私立了承学園
after school:「高校生っぽい?会話」

「だから言ったろ、最近ペース上げすぎだって。トレーニング内容聞いて、
茂庭先生あきれてたぞ?」

「わかったってば、もー勘弁してよ。どうせ帰ったら、またせリオにも葵にも同じ事
説教されるんだから・・・。」



場所は、了承学園付属病院。
昼過ぎからぱらつき始めた小雨が、窓から見える中庭の木々を濡らしている。

外科病棟と総合待合所を繋ぐ廊下を、二人の男女が歩いていた。
言わずと知れた了承学園多妻部所属学生、藤田浩之と来栖川綾香である。



「そんなにハイペースでやってたつもりはなかったんだけどなあ・・・特に大きく
メニューを変えた訳でもなかったし・・・」

「メニューは変わってなくったって、トレーニング以外の時間でちゃんと休めて
なかったらおんなじことだろ。まあ休めばすぐ治るって程度の、軽い炎症だそう
だからよかったけどな。」



会話から察するに、ちょうど外科での診察を終えて、これから会計に向かうところのようだ。
診察を受けたのは綾香の方で、浩之は付き添いのようである。



「およ?ヒロ?」

混雑する待合所に足を踏み入れたところで、二人は意外な声に呼び止められた。

「志保?何してんだおまえ、こんなとこで。」

およそ病院にいる事は想像しがたい人物の登場に、浩之は訝しげな表情で志保の顔を
観察する。特に血色が悪いようには見えず、病気と言う事はなさそうだが・・・

「・・・どっか、悪いのか?」

「うーん、頭がちょっとね。」

「知ってる。でもそれ、医者じゃ治んねーぞ。」

「そーなのよねー・・・って、よけいなお世話よ!」


いまどき駆け出しの新人漫才師の掴みでも聞けなそうな、ベタな会話を交わす。
周りのご老人達の注目を集める前に、綾香はちょっと強引に二人の袖を掴んで、
手近な待合椅子に座らせた。


「別に病気とかじゃないわよ。ちょっと、ピアスあけてもらってきただけ。どう?」

そういって、ひょい、とちょっと誇らしげに耳をかざして見せる。そこには確かに、
金色のファーストピアスが光っていた。

「へえ、思い切ったな。おまえ前に確か、ピアスはなんかやだ、とか言ってなかったっけ?」

「心境の変化よ。別に理由なんかないけどね。」

「ふーん・・・ま、いいんじゃねえの?化膿とかしないように、ちゃんとケアしろよ。」

「ね、ねぇ・・・穴あけるとき、どうだった?やっぱ痛い?」

「ぜーんぜん。一瞬だし。注射の方がずっと痛いわよ。」

そう綾香の問いに答えながら、思わず吹き出してしまう志保である。
日ごろから格闘技で散々痛いことをやっているというのに、耳たぶに直径1ミリあるか無いかの
穴をあける痛みにびくついているというのは、普通に考えれば妙な話だ。
この辺が、人の心理の微妙なところである。



「そっちこそどうしたのよ。藤田家元気印の二人がそろって通院?
・・・あ、ひょっとしておめでたとか?」
「あっちは外科病棟だ!!」


思わず声を高めてから、近くを通りがかった看護婦の非難の視線に気付いて慌てて口を押さえる。


「じゃーどーしたのよ。練習中に怪我でもしたの?あんま、あかりの心配事
増やすんじゃないわよ?」

「いや、怪我ってほどじゃあないんだが・・・綾香がちょっと、背中と腰に違和感が
あるらしくてな。念のためつれてきたんだ。」

「ほっほう・・・腰にねぇ・・・なるほどなるほど。」

「・・・おまえ、親父臭い。」

「うるさい、ほっとけ。」


この二人の会話は、どこに場所を移してもこんな感じである。それでも病院という
場所柄を考えて、律儀に小声でやっているから、はたから見ているとけっこう間抜けだ。


「私はたいした事ないって言ったんだけどさ・・・浩之ってば、大げさなんだから・・・」

「何言ってんだ。完全なオーバーワークだって、先生も言ってただろーが。」

「普段のトレーニングメニューって、セリオが管理してくれてんじゃないの?」

「そーなんだけどな・・・ほら、葵ちゃんもそうなんだけど、綾香、けっこう熱中すると時間もペースも
忘れちまうところあるからな。ちょっと目を離すとこんなありさま。」


例の「しょーがねーなー」の表情で肩をすくめる浩之と、ちょっとばつが悪そうにうつむく綾香。
志保は「あんたも人の事言えないでしょーが。」と言おうかと思ったが、やめて話題を変える事にした。

