1、ファイト
 
 暴れるのは、柏木耕一。
 
その姿はまさに鬼。

 たった10分暴れただけで、学園は灰と化し、町も廃墟と化した。

 ラルヴァたちも、13型の集団もその行動を阻止できずにいたが。

 「止めるよ、耕一さん」

 そっとつぶやいて、彼の前に浩之が立つ。

 40体のラルヴァによる一斉攻撃さえ効かない相手にどうやって戦うというのか。 
 

 
 だが、浩之がそこに立っただけで。
 

  
 耕一の足が止まり。
 
 手に力がこもり。

 初めて、戦いの姿勢をとった。 

 
 たとえ理性を失おうとも、本能で気付くのか?

 今の自分と互角に戦えるのは浩之だけだという事に。

 
 ぐおおおおおおおおおおおおっ!
 
 雄叫びと共に力のこもった鬼の右手が振るわれる。

 バックステップで避ける浩之。

 1回目で距離をとり、2回目でその手に剣を取る。

 

 その剣の名は 聖剣ブランニューハート!  

 その輝きに一瞬ひるむ耕一。

 そのひるんだ事実を否定するかのように、その両腕の筋肉に力を集め、左手で浩之の顔をつぶしにかかる。

 そうはさせるかとばかりに、浩之の剣が閃いた。


 ざくり。

 音と共に耕一の左手が飛んだ。

 そして左手が飛んだと同時に。
 
 耕一の狙い道理に残った右手が剣を叩き折っていた。

  
 さらに止めとばかりに全力を込めた右足で浩之の腹を突き破………れない!
 

 蹴りを避けた浩之に一秒近くの余裕が生まれた。
 
 そして一秒という時間は浩之にとって、聖剣を復活させるには。

 そして耕一の首を飛ばすのには、充分すぎるほどの時間だった。


    
            鬼の夢 ロボの夢 人の夢


2、学園の秘密の小部屋
 


 がちゃっ!

 「よっしゃ〜〜〜、今日のおやつメガ玉子ヤック〜っ」
 喜ぶ浩之。  
 「ま〜た〜負〜け〜た〜〜〜15連敗〜」
 凹む耕一。





 シミレーション・ウォーカー・セカンド。
 
 かつてガチャピンが作ったあの機械の発展系。

 耕一と柳川のためだけに、3ヶ月以上かけて改造してくれたガチャピン先生に感謝を。

 そして俺たちに付き合ってくれる浩之に、最大の感謝を。
 



 今、微笑んでいる振りをする浩之の顔に、本当は浮かんでいる冷や汗。

 その理由を、二人はよく分かっているから。 


 


 あの世界でラルヴァたちやメイドたちを叩き潰したときの感触が手に残っている。
 
 手を切られた時や、首を刎ねられる瞬間の感触も残っている。

 また、其処まで再現出来るので無くては体に巣食う鬼も騙せないだろうから。


 そして、手に感触が残るということは浩之にも言えるわけで。
 
 つまり、俺達を殺したときの、または殺されたときの感触が残るわけで。
 
 浩之の辛さは、そして浩之にそんな事をさせざるを得ない俺達の辛さは…


 きゅっ

 
 そんな俺の思いが、顔に出ていたのか。

 俺の腕を握り締めて、手にかいた汗をハンカチでぬぐってくれる初音。

 可愛いっ…、可愛くて愛しい俺のっ!初音っ!初音っ!初音っ!初音っ!

 (はっ!)…トリップしちゃったよ、おい。(冷や汗)

 
 で、俺がトリップしている間に浩之はというと?

 同じく浩之の汗を拭いていたセリオを、個室に引きずり込んでいたっ!(木亥火暴)
 
 
 「あ、あああっ、ひ、開かないで、くだっさ…い…いいんっ…」どこをだっ!
 
