『(Ba)カップル Light 〜浩之&綾香〜 第1話』



「やっりぃ〜♪」

 ゲーセン内に来栖川綾香ちゃんの喜びの声が響き渡りました。

「……ふ、不覚」

 対照的にガックリと肩を落とす浩之くん。
 見事なまでに真っ白になっています。灰になっています。

「へへ〜、あたしの勝ちね」

 浩之くんにVサインを向けて、綾香ちゃんがこれでもかと言わんばかりに勝ち誇ります。

「……あ、悪夢だ」

 浩之くんは茫然自失。未だに現実が受け入れられないようです。

 いつものように綾香ちゃんとゲームで対戦した浩之くん。
 ジャンルは得意としているシューティングでした。
 しかし、結果は敗北。
 差は微々たるものでしたが負けは負けです。

「信じられねぇ」

 モニターを虚ろな目で眺めながら浩之くんが零します。

「これが現実よ。素直に認めなさい」

 満面の笑顔を浮かべて綾香ちゃんが言いました。

「……うぐぐ」

「と・こ・ろ・で〜」

 イタズラっぽく微笑む綾香ちゃん。

「な、なんだよ」

「約束、忘れてないわよねぇ」

「約束? そんなのしたっけ?」

 浩之くん、あらぬ方向を見てボソッと。

「あら? 忘れちゃったの?」

「ああ、忘れた。記憶にない。綺麗さっぱりと」

「ふーん。だったら、思い出させてあげないとねぇ。
 こういうのって、斜め45度がベストなんだっけ?」

 指をポキポキと鳴らしながら、綾香ちゃんがデンジャラスなことを宣いました。

「ち、ちょっと待て! 思い出した。思い出しました。はい、それはもうしっかりと」

 慌てて訴える浩之くん。

「負けた方は、勝った方の言うことを何でも一つだけ聞かなければならない……だろ」

「その通り。よく思い出したわね、えらいえらい♪」

 浩之くんの頭を撫でながら、綾香ちゃんが嬉しそうに言いました。

「だーっ! やめんか!」

 頭に乗せられた手を邪険に振り払う浩之くん。照れくささの為か、顔が少し赤くなっています。

「……ったく。
 で? 勝者である綾香お嬢様の願い事はなんで御座いますか? 何なりとお申し付け下さい」

 半ば自棄っぱちな浩之くんの言葉を聞いて、綾香ちゃんはちょっと考え込みました。

「そうねぇ」

 そして、しばらくの後……

「それじゃ……」








「えへへ〜。一度、こうして歩いてみたかったのよねぇ」

 浩之くんの腕をギュッと抱きかかえて、綾香ちゃんはご満悦。

「まったく、何を望むかと思えば……」

 そんな綾香ちゃんに、浩之くんは呆れ顔。

「なによぉ、いいじゃない。だって、浩之ってば普段は街中で腕を組ませてくれないんだもん」

 ちょっぴりくちびるを尖らせる綾香ちゃん。

「いや、だってさぁ、人前でこんなことするなんて恥ずかしいじゃねーか」

「それは分からなくはないけどね」

 絡めた腕に力を込めて、

「でもさ、あたしだって……こういうのって結構憧れてたんだよ。
 だから……たまには、ね。いいでしょ?」

 綾香ちゃん、上目遣いで訴えます。
 そのような顔をされて、浩之くんに否と言えるわけがありません。

「……ったく、しょーがねーなぁ。わかったわかった、好きにしろよ」

「うん♪」

 浩之くんにピタッと身体を密着させて、輝かんばかりの笑顔で綾香ちゃんが応えました。

「うふふ

 上機嫌の綾香ちゃん。浩之くんの腕に頬ずりすらしています。

 そんな綾香ちゃんを見て、

(こんなに喜んでくれるのなら、時々だったらこういうのもいいかもな。
 確かに照れくさいけど、俺だってイヤなわけじゃないし)

 ―――なんてことを胸の内で思う浩之くんでした。





 < つづく >





 ☆ あとがき ☆

 短期連載(んな大袈裟なものじゃないですが)です。



(BGM:PC版ToHeart音楽モードNO.17)


 遅れまくったけど、綾香嬢誕生日記念SSだったりして。…………カッコ悪ぅ。

 本当は、連載じゃなく、一本に纏めるつもりだったのに。…………カッコ悪ぅ。

 2話以降のストーリー、何気にまだ流動的だったりして。…………カッコ悪ぅ。

 …………同じ形式の『名雪ちゃん』はほったらかしだし。…………カッコ悪ぅ。



 …………ああっ(泣)



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