私立了承学園
Extracurricular activity:「警備部・待遇改善闘争」




「ごめんなさいねー、授業中に呼びだしてしまって。」



昼休みが終わり、午後の授業がはじまって数十分。後2時間ほどで、放課後と言う時間帯。

机の前に居並んだ3人に対し、神岸校長はまず、校内放送での突然の呼び出しを謝罪した。
水瀬理事長と比較するとほんの少し砕けた口調だが、そこから負の印象は感じられない。
彼女のそういう話し方は「校長らしくない」部分であり、それは気さくさや親しみやすさとして、
学園内では常に好印象として受け止められていた。

「・・・また、何かトラブルがあったのでしょうか?」

左右にいる二人にちらちらっと目をやって、まず自分が代表して校長と話す形になっている事に
気付いた芳晴は、そう簡潔に切り出した。

芳晴の右には、彼より更に長身の男―柏木家当主、柏木耕一が無言で立っている。
左側には大人しく遠慮がちに、長瀬祐介が控えていた。普通に並んでいるのだが、
芳晴も耕一も背が高い上に、祐介自身の目立たない印象が加わって、やや後ろに
控えているように見える。


了承学園多妻部の最強特殊能力者三傑が、今、校長室に集結していた。


呼び出されたのがこの3人という時点で、何か彼らの特殊能力に頼らざるを得ない厄介事が
起こったと想像するのは容易だった。実際今までも、何度か似たようなケースは存在している。

芳晴の率直な質問に、神岸校長は彼の目を真っ直ぐ見つめながら応じた。

「ええ・・・。実は、裏山の特別区域に調査に行っている警備主任さんから、つい先ほど電話があったの。
長瀬祐介君に、大至急現場まで来てもらえないかって。」

「え・・・僕、ですか?」
祐介が、困惑したように問い返す。こっくりと祐介に向かって頷いてから、神岸校長は説明を続けた。


「教頭先生と警備部の皆さんは、昨日から以前裏山で発見された遺跡の調査に向かわれたんだけど・・・
何かそこでトラブルがあって、祐介君の力をどうしても借りたいそうなの。電話がうまくつながらなくて、
あまり詳しい話は聞けなかったんだけど、とにかく祐介君の力が必要だって強調されていたわ。
ただ、こういうことに関しては私は専門ではないし・・・タイミング悪く、専門家のルミラ先生は別の区域に出張
なさっていて、今日は戻れないの。それで・・・恥ずかしいんだけど、芳晴君と耕一君にも同行してもらって、
警備部の皆さんの調査に協力してもらいたいのよ。・・・あ、もちろんこれは学生の枠を越えた依頼だから、
それなりに御礼はさせてもらうつもりでいるし、授業の出席の方は私から各先生に伝えておくから・・・・・
心苦しいのだけれど、またお願い、できないかしら?」

「また、オーパーツがらみですかぁ?」
ちょっと嫌そうに顔をしかめた耕一を控えめに手で制してから、芳晴は腕を組んで少し、思案した。


呆れるほど広い了承学園の敷地内からは、特異な空間にあるせいなのか、実際には存在するはずの無い
遺跡とか、埋蔵品とか、呪われた品だとか地球外物質で構成された何たらとか、とにかく変な物が発見される
事が多い。そういった物の中には、時に危険物が含まれている場合もある訳で、学園にはちゃんと、そういった
超常物品に対応する専門スタッフがいる。集積管理保管庫も設けられていて、学園以外の場所から見つかった
品を受け入れる事もあるようだ。

また、不用意に接触するとかえって危険がありそうな場合は、立ち入り禁止区域を設けて対応する事もある。
物によってはいたずらに手を出すと返って悪い事態になる事もあるわけで、今回教頭達が調査に向かっていた
場所も、そういう場所のひとつである。当分そのまま特別区域として放置されるはずだったのだが、場所が割と
人が足を踏み入れてしまいやすい裏山にあり、いつまでも放って置くというのもまた危険だろうと、対策が検討
されていた。

そんな折、先日超常品がらみで学園全体に影響するような事件が起こった。芳晴自身も協力して事態は終息した
ものの、警備や管理体制について再検討がなされるのは当然の流れだ。
その一環として、これを機会に学区周辺の特別区域については念入りに再調査して、学園住民の安全に万全を
期したほうがいいと、職員会議でルミラ教諭が提案したのである。

そういった経緯を、芳晴は直接ルミラから聞いていた。だから放送で呼び出された時、ある程度の予測もついて
いたし、自分が城戸家の次男である以上、こういう面で協力を期待されるのも自然な流れだと思っている。
本音を言えばエクソシストの能力はあまり使いたくないのだが、この辺はもう、城戸家に生を受けた者の
運命として、あきらめる・・・と言うか、割り切る事ができている。それに、自分も学園内に住む学生である以上、
無関心でいる事はできない。
なにより芳晴の性分上、校長や職員が困っていたら、援助を惜しむ事などできようはずもなかった。
城戸芳晴とは、そういう男である。

自分が協力する事に関しては、断る理由はない。

ただ・・・・・・


「・・・・解りました。ただ、協力させていただくにあたって、ふたつほど要望があります。」
「要望、ですか?」
「はい。」

条件、と言わない所が芳晴らしい。だが、芳晴の言葉のトーンがなんとなくいつもと違う事に気付き、
ひかりは幾分緊張した表情を浮かべた。耕一も、ちょっと意外そうな視線を芳晴に向ける。
祐介は・・・何か他に気になる事があるのか、少し俯いて考え事をしているようだった。

「まず・・・今回の件は、学内特別区域での課外奉仕活動と言う形で、単位として認定してください。
御礼というのは結構です。」

「・・・・・・・・あ!・・・は、はい、ハイハイ、それは問題ないわ・・・・・・・ご、ごめんなさいね芳晴さん、
私、そんなつもりでは・・・・」
「い、いえ!・・・・そ、その・・・そういう事で、よろしく、お願いします。」

珍しく慌てた様子をみせ、やや過敏に気を使い始めたひかりの反応に、逆に芳晴本人も少し慌てる。


細かい経緯は知る由も無いが、芳晴がエクソシストとしての人生に反発して実家を離れたと言う事は、
ひかりもルミラ教諭から聞いていた。それを考えると、学校長から彼の特殊能力を使ってバイトをしてくれ、
みたいな事を頼むのは、やや配慮に欠けた行動と言えるかもしれない。別に金銭で、とか具体的に考えて
いた訳ではなかったが、それでも不用意に「御礼」などという言葉を持ち出してしまった事について、ひかりは
自己嫌悪を覚えた。

また芳晴も芳晴で、無意識にやや剣呑な言い回しになった事を恥じているようで、自分に対して小さく
舌打ちをした。それは、すぐ横にいた耕一にしか気付かれないものだったが。


「そ、それと・・・・ですね。今回は、俺と耕一君の二人で行きますので。祐介君は、通常授業に復帰させて
あげてください。」

はっとして祐介が顔を上げたのと、耕一がほっと、息をついたのが同時だった。
ひかりは一瞬途惑って祐介の方を見たが、すぐに芳晴の方を見直して、やや慎重に言葉を紡ぐ。

「ええと・・・警備主任さんからの電話では、特に祐介君の協力が要るという事だったのだけれど・・・・」
「いえ。まず、俺達二人で行きます。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ひかりへの敬意を感じさせながら、それでもはっきりと芳晴は言い切った。ひかりは意外そうな表情を浮かべて
芳晴と祐介を見比べてから、再度口を開こうとした・・・が、その前に祐介が、慌てた口調で話し出した。

