「あ、長瀬さ〜ん!こちらです〜〜!」

空港のエントランスロビーに降りてきた私にそう声をかけてくださったのは、背の高い、気さく
な雰囲気の方でした。

「どうもお疲れ様でした。車、こっちです。」

「あ、はい・・・・・すみません、お忙しいのにわざわざ空港まで・・・」

「いえいえ、こちらの都合でわざわざお呼びだてしたのですから、当然ですよ。」

ニコニコと感じのいい笑みを絶やさずに会釈してから、その方は少し照れた表情になって言葉を
続けられます。


「あ、自己紹介が遅れました。私は了承学園で、生物を担当しているものです。気軽に、
ガチャピンと御呼び下さい。」


第一印象に違わず、なかなかユニークな先生のようです。私は苦笑を堪えながら、その方のしな
やかな握手に応えました。

「初めまして、長瀬でございます。いつも祐介がお世話になっております・・・あの、でもさすが
に教職員の方を愛称で御呼びするというのは・・・」

「いえいえお気になさらずに。職員も学生もみんなそう呼んでくれてますから。それに、本名も
もちろんほかにちゃんとあるんですけど、難しくてとても発音できないと思いますよ。」

「ああ、なるほど・・・」

言われてみれば肌の色も瞳の色も私たちとは異なり、かなり遠方のご出身であることがうかがえ
ます。


「では早速、学園のほうに行きましょうか。と言っても、今日の授業は付属病院の方で行われる
予定なのですけど。」

「え・・・そうなのですか?私てっきり・・・」

「実はちょっと志向を凝らしてありましてね。おそらく、気にいって頂けると思いますよ。」


ガチャピン先生はそう言って笑うと、私の先に立ってふわふわと歩きはじめます。

「そうそう。今日は柏木家の皆さんもご一緒してくださる事になっているんですよ。耕一君達の
事はもうご存知ですよね?」

「ええ、以前はじめて学園にお邪魔させていただいたとき、とてもお世話になりまして・・・
そうですか・・・耕一さんたちも・・・・」

「楽しみですねぇ。」

「・・・・・・・・・・はい・・・・・」

祐介にとっても私にとっても、始めての授業参観。昨日の夜からずっと感じつづけていた緊張が
少しだけほぐれるのを感じながら、私もガチャピン先生の後について歩き始めました。





私立了承学園
a parents’ visiting open day:授業参観



「課題内容の変更?

総退校時刻を過ぎ、職員室の教職員もひとり、またひとりと退出して行く頃。

ノートパソコンでなにやら書類を作成していた九品仏大志は、復唱しつつ、顔だけ秋子に向き
直った。たしっとキーをたたいてデータ保存を行ってから、全身を彼女に向けて姿勢をただす。

「理由をお伺いしてよろしいですかな?

「ええ。先日お話した祐介さんのお母様の授業参観なのですけれど、来週の月曜日になりそう
なんです。それで・・・・」

「なるほど。」

そこまで聞いただけですべてを理解したようにうなずくと、大志はくい、と中指で眼鏡を
ずりあげる。

「いや、確かに。我輩が今回予定している課題内容では推測するに・・・まず、授業開始10分で
同志祐介の心拍、血圧は上限値まで上昇し、フィジカルポイント、メンタルポイントは共に学習
行動目標値の下限限界に達しましょう。そしてさらに授業を継続した場合、
15分後にはフィジカ
ルポイントが危険域
Dレベルに達し、活動停止にいたるのが明白。母君に無用なご心痛を与えぬ
ためにも、ここはより穏便な、できれば同志祐介の得意分野に授業内容を変更するのが得策であ
りましょうなぁ・・・くくくくく。」

大げさな言い回しをしているが、要約すると授業の過激さのあまり祐介が鼻血噴いて卒倒する、
と、そういう意味である。

「あの・・・そういう推測があらかじめ立っているのなら、授業参観に関わらず課題は変更すべき
だと思うんですけど・・・・」

大志の最後の含み笑いに若干の寒気を覚えつつ、横で聞いていたエリアがおずおずと意見を
述べる。

「ふっ。エリア先生の御優しい授業方針は我輩としても高く評価いたしている所でありますが
だがしかし
!我輩がこのようにあえて同志祐介に試練の壁を用意するのも、彼奴が20年に一人の
逸材であればこそ
!艱難辛苦に打ち勝ってこそ、男は真の漢となるのです。」

「いや、艱難辛苦って・・・。そもそも、なにがどーなってこんな課題が、職員会議で通っちゃ
ったの?私記憶にないんだけど。」

脇から秋子の手元にある授業要綱を覗き込んだティリアが、ぼるりぼるりと頭を掻きながら問う。


「ふっ。ティリア先生。物事の大勢というものは、往々にして闇にて決される場合が多いもの
なのですよ。」

「・・・・・・・・」

「しかし、それもこれも、全ては同志祐介の成長を願ってこそ・・・ふむ。」

返答に窮した・・・というより返答を諦めたティリアをよそに、大志はあごに手を当ててしばし
考え込んでいたが、やがてすっと顔を上げると、極めて真面目な表情で秋子に向き直った。

