『名雪ちゃんは甘えん坊』 第2話「いつでもいっしょなんだよー」

「名雪ぃ〜。やっぱり、別々にしようぜ。この状況はやばいって」 「う〜っ。……いつだってそばにいてくれるって言ったのに…………絶対に離れないって言ったのに……」 「いや、だから……」 「…………うそつき」  ……って、おいおい。この会話、前回もやったぞ。 「あのなぁ。そりゃー、名雪の気持ちは分かるよ。俺だって、ずっと名雪のそばにいたいと思うし……」 「だったら……」 「だけどな、さすがにこれはまずいだろ」 「どうしてっ!? なんでっ!?」  なんで!? って、お前なぁ……。 「いくらなんでも、『いっしょのベッドで寝る』のは問題あるだろ?」  俺たちは名雪の部屋の『シングルベッド』にふたり並んで横になっていた。  おかげで、さっきから名雪の体が密着して……柔らかい感触が……ぬくもりが……。  が、頑張れ、俺の理性。 「問題……あるかなぁ?」  あるって。 「でも、お母さんは『了承』してくれたよ」 「…………へ?」 「わたしね、お母さんに『祐一といっしょに寝たい』って言ったの」  言うなーーーっ!! 「そうしたら、1秒で了承してくれたよ」  ……………………。  ……………………。  ……………………ぎゃふん。  な、な、な、何を考えているんだ、あのひとは!? 「だ・か・ら。これから、毎日いっしょに寝ようね♪」 「ま、毎日っスか?」 「うん、毎日」  そう言うと、名雪は、さらに体を密着させてきた。   すでに、抱き付いていると言った方が正しいくらいだ。 「祐一ぃ」 「…………うぅっ……」  理性だ、理性。理性理性りせいりせいりせい。   「ゆ・う・い・ちぃ〜(はぁと)」  俺の苦闘を知ってか知らずか、名雪は甘い声をあげながら、俺の胸に頬を擦り寄せてきた。  ……………………ぷち  その瞬間、俺は、理性の糸が切れる音が聞こえたような気がした。   「うおおぉぉぉぉっっっ、名雪ぃぃぃっっ!! 俺は……俺はぁぁぁっっ!!」 「くー」  ……………………って、おい。  寝ちゃったのか?  あれだけ挑発しておいて、それはないんでないかい?  俺のたぎるリビドーはどうしてくれるんだよ? 「名雪」 「うにゅ〜」 「名雪、名雪」 「うにゅ〜うにゅ〜」 「名雪名雪名雪」 「うにゅ〜うにゅ〜うにゅ〜」 「な〜〜〜ゆ〜〜〜き〜〜〜」 「う〜〜〜にゅ〜〜〜〜〜」  ……………………。  ……………………。  こいつ……実は、起きてるんじゃねーだろうな。 「名雪?」 「くー」 「名雪?」 「くーくー」  …………やっぱり、どうやら、本気で寝ているらしい。  まあ、こいつが布団の温もりの中で狸寝入りが出来るとは思えないけどな。  眠気に対する抵抗力はゼロだし。  それにしても、気持ちよさそうな顔で眠りやがって。 「くー」  まったく、しょうがない奴だなぁ。  名雪の幸せそうな顔を見ながら、俺はそんなことを考えていた。
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 それからしばらく、俺は名雪の寝顔を見つめ続けていた。  堪能していたと言ってもいい。    しかし、夜も更けてきて、さすがに俺も眠くなってきた。   「ふわあぁぁぁぁぁ。そろそろ寝るか。明日も早いしな」  目覚ましは……名雪がセットしたって言ってたからオッケーか。 「そんじゃ…………おやふみ〜〜〜」  俺は目を閉じて、睡魔に身を任せようとした。  そのときである。 「……ゆういち……」    不意に、名雪が俺の名前を口にした。 「ん? 名雪? 起きたのか?」 「ゆういち…………ゆういち…………ゆういち…………」  …………寝言らしい。 「ゆういち…………ゆういち…………ゆういち…………」  何度も俺の名を呼びながら、右手を彷徨わせる名雪。まるで、俺の姿を探し求めるように。  顔も、心なしか不安気なものに変わっている。 「どうした? 俺がいなくなっちまう夢でも見たか?」  俺は、名雪の手をしっかりと掴んだ。 「安心しろよ、俺はここにいるから。約束したろ? ずっとそばにいるって  名雪を置いて、どこかに行ったりなんてことは絶対にしない。俺を信じろ」  俺の声が聞こえたのだろうか、名雪の表情が目に見えて穏やかなものに変わっていった。 「…………うにゅ…………ゆういち…………だいすき…………」  ったく、恥ずかしい寝言言ってるんじゃねーよ。  この、筋金入りの甘えん坊が。  恥ずかしいこと言ってるのは、俺も同じだけどな。  ま、いいや。俺もさっさと寝よ〜っと。 「おやすみ、名雪。今度は夢の中で会おうぜ」  俺は瞼を閉じて、眠りの世界に落ちていった。  やべっ、ま〜た恥ずかしいことを言っちまったよ。  …………多少の後悔と共に……。  名雪の手を離すことなく…………。
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「おはよう、祐一。良い朝だね」 「…………俺にとっては最悪な朝だ」 「なんで?」 「なんでもだ」  『あの』名雪が朝から元気が良い。  この事実から、すでにお気付きの方もいることだろう。  そう、俺たちは『例の目覚まし』で朝を迎えたのだ。  うぅっ、時計は他に腐るほどあるのに……。  ちゃんと確認しなかった、俺の大失策である。 「何が悲しくて、自分の声で起きなきゃいかんのだーーーっ!!」 「気にしない気にしない」 「するわい!! 名雪、明日から、あの目覚ましは使用禁止だ」 「ええぇぇぇぇっっ!? 酷いよー。祐一、横暴だよー」 「うるさい。何とでも言え」  これだけは譲れん。絶対に譲れん。 「あれじゃないと、起きられないよー」 「大丈夫だ。俺が起こしてやるから」 「え?」 「仕方ないから、俺が直々に起こしてやる」 「ずっと?」 「ずっとだ」 「ず〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと?」 「ず〜〜〜〜〜〜〜〜〜っとだ」 「ホント?」 「ホント」 「じゃあ、祐一はずっとずっとず〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと、わたし専用の目覚ましだからね。  約束だよ、破っちゃダメなんだから」 「ああ、約束する」  ここまで言って、やっと俺は気が付いた。  相当に恥ずかしい会話をしていたことに。  俺って、結構頻繁に歯が浮くようなセリフを言ってるよなぁ。実はそういうのが好きなのか?         少なからず、ショックを受ける祐一だった。  その隣では……、 「うふ、うふふ。新しい約束。祐一との新しい約束。うふふ、うふふふふふ」  顔を赤らめて、名雪が身悶えていた。  俺って、名雪に負けず劣らずの恥ずかしい奴だったのか…………。  祐一の苦難(?)は続く。          ―――――――――――――――――― つづく ――――――――――――――――――  ☆ あとがき ☆  どもども、Hiroです(^ ^ゞ  『名雪ちゃん』第2話です。  いっしょにお風呂の次はいっしょにおねむ(*・・*)  次回は、いっしょに……何でしょう?(^ ^;  まだ決まってませんが、取り敢えず、学校へ行かせようかなぁと思ってます。  よろしかったら、楽しみにしてやって下さい(^ ^ゞ      それにしても、1話から、けっこう間が空きましたが……  ま、不定期連載ですからOKということで(おい  ウソです。次は、早めにアップできるように頑張ります(−−;  ではでは、また次の作品でお会いしましょう\(>w<)/



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