「あ、あの、芳晴さん、僕も参加しますから・・・」
「ありがとう。でも、まずいったんは状況を見てからだ。本当に祐介君の助力が必要なら、また連絡するよ。」
「大丈夫だって祐介。こっちは俺らに任せて、病院行ってこいよ。」
「病院?」

耕一の言葉に、神岸校長が聞き返す。耕一ではなく芳晴が、事の説明にあたった。

「今日、病院に入院している祐介君の友達が、角膜移植手術を受けるんです・・・祐介君、確か放課後すぐに
お見舞いに行って、手術が終わるまで病院で待っててあげる約束なんだろう?」
「え、あ、は、はい・・・・」

角膜移植手術は成功率も高く、簡単な場合なら術式も1時間程度で終了する。
だが、今回の祐介の友人は、まだ5歳の小さな女の子だ。やはり不安だろうし、恐怖もあるだろう。
祐介や瑠璃子がついていてあげれば、この上ない励ましになるはずである。

「まあ・・・・・もう祐介君、どうしてそんな大事な事、早く言わないの?解りました。そういう事でしたら、
私からその旨を警備主任さんにお伝えしておきます。芳晴さん、耕一さん、よろしくお願いしますね。」

「「はい。」」

「あの・・・すみません、芳晴さん、耕一さん・・・」

申し訳なさそうに言う祐介に、芳晴はただ、にっこりと微笑んでみせる。代わりに耕一が、苦笑しながら
言葉を発した。

「こういうときは、ありがとう、だけでいいんだよ、祐介。」




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




「・・・芳晴さんが祐介の参加を退けたのは・・・・病院の件以外にも、何か理由があったんじゃないですか?」

「ん・・・」




廊下で祐介と別れ、校舎を出て、学園の裏山へと続く道すがら・・・耕一はそう、芳晴に話し掛けた。
それまでなにやら思案をめぐらしている様だった芳晴は、ふっと我に返ったように顔を上げてから、
まっすぐ前を見たまま語りだした。

「祐介君は・・・・今、一番がんばってる時だ。少しの水も差したくない。彼には今、こういう事に参加している
時間はないんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうすね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・飴、食べる?」
「あ、ども。」

着ていた薄手のパーカーの大きな前ポケットから、文庫本より一回り小さいぐらいの缶を取り出して、
耕一に差し出す。

「懐かしいすね、缶入りドロップ。」
「だろ?購買で見つけてね。つい買っちゃったんだ。」

ちょっと恥ずかしそうに苦笑してから、芳晴はまた、前に視線を戻して言葉を続けた。

「祐介君の能力は・・・・彼や、子供たちが笑うために、使われていればいい。元々こういう事に
向いているとは思えないし、今は俺達がいるんだから・・・・俺達で、やればいい。」

「まあ、校長先生は専門家って訳じゃないですし・・・警備のラルヴァに言われれば、立場上祐介にも
伝えなくちゃならないのはしょうがなかったと思いますけど。あれ、これサクマドロップじゃないんですね?」

よく見れば、缶上部の取り出し口が左側ではなく中央にある。缶の断面も、ややつぶれた楕円形だ。

「ああ、フルーツドロップってね・・・・大手会社で出したやつで、俺の実家の方ではこっちの方が
よく見かけたな。」

かしょんかしょんと缶を振って、自分もひとつドロップを口に入れ、話を続ける。

「祐介君は優しいから・・・特に依頼されなくても、話を聞けば協力を申し出ただろうし。病院の事もきっと、
やむをえないと我慢してしまったんじゃないかな?」
「今のあいつ、反動なのか人に気を使うのが癖だから・・・・」


何事も、最終的には学生・生徒自身に決断させるのが、水瀬理事長の方針である。
だから、教師の側から決定した事項を報告し、学生がそれに従う、という形はまずほとんどおこらない。
今回のような場合でも、一方的に協力を要請される事はないし、逆に全部職員が処理して
情報が学生に流れない、と言う事もない。学生の協力が必要と判断されれば、
それは教師からの要望とか、嘆願と言う形で伝えられる。

そして、協力するか、断るかは、あくまでも各自学生・生徒の判断に委ねられる。
そういう意味では、警備から伝えられた要望を神岸校長を介して祐介が知るのは、間違いなく
必要な事だ。





でも、と、芳晴は思う。

「授業方針や課外活動に関してはそれでいい・・・でも、今回みたいな事は、大人がやればいい事だ。
いくら学園内にすんでいると言っても、特殊すぎる分野だし・・・危険も、あるかもしれないし。
彼らは気にせず、存分にしたい勉強をすればいい・・・・今は、そういう時期だ。
今そこまでやらせなくても、大人になってから、自然と背負う事なんだから。」

学園の皆に協力するためなら、祐介は自分の特殊な能力を使う事もいとわないだろう。
その辺は祐介だけでなく、他のクラスのものも概ね一緒だ。中には事態が伝えられなければ、
逆に水臭いと怒り出すような連中もいる。神岸校長の今回の呼び出しは、その辺を汲んでの事も
あるだろう。

だが、そうは言っても祐介はまだ高校生だ。これから大学受験があり、多くの時間がそれに割かれるだろうし、
受験以外でも学びたい事、やりたい事がいっぱいあるはずだ。

今は、それに没頭していて欲しい。それこそ全神経をそういったことに向けて楽しむべきだ。
そういったことが許される時間、そういうことを全力でやるべき時間がまさに今だと思うし、そういう時期は
大人になるために必ず必要な時期だと、芳晴は感じている。


そして、そのための環境を保証するために、ある程度の事は自分達がやってあげるべきだと思う。
自分もまだ若造で、偉そうな事を言える立場ではないけれど・・・それでも彼らより長く生きているし、
彼らが知らない世界で生きてきている。
彼らが存分に学生生活を楽しむために、そのぐらいのレールは、自分らが引いてあげた方がいい。
それが、先に生まれた者の勤めだ。今回のような特殊な事を、わざわざ祐介君に知らせる必要は
ないではないか・・・・


「・・・・・・・・・甘い、かな?」
「いえ・・・・・・それで、いいんじゃないですか?今回は警備の方から、名指しでの連絡があったらしい
ですから仕方なかったとして・・・俺も祐介には、もっと遠慮しないでいてほしいですから。」

そう言ってから、耕一も僅かに思案する。

常識という言葉が削除されてしまっているこの学園の日常を見れば、否応無しに巻き込まれる、
という事態もあるだろう。だが、常識知らずという点では、学園職員の特殊スキルも一緒なのだ。
大抵の事は対処できる。もし手に余るなら、まず自分ら年長組の学生が協力するのがいいだろう。

大して歳は違わないのに子ども扱いされていると、浩之などは怒るかもしれない。だが耕一もやはり、
祐介は病院で子供たちを慰めてやればいいし、浩之や綾香はリングの上で存分に戦っていれば
それでいいと思う。

「・・・俺は、腕っぷしだけがとりえですから・・・・気軽に声掻けてもらって、だいじょぶですよ。」
「ありがとう。頼りにしてるよ。」


耕一の好意に素直に謝意を表してから、芳晴はちょっと、自虐的なことを考えた。

(・・・・・代償行為なのかもしれないな・・・・)


祐介には少し前の自分に似ているところがあると、芳晴は感じていた。

芳晴自身もうまく説明できないのだが、祐介にはなんとなく・・・何か、自分を抑えて行動して
いるような印象を感じる。それが、実家にいた頃の自分と重なって・・・それでできるだけ、
やりたい事だけをやらせたいと思うのかもしれない。となると、やはり、甘いのだろうか?