「理事長。様々な懸念もあろうかと思いますが、ここは孟母断機の教えに従い、あえて現課題を
強行するのも一興かと。古来、獅子は我が子を千尋の谷に突き落とすとも申しますし。」

「もーぼだんきってなんだっけ?」

「・・・・引用が間違っている気がするんですけど・・・えっと確かですね・・・」

全然関係ないところに話題がそれてしまったティリアとエリアは気にせずに、秋子はどこまでも
真面目に大志に返答する。

「いえ、九品仏先生が祐介さんを高く評価してくださっているのは解るのですが、今回はやはり
皆さんが安心してこなせる課題にして頂かないと・・・なにぶん、長瀬家の皆さんは繊細な方が
多いですし。」

「これは異な事を。あくまで日常的な授業風景をご覧頂き、学園における我が子の現状を母君に
把握していただくというのが、今回の趣旨であったはず。ならば殊更に課題内容を変更せずとも、
それなりの成果が望めると思いませんか
?

「しかし・・・基礎からゆっくりと地道な方法で、というのは、祐介さんのお母様からの要望で
もあったわけですし・・・そのほうが最終的には効率的な学習につながると、この間九品仏先生
も賛同してくださったじゃないですか。」

「仰るとおりです。無論、今回の課題で同志祐介が急激な躍進を遂げるとは、我輩も考えては
おりませんよ。」

理事長・ティリア・エリアの順で、それぞれの表情を確かめてから、大志はすっと人差し指を
立てて不敵に言い放った。

「しかし我輩の推測どおりこの課題で長瀬家に一騒動起これば、面白いではないですか。」

「・・・・・・・・本気で仰っているのですか?

「戯言に決まっております。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・では、新しい課題の検討をお願いいたしますね。」

「うむ、その件に関しましてはこちらのプリントをごらん頂きたく。」

思いっっっきり脱力しているティリアとエリアを置いてきぼりにしたまま、秋子と大志は何事も
なかったように会話を続行する。この辺が二人とも只者ではない。

「これは?」

「ごらんのとおり、代替課題の概要です。長瀬御夫人には空港から直接、学園付属病院の眼科
病棟へと移動して頂き、そこで長瀬家と柏木家合同による奉仕活動に立ち会って頂きます。担当
の片倉医師には、昨日我輩が話をつけておきました。」

「・・・・九品仏先生。じゃあ、授業参観のことも課題変更のことも既に全てご存知の上で、
先刻まで話していらっしゃったのですね?」

「常なる遊び心の追求も、我輩の教育指針のひとつなのですよミセス・ジャム。」

ぜんぜん答えになっていないことをいいながら、にやりと人の悪い笑みを秋子に向けた大志
だったが・・・秋子の表情を見たとたん、得意の不敵さ加減は不発に終ってしまい、らしくも
なく視線だけを横にそらした。それは秋子にしかわからないほどの、ごく微妙な動作だったが。




非常に不可解な事に・・・このとき水瀬理事長は、笑みを浮かべていたのである。

「・・・・ところで理事長。理事長には、空港まで長瀬夫人をお迎えに行っていただきたいの
ですが・・・・。」

一瞬の間を空けてから、大志はいつもの表情に戻ってそう秋子に進言した。秋子は頬に手を沿え
ながら、ちょっと残念そうに考え込む。

「確かに長瀬さんも病院の所在地はご存知ないと思いますし、誰か迎えの方が必要ですが・・・
でも困りましたね。わたしはその日の授業前は別の用件が入ってしまっているものですから。」

「ではだれか、代理の者が必要ですな。」

「そうですね、ここはやはり・・・・あら?」

頭に思い浮かんだ人物が席にいない事に気付いて、秋子は横にいたエリアに問いかけた。

「長瀬先生はもう帰られました?つい先ほどまでいらっしゃったと思ったのですけれど。」

「あ、その・・・さっき理事長が義姉さんの話題を出したとたんに、「あ、やばい」とか呟いて
帰っちゃいました。」

「・・・・・困りましたね。」

ひとつため息をついて、秋子がその日の予定を変更しようかと考えたとき。大志の向かい側の
机でテストの採点をしていたガチャピンが、不意に触手を掲げて立候補した。

「それなら私が行きましょうか?私ならその時間ちょうど空いていますし、病院に届けるものも
ありますから。」

「そうですか?じゃあお言葉に甘えて、お願いしようかしら。」

「うむ、ガチャピン先生なら第一印象も申し分ないでしょうからな。」

「いや、その、まあ確かにガチャピン先生は気さくで感じはいいけど・・・・」

「えーと、えーと、あの、その・・・・」

すんなり同調する秋子と大志の横で「空港ロビーで宇宙人がお出迎え」の図を思い浮かべ、もの
すんごい不安を胸に抱きつつ、でもそれを口に出すのはひょっとして非常に偏見に満ちた失礼な
事なのではないかとか、頭を悩ませるティリアとエリアであった。







☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

祐介たちがいつも訪れている、眼科病棟。

目の見えない子供達に囲まれ、長瀬夫人は今、絵本の朗読をしていた。

最初は部屋の隅に立って、沙織や初音達が披露する紙芝居や絵本の朗読に耳を傾け、またそれを
丁寧に電波で子供達に伝えている祐介の姿をまぶしそうに見つめているだけだったのだが、
「よろしければお母様も、ご一緒に子供達と遊んであげてください〜」との片倉医師の声を
きっかけに、たちまち輪に中に取り込まれてしまった。最初は夫人も子供達も、互いに照れて
ぎこちなかったが、そういう雰囲気を緩和させるのは沙織と片倉医師の得意とする所である。
ほどなく、こどもたちもすっかり長瀬夫人になついていた。

1冊絵本を読み終えたとき・・・からり、と入り口が開いて、一人の女の子が看護婦さんに手を
引かれて病室に入ってきた。どうやら検査かなにかの都合で、遅れてきた子供らしい。

部屋に入って数歩進んでから、女の子はぴたりと足を止めると、さっと看護婦さんの後ろに隠れ
てしまった。知らない人が病室にいることに気が付いた様である。

「あ、亜紀ちゃん。あのね、今日はね・・・・」

沙織がそこまで言いかけたが、女の子はすすっと手すりをつたって部屋の隅に行き、カーテンの
陰に隠れてしまった。その様子にくすくすと周りから笑いがこぼれると、余計恥ずかしくなった
のか、ぷいっと壁の方を向いて座り込んでしまう。

瑠璃子がすっと立ち上がって、静かに女の子の方に向かった。それを見届けると祐介たちも、
むやみにその女の子に注目せず、何事もなかったかのように絵本の朗読などを再開する。
その娘の緊張を解くための配慮だ。

「慣れたものですね・・・・」

「ええ。みなさん、本当に子供好きですからね。」

長瀬夫人の独白に、千鶴がゆったりとした笑みで答えた。






しばらくして。

ほんの少しはなれた位置で千鶴の静かな朗読に耳を傾けていた長瀬夫人は、不意にくいっと
スカートの裾を引かれて視線を落とした。見れば先ほどの女の子が瑠璃子と耕一に連れられて、
恥ずかしそうに自分を見つめている。

「・・・・・おねえちゃん・・・・これ、あげる・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

一瞬自分以外の人に話しているのかと、きょろきょろあたりを見回す長瀬夫人。
そんな彼女に向かって、女の子は手に持っている画用紙を恥ずかしそうに差し出した。

「・・・・・・・・・あ、ど、どうもありがとう・・・・」

まだひどく戸惑いながら、それでも長瀬夫人はおずおずとその絵を受け取った。その画用紙には
色鉛筆を使って、窓辺に座って外を眺めている少女の絵が描かれている。

「この絵、この娘が書いたんですよ。すごく上手でしょう?」

後ろについていた耕一が、やさしく女の子の頭をなでながら言った。

「ええ、とても上手・・・・ええっ!!」

一瞬普通に受け答えてから、長瀬夫人は驚愕した。当然だ。何しろここにいる子供達はみんな、
目が見えないのだから。

「以前、祐介にずっと付き添ってもらって、描いたんだそうです。なんていうか・・・すごい
ですよね、あいつ。」

「あ・・・・・・・・・」

あらためて、自分の息子の不思議な能力を実感して、長瀬夫人は部屋の向こう側で子供達に
囲まれている祐介を見やった。

我が子があんなにたくさん、楽しそうに話をするのも、我が子があんなふうに笑うのも・・・
長瀬夫人は、始めて見る気がした。

「そう・・・・そうなの・・・・。そうね、とても上手だわ。月島さんそっくり・・・・」

「瑠璃子。」

それまで静かにたたずんでいた瑠璃子が、急にそういった。長瀬夫人と耕一が注目すると、彼女
はもう一度同じ言葉を繰り返す。

「瑠璃子。」

「?」

「瑠璃子、だよ。おかあさん。」

どうやら、「姓でなく、ファーストネームで呼んで欲しい」ということらしい。戸惑い気味の
長瀬夫人にかまわずに、瑠璃子はくすくすと笑うと女の子のそばにしゃがんで、そっとその
頭を撫でた。

