『バロメータ』



 健康。

 それは非常に掛け替えのないものである。
 健康のためなら体を壊すことも厭わないと思わせるほどに。

 人は健康であることを確かめる為に、定期的に病院などで検診を受けたりする。
 しかし、もっと身近なところでも、人は己の体の状態をはかっているものだ。
 個々人が持つ各々の『健康のバロメータ』を用いて。

 例えば、食欲の有無や寝起きの良し悪しで判断する人は多い。
 また、トイレでの尿の色などで健康を実感する人もいる。
 他にも、体重や肌の状態、爪や歯の色つやを基準とする人も。



 ―――で、藤田家の家長である藤田浩之も多分に漏れず定期的に体調の具合を確かめている。彼なりの『健康のバロメータ』で。
 そして、つい先程もその方法で確認を取ったばかりだ。



「う〜ん、なんだかなぁ」



 目の前で眠りに就いている10人の愛しい少女たち―――何故か全員一糸纏わぬ姿をしているし、どういうわけかみんなして妙に満ち足りた表情をしているが―――を見ながら、浩之は唸った。



「一人一回で疲れちまうなんて……。今日の俺、どこか体が悪いのかな? ひょっとして風邪でもひいたか?」



 個々人が持つ各々の判断材料である『健康のバロメータ』。

 その基準はまさに人それぞれである。



 それぞれではあるのだが……





 浩之については……もはや何も言うまい。





< おわり >





 ☆ あとがき ☆

 まあ、何と言いますか……そういう話です、はい( ̄▽ ̄;





戻る