たさいシリーズ外伝
『日曜の朝』



 透き通る様な青い空、白い雲、柔らかな風。  さらには、休日特有ののんびりとした空気。  世界中のどこに出しても恥ずかしくない、爽やかな朝である。  朝であるのだが…… 「「「「うう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」」」」  そんな空気にそぐわない唸り声。  それが、藤田邸のリビングに轟いていた。 「なんだよ? 朝っぱらから不景気な顔して。もっとシャキッとしろよな、シャキッと」 「だってぇ〜。疲れてるんだもん。寝不足なんだもん」 「なんだそりゃ? 自己管理が出来てねーぞ」 「うう〜っ、誰のせいだと思ってるのぉ?」  突っ伏して呻いていたうちの一人、あかりが無理矢理といった感じで顔を上げ、  ツッコミを入れてきた浩之を軽く睨んだ。 「は? んだよ、それ? 俺のせいだって言いたいのか?」 「当たり前やろ。他に誰がおるんや」  さらに、智子も顔を上げ、浩之の言葉に応える。   「はぁ? 俺が何をしたって言うんだよ?」 「そういう事を平然と言いますか?」  浩之の言葉に、葵が苦笑を浮かべながら応えた。  彼女も、呻き組の一人である。 「…………分からん。俺、何かしたっけ?」 「自覚が無いのって罪だよね」  呻き組の最後の一人、理緒が、浩之にジト〜〜〜っとした視線を向ける。 「んな事言われてもなぁ」  指で頬をポリポリ掻きながら、困った様な表情を浮かべる浩之。  本当に思い当たる節が無いらしい。  そんな浩之を見て、思わず深いため息を洩らすあかりたち。 「浩之ちゃん、全然分かってないよ」 「ホンマやなぁ。ったく、わたしらの寝不足の張本人のくせに」 「でも、わたしたちはこんなに疲れ切っているのに」 「元気だよねぇ」 「まあ、浩之ちゃんだからね」 「『性欲魔人』の名は伊達ではない、ということやな」 「…………ですね」 「…………だね」  あかりたちの会話を聞いて、ようやく浩之は理解した。  なんで、あかりたちがこんなに疲労しているのか、を。  彼女たちが言う様に、原因は自分にあったのだ。  しかし…… 「おっかしいなぁ。そんなに疲れる様な事をしたかな?  思いっ切り、手加減したつもりなんだけど」 「「「「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」」」」  そんな浩之の呟きに、ついつい深〜〜〜いため息を吐いてしまうあかりたちであった。 「わたし、もう少しだけ寝てくる」 「そやな。そうしよ」 「わたしも寝ます。さすがにちょっと辛いですから」 「わたしもぉ。ううっ、眠い」 「……手加減……したんだけどなぁ」  リビングを出ていくあかりたちを、浩之は『いまいち納得できない』といった表情で見送るのだった。  ―――以上、藤田家の『日曜の朝の恒例行事』でした。  特に記す事が無いほどの、ごくごく平凡な朝なのでありました。                    < 了 >  ――― 追記 ――― 「何と言うか……相変わらずよねぇ」 「……………………(こくこく)」 「ホントにけだものネ」 「まったくです」  浩之たちの様子を少し離れた所から見ていた四人。  全員、見事なまでに呆れ返っていた。 「ま、しょうがないか。だって、『性欲魔人』だしねぇ」 「……………………(こくん)」 「きっと、おじいちゃんになっても衰えないわヨ。性欲」 「否定できないのが悲しいです」  なかなかに辛辣な意見を述べる四人。  しかし、言葉とは裏腹に、浩之に向ける視線と表情は優しげなものだった。  容赦のない物言いは、『愛ゆえに』であるらしい。 「ほんっとーにしょうがないわね、お父さんは」 「………………………………」 「ん? 『でも、将来結婚するなら、お父さんみたいな人がいいです』?  そうだネ。アタシもそう思うヨ」 「うふふ。わたしも、その意見に賛成です」  ―――お父さん。  そう。彼女たちは、浩之の事をお父さんと呼ぶ存在なのである。  名前は、発言順に――藤田沙夜香、恵理香、ルーミィ、琴美――という。  それぞれが誰の娘であるかは……言うまでもないだろう。  ちなみに、全員同い年――高校1年生――である。  口ではブーブー言いながらも、お父さんの事が好きで好きでたまらない娘たちであった。  それにしても、高校生の娘がいるにも関わらず、いまだに精力全開の浩之。  40歳を間近にして、なお健在…どころか、パワーアップしていた。  『性欲魔人』  その冠に偽り無しである。                 < おわり > ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  ☆ あとがき ☆  思い付き突発SS(^ ^;  とは言え、ネタの原形は随分前からあったんですけどね(;^_^A  まあ、それはともかく、このSSで書きたかった事。  それは娘たちです(^ ^;  名前、変じゃないですか? 漢字、これでいいですかね?  おかしいと思ったら、遠慮なく言って下さいね。  ちなみに、子供はこれで全員じゃないです。もちろん。  他にもいっぱいいますが……さすがに書ききれないので(;^_^A  今後、娘たちの話は、少なくとも本編では書かないと思います。  あくまでも『外伝』として、たま〜に書くくらいでしょう。  それでも、『娘なんか出すな』という意見もあるでしょうが、  『外伝』という事で笑って許してやって下さい(^ ^ゞ  ではでは、また次の作品でお会いしましょう\(>w<)/  それにしても……浩之は何歳になっても浩之なんだなぁ(;^_^A



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