「・・・・・おかあさん?」

ちょっと小首をかしげながら、女の子は瑠璃子と長瀬夫人を見比べる。

「うん、おかあさん、だよ。長瀬ちゃんのおかあさん。だから、私のおかあさん。」

「ふうん・・・・」

なんとなくまだ不思議そうな顔をして、女の子は長瀬夫人を見つめている。その目に長瀬夫人の
姿は映っていないが、確かに女の子は今、長瀬夫人を見つめていた。

「ふふっ。そうなの。だから私の事はおねえちゃんじゃなくて、おばちゃんとかおばさんって
呼んでくださいね。」

ちょっと照れながら、長瀬夫人はそう女の子に語りかけたが、女の子はそのまま無言でじっと
長瀬夫人を見つめたまま、小さな声で呟いた。

「・・・・・・・・・・・おかあさん」

「・・・・・・・え?」

「おかあさん。」

「・・・・・・・・・」

長瀬夫人は呆然として、女の子を見つめた。そんな長瀬夫人の様子を眺めながら、瑠璃子は
ひどくおかしそうにくすくすと笑うと、すっ、と女の子の肩に両手を置いて言った。

「そう。おかあさん、だよ。亜紀ちゃん。」

「・・・・・・・・・・・・」

初対面の女の子に「おかあさん」、と呼ばれた事が、長瀬夫人にはひどく意外で、衝撃的な事
だった。自らを母親だと自覚する瞬間すら乏しかった自分が、今日あったばかりの女の子に、
「おかあさん」と呼ばれたのだ。


「亜紀ちゃんはね、絵が好きなの。」

長瀬夫人の様子にかまわずに、瑠璃子はマイペースで話を続ける。まだ呆然としていた長瀬夫人
は、慌てて我に帰って亜紀ちゃんと視線が同じになるようにかがみこんだ。

「・・・・そうなんですか。よろしくお願いしますね、亜紀ちゃん。」

「敬語は無し、だよ。おかあさん。」

「あ、あら、ごめんなさい。」

また、くすくすと独特の笑いをみせてから、瑠璃子はひょい、と亜紀ちゃんに新しい真っ白な
画用紙と色鉛筆をわたし、さらに話を続ける。

「木とか、森とか、花とか。そういう絵が好きなの。」

「・・・・そうなの。」

「それから、長瀬ちゃん。」

「?」

「長瀬ちゃんも、好きなんだって。絵も、本物も。ライバルだね。」

「・・・・・ふふっ。」


亜紀ちゃんが顔を赤らめるのを見て、自然に長瀬夫人にも笑みがこぼれる。ますます赤くなり
ながら、亜紀ちゃんは長瀬夫人に持っていた画用紙と色鉛筆を差し出した。

「?」

「私、へたくそだから。だからおかあさん、描いてあげてくれる?」

「え・・・・え!わ、私が?」

一瞬手を振って辞退しようかと思ったが、亜紀ちゃんの表情を見るとそれもできず、彼女は
画用紙を受け取って、何を描こうか思案する事となった。


実は長瀬夫人の趣味は、散歩と水彩画だったりする。絵は人に見せた事などほとんどないのだが、
瑠璃子は祐介から、彼女が絵を書くことを聞いていたのだろう。亜紀ちゃんと瑠璃子の期待に満
ちた表情を照れくさそうに盗み見ながら、彼女ははさらさらと画用紙に緑の色鉛筆を走らせていった。

しゃっ、しゃっ、しゃっ、・・・

「わあ・・・・」

もちろん子供達の目は、彼女が描いている絵を映す事はできない。しかし、瑠璃子が電波を送って
くれているのだろう。いつのまにか彼女の周りには、ちょっとしたひとだかりができていた。

「へえ・・・うまいもんですねぇ。」

「はい〜。すばらしいです〜」

「え?あ、ど、どうも・・・・」

耕一や片倉医師の賞賛に戸惑った様子で顔を赤らめながら、長瀬夫人は手早く色鉛筆を動かした。
徐々に、緑を主体とした風景が画用紙に浮かび上がっていく。




少し小高くなった丘。

斜面を覆っている雑木林と、少し開けた原っぱ。

そして・・・遠くのほうを見つめている、小さな男の子の後ろ姿。

幾分地味に感じられる風景だが、寂しさはなく、暖かい雰囲気が伝わってくる。
男の子の手には、木の枝が握られていた。

「・・・・おにいちゃんだ。」

「え?」

亜紀ちゃんのつぶやきで、長瀬夫人は色鉛筆を走らせる手を止めた。亜紀ちゃんは絵のほうを
見てはいない。少し顔を上げて、宙を見つめている。だが彼女の心にはしっかりと、長瀬夫人が
描いている絵が映し出されているはずである。

「・・・・・うん、そうだね。長瀬ちゃんだね。」

瑠璃子もうなずいて、にっこりと長瀬夫人に微笑みかける。彼女は戸惑ったようにその顔を見つ
めてから、自分の描いている絵の中の少年を改めて見直してみた。

「あ・・・ほんと・・・・」

おかしな話・・・なのだろうか?彼女はそう言われてみて始めて、知らず知らずのうちに風景画
に自分の息子の姿を書き入れていたことに気づいた。

「へえ・・・・じゃあこれはどこか、昔の思い出の風景なんですか?