「言っても治んないんだろうな」と思ったから。


「しっかし平日だってのに、混んでるわねー。」

「評判いいからな、ここの病院。最近、外科にはプロのスポーツ選手も来るみたいだし。」


会計待ちの番号札と電光板を交互に眺めながら、志保はちょっと眉をしかめた。
この分だと、支払いを終えるまでにまだ20分は待たされそうだ。黙って座っているには
退屈すぎる時間である。

となると、彼女としてはとる行動はひとつ。


「んで、今日の最新情報なんだけどさ。」

「いきなりイントロ始めるな。逃げる余地を与えろ。」

「何で逃げんのよ!短気なあんたが無為に待合室で黙って過ごす、その際に課せられる
ストレスを素敵さわやかに解消させようとゆーこのあたしの生暖かい配慮に感謝できないなら
悔い改めて、明日から1日5回、あたしの方角に向かって礼拝しなさい!」

「何でイスラム教なんだよ。第一おまえの方角ってなんだ?」


「・・・あー、私、ジュース買ってくるわね。浩之、何がいい?」

浩之の横で、苦笑とも失笑ともつかない表情を浮かべて聞いていた綾香がそういって立ち上がった。
ちょっと唐突だったので浩之は一瞬不審に思ったが、結局、気にしないことにしたようだ。

「あ、えっと、カフェオレ頼む。」

「ん。志保は?」

「え、あたしもいいの?」

「いいわよ。ここの自販機、100円だからね。」


日本有数の財閥令嬢とは思えない発言である。


「んじゃ、烏龍茶。伊藤園のやつ。」

「オッケー。」


何が嬉しいのかわからないが、随分機嫌よさそうに自販機コーナーに向かう綾香を数瞬眺めてから、
浩之はまた受付の上に示されている番号表示を見た。もちろん、急に受付効率が3倍速になったりは
していなかったから、そこに表示されている数字は、まださっきと同じである。

「・・・じゃ、綾香が来たら、支払い終わったら起こしてくれって伝えてくれ。」

「寝るなっ!!」


びす。


「があっ!」

後頭部にチョップとか二の腕にパンチとかは予想していた浩之であったが、
足の甲に傘を突き刺されるとは思っていなかったらしい。

「な、なんっちゅうことしやがる!安易に凶器使うんじゃねぇこの下等超人!!」

外来用スリッパをはずし、右足の甲をごしごし左足のふくらはぎに擦り付けながら、
差別的な抗議をする。それでも声のトーンを落としているところがなかなか偉い。

「あんたがいちいちそうやって逃げのバリエーションを増やそうとするから、こっちも対応策を
工夫しなきゃならんのでしょーが!せめて、寝るなら寝るでそのまえに、『お話を聞かせておくれ』とか、
かぁーいく言ってみなさいとあたしは主張したい!・・・・・・いや、やっぱりしない。うそうそ今の無し。
うわ、気色ワルぅ。」

極めて無礼千万な内容で自己完結し、二の腕をさする志保を見て、浩之は肺胞が空になって、
裏返って喉までせりあがってきそうなほどの、深い深いため息を吐いた。


もうだめだ。



こうなったら聞くしかない。





でも、聞き流そう。


「・・・・で?言っとくが、深夜の不信な校舎の窓明かりの話なら、もう一切合切金輪際、
エーキュートワに聞かねーからな。」

「・・・それはあたしももう懲りたわよ。」

「じゃあなんだよ。改めて言っとくがここは病院で静かにしなきゃならんのだから、
あんまり俺の脊髄反射に訴えかけるネタ振るんじゃねーぞ。」

「うーん、そうやって期待されちゃうとなんか緊張するわねぇ。」

「全くこれっぽっちも期待なんかしていないが、それでも仮に期待してるとして、
それを裏切ったらおまえには来年から年賀状も暑中見舞いも絶対に出さん。」


将来を嘱望される多妻家族の夫としては、やたらみみっちい脅しである。






「こないだ一般部でやった模試の結果、聞いてきたわよ。興味あるでしょ?」

「へぇ・・・」


予想外に随分地味なニュースだったので、そんな薄いリアクションしか返せない。
浩之が思うに、志保にとって一番興味なさそうな話題だ。

だがまあ、いつものゴシップネタに比べれば、はるかに建設的になりそうなネタではある。
それに、多妻部所属学生の最近の健闘ぶりは一般部でもけっこう話題になっているから、
そういう意味では刺激的な話題だ。そう判断して、浩之もやっとアクティブに聞く意識を高める事にした。


「あんたんトコは受けてなかったみたいだけど。でも、他所の家族がどんな調子か知っとくのも、
こーじょー心を養う上で損はないっしょ?結果が公式に配布されるのは明日だけど、この情報は
長瀬先生方面から直接もらったんだから。情報ソースの信頼度は100%よ。」

