私立了承学園
「Sサイズ」

作成者:ERR

 時は土曜の昼食時。  ここPiaキャロット了承店は今日も今日とて大賑わいだった。  あちこちで平和な絵が展開されている。  レミィのキワモノぶりも、 「ウーン、コクが足りないネ」 「だからって目の前で牛丼にマヨネーズかけないで下さいっ!!」 「ウン? 葵もいる?」 「お、お願いですからやめてくださいぃ!」  誠のブラックホールぶりも、 「…あいかわらずの健啖ぶりだな、少年」 「ングング…おかげさまで」 「…そんなに食べたら彼女達の料理が食べられないんじゃないか?」 「大丈夫ですよ、デザートとあいつらの料理は別腹ですから」 「…はいはい、ごちそうさま…いろんな意味で…げふっ」 「?」  バカップル(笑)とその友人も、 「はいっデューク、あーん」 「あ、あーん…」  もぐもぐ 「おいしい?」 「あ、ああ、うまいよ」 「よかった☆」 「…そーいうのは手料理でやんないと情けないぜ」  …ひくっ 「…うわばみ女には言われたくないわね」  …ひくひくっ 「ほぉ…ケンカ売ってんのか?」 「あーら別にそんなことありませんことよ☆」  …ひくひくひくっ 「お、おい二人ともケンカするなよ…」  赤貧と、それに奢る編集長も、 「ああぁっ…こんなに美味しいものをいただけるなんて…私は幸せ者ですっ!」 「アレイちゃん、デザートはどうする?」 「でっ、デザートっ!? そ、そんな恐れ多いものまでっ!?」 「アレイちゃん…」(TーT)  蚊(爆)も、 「血」 「ありません」 「しくしく…」  とまぁ、大きな事件も無く、おおむねいつもどおりだった。  そしてこちらでも。 「なんだあゆ、またたいやきか。お前、そんなもんばっか食ってるからいつまでたっ ても小学生なんだぞ」 「うぐぅっ、ボク高校生だもん!!」 「大丈夫、どこからどう見ても小学生だ」 「祐一君、言い過ぎっ!! ボクこれでも154cmあるんだよっ!!」 「なにっ!? いつのまに6年生になったんだっ!?」 「うぐぅ…ひどいよ…」  祐一とあゆのこんなやりとりもまた、いつもどおりだった。  が、この二人のいつもどおりのやりとりが、今回のお話の幕開けとなる。  祐一とあゆの二人からそう遠くない位置、そこで茜と澪と詩子、折原家でも特に仲 のいい3人がたいやきを食べていた。 「美味しいです」 「…」  うんっ。  あゆほど病的(笑)ではないにせよ、好物のたいやきを美味しそうに食べる茜。  澪も満面の笑顔でほおばる。  が、しかし。 「……」  詩子は食べかけのたいやきを持って硬直していた。  見ると、小刻みにわなわなと震えている。 (あゆちゃんって…あゆちゃんって…) (あゆちゃんって… 私より身長高かったのおぉぉぉぉぉぉぉぉ ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーっ!?)  ゴロゴロピシャーン!! とでも効果音が聞こえてきそうな落雷をバックに、 詩子は心の中で魂の叫びをあげた。  ちなみに、詩子の身長は152cm。  あゆのほうが2cmほど高いことになる。  二人を知るものが改めて聞くと信じられないかもしれないが。 「澪ちゃんっ!!」 「…(びくっ!)」  う、うん?  突然凄い形相で名を呼ぶ詩子に、澪は危うくたいやきをのどに詰まらせるところだ った。それでもなんとか詩子に視線を向ける。  茜も親友の突然の行動にあっけにとられていた。それでもたいやきを食べる手は休 めない。 「ねぇ澪ちゃん、身長高くなりたいとか思ったこと無い?」 「……」  うんうん。  2度うなづく。  ここ了承学園でも特に小さいほうに入る澪のこと。  それは当然気にしていることだった。  ちなみに澪は147cm。数少ない、詩子より小さい人と言える。 「でしょっ? だから一緒に身長を高くする方法を探しに行こう! きっとこの学校のことだから何か方法があるよ!」 