『ちょっとbreak』



?? :「『名雪ちゃんは甘えん坊』のこれから。
     ふとしたことで名雪と別れ、美坂香里と付き合うことになった祐一。
     いくつもの苦難が襲ってくるが、強い絆で結ばれた二人は愛の力で乗り越えていく。
     そして、その事により更に愛を深めた祐一と香里は末永く幸せに暮らしましたとさ。
     めでたしめでたし」

名雪 :「ぜんっぜんめでたくないよー! 香里ってばいい加減なこと言わないで!」

香里 :「いい加減なこと? あたしは事実を述べたまでだけど?」

名雪 :「事実じゃないよー。絶対にそんな展開になんてならないんだおー。
     わたしと祐一が別れるなんてことは天地が引っ繰り返ってもありえないんだおー」

香里 :「……やれやれ。名雪ってばお約束ってものが全く理解できていないようね」

名雪 :「お、お約束?」

香里 :「よく聞きなさい、名雪。主人公にとって『乗り換える』という行動はデフォなのよ」

名雪 :「……はい?」

香里 :「ダンバインとビルバイン、エルガイムとマークツー、ザブングルとウォーカーギャリア。
     もっと分かりやすく言えば黒いガンダムとゼータでもいいわね」

名雪 :「……」

香里 :「主人公は物語の途中で機体を乗り換えるのがお約束なの。
     そうした方が玩具が売れるからね」

名雪 :「は、はあ」

香里 :「つまり、そういうこと」

名雪 :「そういうことってどういうこと!?」

香里 :「分からないかしら? この話も例外ではないってことよ」

名雪 :「何故に!?
     乗り換えるのはロボットでしょ? 『名雪ちゃん〜』にはロボットなんか出てこないよ?
     だったら、この話には一切関係ないじゃない」

香里 :「大丈夫よ。某マクロスの某外道主人公みたいに女を乗り換えた例だってちゃんとあるから。
     尤も、彼はお約束どおりに機体も乗り換えていたけど」

名雪 :「なにがどう大丈夫なのーっ!?」

香里 :「いろいろと」

名雪 :「うう、もう何がなんだか意味不明だお〜。
     どうでもいいけど、わたしが祐一に乗り換えられるのが確定みたいに言わないでよ。
     乗り換えないで最終回を迎えるという展開だってあるんだし」

香里 :「無いわよ、そんなの」

名雪 :「うわ、即答だし」

香里 :「例えあったとしても力ずくで捻り潰すし」

名雪 :「力ずく!?」

香里 :「まあ、早い話が、どう足掻いても名雪はダンバインでエルガイムでザブングルで
     更には黒いガンダムってことよ」

名雪 :「そんなぁ」

香里 :「で、ビルバインでエルガイムマークツーでウォーカーギャリアでゼータなのは……」

美汐 :「もちろんわたしです」

名雪 :「あ、みっしぃ♪」

香里 :「……天野さん。いきなり話に割り込むなんて失礼じゃない?
     しかも、なにやら寝ぼけた発言までしてくれてるし」

美汐 :「すみません。確かに失礼でした。
     それに、考えてみればわざわざ主張するまでもない事でしたね。
     相沢さんがわたしと結ばれることは既に周知の事実、確定事項なのですから」