 教育に悪い!とマインの耳をふさぐ柳川。
 
 初音の教育に使おうとコップを渡す耕一。


 こんなところにもこの叔父と甥の違いが出ていて面白い。

 
 「ああああああっ、やっ、嫌です、だめ、だめなの浩之さんっ!ふあっ、はあああああっ!あくっ、あくっ、あくっっっっ、アクアシャ
ワーですっ〜〜〜」

  
 セリオの大嘘付き〜っ!

 
 がちゃり

 ドアを開けて(やけに)さわやかな顔で出てくる浩之。
 
 真っ赤な顔でそのあとに付いてくるセリオ。

 
 「ううっ、浩之さん、なんだかとっても恥ずかしいです………」

 浩之、体力満タン。

 「水で回復するのって、アイアンキングさんと、浩之さんだけですよ…」

 
 (………アイアンキングなんて誰が覚えているかと)思わず其処にいた全員が異句同音に呟いたという。

  
 「ヤッパリ浩之様ハ相変ワラズエッチデスネ、セリオ姉サマ」

 「はっはっはっ、失礼な奴…って、相変わらず………相変わらず?」
 

 何か引っかかる浩之。

 
 「………仰〜げば〜尊〜し」「我ガ〜師〜ノ恩〜」


 「やっぱりかっ〜!」

 恥ずかしさでそこらへんを転がりまわる浩之、こんな姿は結構レアだ。

 「やっぱりマルチのあの日の記憶を入れちまったのかあの親父は〜〜〜」

  
 「ハイ、最初ニイキナリ抱キシメラレタコトトカ、恥ズカシイ所ヲミラレテシマッタコトトカ」
 
 「浩之様ト遊ンダコトヤ、浩之様ノ家ヲ掃除シタリ、ナデナデトカ、フ、フキフキ、トカ」

 「浩之様ト結バレテ、ゴシュジンサマッテ、ヨンダコトトカ」
 
 珍しく顔を真っ赤にするマイン。


 「アト、シックス○イントカ、松葉く○しトカ、朝フ○ラトカ」


 「うわ〜、マインちゃん直球だよ」
  
 頭を抱える初音。
 
 「ドレモミナ私達12型共通ノ、大切ナ想イ出、デス」
  
 そっとマインが顔を上げて少し心配そうに浩之に尋ねる。

 「ゴメイワク、デシタ?」

 浩之は何かを考えていたが。

 やがて何時ものしょうがねーなーという顔をして。
 
 くしゃっ、とマインの頭を撫でた。

 「いいお父さんを持ったな」

 「ハイ、アリガトウ、ゴザイマス」


 「なんで恋人たちの記憶を共有させる人がいいお父さんになるのよ?」

 脱力した初音が呟くが、俺は、後でベッドの中でたっぷりと教えてやるよと囁いた。(おいおい)
 
 そうしたら初音は顔を赤らめてそっと頷いたっ!

3、セカンドファイト


 「あ〜藤田、そろそろ俺も頼む」
 
 柳川が浩之に声をかける。

 彼はこの学園の色々な所で暴力を繰り広げているが。


 それでも。


 それでも。

 
 それでも、まだ。

 
 ‘鬼’の破壊衝動を抑えるには足りずに。


 浩之の苦悩を分かっていながら。

 なお、一月ごとに戦いを求める。

  
 「デモ柳川様、後五分ホドデバケツパフェガデキアガルソウデスガ」
   
 「よ〜っし、三分で終えるかっ♪」

 切り替え早っ!

 「いくぜピアキャロット、皆おごってやるぞっ☆」
 
 うわ、柳川が☆飛ばしたっ!?ていうかバケツパフェって何?

 (バケツの中にアイスをこれでもかっ!というぐらいによそったうえに、生クリーム、フルーツ、練乳を求肥で包み込み、蜂蜜と白砂糖
をかけた柳川専用パフェである)

 食えるかっ!
  
