私立了承学園第465話
「喫茶店戦記〜バイト教育編」
(作:阿黒)



(これまでのあらすじ)

 了承学園内に転居し新たな顧客獲得のため日々精進する燃える喫茶店HoneyBee!
 ナイチチにも程があるだろう的ぷりちー萌え♪なキック鬼・結花とメガネ・妹・ネコっちゃとある意味究極体ともいえる魔女っ子・リアンの前に次々と立ちはだかる強敵たち!

 ザシャアッ!

「聖闘士に同じ技は二度通じぬ!」
「なにいぃぃぃぃぃぃぃぃ―――――――――――――!!?」
 炸裂するカイトス・スパウティング・ボンバー!!!

「富士山の湧き水と高沢の鉱泉水、それに日本アルプスの雪解け水!これが俺の料理の秘密さ!」
 全部水やん!!!

「どういうことなの陽一!?母さん全然わかんないわよ!」
「いいから母さんは黙っててよー!」
 深まる親子の断絶!

「同上するなら金をくれ!」
 ネタ古っ!しかも誤字っ!!

「グが大きい」
 もっと古〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!安達○美もう21歳!!!

「お前は誰だ!?」
「貴様らに名乗る名などない!」
 といいつつ毎回喋ってるし知ってるし!

「リアン…あたしは…あたしもう、自分にウソをつきたくない!リアンが好き!大好き!」
「結花さん…!や、やめて、だって私達は女同士…!」
 深まる愛情と友情と煩悩!

「あの地球人のようにな!」
「クリリンのことか!?クリリンのことか〜〜〜〜〜〜〜〜!!?」
 もー何がなんだか。

「安西先生…バスケがしたいです…」
 いいから。もうその手のネタは。

「もしかしてオラオラですか――――!?」
 Yes!Yes!Yes!

 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ―――!!!

 再起不能、リタイヤ。(チャンチャン)
 To be continue→

  * * * * *

「――という事とは関係なく、今回の授業はこのモースト・デンジャラス・グレートバカ天使ウエィトレスをせめてデンジャラス・グレートバカ天使Ver.1.5ウェイトレス程度には使えるようにしよう、というわけでマナー実習なわけだが。
 限りなく不毛にムダっぽいとは思うがこれも給料の内と思って我慢する俺は社会人だから」
「柳川センセ〜〜〜〜〜、ツッコミ入れてよ〜〜〜〜〜、1人でボケても寒いよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 開店前の喫茶店「HoneyBee」の店内で、柳川は城戸家一同と結花、リアンの顔を見回した。本当なら宮田家の残りのメンバーも参加するのが筋なのだろうが、少々スケジュールの都合がつかなかったということと、主な目的は新人ウェイトレス二人(コリン・ユンナ)の教育、ということなので、無理に日程の調整をすることもないだろうということで、今回は不参加である。一方で城戸家側は芳晴とエビルも参加してるが、これは主に芳晴の強い希望によるものであった。
「…すみません結花さん。こういうバカで」
「あー、そんな責任感じることないわよ芳晴さん?とりあえず下手にツッコミ入れるより放置プレイの方が有効そうだし」
「あの…私と結花さん…その…違いますから…絶対…」
「?顔が赤いぞリアン。どうしたのだ?」
 何だか悲壮な顔で俯き、弁明らしきものを口にしているリアンを不思議そうに見つめるエビルである。
「…ううっ、カイトス・スパウティング・ボンバーなんて中途半端にマイナーな必殺技使うなー、とかバシーンとぉ…」
「うざったいのよそんなネタ。古いし」
 蹲って床に『の』の字を書いているコリンに、冷たく吐き捨てるような口調でユンナが応じた。
「あー。でもアレだよね、マシンロボ・クロノスの大逆襲って妹萌えのはしりかも」
「貴之様。…私、ソレ知リマセン。ロボナノニ」
「知らなくていい。つーか知るな」
 機嫌悪そうな声を上げる柳川に、今回は客役で協力することになっている貴之は少し首を傾げた。
 隣に控えているマインと何やらアイコンタクトをとる。
 そして両手を握り、こぶしをそっと、頬に添えて、言った。

「ロム兄さんっ」(水○優子声)

 がんっ!