「どんな情報でも、おまえの口を通すと全部信頼度6割減になるんだよ・・・んで?今回の学内順位は?」

「ふっふーん、乗ってきたわね。」

「じらすなよ。どうだったんだ?」


結局、またしても志保のペースにはまっている事に気付いたが、このあたりはもうとっくに慣れている。
いまさら不快に感じる事もないので、浩之は素直に先を促した。


「塚本さんの3連覇が阻まれたわ。」

「ほう。月島のやつ、ついに『ミス・ナンバー2』返上か?」

「ぶっぶー。月島さんは今回も2位よ。でも彼女、全く好不調の波がないからねー。
年間総合だと、ダントツトップなのよね。」

「なになに?模試の結果、出たの?」


自販機コーナーから戻ってきた綾香が話に加わる。浩之にパックのカフェオレを、
志保に烏龍茶の缶を手渡して、自分は清涼飲料水の缶に口を付ける。


「あ、あんがと・・・そーなのよ、今回の学内順位は、かーなり凄い事になってんのよこれが。
きっと職員室は今ごろ大騒ぎね。」


こきゅこきゅ烏龍茶を口に運びながら、もったいぶった口調で志保はにまっ、と二人の表情を窺い、
ひざに載せているカバンに手を入れた。


「んで、1位は誰だよ?その口ぶりだと、知ってるやつなんだろ?」

「知り合いよ。それも多妻部の。当ててみ?」


この上なく楽しそうに、人差し指を立ててみせる。


「えっと・・・太田さん?」

「はずれ。彼女は今回5位だったわ。僅差だったけどね。」

「じゃあ、美坂か?」

「彼女は文系で選択教科違うもの、今回の模試は受けてないわ。理系の人よ。」

「「うーん・・・・」」

「5・4・3・・・」

「待て待て。ヒント。」

「2・1・0!ぶっぶー!!残念でしたー」


無慈悲にカウントダウンを完了して、志保は得意満面の笑顔でさっきから手を突っ込んでいた
カバンからプリントを引っ張り出した。そのまま、浩之達の顔前に突きつける。


「論より証拠、これを見よ!今回の1位は、なーんとこの人よ!」

「げっ・・・・!!」

「うそ・・・・・・・・」


志保が突きつけた順位表の最上段の名前を見て、浩之も綾香も、不覚にも志保の思惑通りの
反応をしてしまった。






第6回 学園統一模試総合順位 (理系分野)

第1位 長瀬 祐介

第2位 月島 瑠璃子
第3位 鈴木 元信
第4位 塚本 千紗
第5位 太田 香奈子




「・・・まじかよ・・・」

「伸びてる、とは聞いてたけど・・・まさか・・・ほんとに?」

「ふっふーん。疑うんなら、明日掲示板見て確認しなさいよ。これとおんなじ物が、
はり出されてるはずよ。」


「ベスト5中、4人が多妻部ってのも新記録だけど・・・まさか、祐介がねぇ・・・」

「ま、世の中、どこに伏兵が潜んでいるかわかんないってことよねー。」


自分が1位になったわけでもないのに、やたら得意げな志保である。


「そんでね、文系の方の結果はまだ聞いてきてないんだけど、藍原さんと沙織も伸びてるらしいのよ。
おそらくクラス平均点でも学園トップね。っていっても、5人しかいないけど。」

「まあ、藍原はもともとかなりの位置につけてたけどな。」

「そっかぁ、沙織も頑張ってるんだぁ・・・そういえば最近、図書室に行けば必ず長瀬家の誰かと
顔合わせるもんねぇ。」


素直に感心している綾香のとなりで、浩之は細かくプリントを確認している。

あまり公言はしていないが、実のところ、浩之は祐介を内心で高く評価していたし、
見習いたいと思う面もいくらか見つけていた。
だから、成績があがる事自体はそれほど意外には思っていない。
しかし、こうも飛躍的な成長を見せられると、やっぱり焦ってしまうのは致し方ないところだろう。


「うーん、俺も次回は受けてみるかなあ。」

「おっ、対抗心燃やしてるわね、浩之。」

「だって、ひとごとじゃねーぞ。内容見ても、まぐれで1位になった感じじゃねぇ。
綾香だってやばいんじゃね―の?」

「さーてね。なんならセリオにお願いして、同じ問題、後でみんなでやってみる?」

「それもいいかもな。」


志保にプリントを返しながら、珍しく勉強にやる気をみせる。なんとも単純な動機だが、
浩之のそうゆうところが、綾香はこの上なく気に入っていた。


「そんで、こっからが本題なんだけどね。どうも、祐介の成績がこれだけ伸びてるのには、
太田さんや月島さんのサポート以外にも、秘策があったらしいのよ。」

「秘策?記憶術とかか?」

「もっと単純。祐介達が、よくこの病院訪れてるのは知ってるでしょ?」

「ああ、眼科に入院してる子供達と仲良くなったって話でしょ?レミィがうらやましがってたわ。」

「そうそう。でね、最近祐介、子供達と遊び終わった後に、いろんな先生に相談に乗って
もらっているらしいのよ。研修医の先生とか看護婦さん達とかもみんな祐介に協力的で、
実際に勉強見てもらったりもしてるみたい。」