エクソシストの家系に生まれ、一般家庭とは違う育ち方をした。
まだ児童と呼称される年齢から、多くの超常的な事件の処理に関わってきた。
父親の教育方針のせいもあるが、普通の子供のような時間はほとんどなく、放課後は習い事と、
仕事の手伝いに追われていた。友達と遊ぶ時間もあまりなく、学校の帰りに駄菓子屋によって
買い食いすることもなかった。

兄や父の露払いに明け暮れて、いつしか名も知れるようになった。
ただし、学校の同級生達には、決して知られない世界の中で。
百戦錬磨の経験を積むほどに、他の学生達との距離が開く気がした。
孤立するような事はなかったが、他の学生と一緒に過ごす時間は少なかった。
ひたすらマイペースなパートナーのコリンが、時折、無性にうらやましかった。


兄に一歩でも近づこうと修練を重ね、着実に向上してきたエクソシストの能力が、無価値に感じる
ようになった。時折コリンが分けてくれた、体に悪そうな駄菓子が懐かしく、なにかとても価値ある
物のように思えた。

エクソシストして上達するたびに、自分を縛る鎖が増えるような気がした。
そして、それでも日々の修練を止められなくなっている自分に、ひどく途惑った。

他にも要因はあったものの、自分が城戸の家を出たのは、そんな時期の迷いや抑制に縛られ続けて
いた自分を変えたいと思った、という部分が強い。
少年時代のこと、家を出た事に、芳晴は後悔していない。実家の記憶が、別に辛い思い出ばかり、
ということもない。
ただ、やはりちょっと遠回りをした感じはあるし・・・何より実家の家族とは、随分疎遠になってしまった。


自分の境遇のせいか、もしくはその能力のせいかわからないが、芳晴は始めてあった時すぐ、
祐介の能力に気付いた。そして、それに対する祐介の戸惑いも、つぶさに感じる事ができた。
精神電波能力の危険性を最も恐れているのは、沙織でも香奈子でもなく、祐介自身なのだ。

だから祐介が、授業をきっかけに病院で子供たちと出会い、望まずに得た己の超常能力に喜びを
見出せた事は、芳晴にとっても非常に嬉しかったし、羨ましくもあった。


そんな理由もあって、芳晴は警備や戦闘などの仕事に祐介を協力させる事には、どんな形であれ
否定的になる。耕一や他の教職員にも似た感情はあるようだが、芳晴のそれは人一倍強い。
エクソシストの能力ゆえに普通に暮らせなかったかつての自分を、祐介に重ねてしまうからだ。

耕一もさっき言ったが、ただでさえ、祐介は周りに気を使い過ぎる部分があるし・・・・・
自分を殺しすぎないかと、不安になる事が時々ある。もちろん祐介には瑠璃子達が付いているから、
芳晴が心配する事はないのかもしれないが・・・・










「・・・・・・・・・・拓也君、かな、問題は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「?なんか、いいました?」
「・・・・フルーツドロップのハッカって、こんなに甘かったっけ?」
「あー俺、喉飴以外のハッカ系の飴は駄目です。」

露骨で不器用な話題のそらし方に内心で苦笑しながら、耕一は心の中で、『拓也って誰だったかな?』と、
記憶をたどっていた。






☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆






「・・・・しかし・・・・どうも、妙な気がしないか?」
「なにがです?」


立ち入り禁止、とかかれたフェンスを跨ぎながら、芳晴は校長室を出てから考えていた事を耕一に話す。

「ルミラさんは別区域に出張中って言ってたけど・・・それにしたって学園内な訳だし、この学園の警備部に
限って、連絡がつけられないなんて事はありえない気がするんだ。」
「そういえば・・・・」


言われて耕一も気付く。そもそも学園の警備員は、ガディム教頭の眷族とも言えるラルヴァ達がほとんどだ。
電話なんて物を使わなくても、はるかに高速で確実な連絡伝達が行えるはずだし、伝令を放ってもそう時間が
かかる距離ではない。そもそも、電話がかかりにくくなるような場所でもない。

それなのに、立場的には責任者とは言え、専門知識の乏しい神岸校長に直接電話が行くと言うのは、
ちょっと変な話だ。普通ならまず、ルミラやティリアに話が行くはずだし、それができないにしても、
警備員が伝令に来て、直接校長室で事態を説明するぐらいはできないはずがない。

警備主任からの連絡というのも妙だ。普通、校長等の管理職員には、調査の総指揮にあたっている
ガディム本人から連絡があるはずである。

それすらできない、となればよっぽどのおおごとという事になるのだが、ここまで近くに来ても、特に
危険な雰囲気は感じられない。あたりではのどかに鳥が鳴いており、動物たちにも緊張した雰囲気はない。
平和そのもの、といった感じだ。それに実際にそんなおおごとになっているのなら、祐介を呼ぶより先に
避難勧告が発令されるはずであるが、学園では通常授業が続けられている。


「・・・・・・つまり、連絡ができないんじゃなくて・・・・したくない何かがある、って事じゃないかと?」
「勘ぐり過ぎかもしれないけど・・・・・・どうも、やーな予感がする。」
「芳晴さんのや―な予感は、的中率高いですからねぇ・・・・あ、ここです。この崖の・・・あそこ。」


山道の途中からちょっと脇の茂みに入って、耕一は岩が露出した崖を指し示した。
耕一の頭の更に上、地面から約3mの高さに、大きな穴が開いている。
元は、穴の位置まで足場があったのだろうが、年月が経つうちに崖が崩れたのだろう。


「・・・自然にできた物じゃないな・・・・大分崩れてるけど、入口から、階段になってるふわぐくっ!!?」


案外身軽に岩壁に取り付いて、洞窟の中を覗き込んだ芳晴の眼前に、ぬぼっと黒ラルヴァがどアップで
顔を突き出した。意表をつかれて岩から飛び降りるが、下りた拍子にドロップを飲み込んでしまい、
少し咳き込む。

「・・・・まだ、なめてたんすか?俺は大抵、3分ぐらいで噛み砕いちゃいますけど。」
「けほ・・・俺は、噛まない主義なんだ。貧乏性で。」
「へー。」

かなりイイトコの子供だったらしい芳晴だが、それゆえに普段食べられなかった駄菓子への
こだわりがあるのかもしれない。

「アー・・・・ドモ。御散歩デスカ?御二人トモ。」
「わざわざ立ち入り禁止区域に散歩に来ないですよ。校長に言われて、様子見に来たんです。」

なにやら気まずそうに目を泳がせながら言う黒ラルヴァを意思の強い視線でバシッと固定させ、
芳晴が答える。威圧的な印象はないが、隠し事、後ろ暗い事がある者はそれだけでひるみ
そうなまっすぐな視線だ。