 途端に柳川コケた。そりゃあもうキレイに。

「ロム兄サンッ」(それなりに努力はした声マネ)

「やめろ〜〜〜〜〜〜〜〜!!レイナのマネはやめろ〜〜〜〜〜〜〜〜!!ゆーこんのマネはや・め・ろおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」

「い…意外に効果的!?なぜ!!??」
「実は学生時代に嵌まってた!メカ妹に!」
「あまつさえ同人誌作って即売会で売ってた!メカ妹で!」
「しかも18禁で!メカ妹の!!」
「デモ!」
 ビシ!と一斉に指差して。

「「「「「「「「全然売れなくて在庫の山!!!」」」」」」」」
「勝手な過去を作るなあああああああああっっ!!」

 なんかもー、そのまま大猿にでも変身してしまいそうな勢いで柳川は喚いた。

  * * * * *

「メカ妹……」
「メモるなマイン。っていうかお願いだからその話題はもう止めてくれ…」
「おーい、泣いてるよー。いい歳した男が昔の古傷でー」
「いや…コリン、俺に言われても…どうしようもないし」
「ま、遊ぶのは程ほどにしておこう。このネタだけでも引っ張れば一週間は遊べそうだし」
「エビル…真顔でそういうこと言うと、全然冗談に聞こえないんだけど」
「――冗談?」

 うわこいつマジだ。

 不思議そうに首を傾げるエビルに、彼女はやっぱりデュラル家の者なのだと、ユンナはしみじみ実感したという。

 まあそれはともかく。

「とりあえずジョギングと荷物搬入で体力アップ、接客でかっこよさ、レジ打ちでかしこさが上がるのはデフォだが」
「何がデフォですかっ!」
 本当ならこういう授業は前田家、というか学食に叩き込めばそれで良い筈なのだが、それは単にこの店で日々繰り返されていることがPiaキャロ了承店で規模拡大して繰り返されるだけなので取りやめになったという裏事情があったりする。
「既に体力はMAXだし、かしこさはいくらレジ打ちさせても上がらないだろうから、基本的に接客でかっこよさと好感度UPを目指したいと思う」
「そーねー」
「…あの、柳川先生、結花さん」
 この時間が始まってからずっと、眉間に皺を寄せっぱなしのユンナが発言を求めてきた。
「このバカはともかくあたしまで同じ扱いってのは納得できないんですけど。っていうかかしこさ頭打ちって猛烈に抗議したいと思いますこのバカはともかく!」
「ふむ…?」
 浅く腕を組んで、柳川は少し考え込んだ。
 そのまま、ユンナからやや顔を背けたまま、言う。
「でもお前基本的に性悪だしソレは何とかしないと」
「貴方にだけはそゆこと言われたくありませんっ!!!」
「あはははは。…まあコノ先生がマナー教えるって今回の授業が既に不条理なんだし」
「結花さん…笑いごとじゃないと思うんですけど」
 虚勢かもしれないがとにかく笑い飛ばす結花の傍らで、胃のあたりを抑えたリアンが痛そうに呟く。が、そんなことは全く気にせず、柳川は貴之の方を向いた。
「とにかくコリンとユンナの接客がどういうものか見てみるか。貴之、客役頼む」
「わっかりましたー」
 びし、と敬礼の真似事などして、貴之は一旦外に出た。
 少し間を置いてから再び店内に入ってくる。

「こんにちわー」
「へいらっしゃいっ!!!」

 ごきゃす。

 頭蓋骨が陥没するような鈍い音と共に床に伏したコリンを更にカウンターの影に蹴りこみながら、ユンナは仮面めいた営業スマイルを向けつつ舞踊のように一礼してみせた。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?では、お席のほうにご案内いたします」
「え、えと、あの」
「お客様何か?」

 にっこり。

「なにか…?」
「…い、いえ…なんでも…なんでもないです…」
 ヘタなことを言うと命が危ない。
 理屈ではなく直感で、しかし絶望的に確信する貴之であった。
 そんな、じんわり冷や汗など浮かべている貴之に、一見非のうちどころもない礼儀正しさで、ユンナは質問してきた。
「お客様、お煙草はお吸いになりますか?」
「え?えーと…あ、吸うけど」

 しゃき――――――――――ん!!!

「ひいっ…!?」
「お客様…」
「は、はひぃ!?」

 ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ……

「タバコ…発癌性物質の塊のような毒…本人の嗜好と意思は尊重しますが喫煙者本人よりも周囲の煙害の方が高いタバコを御吸いになると…?」
「あ…あわわわ……」
 にっこりと、あくまでにっこりと、人皮マスクを被ってチェーンソー振り上げた殺人鬼のようにフレンドリーなスマイルで、ユンナは言った。

「当店は全席禁煙でございますので喫煙はご遠慮くださぁい☆」
「はいっ!ごめんなさい!すいません許してください土下座します靴舐めますから!」
「あー。貴之落ち着け。つーか。まあ大体事情はわかったが」
「貴之様、落チ着イテ。…大丈夫、大丈夫デスカラ…」
 ガタガタ震える貴之を落ち着かせようとしているマインを横目で見て、それから、柳川は結花とリアンに顔を向けて――ため息をついた。
「最後の☆が無ければまあ許せたんだが…」
「今の許容範囲内かい柳川的には!!!」
「というより☆って――――――――――――――――!!?」
「ごめんなさいスイマセン…」
「泣くな芳晴…いや、ユンナが星を飛ばすとは、まさか予想だにしなかったが…」
「私が☆飛ばすのはそんなに不自然かっ!?」
「っていうか純粋にヘンだったよねー」

