連載小説 私立了承学園
第弐百伍拾六話 四日目 3時限目(Heart to Heartサイド)

 なんか、だんだん授業内容がヤバくなっているような。(−−;

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「……ねえ、秋子。そのテレビは何なの?」

 理事長室――

 何やらテレビ画面を熱心に見ている秋子を見て、ひかりはそう訊ねた。
「あら、ひかり。あなたも見る?」
 と、モニターから目を離した秋子はチョイチョイとひかりを手招きする。
「見る、って……何が映ってるの?」
 ひかりがモニターを覗き込むと、そこには誠が映っていた。
 モニターの中の誠は、何故か荒野のド真ん中をヨロヨロと歩いている。
「……何、これ?」
 モニター画面を指差し、訊ねるひかり。
「これはね、今、誠さんが見ている夢の内容なのよ」
「……はあ?」
 秋子の言葉に首を傾げるひかり。
 そして、ある事を思い出して、ポンッと手を打った。
「そういえば、さっき職員室でエリアちゃんに枕を渡してたけど、
もしかして、それが関係してるわけ?」
「さすがは、ひかり、察しがいいわね。
さっきわたしがエリアちゃんに渡したのは、スフィーちゃんに頼んで作ってもらった枕なの。
『夢見の枕』って言って、必ず良い夢が見られるっていう効果があるのよ」
「なるほど。誠君達の3時限目の授業は『お昼寝』で、その枕で良い夢を見せてあげようってわけね?」
「そういうこと。しかも、あの枕には、
こうやって夢の内容を見ることが出来るっていうオプションもついてるのよ」
 と、嬉しそうに言う秋子、ひかりは少々呆れ顔。
「秋子……人の夢を覗き見るなんて、ちょっと悪趣味じゃない?」
「ふふふ♪ まあ、いいじゃないの。
ひかりだって、あの子達がどんな夢を見ているのか、気になるでしょ?」
「そ、そりゃあまぁ……」
「だったら、ひかりも一緒に見ましょうよ……ね?」
「もう、しょうがないわねぇ」
 そう言いつつも、実は興味津々だったひかり。
 いそいそと秋子の隣りに立つ。
「では、見てみましょう」
 と、秋子はゲ○ドウポーズでモニターに視線を戻した。





「まずは、あかねちゃんの夢から見てみましょうか」
「あの子のことだから、きっと可愛らしい夢ね」















「あかね〜、ちょっちこっちに来い来い」
「はーい♪」

 場所は誠の家のリヒング。
 ソファーに腰掛ける誠に手招きされ、あかねはいそいそと誠の元に向かう。
「なーに? まーくん」
 誠の隣りに腰掛け、にっこりと微笑むあかね。
 そんなあかねの頭に、誠はポンッと手をのせると……、
「ほれ、いい子いい子」

 なでなでなでなで……

 と、優しく撫でた。

「ふにゃん♪」

 気持ち良さそうに声を上げるあかね。
 誠のなでなではさらに続く。

「いい子いい子いい子」

 なでなでなでなで……

 なでなでなでなで……

「ふにゃん♪ ふにゃん♪ ふにゃん♪」

「いい子いい子いい子いい子」

 なでなでなでなで……

 なでなでなでなで……

 なでなでなでなで……

「ふにゃん♪ ふにゃん♪ ふにゃん♪ ふにゃん♪」

 ・
 ・
 ・















 ――プツンッ

 秋子がスイッチを押して、画面が消える。

「……ま、まあ、何て言うか」
「あかねちゃんらしい夢ね」
「…………」
「…………」
 二人とも、ちょっと顔が引きつっている。
「……じゃあ、気を取り直して、さくらちゃんにいってみましょうか」
「何とな〜く、怖い気がするけど……見てみましょうか」













「るんるるん♪ るんるるん♪」

 そこは、色とりどりの花が咲き乱れるお花畑。
 明るい太陽の光の下、ピンク色をした大きなハート形のたくさんの風船が宙にプカプカと浮かび、
これまたハート形の雨がスコールの様にぽわぽわと降り注いでいる。

「るんるるん♪ るんるるん♪」

 そんな場所を、さくらはスキップしながらお散歩していた。
 と、ふいに、丘の向こうに見える人の影に気付く。
「まーく〜〜〜〜〜〜んっ!」
 さくらは手を振りながら、その人影に呼び掛けた。
 それに気付いたのだろう。
 その人影……誠は、さくらの方を振り向き、優しく微笑んだ。
 当然、恋する乙女効果で、顔の造形美は20%増しだ。

 ほわわわわ〜〜〜ん(はぁと)

 その優しい笑顔に、一気にはにゃ〜ん状態になるさくら。
 そんなさくらの周りを、たくさんのハイビスカスの花がくるくると舞い始める。

 そして、さくらは誠に向かって走り出す。

「まーく
〜〜〜〜〜〜んっ!
ぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜い好きぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」















 ――プツンッ

 画面が消えた。

「……っ!!」
「……っっっ!!」

 ごろごろごろごろっ!!