「先生方に?なんで?」

「あら、あんた知らないの?祐介、最近進路変えたのよ。医学部に。」

「げっ、マジか!!」

「まじまじ。あんた、相変わらず情報に疎いわねー。あかりだって知ってるわよ。」

「・・・綾香、知ってたか?」

「うん、私はセバスチャンから聞いた。」

「・・・・ぜんぜん知らんかった・・・」

高校2年次に進路変更というのはさして珍しくはないが、変更先が医学部となれば話は別である。
しかも、祐介はちょっと前まで、ごく平均的な成績だったのだ。医学部に志望変更、それだけで
かなりの勇気がいる行為である。

「でも、いい事じゃねえか、現場の先生にアドバイスもらえるなんて。」

「そうよね、受験勉強だけじゃわかんない事っていっぱいあるし。」

「ふっふーん・・・確かに祐介とってはそうだけどね。月島さんや沙織たちにとっては、ゆゆしき事態
だったりするのよね、これが。」

「?なにがゆゆしき事態なんだ?」

「考えても見てよ。ただでさえ年上から受けのいい、かわいい系の祐介がよ、子供と遊んであげながら
医者を目指して頑張ってるひたむきな姿!おそらくあたしの見るところ、看護婦さん達の中で既に祐介に
ぐっときちゃってる人は、一人や二人じゃないわね。」

「ま、まあ、確かに祐介は年上にもてるけど・・・そりゃ、杞憂だろ。だって、祐介だぞ?」


たとえロミオがジュリエットをバルコニーから突き落として、ロザラインと添い遂げても、祐介は浮気なんか
しないだろう。浩之は、そう確信している。更に正確に言うと、しないというよりはできないだろうと思っている。


「事実は小説より奇なり、ゲームより滑稽なり。どこでどうフラグが立って、誰と誰が結ばれるかなんて、
誰にも予想もつかないもんよ。知らないうちに、お目当てと違うヒロインルートに入り込んじゃったりなんてのも
良くあることなんだから。ひょっとしてさ、今回の祐介の大躍進だって、フェロモン系美人看護婦長の支倉さんに、
『頑張ったらごほうび、あ・げ・る』とかなんとか言われて、頑張っちゃったのかもよ〜?」

「そんな、だれかさんじゃあるまいし・・・」

「何で俺を見るんだよ・・・・・ってか、支倉さんって誰だ?」

「さっき外科で案内してくれた、背の高い看護婦さんよ。ほら、眼鏡かけてた・・・」

「ああ、あの、うなじのところにほくろのある・・・」





ごりん。





「いぢっ!あ、綾香、おまえなあ・・・」

「問答無用!何で名前は覚えてないのに、そんなトコばっか憶えてんのよ!」


はあ、とあてつけがましく溜息をついてから、綾香はちょっと志保の発言の可能性を探ってみた。
もちろん祐介が浮気をするとは、綾香も全く思っていない。志保もネタとして面白がって言っている
だけで、本心でそんな事思っているわけではないだろう。


祐介や、あるいは城戸家当主の芳晴などは、キャラ的に言って「子供とお年寄りにはもてる」というタイプである。

たとえば城戸芳晴という人物は、異性同性に関わらず、誰からも評判のいい好青年なのだが、なぜか小さい頃から
女性にもてた経験というのはさっぱり無かったそうだ(家が厳しかったからとか、単に本人が鈍くて気付いていない
だけという説もあるのだが)。


『城戸君?うん、すっごくいいひとよ。わたしも何度もお世話になったの。同い年だけど、尊敬できる人。』


以前志保がインタビューした、芳晴の知人であるらしい女性は屈託無くそう言っていたそうだ。
この、『いいひと』とか、『尊敬できる』という表現が物語るように、やっぱり異性としては目立たない存在
になってしまうタイプらしい。

祐介の場合になると更に極端で、以前同じクラスだった女生徒に印象を聞いても、


『長瀬君?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、長瀬君ね。』


と、脳内メモリアクセスに3秒もかかってしまう始末である。

つまり、意地の悪い言い方をすると、「いいひと」で終わりがちな典型的タイプな訳だ。


だが一方で、祐介が病院でかなり評判がいいというのは、まぎれもない事実である。
そして、どうも病院という場所には、祐介のような地味でもやさしい、いわゆる「いいひと」が理想のタイプ、
という女性が多く集まる傾向にあるらしいのだ。病人や怪我人を助けたい、という職業意識が、そういう
傾向を呼ぶのかもしれない。