「…」  うんうん。  またまた2度うなずく澪。   かなり乗り気のようである。 「よしっ、それじゃ善は急げ! さっそく行こう!」  食べかけのたいやきを持った右手を高々と掲げ、そう宣言する詩子。 「……」  おーっ!  澪もそれに倣って高々と食べかけのたいやきを空にむけて掲げた。 「……」  あまりの急展開に置き去りになっている茜。  必死に展開についていこうとする。たいやきを食べる手は休めることなく。  そしてようやく事態の整理がつきそうになったとき、 「それじゃ茜、そーゆーことだからお勘定立て替えといてねー!」 「……」  ねー!  2人は爽やかな笑顔で走り去っていた。 「あの…詩子、澪…」  ようやっと茜がそれだけつぶやいた時、2人はもう豆粒になっていた。 「ふぅ…」  結局、そのとき茜にできたのはため息をつくことだけだった。 「やっぱまずはここだよね!」 「……」  うんうん。  2人が真っ先にやってきたのはガチャピンの所であった。  彼のひみつ道具をあてにしてのことだろう。 「おや、私になにか用ですか?」 「先生、大きくなる道具貸してください!」  詩子は見てるほうが清々しくなるくらい、単刀直入に用件を切り出した。  ここで「大きくなる道具ってありますか?」とならないところが実に詩子らしい。 「大きくなる道具…? んー…あ、そういえば…」  ガチャピンは少し考えると、ごそごそとガラクタの山をあさり始めた。  そしてそこから、懐中電灯のようなものを取り出す。 「これはこの間テレビで見た道具なんですが、面白そうなので作ってみたものです。 このライトで照らされたものは大きくなり、もう一度照らすと元に戻ります」 「わぁ、貸して貸して!」  満面の笑みでガチャピンからその道具(以後、仮に『ビッグライト』と呼称する) を引っ手繰り、興味深げにまじまじと見る詩子。そしておもむろにスイッチを入れる と、さっそく澪を照らしてみた。 「…!」  驚きの表情を浮かべた澪の体が、みるみる大きくなっていく。  そして、あっという間に元の倍ほどの大きさになった。  …ただし、身長が、ではなく、体積が、である。 「……」  あうあう…  どうしていいかわからず、あたふたとする澪。 「んー、これはちょっとイメージと違うかも…」  そんな澪とビッグライトを見比べて、残念そうにする詩子。 「ちなみに、効果は1時間ほどで切れます。さすがに見様見真似では本物ほどの 性能は出せませんね」  ガチャピンは苦笑しながらそう言った。 「それじゃガチャピン先生、またね〜」 「……」  ぺこっ。  澪を元の大きさに戻し、ビッグライトをガチャピンに返すと、挨拶もそこそこに 2人はガチャピンの元を後にした。  とりあえずガチャピン、もっと誇ってもいいと思う。 「やっぱりこういうのは日々の積み重ねだと思うのよ」 「……」  うんうんうん。  次に2人がやってきたのは自宅の台所だった。  どうやらみんな出はらっているらしく、彼女らと猫達以外は誰もいない。 「そんじゃ、はりきっていきましょ〜!!」 「……」  おーっ、と景気よく右手を挙げる2人。  そしておもむろに冷蔵庫を開き…  ガシッ! パコッ!  ごっごっごっ…  牛乳(1リットルパック・未開封)を一人ひとつ掴むと、おもむろに飲み始めた。 もちろん、左手を腰に持っていくのも忘れない。  ごっごっごっ…  まぁ、なんというか。  小柄な少女2人が牛乳一気飲みを披露する姿はなかなかに倒錯的というか、幻想的 というか。  まぁとにかくそんな感じだった。(語り部やや錯乱気味)  ごっごっごっ…  …ぷはぁ… 「…うげ」 「……」  はうぅぅぅぅぅ…  まぁ、当然の結果ではある。 「…つ、次いこ…おえっ…」 「……」  うん…  そんな感じで、2人は自宅を後にした。 「ただいまーっ、いい子にしてた?」 