「ア、アー・・・ナルホド。イエ、チョット中ニイタモノデ携帯電話ノ電波ガ届カナクテデスネ・・・・。」
「祐介君なら来ませんよ。状況を教えてください。」
「・・・・・・・ハイ。」

なにやらくねくねと話を引っ張ろうとしつつ、二人の背後に祐介の姿を探している黒ラルヴァに、
更にはっきりと簡潔に告げる。この黒ラルヴァの態度を見る限り、どうやら今回も芳晴のやーな予感
は的中したようだ。

「エートデスネエ・・・・ソノ、トリアエズ、中二入ッテ貰エマス?危険ハアリマセンカラ。」
「・・・・危険は、ない?」
「ハイ、マア・・・タダデスネ、チョォーット厄介ナ事ハ起キテルンデスケド・・・・」

どうにも歯切れが悪く言いよどみながら、洞窟の奥に戻っていく黒ラルヴァ。芳晴と耕一はいったん顔を
見合わせてから、同時にはあ、とひとつ溜息をついて、黒ラルヴァに続いて洞窟に入った。




























「待遇改善!!不当ナ残業ニNO!!」

「暮ラシニ安心!!学園ニ元気!!」

「学園ハ警備部職員労働組合ノ承認ヲ!!」

「無償バイト協力反対!!
現場重視ヘノ政策転換実現!!」















「・・・・トマア、御覧ノヨウナ次第デ。」
「いや、御覧の様なって・・・・・・・・・」


果たして洞窟の奥深く。
そこにはテニスコート2面分ぐらいの広さの四角いホールがあり・・・・その奥に、何か教会の
礼拝堂のような建物が続いていた。洞窟の壁がその木造の建物につながっていて、
岩の中に埋め込まれた教会、といった感じだ。その建物を覆うように、何か特殊な霊的空間が
形成されているのが芳晴には感じ取れた。しかし、それ以上に異様を放っているのが、建物前に
終結している警備員ラルヴァ達の様子である。



赤いたすきに赤い鉢巻、空色の腕章にプラカード。のぼりにデコイ。

『決起団結』と正楷書体で書かれた旗を振りかざし、5月1日チックなコールを叫んでいる。



「ドウヤラコノ遺跡ハ、何カ宗教上ノ目的デ創ラレタ物ノヨウデシテ。
アノ建物ハ、告解室ノヨウナ場所ダッタラシイノデス。」

「「告解室?」」

「ハイ。アノ建物周辺ノ空間ニハイッタ者ハ、アラユル呪縛ヤ柵カラ解キ放タレル、精神魔法ニ
カカル様デ。修行者ハアノ建物デ己ノ罪、己ノ本心、己ノ後悔ヲ全テ吐キ出シ、新タナ精神鍛錬ヲ
行ウ前ニ己ノ邪気ヲ祓ッタト。出土品ノ記録ニソウアリマシタ。」

「なるほど・・・しかし、精神魔法まで施す必要があったのかな・・・・」


一人ごちながら、芳晴は黒ラルヴァが指差した場所に歩み寄る。そこには大きな木箱から出された
古い書物が積んであった。紙ではなく羊皮紙を用いた物であることからも、相当古いものであることが
伺える。


人が生物である以上、己の中の欲を完全に消し去る事は不可能だ。
一切の煩悩を無くして真理を悟りたい、悪の心から解き放たれて楽になりたい、
そう願う事自体もまた欲であり、突き詰めていくと欲が無くては生物は生きられない。
欲そのものは悪くはない。欲に我を忘れる事が問題なのだ。

だが、普段聖者と信じられている人ほど、往々にして己を抑えようとしがちである。
無理に欲を押さえつけようとして、結局我を忘れてしまう事もある。
だからこういった、己と向き合うための環境を用意するわけだ。

知的好奇心が刺激されたのか、出土品を手にとって確かめている芳晴に代わり、
耕一が黒ラルヴァに質問を続ける。


「あー、つまり。今、あそこにいる連中からは、本音が惜しみなく迸っていると、そういうことか?」
「・・・恥カシナガラ。理事長ガコノ場デ交渉ニ応ジルマデ、ストライキヲ続ケルト言ッテ聞カンノデス。」

はあ、とまた溜息をついて、再度デモ隊のほうに視線を送る。














「無計画ニ量産シタ新規部隊、アッサリトリストラスルナ!」


「耀駆ノバイトシフトニ、勝手ニ警備員動員スルナ!
特別手当ヨコセ!!」


「自分ノ趣味ニ警備員イチイチ付キアワセルナ!
思イ付キデ警備シフトコロコロ変エルナ!」


「同朋ヲ新型ロボットト偽ッテ業者ニ売ルナ!アニメニ影響サレテ、
シンメトリカル・ドッキング強要スルノモ止メロ!!」


「巡回中ニ、コンビニニ買物ニ行カセルナ!
オニギリノ具デウルサク言ウナ!!」


「詰メ所ノ仕出弁当、根コソギ持ッテクナ!
モッテクナラモッテクデ残シテ腐ラセルナ!!」


「ミンナデ買ッタプレステ、独リ占メスルナ!
コントローラーヲ、オヤジ特有ノ粘液デヨゴスナ!!」


「誰モヤラナイクソゲーバッカリ買ッテクルナ!
経費デ落トセ無カッタカラッテ、ゲーム代ヲ警備員ノ給料カラ
ピンハネスルナ!!」


「寒いダジャレイウナ!風呂ニハイレ!ゴミハ自分デ分別シロ!!」





「・・・・・・ストなのか、あれ?」
「我等ニハ、命ガケノ行為ナンデス・・・・」
「なんか、ガキのけんかっぽい気がするが・・・・」
「ソンナレベルノ不満サエ、口ニ出来キナインデス。トニカク、理事長達ニ知ラレル前ニ何トカシナイト。」
「いーじゃないか別に。理事長呼んで来れば?きっとこの機会にいろいろ聞いてくれるぞ。」
「ト、トンデモナイ!!」


耕一の率直な提案に、黒ラルヴァだけでなく、近くにいるラルヴァ達全員が壊れた扇風機みたいに
首を振る。


「我々ハ、ガディムヨリ産ミ出サレシモノ・・・故ニ、ガディム様ニ「オ仕置キ」ガ下レバ、
結局ハ毎度毎度、我々ニシワヨセガ来ルンデス!!大将ガジャムサンド食ベル度ニ、新人ノ質ガ
落チルンデス!!ソーデナクテモ、御大ノ八ツ当タリハ日常茶飯事ナノニ!」

「いや、その辺は皺寄せが行かないように、あんたがしっかりしてないとダメだろ。主任なんだから。」

「主任ッテ言ッタッテ、別ニ発言権ガアルワケジャ無インデス!坐シテ動カズ、ジット耐エルシカ!
最近少シハマシダッタノニ、マタ波風立テラレタラコッチノ胃ガ持チマセン!!」