だから祐介が浮気をしなくても、一方的に思いを寄せられる、という事は、まあ有りそうな話ではある。
場合によっては、強引に迫られちゃったりもするかもしれない。

その辺については以前に綾香自身、騒動に巻き込まれた事もあったし。


「そーゆー訳で、今後も長瀬家からは目が離せないことになりそうよ。タイトルとしては、
『頑張れ祐介!―医学部進学への道に現れた、意外な誘惑の落とし穴―』ってとこかな。」

「・・・なんか、露骨に波乱を期待してるだろ、おまえ。」

「そんな事ないない。ネタとして面白いかもなーなんて、ちょびっとも思ったりしてないって。」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「な、なによ二人ともその目は。ホントだってば。」

「嘘だな。」

「嘘ね。」


浩之と綾香が声をハモらせて、きっぱりはっきり断定した時、電光表示板の受付番号が変わり、
やっと志保の会計順がまわってきた。


「んじゃ、お先。綾香、御大事にね。あんま、無理しないでよ。」

「ん、ありがと。」

「またな、志保。」


つぺつぺスリッパを鳴らして会計にむかう志保の後姿から目をそらしかけてから、浩之はもう一度
彼女に声をかけた。



「あ、志保。」

「ん?なに?」

「言い忘れてたけどよ。」

「なによ。」

「・・・おまえの髪型だと、耳って普段あんま見えないよな。」

「・・・・わかってるわよ。」




ぺろぺろと後ろ手に手を振って、志保は窓口に向かっていった。





☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



病院を出ると、雨はかなり小ぶりになっていた。傘を差そうか、そのままいくか迷った浩之だったが、
綾香が躊躇無く傘を開いて腕を組んできたので、そのまま相合傘で歩を進める。


「しっかし、祐介があんなに急成長してるとはなぁ。全然知らなかったぜ。」

「私は、成績伸びてるって事自体は聞いてたんだけどね。それにしても、あそこまでとは思わなかったわ。」

「それも、セバスに聞いてたのか?」

「うん。セバスチャン、祐介については軟弱者だの、肝が据わってないだのと、結構厳しいんだけど。
でも、しょっちゅう話題に出してるところ見ると、案外内心では自慢なんじゃない?」

「そーかもな。そんで、この後どうする?セバスで思い出したけど、確か今日は先輩と一緒に
実家に呼ばれてるんだろ?何時からだ?」


そういわれて、綾香の顔が一気に曇る。
「あー、そーだった・・・どこぞのグループとの懇親会だか懇談会だか・・・
確か4時からだったと思うけど・・・めんどいなあ・・・」

「おい、そんなら急がなきゃなんね―んじゃねえか?もう、3時半まわってるぞ。」

「んー、でもさ、診察とか受付が長引いて、5時ぐらいになる可能性もあるわけで・・・・・・・・・・」

「・・・フケる気だな。」

「あ、ほらほら浩之、噂をすれば、あれ沙織じゃない?おーい、さーおリー!」

「あ、待てよこら。・・・ったく。」


露骨に話題をそらす綾香に苦笑して、浩之は前方の人影に目をやった。
ほっ、ほっ、と息と長い髪を弾ませて走ってくる、ジャージ姿の少女が目に入る。
まちがいない、新城沙織だ。


「あ、ふたりともどうしたの?どっか故障?」

「ううん、別に大した事無いわ。念のためってやつ。沙織、今日はひとり?珍しいわね。」

「うん、それがね・・・・」

何気ない綾香の言葉に、沙織はちょっと顔を曇らせる。

「瑞穂ちゃんのお母さんが、最近体調崩しちゃって・・・香奈子ちゃんと二人で、ちょっと実家に帰ってるの。」

「そりゃ、よくねぇな・・・大丈夫なのか?」

「うん、電話で聞いたけど、単なる過労だって。だいぶ元気になったから、明日には帰って来れるって言ってた。」

「そりゃよかった。」

「祐介と月島さんは?」

「ふたりとも、内科の大内先生に相談に行ってる。進路のことで。そんでジョギングがてら迎えに来たんだけど・・・
ちょっと早く来過ぎちゃったかな。まだ3人とも、話し込んでると思うし。」