 ぽぐっ。

 せっかく復活してきたのに、裏拳一発でまた夢の世界へ旅立ってしまうコリンである。まあ3分で復活してくるが。
「…エビル。お前、ちょっと模範見せてやれ」
「私か?」
 柳川に水を向けられて少しだけ考えると、エビルはあっさり頷いた。
「エビルさん…大丈夫ですか?」
「えーと。まあ一応、俺と一緒にCDショップのバイト、やってましたから」
 リアンの問いかけに一応芳晴が頷く。多少のぎこちなさはあったが、その接客態度はさほど不自然というわけではなかった――と思う。
 律儀にまたも一旦外に出てから、貴之が入ってくる。
「こんにちわー」
「む。客か?まあ入れ」

 ぴき、と、何かがひび割れるような音がした。具体的には芳晴から。

「よく来たな。その辺の空いてる席に適当に座ってくれ。今、メニューと水を持ってきてやる」
「は、はあ…どうも」
 腰に手を当てて立ったままのエビルの視線に促され、貴之は手近な席に座った。
 そこへ、前言どおりトレイに水のコップとおしぼりを乗せ、メニューを抱えたエビルが歩み寄る。
「そら、これで手を拭くがいい」
「えーと。はい、どうも」
「メニューだ。この中から好きなものを選べ。まあ大したものはできないが」

 ぎりっ。
 瞬間的に鳴った結花の歯軋りに、リアンは恐怖した。

「え、えっと。…その、お薦めのメニューとかないんですか?」
「お薦め?」
 エビルは貴之から勝手にメニューを取り上げ、パラパラと目を通した。
「そうだな。どれもたいして違いは無いから適当に選べば良いと思うぞ。…うむ、フライドポテト120円というのはどうだ?安いし」
「いや、あの、…そうそう、俺、紅茶を飲みにきたんだけど」
「紅茶………?」
 なぜか少し遠い目をした後、真顔でエビルは向き直ってきた。
「私はどちらかというと紅茶よりコーヒーが良いかな。お前もコーヒーにしろ」
「め、命令形ですか!?」
「私のお薦めだ。教えろといったのはお前だろう」
 徹頭徹尾、ボーカーフェイスを崩さないエビルに何か言いたげに、口をモゴモゴさせて、しかし結局何も言えずに貴之は少し俯いた。
「えーと。じゃあコーヒー」
「そうか」
「ちょ、ちょっと?」
 軽く頷いてさっさと踵を返したエビルを、貴之は慌てて呼び止めた。
 怪訝そうな目をしている彼女に、心細げに問う。
「いやあのコーヒーって…色々あるでしょ?ブレンドとかモカとかブルーマウンテンとか」
「銘柄か?細かい奴だな」
「いや細かいって」
「じゃあネスカフェかジョージアか強い子のミロか、さあ選べ」
「………………」
 なにやらテーブルに突っ伏して、貴之はしばらく身動き一つしなかった。
 やがて、ノロノロと顔を上げる。
「……すいません俺が細かかったです。
 ホットコーヒー一つ、もうそれだけでいいですからお願いしやがります」
「うむ」
 全く何も気にせず、マイペースに頷くとエビルはカウンターの結花達の所へ戻ってきた。
「こんなものでいいのか結花?…何故泣いている、芳晴?」
「ごめんなさい。もー世界中全ての人にごめんなさいっ」
「あー。なんてーか。
 ……もう、どこから突っ込めばいいのやら……」
「ふーむ…」
 平然としているエビルとカウンターに額をつけてしくしく泣いている芳晴とを見比べ、柳川は、腕組みしていった。
「今日の授業は失敗ということで。解散」
「ちょっ早っ!!」
「あっさりあきらめるなあああああっっ!!」
「だって」
「だってじゃないでしょ!?マナー講習なんでしょ!?100分の1人前のバイトをせめて71分の1人前程度には使えるように!!?」
「いや。無理だし」
「だ――――――――――――――!!だったら物理的に何とかしてよヤクザ教師!!」
「物理的って…結花さん?」
 リアンの問いかけに、激昂していた結花はピタリと口を閉じた。
 奇妙な静けさを湛えて、リアンを見る。
「色々あるでしょ?目隠しして拘束して一週間水滴の落ちる音を聞かせるとか、部屋一面に目の写真を貼り付けた紫の部屋に三日間閉じ込めるとか、48時間耐久特撮ビデオ鑑賞とかのマインドセラピー?」
「違う!それセラピー違う――――――――!!」
「特に最後のは絶対違うし!!」
 リアンではなくコリンとユンナが悲鳴を上げる。まあまかり間違えればそういう目に遭わされる身としては無理もないが。
「ワカリマシタ。デハ早速」
「速攻で『アステカイザー』のDVDなんか取り出すなロボット三等兵!!ちゅーか常備するな!持ち歩くな!布教するな!」
「ああああああああ…もう開店時間だっていうのに……結局、どうにもならないんですね…」
 ヨヨヨと泣き崩れるリアンをチラリと見て、しばらく考え込んだ後、柳川は肩を竦めた。
「まあいつものことだし」
「ううううううううう……」
 カウンターで突っ伏して泣いている芳晴の隣で同じようにすすり泣きを始めたリアンの背中を見つめて、しばらく柳川は考え込んだ…ようだった。
 貴之やマインから見れば、である。
「はあ〜〜〜……」
 心底めんどうそうなため息をつくと、柳川は背広を脱いだ。
 そしてネクタイを緩めながら店の奥に足を向ける。
「更衣室、借りるぞ。手本を見せてやるから参考にしろ」
「へっ?いや更衣室は別にいいんだけど。でも。…え?え?」
 珍しくうろたえる結花の鼻先で、パタンと扉が閉まった。
 …………。
 …………。
 …………。
 鉛のような沈黙が、店内を支配する。
「アフロでバンプー?」
「ゴスロリでしゅらしゅしゅしゅ?」
「アノ……」
 好き勝手なことをほざいている天使二人組に少しだけ強い声で何かを言いかけたマインだったが、結局、そのまま何も言えずに口を閉じた。
「スミマセン…コレハチョット、弁護デキマセン…」
 心もち項垂れるメイドロボの肩に、ポンとリアンが手を置いた。
「マインちゃん…元気出して」
「リアン様…」
 同類相憐れむ傷の舐めあいっぽく、この場にいる中ではおそらく最も不遇な二人に何かのフラグが立ちかけた時である。

