五月雨堂
本来は骨董品屋であったが、了承学園に店舗を構えて以来、
従来の骨董品以外に怪しげなアイテムまで手広く扱う様になり客層も微妙に変わってきている。

そして今日もまた…

「どうかね同志健太郎、何か出物はあったかね?」
「やぁ大志か、そうだなぁ…そうだ、さっき変な覆面被った人が置いてったものがあるんだけど…
どこに置いたかな? おーいスフィー、さっきのアレどこに置いた〜?」
「ちょっと待ってー、今もって来るから〜
……お待たせー、ハイこれでしょ?」
「こっ、これはぁ!!」

了承学園
千堂家の場合(作:黒貴宝)

「…」
「…」
「…」
「ひっく、ひっく…」
「ほら、千紗ちゃんももう泣かないで、ねっ?」
「ごめんなさいですぅ、お兄さん…千紗ぁ、千紗ぁ…」

ガラッ

「ハロー! 同志和樹、原稿の進み具合はどうかね?」
「大志か…実はちょっと困ったことになってな」

机の上には無残に破られた原稿が3枚、
コミックZの今月の分の完成原稿だ。

「ごめんなさい、ごめんなさい…」
「何があったというのだMy同志よ」
「ああ、実は…」





カリカリカリカリ…
規則的にペンの音が響く
締め切り直前、授業を休んで執筆に励む千堂家の面々、
やがて、ペンの音が途切れ…

「んー、終わったー」
「お疲れ様、和樹、はい、お茶」
「おー、センキューな瑞希、みんなもありがとー」
「あー、気にすることあらへん、ウチとアンタの仲やないか」
「ちょっと、ダベッてないで今度は私の原稿〜」
「はいはい、ちょうまちぃ、ちょっと一息入れさせぇな」
「ふみゅー、パンダには言ってないわよ!」
「……あの…詠美さん、皆さん疲れてますし、そちらの原稿はもう少し余裕もありますから…」
「ぶぅぅ、分かったわよ」
「お兄さん、千紗、おにぎり作って来たですよ」

あぶなかしい歩調でお盆にのせた握り飯を運んでくる千紗。

「ありがと、千紗ちゃん、ソコの机に置いてくれるかい」
「はい、ってにゃぁぁぁぁ〜〜〜!」

ドタンッ! グシャ! バリッ! 
机の脇に置いてあったインク壷に足を引っ掛けてしまったようだ。

「いたたたたですぅ…」
「大丈夫かい千紗ちゃん!?」
「はい私はなんとも…ああ〜!!」



「…ってわけだ、」
「うむ、それは一大事だ、で、原稿の方は?」
「一応テープなんかで補修してみたけど、ちょっと使い物にならないな…」
「そうか…それで? まさか同志和樹よ、貴様よもや原稿を落とそうなどと考えてはいまいな?」
「……うっ、しょっ、しょうがないだろ? 後2時間もしたら編集長が原稿取りに来るんだぞ?
たった2時間でもとの通りになんてできないだろう」
「…そうか、同志よ、お前がそのような情けないことを考えていると言うのなら…
我輩もコレを使わざるをえん、というわけだな……見よ!」

そういって大志は懐から黄色い何かを取り出した。

「…タ○ガーマスクですね」
「…タ○ガーマスクやな」
「ふみゅう、タ○ガーマスクよね?」
「………タ○ガーマスクです…」

そう、大志が取り出したものは虎を象ったマスク、誰がどう見てもタ○ガーマスクのソレだった。
大志はおもむろにそのマスクを被ると、高らかにこう叫んだ。

「タ○ガーマスクではない!! タイガージョーと呼べ!!!」

いつの間にやら黒い松本○士調のコートを身にまとい、背中に雷光まで背負っていた。

「たっ、大志…ソレ何の冗談だ? 俺は今どうやって編集長に謝ろうか考えるのにいそが…」
「この…大馬鹿ものがぁ〜〜〜!!!」

バキィ!
大志の…いやタイガージョーの拳が和樹の頬に突き刺さる、

「ぶべらっ!」

その勢いのまま、和樹の身体は紅い虹を描きながら宙を舞い、教卓に激突して止まった。

「言い訳とは見損なったぞ千堂和樹、貴様の漫画にかける情熱とはその程度のものだったのか!
あの日、春コミが終了したとき、この世界で天下を取ると誓ったあの言葉は偽りか!
「二時間しかない」のではなく「後二時間ある」となぜ考えん! 
やる前から諦める様なその程度の覚悟でよくもプロを語れたものだ、片腹痛いわ!」


「かっ、和樹大丈夫!? ちょっと大志! いくらなんでもやりすぎよ!! 
みんなも見てないで何とか…」

「…まぁ、タイガージョーさんのやることですしねぇ」
「せやな…タイガージョーのやることならしゃーないなぁ」
「……和樹さんうらやましいです」

「あの? もしも〜し、みんな〜?」

目の前のやり取りを当然のように受け入れる家族にちょっと引き気味の瑞希。

「どうした千堂和樹、此処まで言われて貴様はまだ這いつくばったままか?
今一度立ち上がる気概さえ失ったか! 貴様はそこまでの男か!」

「……ああそうだ、あんたのいう通りだ、おれはなっちゃいなかった!
大志! いやさタイガージョー!! あんたの言葉で目が覚めたぜ!
そうさ、この原稿が喪われたのは、これ以上の作品を書けという天の意思!
千紗ちゃん、礼を言わせてくれ、おかげで俺は大切なものを取り戻すことが出来た!」
「えっ、千紗、お兄さんのお役に立ったですか?」
「ああ、もちろんさ、見ていてくれ千紗ちゃん、俺はこの喪われた原稿を二時間以内にもとの通りに…
いや、もとの物以上の出来にしてみせる!」
「良くぞ言った和樹、ならば私も見せてもらおう、お前の魂をかけた闘いを!」
「ああ、そこで見ていてくれタイガージョー、
由宇、詠美、彩ちゃん、俺に…力を貸してくれ!」
「よぉゆーた和樹、ソレでこそウチが惚れた男や、よっしゃウチに任せとき、アンタの背中はウチが守ったる(?)」
「ふみゅう、この借りは高くつくんだからね!」
「……がんばります」
「いくぞぉ!」
「「「おおー!」」」