名雪 :「わ、なんかサラッと凄いこと言ってるお〜」

香里 :「……ぷっ」

美汐 :「なんですか、美坂さん? わたし、なにか可笑しなこと言いましたか?」

香里 :「ええ、言ったわ。相沢くんがあなたと結ばれるだなんて。
     どこをどうしたらそんな荒唐無稽な結論に達するのかしら」

美汐 :「あら? そんなに荒唐無稽ですか?」

香里 :「荒唐無稽ね。
     相沢くんが天野さんみたいな『女性の武器』も持たないような子に惹かれるわけないじゃない」

美汐 :「女性の武器?」

名雪 :「たぶん、胸のことだと思うよ」

香里 :「そう。名雪の言うとおりよ。貧乳の天野さん」

美汐 :「っ!?」

香里 :「洗濯板と言い直しても構わないわよ」

美汐 :「っっっ!?」

香里 :「えぐれ胸でも可ね」

名雪 :「か、香里。ちょっとストレートすぎる気がするよ〜」

美汐 :「……ぅぐぐ。
     つ、強気ですね、美坂さん。ここが表ページだからって随分攻め攻めじゃないですか。
     裏ページでは弱々の総受けのくせに」

香里 :「え? よ、弱々? な、なにを言ってるんだかあたしにはさっぱりだわ!」

名雪 :「あ。香里の勢いが目に見えてガクッと落ちたお〜」

美汐 :「へぇ。そうですか、美坂さん。分からないのですか。
     では、思い出していただく為に、今から裏に移行してしまうというのはどうでしょう?」

香里 :「……ぇ?」

美汐 :「そして、そこで裏ページ流の、それもグッチョリヌッチョリベッチョリとしたハードで濃厚な、
     思わず美坂さんが何度も何度も失神してしまう様な展開を……」

香里 :「……ぅ」

美汐 :「と言いたいところですが、美坂さんが先程の暴言を取り消して素直に謝罪してくだされば……
     まあ、今回だけは大目に見ないこともありませんが」

香里 :「ふ、ふんっだ。そんな必要なんてないわ。
     べ、べ、別に……う、う、う、裏でも何処でも、あ、あ、あたしは構わないわよ」

名雪 :「香里、あからさまに動揺しまくってるお〜。見ていて可哀想なくらいだお〜」

美汐 :「うふふ、ホントにいいのですか?
     言っておきますが、わたし、その手の技術にはちょっと自信ありますよ。
     何と言っても、毎晩相沢さんの事を想いながら鍛錬してますからね。
     はっきり言いまして、ウブな美坂さんとは比べ物になりませんよ」

香里 :「……う゛」

名雪 :「な、なんなの? 鍛錬ってなんなの?」

美汐 :「ちなみに、テクニックは栞さん以上です。つい先日確かめました」

名雪 :「確かめた!?」

香里 :「……し、栞以上!?」

美汐 :「さて。どうしますか、香里さん? 裏に移ります?
     尤も、そうした場合はきっと後悔することになるとは思いますが」

香里 :「ごめんなさい、あたしが悪かったです。胸なんて単なる飾りよね、うんうん」

美汐 :「分かっていただけて嬉しいです」

名雪 :「うわ。香里ってば無茶苦茶アッサリ。激よわっ!」

香里 :「うるさいわよ、名雪。
     ところでさ、天野さん。思ったんだけど、あたしたちが先ず成すべき事は名雪の殲滅……
     もとい、名雪の魔の手から相沢くんを救い出す事。そうよね?」

美汐 :「はい。仰るとおりです」

香里 :「でしょ?
     ――で、その事に関して、あたしと天野さんの利害は一致しているわ。
     だから、それまでは協力体制を築いたほうが賢明だと思うのだけどどうかしら?」

美汐 :「なるほど。それもそうですね。同感です」

名雪 :「あ、あれ!? なんか、いつの間にか有耶無耶のうちに団結してるおー!
     てか、こっちにお鉢が!?」



○   ○   ○



名雪 :「あ、あのね。一つ言わせて貰うけど……」

香里 :「なに?」

美汐 :「なんでしょう?」

名雪 :「祐一と結ばれるのは、やっぱりオフィシャルなシナリオを持ったヒロインであるべきだと
     わたしは思うんだお〜。
     ぶっちゃけた話、サブヒロインはお呼びじゃないんだよ〜」