「ふぃー、やっとついたかぁ…」  詩子たちが出て間もなく、夕食の買出しに出ていた瑞佳と浩平が帰ってきた。  みさきのいる折原家の買出しは、なかなかに侮れない重労働なのだ。浩平が疲れ気 味なのはそのためである。  瑞佳は出迎えに来た子猫達を笑顔で撫でてやりながら、台所へ向かった。  子猫達にミルクを与える為である。 「ちなみにミルクといっても母乳じゃないぞ、牛乳だ」 「…浩平何言ってんの?」 「いや、気にするな」 「ふーん?」  さして興味もなさそうに、冷蔵庫を開く瑞佳。  すると… 「あれ?」  牛乳が無くなっていた。 「うーん…確かに2本残ってたと思ったんだけど…こーへーっ、牛乳飲んだぁーっ?」  居間でごろ寝を開始していた浩平に尋ねる。 「あー? 今日は朝から一口も飲んでないぞー?」 「だよねぇー…わたしの気のせいかなぁ…?」 「なんだ、牛乳切らしてたのか?」  いつのまにか台所に入ってきた浩平が尋ねる。 「うん、確かにあったと思ったんだけど…」 「ま、お前はしっかりしてるようで時々抜けてるからな。しょうがない、ひとっ走り 行ってくる」 「あ、いいよいいよ、浩平は休んでて。わたし行ってくるから」  無造作に台所のテーブルに放り投げたままの財布を掴んで出ようとする浩平から素 早く財布を引っ手繰ると、瑞佳は再び出かけていった。 「…じゃ、一眠りするか…」  急にやることが出来たと思ったら、同じく急にやることが無くなってしまい、勢い をそがれた浩平は頭を掻きながら居間に戻った。 「…ふぅ…」  いつのまにか戻った茜は、そんな2人を離れた場所から眺め、またため息をついた。  そしてくるりときびすを返し、商店街に向かった。 「わー、高いねー」 「……」  うん。  商店街の一角、妙な雰囲気の店の中で、詩子と澪はシークレットブーツを履いてい た。最後に行きついた結論は割と普通だった。  当たり前ではあるが、靴によって底上げされている2人は違和感ありまくりだった。 「うーん…でもこれって別に身長が高くなるわけじゃないよねぇ…」 「……」  うん…  まぁ当然のことなのだが、二人は不満そうだった。 「よーし、次は…」 「詩子」 「あ、茜?」  店を後にし、次の目的地を宣言しようとした詩子の虚勢は、前ぶれなく現れた茜に よって奪われた。  茜の表情は困ったような飽きれたような怒ったような、そういう複雑な、しかし決 して機嫌は良さそうなものではなかった。  茜の表情に自分が何かしでかしたかと、らしくもなく腰が引けた様子で詩子はあれ これと思いをめぐらせた。 「あーゴメンゴメン、たいやきのお代渡してなかったね」  で、思い当たった問題点について謝罪してみたが、 「違います、そのことじゃありません」  茜の不機嫌の理由はそのことではなかった。 「え、奢ってくれるの?」 「それも違います。後でちゃんと返してください」  でもやっぱりたいやきの代金はしっかりと回収するようである。  茜はそこで一息つくと、用件を切り出した。 「私が聞きたいのは、どうしてそんなに身長にこだわるのか、ということです」  まっすぐに詩子の瞳を見つめながら、迫る茜。 「んー…だって、やっぱり身長が低いってのは気になるよ。子供っぽいっていうか」 「……」  うんうん。  茜にやや気圧されながらも答える詩子。澪も頷き、詩子への同意を示す。 「ふぅ…」  そこでまた茜はため息をひとつついた。 「な、なによ、この悩みは小さい人にしかわからないんだよ、ねー?」 「……」  うんうん。  茜の呆れたようなため息に、詩子と澪はやや不満そうにお互いに頷きあった。 「確かに…私は身長で悩んだことはありませんから、小さいことで悩む気持ちという のは解りません。でも、身長で人間が決まってしまうわけじゃありません。少なくと も私はそう思いますけど」  そんな2人に言い聞かせるように、茜は言う。 「そんなことは解ってるけど…でもやっぱり小さいってのはコンプレックスになるっ ていうか…」  それでもやっぱり納得いかない表情の詩子。 