「・・・・胃、あっんだ。へー。」

「最近気付キマシタ!!ナンカ近頃、空腹時トカ雨ノ日ニ股間ガシクシク傷ムンデス!」

「・・・・原因はストレスかもしれんが胃じゃないぞソレ。」

「ソレナノニ保険証ナイカラ病院イキニクイシ保健室行くト逆ニ怪我ガ増エルシ!
モー、ワタシハ多クハ望マナイカラコノママ定年マデ無難ニ乗リ切リタインデス!」

「・・・・定年?」

「ソモソモ、我々ハドウヤッタッテ、大将ノ命令ニハ絶対服従ナンデス。ダカラ組合ナンカツクッテモ、
別ニ意味ナンカ無イワケデ。逆ラウ事ハ自己ノ弱体化、ヒイテハ己ノ存在ノ否定ニ繋ガリマス。」

「じゃあ、今あの中にいる連中も弱ってるのか?」

「アノ中ニイルウチハ大丈夫ノヨウデスガ。ドウヤラ空間内カラ霊的エネルギーガ出テイテ、
内部ノ者ハ完全ニ保護サレテイルヨウデシテ。タダソノオカゲデ、魔力的ナ攻撃モ一切無効デス。」

「外から攻撃は出来ない、完全密室型の修行部屋って事か・・・乗り込んでって、強引に引きずり
出すのは?」

「試ミタンデスガ、中ニハイッタ連中コトゴトク、スト側ニ寝返ッテシマッテ・・・・」

「逆らえなくても、不満は溜まるのな・・・・難儀なもんだ。」

「・・・・・・・・それで、祐介君を呼んだというわけですか?」


これまで黙って聞いていた芳晴が、黒ラルヴァに問いただす。言葉遣いは丁寧だが、なんとなく
語気が強い。


「ア、ハイ・・・祐介君ナラ電波デ容易ク連中ヲ眠ラセテクレルカト・・・手荒ナ事モシナイデ済ミマスシ。」

「つまり、あなたの中間管理職としての職務放棄のために、祐介君の精神電波の能力を利用する
おつもりだったのですね?」

「・・・・・イヤ・・・・・ソノ・・・・・要約スレバソウイウ風ナ言イ方モ出来ナクハ無イカナー、ト認メル事ニ
ヤブサカデモナイトイウカ・・・・」



怒ってる。ああ、やっぱし怒ってる。

決して睨んではいないものの、ひたすら真っ直ぐな芳晴の視線に気圧されて、黒ラルヴァは
冷や汗と脂汗と涙を心の中で垂れ流しながら、じりじりみみっちく後ずさる。

気が優しくて、大抵の頼みは無理しても聞いてくれる祐介をテケトーに懐柔し、
事態を闇から闇に葬り去るつもりだったのに。
よりにもよって、教職員よりよっぽど融通が利かない相手が来てしまった。
属性面でも対極に位置する芳晴は、ラルヴァ達にとっては最も苦手な相手といってよい。




「いや、しかしこりゃぁ・・・・祐介つれてこなくて正解でしたねぇ・・・・」
げっそりした表情でデモ隊を眺めてから、耕一が呟く。







「柳川反対!メイフィアニNO!!」


「人ヲ回天カナンカダト思ッテ!アチコチ壊スシ!!」


「保健室デタバコ吸ウナ!酒呑ムナ!昼寝スルナ!!」


「オレラニモ酒ヨコセ!昼寝サセロ!!」


「コッチハ夜勤モアッテ疲レテルノニ!
セメテ待機中ノ仮眠時間倍ニシロ!休憩モ増ヤセ!!」


「ガディム教頭ダッテ、宿直室デテレビ見ナガラ
酒呑ンデタジャナイカ!」


「コナイダナンカモニター横目ニ麻雀ヤッテタシ!!」


「ソレニ比ベタラSS書クグライイイダロー!!」



耕一としても、繊細な祐介にあんな欲求不満の団体さんの処理をやらせる気にはなれない。
健全な労働環境を求める希望への主張と言うより、ありゃまるっきり愚痴り大会だ。
連中の電波を受けとったら、かなりドロドロと鬱になる事だろう。


「・・・・はぁ〜〜〜〜・・・・・もういいです・・・それで、教頭先生は?」


黒ラルヴァでは埒があかないと判断し、芳晴は深く溜息を吐いてから、
さっきから姿を見せない現場の総責任者を探してあたりを見回す。


「ソレガソノ・・・・オカシラモ、アノ中デシテ。」

「は?」

「・・・・・デスカラソノ・・・・ガディム教頭ハ、アノ中デ、人質ニ、ナッテマス。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「サッキモ言イマシタヨウニ、アノ中デハ深層心理ガ解き放タレル副作用デ、
魔力的ナ能力ハ一切無効ニナル様デ。第2陣ト一緒ニオカシラガ乗リ込ンダラ、
途端ニ簀巻キニサレテ奥ニ押シ込メラレテ・・・・ア、ホラ、アソコデス。」


脱力して見るのもヤだったが、2人は黒ラルヴァが指差す方向を覗き見た。
シュプレヒコールを上げている一団の奥、建物の窓の中に、何か白い円柱が
見える。じっと見ていると、時々もぞもぞ動いている。


あれは、こすけた体操用マットだ。



それに何者かが簀巻き状に巻かれて、転がされている。






つまりあれが、ガディム教頭、その人だろう。












・・・・・・・・・・・あ、飛び跳ねた。















・・・・・・・何とか起き上がってもがいている。






















あ、またコケた。

















・・・・・・・・・・・今更だが。



















あれが。



アノ人が。



アノ物体が。








かつて全宇宙・全世界に未曾有の恐怖をもたらした、

















魔王ガディムの姿なのか。

























情けない。



































親が泣くぞ。




















「・・・・・・・どーしよー・・・・・?」

オリーブオイル一瓶一気飲みしたみたいな顔つきで、力なく耕一に訪ねてみる。
耕一も、無言で視線を返すのみだ。

帰りたい。

視線は、そう語っていた。


「・・・・・やっぱり要求どおり、理事長を呼んできましょう。この際、教頭交代も止むを得ません。」


「ソンナッ!?」

無慈悲な芳晴の結論に、黒ラルヴァが悲鳴をあげる。

「だって、懲戒免職にならないだけマシですよ?このまま強引にもみ消したって、
いずれ似たような事態は起こるでしょうし・・・今のうちに手を打っておかないと、
次はもっと大変な事になるかもしれない。」

「デモデモデモ!ダッテダッテダッテ!!ヤダヤダヤダ!!!」


しつけの悪い幼児のごとく、四肢をじたばたさせながら転げまわる。
『教頭より先にこいつ降格すべきなんじゃ?』とか耕一は思ったりした。
芳晴はもう声をかける気にもなれず、黒ラルヴァをスルーして空間内で『理事長出せコール』を
続けている一団に対峙した。