 さくらの夢のあまりの内容に、
秋子とひかりは声にならない悲鳴を上げながら、床をのたうつように転げ回る。

「はあ……はあ……あ、危なかったわ」
「もう少しで……精神汚染されるところだったわね」
 なんとか立ち直った二人は、ヨロヨロとモニターの前に戻る。
「わ、わたし……何かもう見たくなくなってきちゃった」
「こ、ここまで来たんだから、最後まで見ましょう。次は……エリアちゃんね」
「エリアちゃんなら、安心して見ていられるわね」















「……ま、誠さん(ポッ☆)」
「エリア……」
 バスタオル姿のまま、エリアは誠に抱き上げられた。
 二人は見つめ合ったまま、誠の部屋へと向かう。

 そして、エリアの体がベッドの上に横たえられ、
誠は体重をかけないように、そっとその上に覆い被さる。

 ――ちゅっ☆

 重なる二人の唇。
 絡み合う舌と舌。

「んっんっ……くふぅん☆」
「ぅん……ふはっ」

 熱く濃厚なキスに、二人の体は瞬く間に火照っていく。

「エリア……いいか?」
「あ……」
 エリアの返事を待たず、誠の手がエリアの体を隠すバスタオルにかかる。
 そして……、

 ぱさっ――

 バスタオルが床に落ちた。

「ああ……」
 あまりの恥ずかしさに両手で顔を隠すエリア。
「エリア……綺麗だよ」
 そんなエリアの耳元で、誠がそっと囁く。
「誠さん……あまり見ないで…………恥ずかしいです」
「どうして? こんなに綺麗なのに」
「だって……私……胸、小さい……」
「そんなことないよ……可愛くて、俺は好きだな」
「ま、誠さん……(ポポッ☆)」
 再び、二人は見つめ合い、キスをする。
「エリア……じゃあ、いくぞ」
「は、はい……」
 誠の言葉にコクンと頷くエリア。
 そして、誠の手が、そっとエリアの胸に……、















 ――プツンッ

「ここからは自主規制ですね」
「エリアちゃんってば、意外に大胆ねぇ♪」
 両頬に手を当てて身悶えするひかり。
 ……ちょっと可愛い。
「それにしても、あのエリアちゃんがあんな夢を見るなんて……、
早く誠さんには気付いてもらわないといけませんねぇ」
「難しいわよぉ……あの子、とことん鈍感だから」
「大丈夫よ。もう手は打ってあるわ」
「え? そのなの?」
「ええ……さあ、それじゃあ、誠さんの夢を覗いてみましょうか」










「……腹減った」

 誠は、延々と続く荒野のド真ん中を這いずっていた。
 空腹のあまり、歩く体力も、気力もないようだ。

 空腹――

 それは、誠にとっては地獄の苦しみである。

 朦朧となる意識。
 もはや、誠の命は風前の灯のように思われた。

 だが、奇跡が起きた。

 ビュオオオオオーーーーーーーッ!!

 突然、巻き起こる砂嵐。

「うわああああああーーーーーーーっ!!」

 叩きつけるような突風。
 巻き上がる砂とホコリ。
 瞬く間に遮られる視界。

 そのあまりの凄まじさに、誠は悲鳴を上げる。

 しかし、その砂嵐は、一瞬にして止んでしまった。
 そして、その代わりに姿を現したのは……、

「……俺の、家?」
 呆然と呟く誠。
 そう……突如、目の前に現れたのは、間違いなく誠の家であった。
「な、何だか分かんねーけど、助かった」
 と、誠は残りカスのような体力を振り絞り、玄関へと向かう。
 そして、家の中に一歩足を踏み入れ……目を見開いた。
「お、おおお、おおおおおおーーーーーーーーっ!!」
 歓喜のあまり、絶叫する誠。
 そこには、古今東西、ありとあらゆるご馳走が、
大きなテーブルの上に並べられていたのだ。
 さらに……、

