十一章 ワンポイントレッスン
@スランプになったら原点に戻る
誰にでも釣れない時があります。それが何回も続くと釣り方に自信が持てなくなり、あれこれと迷うようになります。これをスランプと呼びますが、こんな時は色々小細工するよりさっと原点に戻るべきです。すなわち、最も釣りやすい所へ戻るのです。いろいろなフィ−ルドに出て、いろいろなパタ−ンを経験すると、いつのまにか複雑な迷路の中に迷い込んでしまうという状態がよくあります。そんなとき、いつでも戻る事のできる原点すなわち基本をしっかりと確立しておくことです。
Aポイント・仕掛けやエサなど釣り方をを変えるときはどれか一つだけにする
釣り人は、少し釣れなくなったり、違った釣り方を試す場合、一度に多くのものを変更してスランプになる事が多いようです。その場合、修正しようと思っても幾つかの因子が複雑に絡まっているため、かえって迷路に落ち込むことになります。それを防ぐ方法は、釣り方を変更する場合、どれか一つだけにして試すことです。
B水温の低い季節は水温の高い所を、水温の高い季節は酸素の多い所を狙え
水温の低い季節は水中の酸素も多く、野鯉の活性も低いため酸素の消費量も少ない。そのため酸欠には殆ど関係なく、暖かい水を好む野鯉は水温の高いところに集まります。 逆に水温の高い季節は、酸欠になりやすく、野鯉が生活できないほど高温で無い限り、酸素の多いところに野鯉は集まるのです。
C経験は、100回のボ−ズより1匹の獲物
釣りにおいて獲物が釣れるという事はどんなまぐれであっても、そこには正しい答えが潜んでいます。しかし、ボ−ズにはそれがありません。ゼロです。間違った解答を幾ら重ねても、そこから正しい答えは見えてきません。間違った経験を幾ら重ねても上達はしないのです。 初級者に、釣りやすいところから始めよと勧めるのは、この理由によります。しかし、ボ−ズの経験も、釣れたときの経験と照らし合わせる事により、役に立つ経験となります。同じような状況と照らし合わせて、何がどのように違っていたのか、その差を明らかにすれば、次に同じ過ちを繰り返さずに済みます。失敗は成功の元という言葉が生きるのはこんな時です
D野鯉には、最高のエサも究極のエサも無い
釣り人というのは、野鯉釣りに限らず誰もが、何時でも何処でも釣れる最高のエサや究極のエサを夢見がちですが、それは錯覚というものです。
特に野鯉においては雑食性であるため、無数に近い種類のエサを食べるから、その中からたまたま良く釣れたエサに出会うと、そのエサをつい最高のエサだと思いやすいのです。例えば、大鯉には角イモが一番であるとか、吸い込み仕掛けはバラケエサでないと大鯉は釣れないと言うように。中には、大鯉は長時間過ぎたエサしか食わないから、長時間持つエサが一番であると力説するものもいます。
しかし、実際にはミミズでも赤虫でもザリガニでも大鯉は釣れていますし、中にはパンやチクワそしてウィンナでも大鯉が釣れています。私が以前吸い込み仕掛けで上げた95aの鯉は、仕掛け投入後僅か1分でアタリが出ました。釣り上げた鯉の口を見るとすべての針が掛かっていたのです。大団子を一口で飲み込んだのです。そのとき、前出の釣り人はこう反論するでしょう。その鯉は、養殖鯉であると。
E自然なエサより不自然なエサの方が釣りやすい。
釣りの書には、イモヨウカンを自然に見せるためには仕掛けの長さはこれくらいが良いとか、コマセには同じ材料を混ぜろとか解説しているものがありますが、イモヨウカンの自然な状態というのはどんな状態でしょうか。
もともと自然には無いイモヨウカンですが、このエサで結構野鯉が良く釣れます。というより、野鯉釣りでは最も代表的なエサであると言って良いでしょう。他に、吸い込み式やウキ釣りで良く使われるネリエサも、自然には無いエサです。こうして見ますと、野鯉釣りを代表する双璧とも言うべき、両方のエサが自然には無いエサです。