 さらにデザートとしてアップルパイの上にショートケーキを載せた柳川ケーキを。

 「早期決着ならこれだな」

 16面ダイスをセリオとマインに持たせてSW2に乗り込む2人。
 


 早速セリオがダイスを振る。

 SW2の中で浩之が姿を変える。
   
 そして浩之の姿がゴッドマンになった。

 「あはははははははは」
 
 もう笑うしかない耕一達、大喜びのセリオ達。
   
 「ナラバコチラハ炎の戦士トマイリマス」←ころころ。


 ほほう、最近までケーブルTVでやってたメガロマンか?

 
 そして柳川の姿がファイヤーマンに!


 「誰やねんそれ〜っ!」


 思わず関西弁で突っ込む初音。
 
 「何でそうあんた達は無茶な方無茶な方に行くねんなぁ」

 とうとう初音ちゃんが壊れ始めた?

 「これは見逃せませんね解説のマインさん」
 
 「ハイ、コノ巨大ヒーロー対決ハ私モ見タイデス、デモ…」
 
 「でも?」

 「落ちガツカナイノデ残念デスガ、次イキマショウ」 
 
 
 落ちって何だ。
 

 セリオたちが再びダイスを振ると今度は。

 魔界天使ジブリール 対 魔法少女愛

 「触手フラグキターーーーーーー」

 叫ぶ耕一、いいから落ち着け。

 まずは魔法少女愛(柳川)に目をやる耕一。

 思わず突っ込んだ。

 「素手で殴るなそこの魔法少女っ〜!」

 「ステッキ逆手に持つな!やくざキックするな!あまつさえ触手を噛み千切ってニヤリと笑うな〜〜〜っ!」
 
 最後、ちょっぴり泣きが入ってます、耕一君。
 
 
 そのときジブリール(浩之)はというと。

 「ほら、手?がお留守だぞ16番」
 
 触手に駄目出ししてる〜?    
 
 「3番もっとぐりぐり回転して…そう、そこだっ!」

 「ん…よくがんばったな8番」
 
 なでなでするジブリールに、身もだえして喜ぶ8番とやら。

 「よく状況に馴染んでるっていうか、その黄金の右手は触手にも有効なのかよ」

 あきれる耕一。

 「まあ、浩之さんは女性化の経験もおありですしね…(汗)」
  
 ロボなのに冷や汗かいてますセリオさん。
 
 「柳川様ソロソロ決着ノオ時間デス」

控えめに声をかけるマイン。


 最後に柳川が変身したのは。

 
 「あれ?楓ちゃんもこのシステムに登録されてたのか?」
 
 モニターを覗き込み、不思議そうな耕一に初音の突込みが入る。
 
 「ううん、あれは椛ちゃんだよ」

 あ、初音が元に戻った?

 「え〜、だってどう見ても楓ちゃん…」

 「STOP!中国語では小楓って書かれてるけどあくまでも別人でファイナルアンサー?」
 
 「イエッサー!」
  
 初音の持つコルトパイソン357にびびりまくる耕一。

 (エロゲ もみじ私人形じゃありませんより城宮椛)

 そして浩之は。

 「これはもう勝負ありですね」
 
 微笑むセリオ。

 浩之がそのままの姿で近付いて椛の頭を撫でたときに勝負は付いた。


 「………んっ!」
   
 (椛はとても敏感なので頭を撫でるだけでイッテしまいます)(公式設定)

 
 4、そして再び小部屋

 息の荒い柳川、やがて浩之を見てこう言った
 
 「浩之…やらないkぐもうっ」


 「オチツキマシタカ柳川様?」
 
 
 「あ〜マインさん、落ち着きましたよ?うん、だからその4連装ロケットランチャーをお口にぶち込むのだけは勘弁して頂きたいなと思
う訳でして」

 「柳川さん、なんだか尻に敷かれてるっぽいぞ?」
   
 耕一と浩之のダブル突込みが入る。
  
 「いやまあ、マインが上で無いとな?」

 「他から見るとどこからどう見ても幼女をレイ(自主規制)しているみたいだしなあ」
   
 柳川さ〜ん、それ尻に敷かれてるの意味が違うから〜。 
    
 