 カラン♪

 ドアベルが鳴り、OL風の女性が三人、連れ立って入ってきた。

「ル。キャブ・バ。…バンンチョウ・ザ?」(む。客か。…何の用だ?)
「何でグロンギ語―――――――――――!!?」
 ヤケクソ気味に厨房で意味不明の踊りなどしてしまう結花である。っていうか、どうしてわかる結花?
 それには気づかず、エビルは、顔いっぱいに疑問符を浮かべて凝固している女性客らに悠然と向き直った。
 何やら胡散臭そうな目つきで、客達を上から下まで無遠慮に眺め回してから、言う。
「遠慮はいらんぞ。何でも注文するがいい。注文するのはお前達の自由だからな」
「は、はぁ…?」
「うあーい、何気にむっちゃムカツク応対〜〜〜〜」
「コリン…あんたから見てもそう思える…?」
「コ、コリンさんユンナさん、とにかくここはテーブルにご案内して…」
 既に涙も枯れ果てた感じなリアンが二人を促しつつ自らもエビルの前に出ようとする。
 しかしそのリアンよりも一瞬早く、別の影がエビルと客の間に割り込んだ。
「いらっしゃいませ。三名様ですね?窓際のテーブルへどうぞ」
 何やらエビルの発する魔空空間に引きずり込まれかけていた女性客等は、そのウェイターの至極真っ当な応対に安堵した様子で、勧められたテーブルについた。
 ウェイター……皺一つ無い白いワイシャツに黒ベストと小さな蝶ネクタイという典型的な格好をした柳川は、落ち着いた雰囲気で伝票を手にすると、早速注文をとり始めた。
「え〜っと…あたしはシナモンパイとダージリン」
「ダージリンはファーストフラッシュとセカンドフラッシュがございますが、どちらが宜しいでしょうか?」
「――どう違うんですか?」
「日本風に言えば一番茶と二番茶、ですね。ただ緑茶と違って早摘みが良いというわけでもございません。前者は爽やかな香りとクセのない味わいで、ドイツや日本では好まれているようです。後者は味にコクがあり、特にダージリンのセカンドでも上質なものはマスカットフレバーと呼ばれる独特の甘味があります。
 簡単に、香りのファースト、味のセカンドと思って頂ければ良いかと」
「そうなんだ。じゃあ…セカンドフラッシュで」
「かしこまりました。それとこれは蛇足ですが、ケーキ等のこってりとした食物にはアッサム・ティーがよく合います。ミルクをたっぷり入れて。
 アッサムは口中の油脂分を洗い流して、舌をさっぱりさせてくれますから」
「ふーん…なら私はアッサム・ティーとキルシュ!」
「私は…ちょっと、ダイエット中だから紅茶だけでいいや。ローズティー」
 伝票にそれぞれの注文を書き取り、確認を取ると柳川は踵を返しかけた。
 と、そこで女性客の1人が呼び止める。
「あ、ね、ウェイターさん。…新人さんですよね?何度かここには来るけど見たことないし」
「ええ。というか…臨時のヘルプですが」
 えー、とやや落胆したような声が上がった。
 別の1人が冗談めかして言ってくる。
「ちえ、折角ここに来る楽しみが増えたと思ったのにー。ざんねーん」
「…はは。それはどうも申し訳ありません。まあ今後もHoneyBeeをご贔屓ください」
 軽く会釈をすると、そのまま柳川はカウンターに戻って結花に声をかけてきた。
「オーダー。ダージリンのセカンドフラッシュ、アッサムとローズティー。それからシナモンパイとキルシュケーキ。
 …どうした?何を呆けてる?」
「あ、うん…」
 長身で眉目そのものはスッキリとしている柳川は、こうやって服装を整えて礼儀正しくふるまっていれば、結構…いや、かなりイケている。
「というか…何なのよあの板についたウェイターっぷりは!」
「そーよっ!柳川先生、普段ヤクザなのにあれじゃまるでカタギでマトモっぽいじゃないですか!」
「いや…まともなのは良いことだと思うんだけど…」
「お前らな…」
 それぞれ納得いかない顔をしているコリン達に、何だか散々なことを言われて柳川は眉を顰めた。
「…俺だって学生時代にはバイトの一つや二つやっている。昔とった杵柄というものだ。
 礼儀は人間関係の潤滑油だ。さして深く関わりあいになることもない相手ならば、うわべを綺麗に整えておけばそこそこ体裁は整う。時に必要なら礼儀くらいは切り売りするさ…と」
 大学生風の客が数人、連れ立って入ってきたのを見て、柳川はコリンとユンナを急きたてた。
「ほれ、応対。手本は見せてやったんだから、各自それなりにアレンジしてみろ。
 なに、腹の底で黒いこと考えていても気取られなければ全くかまわん。
 表面取り繕っておけばいい。
 ムカツク生意気な客がいたら、笑いつつ胸の内でそっと顔面に蹴り入れておけ」
「わー、確かにそういう一面はあるかもしれないけどムッチャ賛同したくない〜〜〜〜〜」
「でも…なんかちょっとホッとするかも。柳川さんらしくて」
 などと、貴之が友だち甲斐のない事を言っている後で。
「…ソンナ…ソンナ…」
「えーっと…」
「あの…マインちゃん?」
 壁に手をついてがっくり項垂れているメイドロボの落ち込みっぷりに、芳晴とリアンはかける言葉も見つからず顔を見合わせた。
「ソンナ……ソンナコトガ……柳川様ガ、アンナニ愛想良ク……」
「いや、そういう理由で落ち込まれても。……気持ちはわかるが」
「……デモ、柳川様のウエイターさん…………………素敵かも…」
 なんだかマイン、『萌え』を理解したっぽい。