逆に、自然に多くある貝類や甲殻類そして環虫類のエサの方が、意外と使われていません。それは手に入れにくいこともあるでしょうが、実際に使用しても釣れない時の方が多いからです。この理由は、自然にあるエサは、野鯉にとって見慣れているため、不自然な状態を見分けやすいからです。反対に、自然に無いエサは、野鯉にとっては自然な状態を判断することが出来ないため、釣りやすいのです。ここに野鯉の知能の限界があります。
F鯉はカ−ブを釣れ、レンギョはタナを釣れ、草魚は岸を釣れ、青魚は石を釣れ
G釣り日記を付けよう
釣りに行ったときは、日記に付けましょう。付けるデ−タはできるだけ詳細な方が良いのですが、最低次の項目だけでも記録しておきましょう。
場所、日付、時間、天候、風、水温、全長、重量、エサ、仕掛け、潮汐。
天候についてはできれば当日だけでなく、その前後も記録しておくと大変役に立ちます。
Hデ−タを整理してみましょう
日記に付けたデ−タを整理して、表にしてみましょう。ポイント別、月別、大きさ別等に分け表を作れば、過去の傾向だけでなく現在や将来の予測にも役立ちます。
I文章を書いてみましょう
文章を書くということは、考えを整理したり、思考力を養うのに大変役に立ちます。今までただ漠然とやっていた釣りに、幾つかの法則や論理が見えて来るようになります。そこには、今まで単なる経験の羅列だとか勘に閉じ込められていたものが、確かな手応えとして残るはずです。
J投稿してみましょう
自分の考えた理論や釣り方を、雑誌などに投稿して公開しましょう。雑誌などに自分の釣り方などを公開するのは少し恥ずかしい気がする事も多いのですが、しかし、そこにはそれ以上に得られるものがあります。名誉とかお金とかいったものは割に合わない程ですが、自分一人でしか実験できなかった理論が、多くの人に試され検証されて、更に飛躍するきっかけを与えてくれるのです。また、多くの人と知り合う機会も与えてくれます。それにより、鯉釣りの楽しみは更に大きなものとなるでしょう。
Kクラブに入りましょう
『三人寄れば文殊の知恵』という言葉があります。一人でしこしこ考えるより大勢で考えたほうが良い知恵が出るという意味ですが、これは鯉釣りにも当てはまります。一人で10年掛けて得た成果を、クラブに入ると1年で追い越してしまう事がよくあります。実際、わたしもその経験者なのです。
クラブに入れば多くの先輩やベテランの人が見え、自分と同年代やレベルの人などさまざまな人がいます。そこでは、それまでに培われた釣り方やタックル・エサ・仕掛けなどを、実際に見聞きできます。一人で試行錯誤してきた多くの無駄な事が、一気に短縮されるのです。多くの会員により練磨され蓄積されてきた、同じポイント、同じタックル、同じ仕掛けを、自分のものにすることが簡単にできるのです。
クラブに入会したら、何でも素直に聞いてみる事です。べつに、照れたり恥ずかしがったりする事は無用です。謙虚に素直に聞けば、まず大体の方は知っている限りの事を教えてくれることでしょう。それどころか、エサや仕掛け、あげくの果ては竿やリ−ルまで譲ってくれる方も少なくありません。
また同じ野鯉釣りを愛する仲間が一緒にいるという事は、格別の楽しさがあります。大物が釣れたと言っては喜び合い、釣れない時は励まし合う、お互いの心が通じ合う仲間がいるという事は、一人だけの時に比べ何倍もの楽しさがあります。
たとえ釣れなくても、これだけでクラブに入る価値があります。ただし、くれぐれもミイラにはならないように、気を付けてください。あまりにも楽しすぎて、すべてを忘れ鯉の奴隷になった人も数多いのですから…。