 そんなこんなで騒ぎながらも彼らは和やかに食事に赴く。
 
 
 いつか自分の力で鬼を押さえ込みたいという、鬼の夢と。

 
 いつかはご主人と結ばれたいというメイドロボ達の夢と。
 
 
 いつか彼女達に幸せになって欲しい浩之の夢を道連れに。

 
 浩之はセリオに囁いた。

 「いつか、この学園以外でもこんな風に、違うもの同士が暮らせる世界を俺は作ってみせるぜ」

 「はい、楽しみにしていますよ浩之さん」

 あなたなら、きっと、出来るでしょうから。

  
             鬼の夢 ロボの夢 人の夢  (ちょっとだけ修正版)
                            
  終わり 

 本人的にはちょっとだけマシになってるんですよ?字数揃えたり、最後を統一したりとか。 





 ☆ コメント ☆

ユンナ:「以前投稿していただいたSSの改訂版よ。
     ……というわけで」

コリン:「ん?」

ユンナ:「リベンジ。今回こそちゃんとしたコメントをしなさい」

コリン:「???」

ユンナ:「なによ、その『理解不能』みたいな顔は?」

コリン:「だって、ユンナが変なこと言うんだもん」

ユンナ:「変なこと?」

コリン:「あたし、前回もすっごく真面目にコメントしたじゃない」

ユンナ:「……。
     真顔で言い切るか。なんつーか、相変わらず自分本位で幸せな脳みそしてるのね」

コリン:「???」

ユンナ:「だから不思議そうな顔すんな。
     あと、その『なに言ってやがんだこいつ』みたいな目はやめなさい。素でムカつく」

コリン:「なにイライラしてんのよ。あの日?」

ユンナ:「違うわ!
     あー、もうっ! いいから黙ってとっととコメントしろ!」

コリン:「黙ってコメントって矛盾してない?」

ユンナ:「余計な揚げ足取りはいらないから」

コリン:「……OK、ユンナ。少し落ち着け。あんた、目が据わってきてるわよ。
     あと、指をポキポキしながら寄ってくんな」

ユンナ:「…………」

コリン:「ったく。何をそんなに怒ってるんだか理解できないんだけど……まあ、つまりアレでしょ。感想を言えってことでしょ。
     おっけーおっけー、まっかせなさーい。この超絶美少女天使コリンちゃんが全米が号泣するコメントをしてあげるわっ。
     耳をかっぽじってよっく聞きなさい。
     ふふんっ♪ コリンちゃんのありがたいお言葉が貰えるなんて、あなたは三国一の幸せ者よ」

ユンナ:(……いつも思うけど、何故にこいつは無駄に偉そうなのかしら)

コリン:「えっと、今回のSSに対するコリンちゃんのコメントは――ズバリ!」

ユンナ:「ズバリ?」

コリン:「浩之はエロエロ性欲魔人!」

ユンナ:「……」

コリン:「あり? のーりあくしょん?」

ユンナ:「……コリン」

コリン:「なによ」

ユンナ:「ここまで散々に引っ張って前回と同じオチ? 随分といい度胸してるのね。
     普通はできないわよ、そんな暴挙。ある意味、尊敬に値するわ。感心する。
     あなたは本当に凄い。心からそう思うわ。わたしにはとてもじゃないけど真似できない。
     流石は脳内ぽかぽかお花畑天使。そのお気楽極楽さ、比肩する者はいないでしょうね。
     感動で眩暈すら覚えるわ。あなたと同族かと思うと泣けてくる、割と本気で」

コリン:「いやぁ、それほどでもぉ。えへへ♪」

ユンナ:「……」

コリン:「あれ? もしかして、今のって褒められてない?
     ……あれ?」





戻る