  * * * * *

 客足が遠のく一時的なエアポケットのような時間帯。
 ようやく一息いれる余裕ができた一同は、のんびりとコーヒーを煎れながらマッタリと過ごしていた。(※一部例外アリ)
「信じられない…」
 喜んでいるのか、目の前の現実を認められず現実逃避しているのかよくわからない、ともかくちょっと虚ろな目をした結花は、ぐしぐしとホットケーキの生地を捏ね繰り回しながら、ブツブツと熱に浮かされたような独り言を呟いていた。
「コリンさんが…2回しかドツかれてないし…3時間の内で。それに、カップを割ったのが6個、注文間違えたのが3回、お客の頭に煮えたぎったコーヒーをブチ撒けたのが1回、ケーキつまみ食いがたったの7個だなんて…」
「…なんでそれでクビにならないのか不思議だなオイ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ」

 色々な疑問に苦悩する柳川の横で、ゴメンナサイ以外の言葉を忘れてしまったかのように芳晴が頭を下げ続けていた。
 が、そんな芳晴を気にした風でもなく――もしかしたら気づいてすらいないのかもしれないが――結花は虚空を睨んでブツブツと独り言を続けていた。

「ユンナさんが態度の悪い客に天誅食らわせて壊れた椅子が3脚、アイアンクローで顔面握り潰された客が2人、リアンのお尻触った中年を変な術で操って裸踊りさせたのは…誉めていいのか諌めればいいのか微妙よねー」
「…いやオジサンの裸って見苦しいからイヤだと素直に思いました俺は」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい、もーありとあらゆる人にごめんなさい――――――――――!!!」

 なんかもう、昔懐かし水飲み鳥の振り子玩具と化している芳晴だった。

「芳晴。そんなに卑屈になるな。コリンとユンナは、よくやったではないか」
「そうですよ芳晴さん。普段はこれより更に3割増しくらいですから、今日は被害軽いです」
「うううううううううう……」

 リアンの慰めがトドメになったっぽく。

「おーい、芳晴が泣き崩れてるぞ。もうグシグシに」
「嬉し泣きね芳晴!」
「………………………コリン様」

 ♪その根拠レスな断言は何処から来るかしらー?