「そっか。そんじゃ、ちょっと時間あるわよね。」

「え?うん。祐君たちの話が終わるまで、資料室で時間つぶそうかと思ってたんだけど。」

「ねえ、お腹すかない?よかったら、時間つぶしにそこで何か食べよ?私、ちょっと晩御飯まで持ちそうに無くて。」

「おい綾香、懇談会は・・・・」

「うん、それがいいそれがいいそうしましょー!行くわよ二人とも!」


明らかに自分の都合で強引に話を進めて、綾香は浩之と沙織の手を取るとぐいぐいと突き進んでいった。






☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆






「いらっしゃいませー。ご注文は?」

「大盛りに卵、ねぎだくで。」

「私は並と卵で。沙織は?」

「んーっと、並とけんちん汁。」

「はい、かしこまりました・・・大盛りねぎだく一丁、並2丁けんちん汁ひとつ、卵ふたつでーす。」


だされた御茶を、くぴっと結構男らしく一口飲んで、綾香はさっきまで志保としていた話を
沙織に振ってみた。


「聞いたわよー。長瀬家のみんな、成績伸びてるみたいじゃない。頑張ってるわね。」

「あ、うん、祐君とか凄い勉強してるよ・・・あたしは、まだまだ全然だけど。」

「こないだの模試、祐介、学年トップだった見てーだぞ。」

「えっ!そうなの?」

「ああ、さっき聞いたんだけどな。大躍進じゃねえか。」

「そうなんだ・・・」


沙織のノリがなんとなくいつもと比べておとなしいので、浩之も綾香もちょっと不審に思った。
普段なら、もっと気持ちのいいリアクションをしてくれるはずだし、祐介の事ももっと自慢げに
話してくれると思うのだが。


「・・・沙織、どうかした?」

「え?あ、ううん、なんでもないよ。」

「そんな感じにみえねーぞ?なんか悩み事か?藍原のおふくろさんの事か?」

「ぁ、それもあるんだけど・・・」

やはり、いつもの沙織とは何処かちょっと違う。その時ちょうど注文が運ばれてきたので、
浩之たちは割り箸で卵を溶きながら、沙織が話し始めるのを待った。


「ねえ、綾香さんはやっぱり、大学に行ったら経営のための勉強をするの?」

「え?」


これは、意外な質問だった。『どこの大学にするの?』とか、『なに学部を受けるの?』とか
いった質問はある程度予想していたが、そこまで具体的な将来展望を聞かれるとは
思っていなかったのだ。


「え、ええと・・・やっぱり立場的に、経営の勉強もしなくちゃとは思うし、将来的には
それもいいかと思うんだけど・・・個人的には大学ではもうちょっと現場に近い勉強を
したいかなーって思ってる・・・かな?」


自分でも反芻しながら、それでも隠すところ無く本音を話す。


「そうなんだ。じゃあやっぱり、工学部受けるの?」

「うん、浩之と一緒にしようと思ってるけど。」

「そうなんだ・・・」

「・・・沙織、進路のことで悩んでるの?」

「・・・・あたしね、教育学部受けるんだけど。」


綾香の問には直接答えずに、ぽそぽそ牛丼をつまみながら、沙織は本格的に打ち明け始めた。


「祐君は、聞いたと思うけど理学部から医学部に進路変更して・・・
瑠璃子さんは、看護婦さんになりたいみたい。あ、今は看護師さん、っていうんだっけ?」

「まあ、個人的にはどっちでもいいと思うけど。それで?」

「瑞穂ちゃんは文学部。歴史の勉強して、将来小説とか書けたらいいなって、思ってるみたい。
香奈子ちゃんは、あたしと一緒で教育学部なんだけど・・・あたしはね、学校の先生より、
保育士さんになりたいなって、思ってるんだ。」


「・・・みんな、しっかり考えてるんだな。いいじゃねえか。新城は保母さん、向いてると思うぞ。」


改めて感心しながら、浩之が意見を述べる。沙織はその言葉にちょっと嬉しそうにしたが、
またちょっと表情を曇らせて先を続ける。


「・・・ひょっとしたら、大学在籍中は、遠距離になるかもしれない。まだ、わかんないんだけど。」

「ちょ・・・・!!沙織、本気なの!!」


思わず大声を出してしまい、慌てて口を押さえる綾香。浩之も、絶句して目を見開いている。

長瀬家はいろいろな面で、夫への妻達の依存度が一番高いと感じられる家族だ。
普段から見ても、沙織も瑠璃子もいつも祐介のそばに付き添っている。
そんな沙織本人の口から、『遠距離恋愛』なんて聞かされるとは、二人とも思ってもみなかった。


「祐君ね、札幌にある大学受ける予定なんだ。瑠璃子さんも、そうするみたい。」

「札幌・・・?あ、そうか。」


祐介の両親が北海道に引っ越した事は、浩之たちも聞いている。そのことで、少し騒動もあったようだ。
北海道の大学を受ける事は、祐介のやさしさなのだろう。


「実家の事もあるんだけど、ほら、医学部ってすっごくお金かかるでしょ?都内の私立大学なんか、
とてもじゃないけど経済的に無理だし、奨学金もこれからあてになんないし。みんな公立大に
絞ってるから、全員同じ地域って難しいかも。」