香里 :「なんだ、そんなこと」

美汐 :「些事ですね」

名雪 :「へ?」

香里 :「また移植するから大丈夫よ。今度はあたしたちのシナリオ付きで」

美汐 :「ですね」

名雪 :「ま、また移植って……。『Kanon』はもう殆どの機種で出ちゃったよ?」

香里 :「なに言ってるのよ。まだ残ってるでしょ」

名雪 :「……×箱?」

美汐 :「ネオジ○ポケットです」

名雪 :「ネ○ジオポケット!? 無理だおー。
     だって、もうとっくに死んでるハード……じゃなくて……え、えっと……
     ネオ○ケじゃ容量的に無理だと思うよ」

香里 :「平気平気。GB版ときメモみたいに分割して発売するから」

美汐 :「もう少し具体的に言いますと、一本につき二人分のシナリオという形態ですね」

香里 :「もちろん、シナリオを分割してもお値段はそのままのスペシャルプライス」

美汐 :「とってもメーカーに優しい仕様となっています」

香里 :「更には、特典として特製トレーディングカード付き」

美汐 :「ソフト一本毎にカードが3枚付いてきます。
     カードは全25種類。普通にソフトを全部買っても絶対に揃いません。
     コンプリートする為には、ソフトを複数購入するしかありません」

香里 :「でも、揃えるのが大変な割には、絵は全部使いまわしなのよね」

美汐 :「はい。限りなくメーカーに優しい仕様となっています」

名雪 :「……そ、そうなんだ」

美汐 :「ちなみに、オススメは天野美汐&沢渡真琴編です」

香里 :「美坂香里&美坂栞編も良いわよ。
     あとは水瀬……」

名雪 :「うんうん。やっぱりわたしのシナリオもオススメだよね♪」

香里 :「秋子&秋野美奈のあきあきコンビ編とか」

名雪 :「……って、そっちの水瀬!?
     てか、秋野美奈って誰!?」

香里 :「なに言ってるの。あたしたちのクラスメートじゃない。女子の出席番号2番」

名雪 :「……そ、そうだっけ?」

香里 :「そうよ。身長152センチのロリっ娘。口癖は『ふみぃ』」

名雪 :「ふ、ふみぃ!?」

香里 :「好きな食べ物はチーズケーキで、趣味はぬいぐるみ収集。得意なことは目からビーム」

名雪 :「目からビーム!?」

香里 :「稀に拡散波動砲」

名雪 :「拡散波動砲!? R−TYPE!?」

美汐 :「美坂さん、好き勝手に話を捏造してませんか?」

香里 :「いいのよ、面白ければ」

名雪 :「あーもう。どこまでがホントのことなのやら〜」

香里 :「全部ホントの事よ。嘘だけどね」

名雪 :「ううう〜」

美汐 :「美坂さん、いい性格してますね。流石です」

香里 :「ありがと☆」

名雪 :「うううぅぅぅ〜」



○   ○   ○



香里 :「まあ、本編移植が無理だったらバラエティソフトって手もあるわね」

名雪 :「バラエティソフト?」

美汐 :「メーカーが日ごろの感謝を込めて制作したファンサービスソフトの事です」

名雪 :「へぇ」

美汐 :「尤も、そんな殊勝な気持ちを持っているメーカーはごく一部で、
     殆どは腐ったミニシナリオとか安っぽいスクリーンセーバーとか有難みの無い壁紙とかの小物を、
     手当たり次第に適当にぶち込んだだけの小銭稼ぎソフトだったりするんですけどね」