「う〜〜〜ん…でも、今日はよく働いたー、って実感があるよね。あ、もしかして、これって労働の喜びとかいうやつ?」
「……そうね」
 不本意そうではあるが、珍しくコリンに賛同するユンナである。
 疲労はあるが、それはどこか心地よい、充足感のあるものだった。
「これで1日に割る皿が3枚以内になればもっと良いんだけどね、コリン」
「そうよね。ユンナも椅子で殴る回数は一人あたり3回以内に納めてたし」
「お前達、低レベルなことで満足するな」
 あまり人の事は言えないエビルが平然と言ってのける。
「…たまに思うんだけど、これでどうしてこの店客足が落ちないんだろう…?」
 貴之の当然の疑問に、遠い目をしたリアンが虚ろに応えてきた。
「ウチの常連さんは…結花さんで慣れてますから。結花さん、失礼なお客さんは遠慮なく蹴飛ばしますし」
「…納得」
 現に蹴り倒された経験のある柳川が実感を込めて頷いた。
「あー。…でも、今日は本当、多少はマシになってきたわよ二人とも」
 コホン、と軽く咳払いなどして、結花はややぎこちなく話の流れを変えようとしてきた。
「そりゃあ、まあ…ね?ユンナ」
「そうねぇ…」
 何となく意味ありげに、ややぎこちなく笑いあう二人を一同はやや訝しげに見つめたが。
 エビルが、ポンと手を打った。
「なるほど。目つき悪くて性格も悪いインテリヤクザ教師にすら劣るとなれば、これは恥辱の極み。人として天使として下の下の下、ということで対抗意識がメラメラと燃え上がってきたと。何と言っても口が悪くて根性曲がりなロリ趣味ヤクザ教師相にもできることなのだから、できて当然と」
「なーる。反面教師って時には有効なケースもあるってことかしら?」

 くいくいっ。

「…柳川様、柳川様」
「はっはっはっ。俺は冷静だ。もおこんなに冷静だぞぉ」
 自分の袖を掴んで抑制を訴えてくるメイドロボに、柳川はうっかり歯が光りそうな爽やか笑顔で応えた。
 微妙に棒読み口調だが。
「いやもーその笑顔がメチャクチャ不自然で不気味なんだけど柳川さん」
「はっはっはっ。何を言ってるだ貴之ー、俺は大海原のような心をもつ男さー…ところでエビル、目つき悪いとか根性曲がりとかはともかくロリ趣味ってなんだー?返答によっては貴様の命はあと1分」
「めっちゃ狭い海やん!」
「あ…目つき諸々は一応自覚あったのね」
 口調は呑気だが既にカウンターの下に半分隠れかけているコリンとユンナ。こんな時ばかり気が合う2人である。
 が、動じた風も無く、エビルは『コロス笑み』を浮かべている柳川を見て、その視線を見かけは10代前半くらいの年代にしか見えないマインに転じる。
 そして、『ヤレヤレだぜドララー』と言いたげに肩を竦めた。
「待て!待てエビル!確かにこいつは下手すれば小学生にも見えかねんがそれでも一応思いっきり割り引いて見れば中学一年生くらいは見える筈だっ!よって俺はギリギリ幼女偏愛嗜好者ではないと力の限り提言したい!」
「…微妙に気弱な反論だね柳川さん」
「…ギリギリ…ナンデスカ私…?」
 貴之とマイン、二人揃って首を捻る。
 いや実際は中学生でも十分マズイと思うんですけど。社会的には。

 と。

「二人とも…今の発言はちょっと、聞き捨てならないわね」
 ようやく何時もの調子が戻ってきたのか、生地を捏ねくり回すのを止めて結花がカウンターから身を乗り出してきた。
「なに?貴方たち?マルチちゃんとかマインちゃんとか、HM−12型を愛でるのはそんな恥ずかしいことなの?幼女っぽいから?そんな理由で?」
「……いや…別にそんなつもりは……あるかもしれんが」
「まあ…正直ちょっと恥ずかしいものはあるが」

 えう。

 何やらマインっぽい悲しげな声がしたような気がしたが、結花は気づかなかった。
 うんうん、と妙に深く頷いて腕を組む。
「ロリとかペドとか。
 まあそんな変態ちっくな変態がいるのは確かだしそういうの鬱陶しいからいるかいないかどちらかの基準で計れば断然いないほうがイイって断言しちゃうけど。
 でも可愛いものはぷりちーだしプニプニしてるから萌えなのよ。わかる?」
「………すまん、おぼろげにわかるような気はするが………」
「わかってしまったら何だか人としてちょっとアレ?とか思う…」
「そーか。わかってくれて嬉しいわ」
「わかんねーって!」
 力の限り否定するが、結花は、既にちょっぴりドリーム入っているようだった。
「マルチちゃん…初音ちゃん…あゆちゃん…澪ちゃん…マナちゃん…千紗ちゃん…あかねちゃん…スフィー(Lv1・2)…ネコ耳リアン…はふううううぅぅぅぅ……」
「ユ、ユンナ!?なんかいる!結花の背後になんかいる〜〜〜〜〜〜〜!!?」
「ああっ!?あれはプニ萌えの精霊・プニモエー様っ!!」
「まんまかい!!!」
 珍しく、貴之がユンナにつっこんだ。

 それはさておき。

 なんか妖しい精霊とか憑いてるというのもあながち間違いではなさそうな結花は、紫色の蛇仮面ライダーのようにユラユラとした不気味な動きを見せる。
「スフィーちゃん最近大人の格好してること多いし…たまに子供の姿してる時は店に来てくれないし。っていうかそういう時って大抵、健太郎と一緒ってのはどういうことー?」

 それって避けられてるんじゃ。
 ちゅうか、健太郎まさかスフィーの『そーいう時』を見計らって!?