興味をもったらしく、耕一が尋ねる。

「あ、その・・・そういえば、祐介が小さい頃に・・・・」

ちょっと記憶を辿ってみて、長瀬夫人はその風景が、確かに昔見たものだと思い出し始めていた。

「たぶん・・・・前住んでいた家の近くの雑木林ですわ。そこは静かで見晴らしもよくて・・・
何度か祐介を連れて、散歩に訪れた場所です。」

「そうなんですか〜。とっても、すてきですね〜」

にこにこと微笑みながら、片倉医師が感想を述べる。とたんに長瀬夫人はなんだかたまらなく
恥ずかしくなってきて、さっと、画用紙を背中に隠してしまった。

「え、ええと・・・じゃ、じゃあ次は何を描きましょうか?なにか・・・に、似顔絵とかも
ある程度書けますけど・・・」

「・・・・・」

「・・・・?」

「・・・・?」

「・・・・?」

瑠璃子も耕一も片倉医師も、未完成の絵を急に隠してしまった長瀬夫人の様子を不思議そうに
見ていたが、亜紀ちゃんはすっと手を上げて、長瀬夫人にリクエストを告げた。


「おにいちゃん。」

「え?」

「ゆうすけおにいちゃんがいい。」

「祐介の・・・絵?」

「うん。」

動揺している長瀬夫人に対し、亜紀ちゃんはさらに言葉を続ける。

「だって、さっきのおにいちゃん、かおがみえないもの。ちゃんと、まえむいたおにいちゃんが
いい。」

「・・・・・・・・・ええ、わかりました。祐介の絵ね。」

ほんの少し、呆然とした表情を見せていた長瀬夫人だったが・・・亜紀ちゃんに向かって
穏やかに微笑むと、今度は普通の鉛筆を手にとって、祐介の似顔絵を描き始めた。

しゃっ、しゃっ、しゃっ、・・・すっ、すっ、すっ・・・


再び絵を書き始めた長瀬夫人の横顔を、耕一はじっと見つめた。見覚えがある表情だった。



(・・・・やっぱり、親子だよな。)

限りなく優しそうで、暖かくて・・・それでいて、かすかに陰のある、どことなく寂しそうな
微笑み。以前あったときから、耕一には長瀬夫人のその微笑みが、強く印象に残っていた。
息子の祐介と、一番よく似ているところだったからだ。


長瀬夫人が描いた祐介の似顔絵も・・・そんな風に微笑んでいる、高校生の祐介だった。





☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 



「あ、長瀬さん。どうでした、今日の感想は?」

お昼寝の時間に入り、子供達が寝静まった後。

病室を出てロビーで一息ついていた長瀬夫人に気付き、耕一はそう声をかけた。

「あ、耕一さん・・・。ええ、大変でしたけど、でも、とても、とても楽しかったです。
祐介たちがいつもここに来るのも、よく解る気がします・・・・。」

「それはよかった。子供達も新しい『おねえちゃん』が来て、みんな喜んでいましたよ。」

「もう・・・・やめてくださいよ耕一さん。亜紀ちゃんは目が不自由だから、ちょっと勘違い
しただけですよ?」

苦笑しつつ、ちょっと拗ねたような視線で耕一を見る。そういう仕草が余計に若く見られてしま
う原因なのであるが、本人にはもちろん自覚はない。

「あはは、どうもすみません。でも、祐介や瑠璃子ちゃんがいてもそう呼ばれたって事は、
やっぱりそれだけ長瀬さんが若々しいって事じゃないですか?」

「それは嬉しいですけど・・・いくらなんでも43にもなって『おねえちゃん』は困りますよ。」

「そうですか?俺も、それほど違和感はないと思いますけど。」

「もう・・・・・・・・・」

「はははは・・・・」

いたずらっぽく笑う耕一に、長瀬夫人も赤くなりながら苦笑をこぼす。実際彼女は若々しく、
10歳近く若く見られる事もしばしばだ。だが彼女の性格上、『おねえちゃん』というのは
さすがに嬉しさよりも恥ずかしさが勝るらしい。

「じゃあ、『おかあさん』っていうのはどうでした?」

「え・・・・?」

耕一にそう聞かれて、何故か長瀬夫人はびくっとしてしまった。耕一の顔を見返すと、彼は
さっきまでとはまた違った、静かな笑みで長瀬夫人を見つめていた。

「『おかあさん』も・・・正直、ちょっと戸惑いますね。」

「・・・・そうですか・・・・」

「・・・・・・・・・・私、ちゃんと母親をしてきた事、ありませんでしたから・・・・」

「・・・・・・・・・・そんな事、言うもんじゃないです。」

ちょっとため息をついてから、耕一はロビーの向こうに目をやった。廊下を挟んで見える
ナースステーションの前で、祐介と片倉医師がなにか真剣に話をしているのが見える。
それを何気なく見つめながら、耕一は淡々と、独り言のような口調で呟いた。