「でも、札幌なら大丈夫なんじゃない?なんていっても旧帝大があるし、教育学部なら、
北海道教育大学の札幌分校もあるじゃない。」

「うん、そうなんだけど・・・あたし、もともとは実家の近くの県立大学に通う予定でいたから・・・」

「・・・そういうことか。」

ちょーっと長瀬家の連中は、人に気を使いすぎるんじゃないかなあ、と浩之は思ったが、
無論口には出さなかった。


「祐君のお母さんのこととか、今回の瑞穂ちゃんのお母さんのこととか見てると・・・だんだん、
気になってきちゃって。やっぱりあたしの両親も、本当は近くにいて欲しいみたいなの。
以前、祐君と暮らしたいって言った時は、二人とも二つ返事で、むしろ積極的に進めて
くれたんだけど・・・でも、今はいつでも帰れる距離にいるけど、北海道ってなるとね。
エリア先生みたいな魔法が使えれば問題ないんだけど、いっつも頼るわけにもいかないし。」

「でもなあ・・・祐介とかには話したのか?」

「ううん、まだ。自分で決めなきゃならない事だし・・・」

「そりゃそうだけどよ・・・」

「あたし、ちょくちょく実家に帰るんだけど、なんか帰るたびに二人とも大喜びで・・・
今回は祐介君は来ないのかって、いっつも聞かれるし、あたしの部屋も、いつでも使えるように
きれいに掃除してそのままにしてあるし・・・なんか、こないだ帰ったら、あたしの部屋のベッドが
いつのまにかセミダブルになってたし・・・」

「うーむ・・・・」(汗)


これは口に出されなくとも、新城ご夫妻の将来の希望は推して知るべしだろう。
沙織が、『札幌に行きたい』と言い出しにくくなるのもわかる。


「俺にはどうすべきなのか解らんが・・・でも、どっちにしても新城が我慢するような事になるのは、
親父さんやお袋さんもやなんじゃねーかな?」

「あ、それは私もそう思う。やっぱり、沙織の人生なんだし。」

「そ、そうかな?」

「「絶対そーだって。」」


きっぱり声をあわせて言う二人の声を聞いて、沙織はやっと、いつもの笑顔を2人に向けた。

「ありがと。まだ解んないけど、なんか、聞いてもらったら楽になっちゃった。」

「家族以外のほうが話しやすいこともあるわ。またなんかあったら遠慮なく言ってよ。
私も相談するし。」

「うん、そーする。」


屈託無く笑いあい、3人はもしょもしょと、ちょっと冷めかけの牛丼をかきこんだ。
そこからは堅苦しい話が終わり、他愛の無い普段の雑談に花が咲く。




話題が最近出たパズルゲームの話からサッカーの日本代表の話に移行し、固くない
フランスパンを食べた事があるかないか、という経験談を経由して、チョココロネの前は
どっちかという話題に行き着いた頃。



急に、店内の客がざわっとざわめいた。何事かと3人が入り口を見れば、身長190pに
届こうかという痩せぎすの男性が入ってくるところだった。

頭はスキンヘッドで、眉もそり落としている。頬や目の上に、誰がどー見ても刀傷にしか
見えない痕がある。眼光は、見つめられただけで石にされるんじゃないかと思うほど鋭い。
更に全身白ずくめのホワイトスーツ。スーツの腰のあたりは、何かを中にぶら下げている
ように不自然に膨らんでいた。

『私は前科がありますよ』と、全身で表現しているような外見だ。

昔の漫画に出てくるやくざそのもの、といったその容貌のその人物は、アンドロイドのように
平行に、ゆっくりと店内を見渡して・・・沙織に視線を止めた。


「やあ新城さん。奇遇ですね。」


思いっきりやさしげな口調。外見とのあまりのギャップに、沙織以外の客がいっせいに
ずっこける。


「大内先生?どうしたんですか、こんなトコで。」

「夜勤の前に、ちょっと早めの腹ごしらえをと思いましてね。」

「あ、あの、祐君たち、そちらに伺ってたはずなんですけど・・・ひょっとして、
もう帰っちゃいました?」

「ああ、彼らを待っていたんですか?えっと・・・いえ、恐らくまだ帰ってはいないと
思いますが・・・」

「あたし、てっきりまだ大内先生と話し込んでるんだと思ってましたけど・・・」

「えーと、月島さんとはついさっきまで話してたんですけどね。3時ごろでしたかねぇ、
なんか祐介君は片倉先生に呼び出されて・・・・」



ビシュッ!!




「じゃあ、祐君と片倉先生、今二人っきりなんですか!」

かまいたち現象で頬を切りそうなスピードでカウンターテーブルを飛び越えた沙織は、
そのまま一気に大内医師に詰め寄る。

「え、ええ、月島さんは話の後に子供達につかまっていましたから、おそらく・・・」

「御勘定、ここに置きます!!」


ばんっ!と小銭をカウンターのテーブルに叩きつけると、沙織は自動ドアの前で
キュッキュッ、とジョギングシューズを踏みしめる。


自動ドアが、いつもよりゆっくりした印象で開き・・・・



「祐君!!無事でいて!!」


ズバンッ!!


