン巻き取り、納竿して車に戻った。
 最後までロッドを振っていた上の4人以外はすでに帰り支度を整え、今日のヒカリミッジングについてあれこれ話し込んでいたようだ。 そして口々に「来年も絶対やろうよ、ヒカリミッジング」と言って、ライズリングの残る気仙川を後ろ髪を引かれる思いで後にしてそれぞれの帰路に就いた。
 帰りの車の中でも夕食を取ったP.A.でもフライフィッシングの話題は尽きることがない。 私を含め、みんな本当にフライフィッシングを愛しているんだな、という思いが伝わってくる。 私はいままで単独釣行や少人数の釣行が多かった。 今回初めてこのような大勢で行くC.O.S.のヒカリミッジング釣行会に参加させてもらったわけだが、フライフィッシングに取り組む姿勢、キャスティングからフライのセレクトそしてポイントの攻め方まで人それぞれで非常に勉強になった。 そしてヒカリ釣ることよりも何よりも楽しかったのはメンバーとの交流だろう。 趣味を同じくする者同士の、時にはおもしろおかしく時には真剣なフライフィッシング談義は楽しいモノであり、時間も忘れさせてしまう。 そう言った意味で今回の釣行会参加は非常に収穫の多い、意義のあるものだった。

参加者のみなさん、そして幹事役の川崎さん、本当にお疲れさまでした。 来年も絶対やりましょうね、「ヒカリミッジング」(^_^)


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