「すぐに理事長先生か校長先生を呼んできますから!皆さんの要求を告げたら、
教頭先生を開放して、通常業務に復帰してくれますね!!」


ざわっ


叫ぶのを止め、なにやら円陣を組んでひそひそと相談をはじめる。しばらくこそこそ言い合っていたが、
ややあってまた一斉に叫びだした。


「ソレダケジャダメダー!即座ニ給料10倍ニシロー!!」

「なっ!?」


「ソレカラ腹ガ減ッタ!メシ持ッテ来ーイ!!」

「イツモノ仕出弁当ナンカジャダメダー!HoneyBeeノ料理ヲ、ウェイトレスニ運バセロー!!」

「バニースーツダ!ウェイトレスノカッコハバニースーツデ!!」

「コラナニイッテルオマエ!ウェイトレストイッタラ普通メイド服ダロウ?」

「アノ保険医ニハコバセロ!一人一人ニ給仕シテ、
『イママデゴメンナサイ、コレカラハ心ヲ入レ替エテ真面目ニ働キマス』ト宣言サセルンダ!!」

「ツイデニ、オニメガネ君モ呼ンデコイ!俺ハ奴ニ、
『パン買ッテキテ。領収書ノ宛名ハ了承学園警備部デ。』ッテ言ッテヤルノガ夢ナンダ!!」


「り、理事長に健全な労働環境に対する権利を主張したいんじゃなかったんですか!?」

「・・・ソンナ気モシテタケド、理事長ガ来タライロイロマズイ事モアルカラソッチハモウイー!!」

「え・・・えーーーーっ!!」

「ソーダソーダ、キット優シク聞イテクレタ後ニ、『デモケジメモ必要デスカラ』トカ言ッテ、
ヤッパリジャムナンダ!キットソーダ!!」

「アノジャムハ不味イゾーーーーー!!!」




「なんっっっちゅう、覚悟の無い決起だ・・・・」
「理性のたがが外れきってるんだ・・・可哀想に。」

芳晴が譲歩を見せたとたんに、せこく要求を拡大し始めたラルヴァ達にうんざりした視線を向けて、
耕一はごりっと拳を鳴らす。芳晴の方はというと、呆れを通り越して、もう哀れみしか湧いてこなく
なったようだ。

「しょうがない・・・めんどーですから俺が乗り込んでいって、片っ端からつまみ出しましょう。」
「いや・・・待ってくれ。まず、俺が中に説得に行く。」
「?」

「あそこから外に出れば、みんな我に返るだろうけど・・・強引に出したところで、彼らの内面の不満は
溜まったままだし。たとえ、俺達の報告でその後理事長がいろいろ便宜を図ってくれたとしても・・・・
それは結局、甘やかしにしかならないよ。やっぱり彼ら自身であそこから出てきて、理事長に直訴
しなくちゃ。でないと、根本的な解決にはならないだろう?」

「芳晴さん・・・・」

ここまできても、まだ警備員達の立場に立って物を考えている芳晴に、耕一は感心するやら呆れるやら、
どういう表情をしたものか判らず・・・とりあえず、笑ってみる事にした。

「でも・・・・あの中では芳晴さんの霊力も無効化されるんすよ?相手は大勢ですし、最悪人質が増える
なんて展開も・・・」
「そうなったら、そのときは任せるよ。この洞窟も随分もろいようだし・・・・極力、乱闘は避けたい。」

確かに、魔力攻撃が無いとしても、ラルヴァ達はそれぞれ怪力だ。耕一と乱闘になって、
洞窟が崩れるような事になったら大変である。

「しかし説得って言っても・・・・・何か、奴らが食いつきそうないい条件があるとか?」
「いや、ぜんぜん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ただ、さっきそこの書物をちょっと読んだんだけど・・・・どうもあの部屋は、単なる告解室じゃなかった
ようなんだ。」
「と、いうと?」
「本来は、何人かであの中に入り、互いの深層心理を全て開放して、本来の自分と、そして仲間と向かい
合って理解を深める・・・そういう修行の場だったらしい。あの中では、精神や過去の記憶が互いに
筒抜けなんだ。」
「うぁ・・・・・」

思わずうめいてしまう耕一である。

たとえ恋人や肉親に対してでも、自分の記憶や深層心理を全てさらけ出してしまうなどといのは
恐ろしい事だ。誰もが心の中全てをさらけ出してしまったら、人と人は互いに交われないだろう。

言ってしまいたい本音、決して言わない本音、いつも表に出している本音、本音を隠したい本音、
本音を隠す為の建前、建前を示す為の本音、本音に近い建前、建前に近い本音・・・・・・・・
全てが混沌として、自分でも時々わからないぐらいだからこそ、人は互いを知ろうとし、
コミニュケーションが生まれる。無数の建前と無数の本音と、無数の建前と本音の中間があって、
初めて精神はバランスが取れるのだ。

それを全部他人に無防備にさらけ出すというのは、相当の覚悟が無くては出来ない。
自分の深層心理を見つめる事にすら、人は臆病なのだから。

「じゃあ、芳晴さんがあそこに入っていったら・・・」
「ああ。さっきからのラルヴァ達の様子を見ていると、どうも古くなったせいなのか、空間内の
精神リンクは従来より随分弱くなってるみたいだけど・・・・分身同士みたいな間柄なのに、
あんまり、団結してるようでもないし。ただ、あそこに俺が入っていけば、互いにずっと近い
立場での会話ができると思うよ。」

何かの境界を挟んで対立する2者。互いに、相手の陣地に足を踏み入れる事は自分にとって不利になる。
だが、和解をしようと求める時、あえてそれをすることで、相手の警戒を解くことは不可能ではない。

「・・・・・・・連中の変な動きを感じたら、俺もすぐに乗り込みますから。」
「よろしく。」
「ヨロシクオネガイシマスゥ、最悪御大ダケデモ連レ出シテ頂ケレバ、洞窟ゴト闇ニ葬ッテモ構イマセンカラァ。」






ガリッ!!






「フブルグルラァッッ!!!ク、首ガ、首ガァッ!!」

「こいつは本来お前がやるべき事だろーが!!お前がしっかり上と下を繋いでないから、
本音まであんなに宙ぶらりんな部下が出来上がるんだ、反省しろ反省!!」

「ウアアアアアアアアアアン、ミンナミンナ、ソーイウンダ、ワタシガ悪イワタシガ悪イッテ、好キデ
主任ニナッタンジャナイノニイィ・・・」

「子供だ、こいつは・・・・」
「まあ、その辺にしてあげなよ・・・彼にはこの後の会議で、どうしても苦労してもらう事になるし。」

どこまでも優しい、芳晴であった。














「ナ、ナンダ!近寄ルナ!!」

「敵意は無い。もう一度話そう。」
(ゆっくり・・・・ゆっくりだ・・・・・)


「ソ、ソンナ事イッテ不意打チスル気ダロウ!?」

「そんなことはしない。ほら、丸腰だよ。」
(よし・・・・案外近づけた。あと・・・・10歩かな。)



「嘘ダ、ウソダ!!ダマサレルナ、油断シタ隙ニ靴ノ先カラ銃口ガ飛ビ出スゾ!!」

「・・・いや、今更ラルヴァ相手に鉄砲ぐらいでどうにかなるとは思わないでしょ、普通。」

「バレーボールヤ新聞紙ニタオレタ同朋ガイルノダゾ!!」

「・・・・なるほどね。」
(・・・・・そんな、自慢げに言われても・・・・1、2、3、と。)