「それならまた一緒に息子と暮らして、思う存分母親をしたいとか、思わないんですかねぇ・・・」

「でも・・・・。今、祐介達はそれぞれがんばっているところですし・・・それなのに私の方が
甘えるわけにはいきませんわ。」

「はあ〜〜〜〜。」

深々とため息をついて、耕一はがしょがしょと後頭部のあたりをかきむしる。

「・・・・・・・・・いや、こういう事は言うなって、秋子さんにも千鶴さんにも釘刺されてる
んですけどね・・・でも正直言って俺、祐介がちょっと心配でしてね。」

「・・・・・・・・・・・・」

「ほらあいつ、ちょっといろいろ背負い込み過ぎる所があるから・・・・」

「優しいから」とは、敢えて耕一は言わなかった。





祐介たちがかつてどんな経験をしたのか。

耕一は詳しく聞いたわけではないし、聞くべきではないとも思っている。

だがこれまでの付き合いだけでも、耕一は祐介の優しさはよく理解しているつもりだったし、
その懐の深さも高く評価していた。

しかしその一方で、なにかとても危うい・・・かつて、全てを背負い込もうとしていた頃の千鶴に
似た面影を、時折祐介に感じてしまうのもまた事実だった。何故かはうまく言い表せないが、耕一
には時々祐介が、まるでだれかの贖罪を代わりに務めようとしているかの様に見える事があるのだ。

「あいつは・・・もっと素直に、わがままになってもいいと思うんですよ。」

本人は全然そんなつもりはないとしても、どうも耕一には祐介が、無意識になにかに遠慮したり、
我慢したりしているように見える。せっかく親がいるんだから今のうちに甘えとけ、そんなに
可愛い娘がそばにいるんだからもっと積極的にならんでどーする、と、口に出すのをいつも我慢
していたりするのだ。

「俺はあんまり言えた義理じゃないし、俺が言ってもあいつは聞かないでしょうから・・・
お袋さんならどうかな、と思うんですけどね。」

そう言って、長瀬夫人の方に視線を戻した耕一は、一瞬はっと息を呑んだ。彼女の表情が
今さっき眺めていた祐介とぴったり重なるぐらい、そっくりだったからだ。

「あの子は・・・・大丈夫ですわ。祐介は、私よりずっとずっと大人です。それに・・・
祐介のそんなところを補うのは、それこそきっとつきし・・・・瑠璃子さんや、沙織さんや、
瑞穂さんや、香奈子さんの役目なのだと思います。私の役目は・・・なにかまた、別にある
のだと思いますわ。」

「・・・・・・・・・・・・・・」

はあ、とまたため息をついて、耕一は降参のジェスチャーのつもりで両手をあげて見せた。

「この手もダメですか。まあ、そう言うんじゃないかなーとは思いましたけどね。」

「ふふっ・・・・・ありがとうございます、耕一さん。でも私、大丈夫ですから。それに祐介も、
きっと今の状況を望んでいると思うんです。いまは、自分を試してみたいって。」

また眩しそうに目を細めて、長瀬夫人は静かに祐介のほうに視線を向けた。
その横顔は非常に優しげで・・・母親らしい表情だと、耕一は思った。

だが・・・やっぱりどうしても耕一には、ちょっと寂しそうにも見えてしまうのであったが。

「・・・・・帰る前にちょっともう一度、子供達の寝顔、見てきますね。」

長瀬夫人はふいにそう言って立ち上がると、すっと耕一に会釈をした。そのままの、透明な笑み
を浮かべて。

「ええ。じゃあまた後で。」

「はい・・・・」

そういって歩き出した長瀬夫人の後姿を、黙って見つめていた耕一だったが・・・














「おかあさん」






自分でも無意識に・・・耕一は彼女の後姿に、そう声をかけていた。








「・・・・・・・・・・・・はい?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・あの。今度はぜひ、家にも遊びに来て下さいね。」

「・・・・・・・・・・・・・ええ、ぜひ。」

にっこりと微笑む長瀬夫人の顔にほっとしてから、耕一はひらひらと手を振って、長瀬夫人を
見送った。











(結局、一番寂しがってんのは俺か。)



明日の放課後は、墓参りに行こう。そんな事を考えながら、耕一もロビーを後にした。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 



「・・・あら〜?お母様?」

「あ、片倉先生・・・・」

祐介たちが退出した後も、ひとり病室に座っている長瀬夫人に気付き、片倉医師はそっと声を
かけた。長瀬夫人は静かに寝息を立てている亜紀ちゃんの寝顔に、じっと視線を落としている。
枕元には、先ほど彼女が描いた絵が飾られていた。