「…ふぅ」  そこでまたため息をつく茜。 「そうですね…なら一番重要なことを言います。  身長が高くたって低くたって、浩平は皆を大切にしてくれます」 「…あ…」 「……」  …うん。  短い言葉ではあるが、それが一番重要な一言であった。 「それでも、今2人が身長の低さで不幸になっているというなら仕方ありません。私 もできる範囲で協力します」  不機嫌そうな表情を2人を気遣う表情に変え、茜が言う。  だが、詩子と澪の答えは決まっていた。 「ううん、いいよ、ありがと茜。そーだよね、別に身長が低くてもいーよね」 「……」  うんっ。 「…はい」  そして3人で微笑みあった。 「それに、詩子も澪も、存在感がとても大きいから、小さいくらいが丁度いいです」 「なにそれ、誉め言葉? なんか馬鹿にされてる気もするけど」 「そんなことありません、誉め言葉です」 「ふ〜ん…だったらいっか」 「…はい」 「……」  うんっ!  こうして日常は平和に過ぎていく。  …後日。 「お、あゆ。今日も小学生みたいだな」 「祐一君、失礼だよっ!! ボクコレでも…」 「そうだな、バスト80だもんなー」 「わーっわーっ!!」 「…美味しいです」 「……」  うんっうんっ! 「……」 (あゆちゃんって…あゆちゃんって…) (あゆちゃんって… 私より胸大きかったのおぉぉぉぉぉぉぉぉ ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーっ!?)  ちなみに、詩子のバストは77。  繭と同じだったりする。 「澪ちゃんっ!! 胸大きくなったらなぁ、なんて思ったことない!?」 『あるの』 「よしっ! 2人で大きくなる方法を探しにいこう!」 「……」  うんうん! 「詩子…」 「あーダメよ茜、こればっかりは譲れないわ、女としてっ!!」 『譲れないの』 「さっ、行こう澪ちゃん!」 「……」  うんっ。  …2人の飽くなき探求は続く。 「あれっ? また牛乳2本無くなってる…浩平、飲んだ?」 「誰がそんなに飲むか、お前じゃあるまいし」 「なによそれ、わたしだってそんなにがぶがぶ飲んでないよ。せいぜいご飯のたびに 飲むだけだもん」 「十分だ」 「うー…でもホントどうしたのかなぁ…みさき先輩かな?」 「いや…先輩は食いもの専門だろう。食い物が減らずに牛乳だけがなくなるというこ とはない」 「…2人とも何気に酷いこと言ってる?」 <おわり>
 大丈夫、大きいより小さい方がかわいい。  かっこいいよりかわいいほうが強いと昔のえらい人も言っています(誰)。  しかし、あゆって何気にダイナマイツ(笑)だと思うんですが、どうでしょう?  ところで、スモールライトに比べると、ビッグライトって陰薄いですよね(w
 ☆ コメント ☆  葵(153cm) :「身長なんか、別に低くてもいいですよね」(^^) マルチ(147cm):「はいですぅ」(^0^) 理緒(155cm) :「うん。わたしもそう思うよ」(^^)  葵(72cm) :「胸だって、小さい方が可愛らしいですよね」(^^) マルチ(68cm):「はい。まったく同感です!」(^0^) 理緒(70cm) :「そうだね。その通り!」(^^) 綾香(161cm,88cm):「そうね。あたしも賛成だわ」(^^)  葵 :「……………………」(−−) マルチ:「……………………」(−−) 理緒 :「……………………」(−−) 綾香 :「あ、あれ? どうかした?」(^ ^;  葵 :「…………………………………………」(−−) マルチ:「…………………………………………」(−−) 理緒 :「…………………………………………」(−−) 綾香 :「……あ……あれれ?」(^ ^;;;



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