こんにちわ。藤田ゆかりです。

 えっと、今日は、お父さんとあかりお母さんと一緒に、繁華街までお買い物に来ています。

 でも、本当は、あまり一緒には来たくなかったんですけどね。

 え? 何故だって?

 …………だって……ねぇ。


たさいシリーズ外伝 その3 『お出かけ』 〜こいぬの場合〜

「ねえねえ、浩之ちゃん」  お父さんの右腕に『ぴとっ』と抱き付いているお母さん。  その顔は非常に幸せそうです。嬉しそうです。  でも、見事なまでに崩れてます。崩壊してます。  スライムもかくや、と言うくらい『ふにゃ〜』としてます。 「ん? どした?」 「あれ、可愛いと思わない?」 「どれだ?」 「あれだよ。あ・れ」 「あれ……って……」  お母さんの示した物を見て、お父さんがガックリと肩を落としました。 「またクマかい!」  そうです。お母さんの示した物は、クマの絵がプリントされたティーセットだったのです。 「あっ!」  おおっ。お父さんの必殺技(但し、あかりお母さん専用)の『ぺしっ』が炸裂です! 「う〜。ヒドイよ、浩之ちゃん」 「やかましい」 「ううぅぅぅ〜〜〜」  あらら。お父さんに邪険に扱われて、お母さんが拗ねモードに入りました。 「おいおい、これくらいで拗ねるなよなぁ」 「う〜。だってぇ〜」  お母さん、拗ねモード続行中。 「ったく、しょーがねーなぁ」  出た! お父さんの必殺技(こっちは全お母さん共通)『しょーがねーなぁ』!!  この言葉が出た後のお父さんは無敵です。 「これで機嫌直してくれよ」  お父さんは、お母さんの顔を自分の方に向けさせると……、  え? ええっ!? えええっっ!?  ち、ちょっと!! こんな真っ昼間っから!! 周りには大勢の人がいるのに!!  ううっ。ち、注目の的になってしまった。は……恥ずかしい。  …………他人の振りしよーっと。 「えへへ〜」  ま、まあ……なにはともあれ、お母さんの拗ねモードは終了したみたいです。  さすがはお父さん。お母さんの機嫌の取り方を熟知しています。  これで、もうちょっと目立たない方法だったら言うことないんだけど……。  はぁ〜。やっぱり、一緒に来るべきじゃなかったかも。……ちょっぴり後悔。 「ゆかり。なにやってんだ?」 「どうしたの? ゆかり」 「……え?」  いけないいけない。驚かせ……もとい。  ちょっと考えに耽ってしまったみたいです。  気が付くと、お父さんたちと、少し距離が出来てしまっていました。 「なんだなんだ。またボケーっとしてたのか?」  ううっ。ヒドイよぉ。そんな『ボケー』なんて言わなくても。 「ったく、しょーがねーなぁ」 「うんうん。ホントだね」  お母さんにだけは言われたくないよぉ。  …………セリオお母さんにも言われたくないけど。 「ほら」 「おいで」  へ? なに? なに、その差し出された手は?  まさか、繋げって言うの?  い、イヤだよ。高校生にもなって、親に両手を繋いでもらうなんて。  そんなの恥ずかしいよぉ。  ただでさえ注目の的なのに、これ以上恥をさらしたくないよぉ。  そんなの……そんなの……ダメぇ〜〜〜!! 「よしよし」 「ゆかりが真ん中ね」 「うん! えへへ」  ……って……『うん! えへへ』じゃないでしょ!!  なんか、いつの間にか手を繋いでるし!!  ううっ。条件反射だよぉ。  これが、琴美が言ってた『心が嫌がっても体が言うことをきかない』という状態なのかしら?  うう〜、恥ずかしいよぉ。周りからの視線が痛いよぉ。  でも、それなのに、どうしてだろう。 「えへへ〜」  どうしても、口元が緩んじゃう。  お父さんたちの手を離す気になれない。  どうしてだろう。  あたたかいから、かな?  (うん。それもある)  嬉しいから、かな?  (うん。それもある)  優しい気持ちが伝わってくるから、かな?  (うん。それもある)  やーめた。考えたってしょうがないもん。  だって、理由なんかどうだっていいもん。  結局、なんのかんの言っても、わたしはお父さんたちと手を繋ぐのが好きなんだよね。  恥ずかしいけど、照れくさいけど、わたしは手を繋ぐのが好き。  そう。それだけなんだよ。 「お父さん」 「ん?」 「お母さん」 「なーに?」 「えへへ。だーい好き♪」  きっと……ずっと、ずーっと、ずーーーっと、ね。
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 こんにちわ。藤田ゆかりです。  えっと、今日は、お父さんとあかりお母さんと一緒に、繁華街までお買い物に行くんです。  でも、本当は、あまり一緒には行きたくないんですけどね。  え? 何故だって?  …………だって……ねぇ。 「ゆかりぃ〜。そろそろ行くわよぉ〜」 「は〜〜〜い♪」  本当は行きたくないんですよ。本当は。

本当ですってば!!
< おわり >

 ☆ あとがき ☆  勢いオンリー!!(爆  またまた外伝です(^ ^;  (だって、書きやすいんだもーん(汗笑))  しかも、またまたまた短いし(^ ^;;  (だって、時間が無いんだもーん(泣泣泣))  閑話休題  今回の作品は、一応次回作との連作だったりします。  でもって、次は『こねこの場合』。  ちなみに、主題は変わりまして『トレーニング』となります。  ……って、これでヒロインがバレバレじゃん(;^_^A  これは、近日中には公開できると思います。  公開された際には、どうか読んでやって下さいm(_ _)m  ではでは、またお会いしましょう\(>w<)/



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