「油断ナラン!ソレ以上近ヅケバ、人質ガドウカナルゾ!!」

「・・・いや、とっくにどうかなっちゃってる気がするけど。」

「・・・言イ間違イダ!エット・・・ソレ以上近ヅケバ、人質ガドウナッテモ知ランゾ!!」

「えっと・・・・教頭先生がどうかなったら、一番困るのは君達じゃないのかな?」

「・・・・・・・・・・・ァ、ソーカァ・・・・・・・」




(4、5・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・が、がまんがまん・・・・)


「ナ、ナンダ貴様、笑ッタナ!!馬鹿ニシタロウ!!」

「え?い、いや、笑ってない、笑ってない。」

「フン!!知ッテルゾ、ミンナ俺達ヲ馬鹿ニシテルンダ!弱イト思ッテルンダ!数アワセダト
思ッテルンダ!モブダト!ガヤダト!!ヤラレ役ダト!!ジムダト!ボールダト!!
イテモイナクテモ一緒ダト!!!!」

「飴、食べる?」

「・・・・・・・・・・・・イチゴダ。イチゴ味ヲクレ!!」

「缶ごとあげるよ。多分まだ、人数分ある。」

「オオッ、イイ人ダナ、アンタ!!」

「・・・・・・いえいえ。」




(なーんか、結果的に馬鹿にした対応をしちゃったかなあ・・・・喜んでくれてるからいいけど・・・・6、7・・・)




「『蛍ノ墓』ハ観タカ、貴様!」

「え?・・・・あ、ああ、月に一度は観る。」

「月ニ一度ダト!勇気アルナ、オ前!!」
「オレ、一度観テ以来、辛クテ怖クテ観テナイヨ・・・・」
「オレナンカ、缶入リドロップ見タダケデモウダメダ・・・・」

「いや、あれ見せると3日間は女房が真面目になるから。」

「何、家族デ見ルノカ!泣キタイ時、ハズカシクナイカ?」

「いや、もう涙もろいって、ばれてるし・・・・あれ観て泣けない方が逆に恥ずかしいだろ?」


「・・・・・・・・ウン、ソウダナ!」
「モットモダナ!!」
「ソレハ、人トシテオカシイヨナ!」




(はは・・・・人として、ね・・・・8、9・・・・・)




「なあ・・・・誰でも恥ずかしいとこは、やっぱり人に見せたくないけどさ・・・・でも、お互い様って事なら・・・
逆に、判りあえる事もあると思うんだ。だから・・・・」
(10・・・・入った。)



ざわっ



「・・・・・だから・・・・え?」


ざわざわざわ・・・・・・
(ひそひそひそ・・・・)



「だから、もう一度ゆっくり話し合って・・・・」











「ゴメンナサイ!!我等ガ甘エテオリマシタ!!」





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?え??え???」






☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「なーんか、芳晴さんが例の空間に足を踏み入れた途端に、連中驚くほどあっさり
改心しましたねぇ。」

「ああ・・・・・」

「みんな、秋子さんや校長も交えて今後の事ちゃんと話し合うって・・・・・・今回の騒動の
責任もちゃんと取るって、あそこまで豹変すると逆に戸惑いますね。」

「ああ・・・・・」

「・・・・・・・なんか・・・・辛い事が合ったらいつでも力になるとか、芳晴さんに
忠誠誓いだした奴もいましたね。」

「あ、ああ・・・・・・」

「・・・・・・・・・芳晴さん・・・・・いったい今まで、どんな修羅場かいくぐってきたんすか?」

「いや、そんな、修羅場なんて・・・・俺なんか、普通の家庭よりずっといい環境で育てられて、
それほど苦労してるわけじゃ・・・・・」

「でも、エクソシストの修行とかあったんでしょ?」

「塾に行ったり習い事したり部活やったりなんて、誰でもやってるよ。」

「どんな修行だったんです?」

「3歳ぐらいから始めたかな。まず基本だと、最初に体内の霊気を操作する基礎を習うんだ。
俺は兄貴みたいに生まれてすぐできるような才能はなかったから、まず全身の五感を特別な
呪縛で遮断して、自分の意志でそれを開放するってのをやるんだよ。慣れて来たら今度は
臓器とか脊髄の方まで停止範囲を広げて・・・・」

「ストップ!ストップ!!・・・・もういいです・・・・よく生きてましたね、芳晴さん・・・・」


「あ、も、もちろんちゃんと死なないようにオヤジが付いててくれたし、それほど自主的って
訳でもなかったけど無理やり強制されてやってたって訳でもないし・・・・・」

「そっか・・・確かにそれに比べりゃ、仕出弁当ガメられたぐらいでガタガタ言えないよなあ・・・」

「い、いや、確かに親父は厳しかったけど、でも優しい時もいっぱいあったんだよ!!
手を上げられた事なんて一度もなかったし、ヘリから富士の樹海に落とされた時も
ちゃんと1週間ごとに様子を見に来てくれたし、学校で行事があるときは仕事の手伝いも
外してくれたし、父兄参観・・・には来てくれなかったけど、3者面談には来てくれたぞ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・芳晴さん。」

「な、なんだい?」

「俺に力になれることがあったら・・・・・なんでも、言って下さい。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

「あ、芳晴さん、お腹すきませんか?軽いものでよければ、なんか奢りますよ?」

「い、いや、そんな気を使ってくれなくても。ワリカンでいいよ。」

「いえ、ぜひ奢らせてください。ちょうどこの近くに、梓に教わった喫茶店が・・・・」

「あっ!」

「はい?」

「悪い耕一君、喫茶店で思い出した!今日も3時半からHoneyBeeのバイトがあるんだ!!」

「は?・・・・・バイトって・・・・・それは、コリンさんとユンナさんでしょう?」

「働くのはね!俺は単なる手伝い!悪いけどまた今度、じゃ!」

いいながら手早く靴紐を締めなおし、宣伝のつもりなのかカバンのポケットから
HoneyBeeのコーヒーサービス券を5枚出して耕一に握らせると、芳晴はすばやく、
妻のアルバイト先へと駆けて行った。


「・・・・・・・・単なる手伝いって・・・・・面倒見良すぎだよなあ・・・・・」


いや、被害を最小限に抑えるには、案外必要不可欠な存在かも。
っていうか、絶対奥さん達よりたくさん働いてるに違いない。

(あの人こそ、胃の心配をすべきなんじゃないかなぁ・・・・
まあ、切替はうまく出来てるみたいだけど・・・・)




優しい人。


真面目な人。


面倒見がいい人。


心配性な人。苦労性な人。


不屈の人。プラス思考の人。愛妻家の人。


今日一日でいろんな芳晴を再確認した、耕一であった。






おわり







おまけ

「はいコリンさん、サンドイッチセットとアップルパイ、窓際奥のテーブルのお客様です。」

「ほい芳晴、サンドイッチセットとアップルパイ、窓際奥のテーブルだよ〜」

「わかった、窓際奥だな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・御待たせ致しました、サンドイッチセットとアップルパイで・・・・・・・・

「いや〜、芳晴ももうすっかり慣れたもんだねー、感心感心。」










ザシュッ
(ゴトリ)




ブヴィシュアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・・・










「!!な、なんですかどうしました何かありましたかごめんなさいリアンさん!!」

「い、いえ、その・・・・」

「な、なんか、ただならぬ効果音が聞こえたんですけど!?」

「あっはー、気にしなくていいのよ芳晴君。ちょっとお・そ・う・じ。すーぐフロアにもどるから、
ちょーっと待っててね☆」

何かを(赤い・・・に見えた)けりけりっと奥の厨房に押しやり、後ろ手に何か隠し持ったまま、
状況が異なれば10人中8人は一目惚れしそうな笑顔でユンナがウインクする。
背中の陰に、長い柄・・・モップでもホウキでもない、何かの柄が覗いていたが、
彼女はそれも手早く厨房に放り込んだ。

がちん、と、金属質の音が奥の床から響いた。




(こーのたくらんけっ!!なーにが『ほい芳晴』よ『感心感心よ』
疲れてるとこ様子見に来て手伝ってくれてる芳晴君に、
さらっとパスして楽してんじゃないわよこのカンポレチンキ!)