「・・・・・・・」

「・・・・不思議ですよね〜。」

しばらく亜紀ちゃんの寝顔を見つめていた二人だったが、不意に、片倉医師が口を開いた。

「この子達〜、私よりずっと、いろんなものを見ているような気がします〜。」

「・・・・・・」

亜紀ちゃんを起こさないようにごく静かな声で・・・独り言のように、片倉医師は続けた。

「わたしには〜、家族や友達がいなかったものですから〜。ここに来て、子供達と過ごして始め
て〜、いろんなものを子供達に見せてもらいました〜。」

「・・・・・そう・・・だったのですか?」

「はい〜。父も母も私が幼い頃に他界いたしまして〜。それに、私が祐介さんぐらいの頃は〜、
受験勉強しかしていませんでしたから〜、全然友達も、できませんで〜。」

そう言って、照れくさそうに目を細めて笑う。確かに女性である片倉医師が、若くしてこんな
大勢の子供達がいる病棟を担当するまでになっているのだから、これまで相当な努力があった
ことだろう。お嬢様風のぽや〜っとした雰囲気の人なので想像し難いが、実はなかなかの苦労
人らしい。

「お母様は〜、今日、ここに来てみて〜、どうでしたか〜?」

「私は・・・・・」

ふっと、苦笑に近い笑みを零してから、長瀬夫人もまた、亜紀ちゃんの寝顔を見つめたまま語り
だした。

「・・・・・そう、ですね・・・・。子供達に笑いかける、祐介のあんな笑顔は・・・始めて
見た気がします・・・」

「・・・・・・・」

「本当は昔、見た事があったのでしょうけど・・・もういつ見たのか、忘れちゃいました。」

「・・・・・・・」

亜紀ちゃんの枕元にある、長瀬夫人が描いた祐介の似顔絵を手にとって、片倉医師はそっと、
その似顔絵と長瀬夫人を見比べてみた。

そっくりな笑顔。

「・・・・ほんとは、今日の祐介の笑顔を書きたかったんです。」

長瀬夫人はあいかわらず亜紀ちゃんを見つめたまま・・・淡々と、まるで詠うように言葉を紡ぐ。

「でも・・・なにぶん、見慣れていなかったものですから。子供の頃、一緒に散歩に出かけた時
の祐介も、きっと今日のような笑顔だったのでしょうね・・・。でも私は、後ろ姿しか思い出せ
なかった・・・」

またふっと笑みを零して、長瀬夫人は初めて片倉医師に視線を向けた。

「ひどい母親ですよねえ?生きて目の前にいる子供の顔を忘れるなんて。」

「医師の評価は〜、患者さんがしてくださいます〜。母親の評価は〜、子供達がしてください
ます〜。」

「・・・・・・・・・・」

「子供達も〜、祐介さん達も〜、耕一さん達も〜。みんな、笑っていましたから〜。
だからお母様は〜、高い評価を得られていると、思いますよ〜。」

また照れくさくなった長瀬夫人は、亜紀ちゃんの寝顔に視線を戻し、そっとその髪をなでた。
やさしく・・・とてもやさしく。

「私は・・・祐介の本来の笑顔を、すっかり忘れていました・・・ずっと仕事ばかりして、祐介
を見てこなかったから・・・でも。」

再び顔を上げた長瀬夫人の笑顔は、やはり祐介に似ていた。ただ、この時の笑顔は細く透明な
微笑みではなく、祐介が今日子供達に向けていた、陽の光を思わせる笑顔だった。

「ちょっと遅れてしまいましたけど・・・自分なりに、また母親をやり直そうかな、と、
思いますよ。」

「それはいい考えですね〜。応援しております〜。」

若干、冗談めかした言い方で笑みを返してくれる片倉医師の表情が、今の長瀬夫人には
ありがたかった。





「・・・・・・・今日授業参観に来れて・・・・本当によかった・・・・。あの子の、あんな笑顔が見れて・・・」




「よかったです〜。またいつか、都合がつきましたら〜、ぜひ、お立ち寄りください〜。」

「ええ、ぜひ。その時にそなえてまた、絵の練習もしておきませんとね。」

くすっと、互いに何度目かの笑いを交わしたとき・・・そっと静かにドアが開いて、
沙織が顔を出した。

「あ、おかあさん。ついさっき秋子さんがいらっしゃいましたから、向こうでお茶に
しましょうって。」

「ええ、今行きます、沙織さん。」

互いの新しい呼び方も、今日1日ですっかり定着したようだ。

「あ、私は後から行きますから〜。どうぞ、お先に〜。」

「そうですか?じゃあちょっと、お先に失礼いたします。」








静かに退出する沙織と長瀬夫人を見送った後、片倉医師は手にしていた祐介の似顔絵をそっと
亜紀ちゃんの枕元に戻した。ちょっと頼りない、寂しげな微笑み。子供の前ではなく、瑠璃子や
香奈子を眺めるときに、祐介がよくする表情だった。

「私はぁ〜、これはこれでまた、素敵だと思うんですけどね〜。」

ほ〜っと頬に手を当ててため息を漏らしつつ、片倉医師はしみじみと呟いた。無論、それを耳に
したものは誰もいなかったが。









彼女が子供達に出会ってからも、変わる事がなかった部分といえば・・・・。

受験勉強に没頭し、交友関係が乏しかったせいで・・・理想とする男性像がいまだに、
「中学校の頃の初恋の彼」から、進歩していない事だった。






(あとがき)