「あらあら、みなさんがんばってくださいねー」
「うんうん、いいなー男と男の友情、やがてそれは愛へと変わり……キャ〜」

「…………差し入れでも作ってくるね…」
「あっ、瑞希さん私、手伝います」
「千紗も手伝うです♪」

そして一時間半が過ぎた。

カリカリカリカリ……カリ…カリ…

「終わった…」
「終わったんやな…」
「ふみゅう、つかれた〜 ポチ、マッサージ〜」
「……お疲れ様です、和樹さん」

「終わったのか…見たかタイガージョー! 俺は…俺はやったぞ、これほどの充実感は初めての…ってタイガージョー?」

先ほどまでタイガージョーが立っていたその場所には、一本の栄養剤とメモが、

『同士和樹、お前の熱い戦い、しかと見届けたぞ、戦士にも休息は必要、ソレを飲んですっきりして疲れを癒すが良い』

「タイガージョー…大志…」

万感の思いを込め友の名をつぶやく和樹、しかし…

「(カチャカチャ)あら、うまくはずれませんねぇ」
「って南さん、人が感動に浸ってるときに、なにズボン脱がそうとしてるんですか?」
「まぁ、和樹さんったらエッチ、女にそんなこと言わせようなんて…(ぽっ)」
「いや、ぽっ、じゃなくて」
「大志さんのメモにも書いてるじゃないですか、ソレ飲んですっきりしてくださいって」
「へっ?」

栄養剤に見えたソレは良く見るとラベルに
『芹香印の精力剤』
と書かれていた。

「それに…疲れてる時って凄いって言うじゃないですか、和樹さんのソコももうそんなに…」
「あ、いや、コレはその…」
「ほら、みんな和樹さんを待ってますよ」

いつの間にやら教室の隅にキングサイズと呼ぶのもばかばかしいほど巨大なベッドが、
そしてそのベッドの上には…

「珍しくまともに終わるかと思ったのに…」
「まぁ、お約束というやつですね♪」
「ああ、もう自棄だ、みんなまとめてめんどうみたらぁ〜!!」

結局、編集長が来るまでの残り30分間、和樹に休息の時間はこなかったのであった。

おわり


タイガージョー変身セット:
虎の覆面の男が五月雨堂に置いていった謎のアイテム、使用することにより、
1、漢度が最大値まで上がる
2、拳と拳で語り合えるようになる
3、台詞回しが大げさになる
4、無駄に高いところに登りたくなる
等の効果がある。

詳しいお問い合わせは五月雨堂まで。



あとがき
…タイガージョーと大志ってノリ似てません?(笑)
いやそんだけ(^^;

とりあえず、
「タイガージョー変身セット」はいいんちょや由宇のハリセンや、誠のマシンガン同様
ツッコミアイテムです、
バトル物での戦闘アイテムとしての使用は、勝手ながら禁止とさせていただきますのでご了承ください<(_ _)>



 ☆ コメント ☆ 綾香 :「熱い。熱いわねぇ」(^^) セリオ:「いや、まったく」(;^_^A 綾香 :「ジョー様、素敵だわ」(^0^) セリオ:「へ? じょーおーさま?」(・・? 綾香 :「ちゃうわい」(−−; セリオ:「鞭と蝋燭を持って、ホーッホッホッホッなんて高笑いを……」(^^) 綾香 :「違うっつーの!」凸(ーーメ セリオ:「お、怒らないで下さいよ。ほんの冗談なんですから」(;^_^A 綾香 :「あなたが言うと本気か冗談か判別出来ないのよ。      いっつもボケた事ばっかり言ってるから」(−−; セリオ:「……失礼ですねぇ」(−−) 綾香 :「ホントの事でしょうが」(−−) セリオ:「むー」(−o−) 綾香 :「ま、んなことより……。      いいなぁ、ジョー変身セット。あたしも欲しいなぁ。      五月雨堂で買ってこようかなぁ」(^^) セリオ:「買ってどうするんです?」(;^_^A 綾香 :「身に着けるに決まってるじゃない」(^0^) セリオ:「それは……やめた方がいいですよ」(;^_^A 綾香 :「え? なんで?」 セリオ:「あれは『漢』のアイテムですから。女性が着てはいけないんですよ」(^^) 綾香 :「そっか。それもそうね。ちぇ、残念」(−o−) セリオ:「まったくですねぇ。残念ですよねぇ。      …………『拳と拳で語り合えるようになる』なんていう物騒なアイテムを       綾香さんに渡したまるもんですか。ただでさえ凶暴なのに(ぼそっ)」(−o−) 綾香 :「ん? なんか言ったかしら?」(^^メ セリオ:「いーえー。なーんにも」(−o−) 綾香 :「……………………」(^^メ



戻る