再び、急発進による炸裂音を店内に残し、沙織は病院へと文字通り、「飛んで」いった。


「・・・・・・?特盛に卵、ねぎだくでお願いします。」

「あ、は、はい・・・」


いまいち事態を把握できない様子の大内医師は、ちょっと首を傾げてから、
普通にカウンターに注文を告げる。どうやら、かなり鈍い人のようだ。



「・・・・・・・新城のやつ・・・間に合うかな?」(汗)

「・・・・・・・間に合って欲しいわ・・・祐介の為にも、病院の為にも。」(汗)


完全に忘れ去られる境遇になった浩之と綾香は、そのまま1分ほど呆然としてから、
大内医師に挨拶して、店を後にした。












「あのさ・・・浩之。」

「何だ?」


帰り道。なんとなく無言で歩いていた二人は、寮まで後100mというところまで帰ってきて
やっと口を開いた。


「あのやきもちっぷりだと・・・沙織には、遠距離恋愛は無理だと思う・・・・」

「・・・・・・・だろうな。」


その夜・・・・綾香は彼女の姉に、シュインの魔法を簡単に使えるようになる方法は無いか、
たずねてみたのだが・・・


姉は、退屈な懇親会の出席を一人で押し付けられたせいでぷんすか拗ねてしまっていたから、
回答は得られなかったそうだ。




AIR DOの破綻が、悔やまれる(←落ち?)


(あとがき)
「やっぱり高校生の会話を書くのがうまくなるためには、一般にある、いろんな高校生らしさが
なんなのか、つかんでおかなくちゃだよな。」

そんな発想で、じゃあまず一番身近なところから、自分の高校時代の会話の内容を思い出して、
そっからひとつ高校生っぽい会話をコンセプトにSSをひとつ書こう、なんて思いまして・・・
自分の高校時代の話題の記憶をたどったところ。


進路・模試・受験・模試・進路・ガンダム


・・・・うーむ、最後のはともかく・・・
楽しい思い出は結構あったはずの高校時代なのに、なんと殺伐とした話題なのか(;^_^A

でもまあ、そういう了承に不向きなテーマで、了承らしさを出せないかというのもひとつの挑戦だし。
成功したかどうかは正直わかんないですが。


志保や綾香が、「月島さん」、「太田さん」、「藍原さん」、と言う呼び方をしたり、沙織ちゃんが綾香の
ことを「綾香さん」、とよんだりとしてますが、この辺は異論があるかもです。
自分では、できるだけ違和感無いように呼称を決めたつもりなんですけど、でも、どうかなー。
この辺は人それぞれだから、違和感を感じる人も多いかもです。他のSSやコメントでは
別の呼称になってたりするんですが・・・なかなか統一されてないみたいで。

大学に行く楽しみが、とにかく一人暮らしをしたいからって人も多いみたいで、
「いまどきの高校生が、こんな事で悩んだりするかなあ?」って思う人もいるかもですけど、
自分の周りのみんなは結構気にしてる人が多かったです。自分も含めて。

この辺は地域差なのか、世代の差なのか、たまたま自分の周りがそうだっただけなのか・・・
皆さんは、どうでしたかね?



 ☆ コメント ☆

綾香 :「祐介たち、頑張ってるわね」(^^)

セリオ:「ホントですねぇ。特に祐介さんなんて1位ですから」(^^)

綾香 :「そう言えば、祐介の模試の結果を聞いて、智子が燃えていたわ」

セリオ:「負けず嫌い魂に火が点いたんでしょうね」(;^_^A

綾香 :「火が点いたのは智子だけじゃないけどね。
     浩之もやる気出してるし、他のみんなも刺激を受けたみたいだし」

セリオ:「ですね」

綾香 :「あたしも負けてられないわ。頑張らなきゃ」

セリオ:「……程々にして下さいね。無理はダメですから」

綾香 :「大丈夫よ」

セリオ:「そういう点に関してはいまいち信用できないんですよねぇ。
     今回の怪我の件もありますし」

綾香 :「う゛。き、気を付けるわ」( ̄▽ ̄;

セリオ:「ならいいんですけど。
     ――ところで」

綾香 :「ん?」

セリオ:「沙織さんですが、あの後、間に合ったのでしょうか?」

綾香 :「間に合ったわ」

セリオ:「何故分かるんです?」

綾香 :「今日、祐介と会ったもの。無事に生きてるってことは間に合ったって事じゃない?」

セリオ:「……」(;^_^A






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