名雪 :「わー! わー! わー!
     天野さん、お願いだからもう少し歯に衣を……」

香里 :「でも、そんなのでもリリースするだけマシかもね。
     最近じゃ体験版で小銭稼ぎをする厚顔無恥な所もあるし」

名雪 :「わー! わー! わー! わー! わー!
     香里も追い討ちかけないでー!
     そんなこと言ってると、ファンからクレームが来るよ」

香里 :「……」

美汐 :「……」

香里 :「といったことを、さっき名雪が言ってたのよね」

美汐 :「まったく、水瀬さんにも困ったものです」

名雪 :「ええーっ!? わ、わたし!?」



香里 :「――で、件のバラエティソフトなんだけど、実はもうタイトルだけは決まってるのよ」

名雪 :「へ? そうなの?」

香里 :「第一弾が『かおりんといっしょ』」

美汐 :「第二段が『美汐のないしょ』です」

香里 :「そして、第三弾が『北川でいこう』。来春発売予定よ」

名雪 :「……えっと、取り敢えずツッコミを羅列するね。
     1.そんな予定ないってば!
     2.何故に北川くん!?
     3.全部モロにパクリじゃない!」

香里 :「1.予定なんてでっち上げた者勝ちよ。あくまでも予定は未定なんだから。ソ○アが好例。
     2.単なる語呂合わせ。
     3.いいのよ、パクリでも。売れれば」

名雪 :「そ、それはちょっと。特に最後の」

美汐 :「何を言ってるんですか。この世は売れたものが正義なんです。
     いくらパクリでも、本家より売れれば誰も文句なんて言わなくなります」

名雪 :「そ、そんなのは暴論だよ〜。
     だいいち、もしも売れなかったらどうするの?」

香里 :「心配無用よ。その時は……」

名雪 :「その時は?」

香里 :「雑誌社とかにお金を握らせて販売数の発表データを改竄させるから」

名雪 :「改竄!?」

美汐 :「ちなみに、雑誌とかのレビューコーナーの担当者にお金を握らせておくのは基本中の基本ですね」

名雪 :「基本なの!?
     あーもう、なんだかなぁ。そんな外道な事ばっかり言ってると怒られるよ。
     人気が落ちても知らないからね」

香里 :「……」

美汐 :「……」

香里 :「ということを、さっき名雪が言ってたのよね」

美汐 :「水瀬さんってば、本当に腹黒いのですから。わたし、ビックリしました」

名雪 :「ええーっ!? またわたし!?」



○   ○   ○



名雪 :「あう〜」

美汐 :「真琴が感染してますね」

香里 :「どうしたの、名雪? 随分と疲れた顔してるけど」

名雪 :「疲れもするよ〜。特に精神的に」

香里 :「あら? そうなの?」

名雪 :「この二人を相手に祐一を守らなければいけないのかと思うと……うう、気が重くなるお〜」

香里 :「別に名雪が相沢くんを守る必要なんかないわよ。それはあたしの役目だから」

美汐 :「祐一さんはわたしのですから、水瀬さんが気に病むことは何もありません」

香里 :「……わたしの? それは聞き捨てならない発言ね。相沢くんはあたしのよ」

美汐 :「わたしのです」

香里 :「あたしのだってば!」

美汐 :「……」

香里 :「……」

美汐 :「やはり、わたしにとって美坂さんは倒さねばならない存在のようです。
     悲しいことですが……仕方ありませんね」

香里 :「ええ、全く同感だわ」

美汐 :「どうです? よろしければ、今から決着をつけます?」

香里 :「望むところよ」

美汐 :「場所は裏ページで」

香里 :「もちろん表ページでね」

美汐 :「……」

香里 :「……」

美汐 :「先ずは、どこで決着をつけるかを決める為に決着をつけましょう」

香里 :「なんかわけ分からない日本語になってるけど……了解」

美汐 :「……」

香里 :「……」


名雪 :(あう。二人とも怖いお〜。入っていけない空気を纏ってるお〜。
     でも、わたし負けない! 絶対に香里にも天野さんにも祐一は渡さないんだから!
     祐一とラブラブするのはわたしなんだから〜っ!)



???:『あははーっ。そうは問屋が卸しませんよ。もうすぐ???たちも参戦しますからねー。
     ねえ、○い?』

?? :『はちみ○くま○ん』



名雪 :「……あ、あれ?
     な、なんか悪寒が……」





< 謎(?)を残したまま唐突におわる >



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