 一瞬、結花を除く全員の脳裏に同じ疑問がよぎったが、それを口にするものは誰もいなかった。
 怖いし結花の蹴り。

「…とにかくあたしとしては、マルチちゃんみたいな娘を愛でるのは全くもって人類として当然の行いであって、非難される謂れなんてこれっぽっちも無いと思うわけよ、わかる?」
 自分一個人の趣味を人類全体まで拡大解釈せんでください。
「…まあ…一個人の趣味に留めておく分には特に問題はないと思うが」
 何となく距離を置こうとしながら、適当に相槌を打つ柳川である。そんな柳川――というかその左斜め後方に控えるマインに、結花が物欲しげな視線を向けているから。
「ほっぺ…ムニムニ……」
「結花ー。一応仮にもXX染色体を持つ身としてそーいうオドロ独り言ってやめた方がいいよー?」
「や、やーねぇコリンちゃーん。そんな変なコト、あたし企んでないよ?」
「…ユンナ。今、センス・イービル(邪悪探知)とかかけたら結花が光りそうで怖いんだけど」
「かけるな馬鹿者」
 いやでも『企む』なんて単語がポロッと出てくるあたり、何気に怪しいんですが。
「……………………」
 そそくさと、マインは柳川の背中に隠れた。
 二人の身長差は30cm以上。柳川はスツールに腰を下ろしているが、それでも少し身を屈めれば、小柄なメイドロボは案外広い背中に隠れることができた。
「や、やあねぇマインちゃん。何もしやしないわよー。傷ついちゃうなぁ、もう」
「…いきなり抱きついてスリスリ〜とか前科ありまくりますから当然だと思うんですけど」
 リアンの深い苦悩交じりの呟きに、ちょっぴり結花の笑顔が歪んだような。
「と、とにかく大丈夫ったら大丈夫よ!本当!絶対!そりゃあ暗がりで人通りの無いわき道とかでバッタリとかしたらつい持ち帰ってしまうことはあるかもしれないけど今は絶対大丈夫だから安心して!」
「それで安心しろというのはかなり無体じゃないのか!?」
 喚く――というより呻く柳川の上着を掴んだまま。
 それでもマインは――おそるおそる、とではあったが――そおっと、顔を覗かせた。
「……結花…サマ?」

 某消費者金融CMの、ロングコート・チワワのような目をしていた。

 ………。
 …………。
 …………………。

「……じゅるっ♪」
「『じゅるっ』ってなによ『じゅるっ』て〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
「邪悪殲滅―――――――――――――――――――――!!!」 

 すか〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!(×2)

 コリンのドラゴンライダーキックとユンナの飛翔斬がダブルで結花をスっ飛ばした。(※気持ち的には)
「ふ、二人がかりでファイナルベント祭りなんて卑怯じゃないのっ!?」
「うっさい!プニ萌え好きを咎めたりはしないけど、少しは落ち着きなさいっ!」
「同じく!というかアンタ邪魔よコリン!」
「ひ、ひどいわ二人ともっ!あたしはただ、ちょーっとあの触るとモニモニしてふにふにしてほわ〜〜〜んなホッペにちょっと控え目に思う存分ほお擦りしてプニプニしてはにゃ〜〜〜〜んとかチョッピリ思っただけよ72時間ノンストップで!」
「「それがあかんのやろが〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」

 あっという間に2対1の変則マッチのリングとなった店内。
 その騒動の中、適当なテーブルを盾にして茶道具一式と共に隠れた一同は、自然消火を待ちに入った。
 必殺・成り行きまかせ発動。
「…あの、止めてないんですか柳川先生?っていうか止めてくれないんですか?」
「芳晴…」
 適当にカウンターからかっぱらってきたマグカップにコーヒーを注ぎながら、片胡座で座り込んだ柳川はシニカルな笑みを口元に浮かべた。
「俺は自分の生命健康を危険に晒したくない」
「…自分のケンカの時にはどうしてそーいうことに気づかないのか?この男」
 同じく適当にガメてきたシュークリームをモフモフと咀嚼しながら、エビルが微妙に肯定してくる。
 事態の終息を計るつもりナッシングな二人の助力をあきらめ、芳晴は1人決然としてテーブルの裏から三人の戦いに目を向けた。