まず、非常に長い文章を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。m(_ _)mペコリ

さて、読んで頂いてお解りになったかと思いますが、今回のSSは自分が以前書きました
第427話「母の息子」に登場した、祐介君のお母さんをメインに据えて描かれたものです。
本来、あとがきで自分の作品の内容や設定についてだらだら述べるのはルール違反であり、
そういうものは全て作品内で語り尽くすべきなのですが、「母親を描くにあたり、なぜ元々
母親キャラとしてその地位が確立している秋子さんやひかりさんを用いず、わざわざ他の
執筆者の方々が使いにくい、オリジナルの母親キャラクターを創ったのか?」という点に
関しましては、やはりきちんとした理由を述べるのが礼儀だと思いますので、この場を
借りて略儀ながら説明させて頂きます。

今回の作品や以前書いた「母の息子」において自分が書こうとした母親像というのは、
「母としての自分にあまり自信を持てない、家庭においてはまだ未熟な母親」という
ものでした。

了承学園での秋子さんとひかりさんは、ふたりとも家庭や我が子とのつながりが非常に強く、
我が子とのコミニュケーションも非常に上手で、母親としてのキャラクターは既に完成して
いると言っていいと思います。お二人は他のいろいろなSSでも理想の母親像として描かれて
いますし、おそらくほとんどの了承学園の執筆者、読者の方々も、「母親キャラといえば
秋子さんとひかりさん」と認識している事かと思われます。

それゆえに、息子とうまくコミニュケーションがとれなかったり、母親としての自分に
戸惑ったりという描写を描くためには、どうしても、このお二人を使う訳には行かなかった
のです。それは、いままで多くの執筆者の方々が創り上げてきた二人のキャラクターを、
壊してしまう事に他なりませんから。

そこで、「ちょっと不器用な、秋子さんたちとはまた違った母親像」を自分の中で
想像していった結果、祐介君のお母さん、という案に行き着いたわけです。

母親である事に自信を持てない、不完全な母親という設定ですから、彼女の祐介君への
愛情も大いなる母性愛という感じにはせず、ちょっと不器用な片思い的な愛情、と
いった感じで描く事を心がけたつもりです。せっかくの授業参観にもかかわらず、
祐介君との会話シーンを一切描かなかったのも、彼女が祐介君と一緒に暮らす事を
固辞し続けるという展開にしたのもそのためです。

了承学園のような形態の2次創作でこういった勝手なキャラを出すのはやはり反則という
気もしていまして、今回は話を創っている最中から、投稿すべきかどうか非常に迷いました。
本当はたとえ出すにしましても、他の設定に影響しないよう、せいぜい1エピソードに限った
使い捨てキャラ(やな言い方ですが)として出すぐらいが節度というものなのですが、
自分で一回書いたキャラクターに愛情が湧いてしまった、というのが正直なところです。
それでも了承学園における新しい設定として活かす事ができるよう、極力配慮したつもり
なのですけれど。



・・・・ううむ、やっぱり書けば書くほど、言い訳がましいなあ(-_-ゞ






 ☆ コメント ☆

源五郎:「ふむ、母親とは良いものだね」

セリオ:「まったくですね」(^^)

綾香 :「うんうん」(^^)

源五郎:「ところでセリオ。お前さんは母親が欲しいかい?」

セリオ:「はい? 母親ですか?
     わたしには既にひかりお義母さんがいますけど? 他にも……」

源五郎:「いや、みなまで言わなくていい。セリオの言いたいことは分かっているよ」

セリオ:「いえ……あ、あの……ですから、わたしには……」(−−;

源五郎:「愛する娘の願い、私が叶えてあげようじゃないか。
     ……てなわけで……源ちゃん、メークアーップ!」\(^0^)/

セリオ:「お願いですから話を聞いて下さいよぉ。
     ……って、げげっ!」(@@;

源五郎@化粧&カツラ:「ほーら、どうだいセリオ? なかなか似合うだろ?」(^^)

セリオ:「…………」(@@;

綾香 :「……うげ」(ーー;


源五郎@化粧&カツラ:「源子お母さんって呼んでおくれ」(^^)

セリオ:「……あう」(@@;

綾香 :「う、うぷ……吐き気が……」(ToT)

源子 :「さあ、母の胸に飛び込んでおいで」(^0^)

セリオ:「……あうあう」(@@;

綾香 :「き、きぼちわるい」(T△T)

源子 :「大いなる愛を捧げようじゃないか」(^0^)

セリオ:「あうあうあうあう(がっくし)」(×o×)

綾香 :「あ、あたしも、もうダメぇ。……きゅ〜」(×o×)

源子 :「おや? 二人とも意識を失ってしまった。
     私のあまりの美しさにショックを受けてしまったようだ。
     ふっ。私って罪な、は・は・お・や♪」(^0^)

セリオ:「…………(ピクピク)」(×o×)

綾香 :「…………(ピクピク)」(×o×)

源子 :「……うふっ」(^0^)



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