 ポワワワワ〜〜〜〜ン☆

 突然、テーブルの真ん中に煙が立ち昇り、そこにエリアが姿を現した。
 しかも、かなり刺激的なハイレグ水着を着て、テーブメの上に寝そべり悩殺ポーズをとっている。

 そして、一言こう言った。

「誠さん……さあ、召し上がれ(はぁと)」





「いっただっきまーーーーーーーすっ!!」










「……何なの? この夢の内容は」
 モニターを見つめ、唖然とするひかり。
 そんなひかりを見て、秋子は楽しそうに微笑む。
「実はね、誠さんの枕にだけちょっと細工をしておいたのよ」
「それが、この内容なわけ?」
「そうよ。夢というものは自分の願望を表すものよ。
だから、こういう夢を見れば、誠さんも少しはエリアちゃんのことを意識するようになるでしょ?」
「なるほど。確かに、いいアイデアね……でも……」
「……でも?」
「秋子……どうも、あなたの思惑とは違うことになってるみたいよ」
「……え?」
 ひかりの言葉に、秋子はモニターに目を戻した。
 そこに映し出されていたものは……、





 ぱくぱくぱくぱく……

 もぐもぐもぐもぐ……

 むしゃむしゃむしゃむしゃ……

 がつがつがつがつ……





 エリアそっちのけで、ご馳走をかっ食らう誠の姿であった。(笑)





「さ、さすがは誠さん。色気よりも食い気とは……食欲魔人の名は伊達ではありませんね」
 そんな誠の姿に、笑顔を引きつらせる秋子。
「食欲は人間の三大欲求で一番強い欲求だものね。
この反応は、誠君だからこそって気がしないでもないけど」
 と、妙に納得顔のひかり。
「ま、まあ……お腹いっぱいになって、精力がつけば、きっとエリアちゃんの方に……」
「秋子……これ、夢なのよ。夢でお腹いっぱいになるわけないじゃない」
「…………」
「…………」
 無言で見詰め合う秋子とひかり。
 そして、同時にモニターに目を向ける。
 誠の食べるスピードは衰える気配を見せない。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……どうやら、失敗したみたいね」
「うう……ひかりぃ〜、わたし、悲しい」
「おーおー、よしよしよし」





 と、いうわけで、計画に失敗して落ち込む秋子の背中を、
ひかりは優しく撫でてあげるのだった。





<おわり>
_______________________________

<あとがき>

 壊れていく〜♪
 どんどんどんどん壊れていく〜♪

 エリアも、だんだん過激になってきましたねぇ。ヽ(´ー`)
/

 さて、HtH4時限目はどうしようかな?
 うーん、最近流行ってる『ルミラ再戦』でいこうかな?

 でわでわー。


 ☆ コメント ☆ 綾香 :「取り敢えず、人の夢を覗くのは今回限りにしましょう」(^ ^; セリオ:「これだって……立派なプライバシーの侵害だと思いますし、ね」(;^_^A 綾香 :「それにしても……みんな、凄い夢を見てるわねぇ」(^ ^; セリオ:「特にさくらさんは……凄かったです」(;^_^A 綾香 :「あんなに壊れているとは思わなかったわ。      ちょっと……見る目が変わるかも」(^ ^; セリオ:「あかねさんは普段のまんまですね」 綾香 :「まあ、らしくていいんじゃない」 セリオ:「エリアさんは……なかなかに過激でした」(;^_^A 綾香 :「ちょっと意外。      あんな夢を見るなんて……よっぽど欲求不満なのかしら」(^ ^; セリオ:「『エッチな夢を見る=欲求不満』なんですか?      だとすると、綾香さんは…………」 綾香 :「はいはい。どうせ、そんな夢なんか見ませんよーだ」 セリオ:「そうですよねぇ。      綾香さんは満たされまくってますからねぇ」 綾香 :「み、満たされ……。      その表現……なんかイヤ」(*・・*) セリオ:「でも、事実ですよね?」 綾香 :「…………………………………………だからイヤなの。      ……………………それに……満たされてるのは……お互い様でしょ」(*・・*) セリオ:「……………………うっ」(*・・*) 綾香 :「………………………………」(*・・*) セリオ:「………………………………」(*・・*)  ・  ・  ・  ・  ・ エリア:「ううっ、いいなぁ。わたしも満たされたい」(;;)  誠 :「ん? エリアって満たされてないのか?」 エリア:「………………………………はい」(*・・*)  誠 :「なんで?」 エリア:「な、な、なんでって言われましても……」(*・・*)  誠 :「腹でも減ってるのか?」 エリア:「違います!!」(−−メ  誠 :「???」



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