「結○スペシャル〜〜〜〜!!」

 ぷすっ。

「のおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!?」

 コリンの超必殺技発動!
 結○スペシャル…別名『7年殺し』ッ!!
 両拳を組み、人差し指だけを伸ばす。そしてそれをローリングしながら一気に相手の後ろに浣腸するという、やった方もやられた方も微妙にブルーな荒業であるッ!!
 素直に只のカンチョウだと、何故言えん俺。

「お・お・お・お・お…」
「あ。……ごめ〜〜んユンナ」
 流石にバツの悪そうな顔で、軽くコリンはユンナを拝んだ。
 そんな彼女にユンナはお尻を手で抑え、少し内股気味にヨロヨロとコリンの方を向いた。
「な・な・な・な・な」
「なにやってんのよこのお馬鹿ッ!…って言いたいのかな?」
 脂汗を滲ませて、空しく口をパクパクさせるユンナを見かね、当面の敵である結花が通訳する。
「ごめん、チョイ、手元が狂っちゃった。テヘッ☆」
「あ・あ・あ・あ・あ」
「アンタって娘はあああっ!味方を攻撃してどうする!…かな?」
「もー。あやまったじゃない。ホント、ユンナって根性悪よね〜〜〜」

 ………………。

 プルプルと、お尻の痛み以外の激情に身を震わせているユンナから目を逸らし、芳晴は静かにテーブルの影に身を沈めた。
「コーヒー、飲むか?」
「……いただきます」
 何だか、全てに疲れ果てた顔をした芳晴にそれ以上は何も言わず、僅かに苦笑して柳川はカップを渡してやった。
 黙ってそれに口をつける芳晴の隣に、貴之が寄る。
 しばらく俯き加減で黒い液体をすする芳晴を見やり、それから、爽やかな口調で、言った。
「なんていうかさ。
 俺が思うに、コリンちゃんとユンナさんが色々と失礼なことして騒動巻き起こしてるけど。
 別に二人が居なくても、結花さん、やっぱり似たようなトラブル起こすし。
 似たもの同士ということでさ?
 芳晴君が心配するほど、大したことじゃあないんじゃないかなー、と自己完結してみない?」
「うむ。欺瞞だとは思うがまあ概ねそれで問題はないと思うぞ芳晴?」
 エビルも横からそう口を出す。

 だから、というわけでもないが。

「…なんか…色々なことを置いてきぼりにしている気はものごっつするけれど…」
「うんうん。でもまあ、捨て置けるってことは、そう大した問題じゃないさ、きっと!」
「そうとも。とりあえずあいつら相手にまともに悩むだけ馬鹿みたいだぞ芳晴」
「……そう……かもね……」

 騙されてる。というかついに考えるのに疲れたか。
 ともかくも、小さく頷いた芳晴の顔には、どこか開放されたような喜びが垣間見えたようでもあった。

 めでたし、めでたし。






















「う…ううう……胃が痛いです………」
「リアン様……正露丸、飲ミマスカ?」

 が、生活に密着してトラブルに直面しているリアンは、そんな風に自分を騙すことは中々できないようで。
 負けるなリアン。
 くじけるなリアン。
 ひょっとしたら今頃はロリ偏向趣味を満足させているかもしれないLoverも多分、見守っている筈だ。

 作者もまあ、てきとーに投げやりな気分で見守っておこうと思う。
 
 

 <了>



【後書き】
 
「お煙草お吸いになりますか?」

 これ、NGワードだそうです。接客マニュアルでは。
 正しくは、

「喫煙席と禁煙席とございますが?」

 とかだそうで。
 うーん、奥が深い。
 なにげにコリン(&ユンナ)のバイト話も続いてます。彼女たちがPiaキャロットに出張ヘルプできるまでに成長する日は来るのでしょうか?
 その前にリアンの胃がぶっ壊れるに100ゾルダ。(ヒデェ)





 ☆ コメント ☆

セリオ:「そ、壮絶ですね」(;^_^A

綾香 :「なんて言うか……バイオレンス喫茶店?」(^^;

セリオ:「サービスとして、もれなく騒動が付いてきます。
     そんな感じでしょうか」

綾香 :「とんでもないお店ね」

セリオ:「ええ、全くです」

綾香 :「ホント、とんでもなく魅力的だわ」(^^)

セリオ:「……は? ミリョクテキ?」(・・?

綾香 :「だって面白そうじゃない」

セリオ:「そ、そうですか?」

綾香 :「見ていて飽きないだろうし」

セリオ:「確かに飽きはしないかもしれませんが……」

綾香 :「それに、さ」

セリオ:「それに? それに何です?」

綾香 :「腕が鳴るじゃない」(^^)

セリオ:「……」(ーー;

綾香 :「ねえ、セリオ。今度、一緒に行きましょうね♪」(^^)

セリオ:「……巻き込まないで下さい、お願いですから」(T-T)




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