(えー、だぁって立ってる者は親でも使えってゆーじゃんよー)


(だあああああっ、それがこの店舗におけるアラユル凶事生産者の
言葉かっ!!いいかげん労わり慈しみってもんを覚えなさい!
お客を待たせてる以上芳晴君断れないんだからその性格に甘えないの!)

(何よー、ユンナだって夕べは立ってるモノ使ってたじゃん。
芳晴寝てるのに足元から忍び込んで口いっぱいに頬張って
甘えてたくせにー)

(っ!〜〜〜〜〜☆∴∀◎*※!!!!!!!み、み、み、
みみみみ見てたのあんた!!)

(立ってないモノ立たせてまで使う人に言われたくな・・・)


ゴガッガキッ、ジビィッ、ガスッ、グシャッ!!!


(死ねっ!死ねっ!死ねっ!死ねっ!死ねっ!死ねっ!死ねっ!!
誰もがアンタが天使だった事を忘れる為に天使の名をこれ以上
貶めないうちに何よりあたしのために速やかに死ねっ!!)

(あーあたし、肩書きとかって気にしないから。芳晴の正妻って
とこだけ覚えといてもらえば。)

(・・・そう・・・このうえ論点ずらし、話しそらしまくる上に更なる
宣戦布告って訳ね・・・)

(あ、あはは、ごめん言い過ぎた別に正妻とか決まってないし
過ごした時間なんかも関係ないからエビルとあたしの一騎打ちで
ユンナはどうせ蚊帳の外とか思ってるわけでもないのよそろそろ
フロアで働こっかなー)



(ちぇすとおおおおおおお!!!)





「あ、ああ、あああああああ・・・・・結花さん、ごめんなさい、泰久さんごめんなさい、
リアンさん、ごめんなさい・・・・」

「よ、芳晴さん、大丈夫ですから、助かってますから・・・・あ、このアップルティーとミルフィーユ2人前、
窓際の入り口から2番目・・・涙、ミルフィーユの上に落とさないように、足元にも御気をつけて・・・」

「はい、はいリアンさん、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・」





「お、またせ(ひっく)、しました、アップルティーと、ミルフィーユ・・・





ドガバキガシャッ!!


「(びくっ)・・・・・・・も、申し、申し訳、ありません、騒がしくて、ごめんなさい、泣いてて、ごめんなさい、
うるさいけど、でも、美味しいですから、ゆるしてください、すみません・・・・」

「う、ううん!!ううん!!ぜ、全然うるさくないよ!!くつろいでるくつろいでる!!ねえ?」

「うんうんうん!!私もこのお店好きよ!アップルティーも好きだしミルフィーユも好きだし
ねえだからもう泣かないで、ね?ね?」

「はい、はい・・・・あ、ありがとうございます、ごゆっくりどう・・・・」


がごんっ!!ヒイイイイイィィィィィィ・・・・キュドッ!!!


「うううううううううううううう、ごめんなさい、おきゃくさま、ごめんなさい、泰久さん・・・・・ごめんなさい・・・」

「好き!!好きだから!!このお店もー大好きだから!おいしーから!たのしーから!!
メガネの娘も好きだから!君も好きだから!」

「また来るからね!ね、ね、頑張ってね、くじけちゃダメよ、毎日来るからね!!」

「はい、はい、ありがとうございます、すみません、ごめんなさい、ごゆっくりどうぞ・・・・」
















謝る人。



HoneyBeeではすっかりそう認識された、芳晴であった。



(あとがき)

今までなかったパターン(のはず)の、耕一君と芳晴君の会話描写がメインです。
なんか物々しく始まってる割には、最後の最後までバトルシーンがないので肩透かしだった方も
多いかもです。恐らく芳晴君自身も祐介君と同じで、戦いとか除霊とかそーゆーのはもうやだな、と
思ってる筈なんで、戦わない彼を書いたほうが話に厚みが出るかなと思いましてね。

最近みなわちゃんばりの謝りキャラになりつつある芳晴君ですが、彼についての
バックグラウンドはゲーム内でもそれほど多く語られていないので、
いろいろ掘り下げて考える上では自由度が高いキャラです。
こういうキャラは愛着が湧きやすいよなー。
でもその分、他の方々に違和感を与えないようにするには苦労がいりますが。
「あーこれもありかもね」と思っていただけるか、「芳晴君はこんなキャラじゃぁなあい!」と
思われたか・・・・機会があれば、もちょっと彼個人にスポットを当てた話を書いてみたいですね。

いくらなんでもラルヴァ連中ここまで馬鹿じゃないだろうとか、エクソシストの修行に富士の樹海は
関係ないだろうとか、おまけの芳晴君なんかもう別人だよ卑屈にすら見えるよとか、
そもそもラルヴァって物食べたり酒呑んだり寝たりするの?とか、
今回もつっこみどころてんこもり満載です。

あ・・・マジで今思い出したけど、教頭先生簀巻きにしたまま忘れてた!!





 ☆ コメント ☆

綾香 :「芳晴さん、なんかいつもと違ってシリアスね」

セリオ:「ですねぇ。もっとも、これが真の姿なのかもしれませんが」

綾香 :「そうかも。普段は謝ってばかりだから忘れがちだけど、
     能力のあるエクソシストなんだもんね」

セリオ:「そうですとも」

綾香 :「でもさ」

セリオ:「はい?」

綾香 :「そういうカッコイイ姿よりも謝りまくってる姿の方が似合うとか思うのは
     あたしだけかしら?」(^^;

セリオ:「……の、ノーコメント」(;^_^A

綾香 :「ところでさ、話は変わるけど」

セリオ:「なんです?」

綾香 :「教頭先生。あれからどうしたのかしら?」

セリオ:「そ、そういえば……」

 ? :「……」ガサガサ

綾香 :「ん?」(・・?

セリオ:「なんでしょう? この唐突に現れた体操用マットは」(・・?

 ? :「……」ゴソゴソ

綾香 :「ま、まさか」(−−;

セリオ:「……」(−−;

 ? :「……!?」ドテッ

綾香 :「あ、こけた」

 ? :「……!」ジタバタジタバタジタバタジタバタ

綾香 :「……」(−−;

セリオ:「……」(−−;

綾香 :「み、見なかったことにしましょう」(−−)

セリオ:「そうしましょう」(−−)




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