了承学園4日目WA6時限  担当教官雄蔵は、入るなり 「……やはりいないか。それでは仕方ない」  とだけ言うと出ていってしまった。  重苦しい沈黙。  耳が痛くなりそうな静寂。  広い了承学園にあっては、他のクラスの音が聞こえるなど稀である。1日目の授業こそ 比較的近い教室でやっていたが、最近は新たな教室の開拓をすべく使用される教室が分離 されているのだ。  雄蔵の声から、次の物音までは10分近くを要した。  ガタッ。 「はるかさん?」 「……」  事務的に質問を出す弥生と、無言のままドアに近づくはるか。 「……」 「……」 「……」  何をする気なのか。誰も口を開かず、固唾をのんで彼女を見守る。 「……のど、乾いた」  こけっ。 「……あと、冬弥、捜してくる」 「えっ!?」  前の言葉とはうってかわって真面目(?)な言葉。何を言ったのか聞き返そうとする前 に、はるかはドアの外へと出ていった。 「……私達も、捜そう!」 「そうね……」 「そうですね」 「そうだよね」 「……賢明ですね」  相次いで、教室内の人々も席を立った。  弥生の武器……それは計算。  悩み苦しむ冬弥なら、どこへ向かうだろうか? 確率論から徹底的に洗い出し、冬弥が 行きそうなところを重点的にあたる。 「……こちらに藤井冬弥さんは来られませんでしたか?」 「イヤ、確認シテイナイゾ」 「……そうですか……」  時折監視の役目を負わされている黒子やラルヴァに聞いてみるが、未だに音沙汰はつか めない。 「……冬弥さん……どこへ行ったのでしょう?」  弥生の知能を持ってしても、どこにいるのか予測するのは難しい。まして冬弥は普段あ そこまで酷く悩まないのだから……  焦る気持ちを抑えながら、弥生は冬弥を捜して廊下をひた歩く。  由綺の武器……それは人脈。 「ちょっとーっ! 誠くーーん!!」 「ん……? 由綺姉、どうした……!」  がくっ! はっし。 「……やっぱ、こうなるんだよな」 「ご……ゴメンね」 「いいって。いつもの事だし」  立ち上がると、由綺は普段誠の前ではあまり見せない真剣な表情になった。 「……由綺姉?」  ただならぬ雰囲気に、思わず身を固くする誠。 「……冬弥くんを、捜してほしいの」 「冬弥兄さんを?」 「うん。授業が始まっても戻ってこなくて……」  理由には触れない。この辺り、誠に対しては姉である由綺の配慮が垣間見える。 「……理由はどうあれ、そりゃ問題だな……結構時間は守る人だからなぁ……」 「ね、お願い!」 「……分かった。さくらとあかね、それからできるだけ沢山の人動員して、捜してみる」 「うん、よろしくね! 私も頑張るから!!」  それだけ言うと、由綺は大急ぎで別の場所を捜しに向かう。 「……やっぱ、由綺姉にはかなわねえよな……」  そんなことを考えながら、誠はさくらとあかねに会うべく教室へと戻っていった。  理奈、美咲、マナには決定的武器はない。勘のみが勝負を決める。 「こっちかしら?」 「こっちかな……」 「向こうってことはないですかね……?」  それぞれが必死に、冬弥に会うべく勘をフル活動させる。2階廊下、中庭、3階廊下、 昇降口。次々と当たっていく。 「……でも、いないわね……」 「どこかしら……」 「藤井さん……」  3人の目には軽く涙さえも浮かんでいる。  まもなく6時限も終わりだ。  はるかの武器……それは経験。  今までの武器の中で、その能力は最強と言っていい。  今日の朝になったら修復されていた自動販売機でのどを潤していたはるかが動いたのは 終業10分前。迷うことなく8階へ向かい、その更に上までやって来た。 「冬弥」 「……」  コンバッ○スーツを肩にかけて、景色を見ている幼なじみをはるかの目が捉えていた。 「……ボロボロになってた」  冬弥が答えないことを当然と捉えているのか…… 「わたしがいじめられそうだった時」  はたまた気にしていないのか…… 「4対1くらいで、向かってった」  淡々と、言葉は続く。 「冬弥は、腕力はない」  ぴくりと冬弥が反応したが、お構いなしに言葉は続く。 「でも、冬弥は充分すぎるくらい、別のものがある」  パサッ。  コンバットスーツが音を立てて、冬弥の足下に落ちた。 「わたしは、それだけで充分」  それまで淡々と発せられてきた言葉と違って、これだけは僅かながら感情がこもっていた。 「……あ」  階段を下りる直前、思い出したようにはるかは冬弥を振り返って……こう言い放った。 「授業、サボっちゃ駄目だよ」  冬弥がこける様子が、はるかの視界の端に映った。  後書き  殆ど何も書く必要は無いような気がします。  問題は登場人物の口調だけです。皆さん、変なところがあったらお教え下さい。個人的 には、はるかの言葉遣いに自信がないですね……  では、失礼します。                                 竜山
 ☆ コメント ☆ セリオ:「綾香さーん! あーやーかーさーーーん!      う〜ん、どこへ行ってしまったのでしょう?      もう、コメントが始まっているのに……」(@◇@;; 芹香 :「……どうしました?」(´`) セリオ:「あ、芹香さん。      実はですね。綾香さんが行方不明なんです」(@◇@;; 芹香 :「行方不明?」(´`) セリオ:「そうなんです。      どこへ行ってしまったか、心当たりはありませんか?」(@◇@;; 芹香 :「心当たりはありませんけど……       でも、こちらに引き寄せることは出来ると思いますよ。       …………これさえ使えば」(´`) セリオ:「何ですか、それ?      えっと、なになに……『芹香特製 綾香寄せの香』?」(−−; 芹香 :「これの香りを嗅げば、綾香は必ずやって来ます」(´`) セリオ:「は、はあ」(−−; 芹香 :「それでは使いますよ。見ていて下さいね」(´`)  ・  ・  ・  ・  ・ ―――3分後 綾香 :「………………ぽー」(*−−*) 芹香 :「ほらね」(´`)v セリオ:「わっ! 凄い。本当に来ました!!」(@◇@) 綾香 :「………………ぽー」(*−−*) セリオ:「でも、なんかポーッとしてますねぇ」 芹香 :「それは多分……この香の主原料が原因だと思います」(´`) セリオ:「何を使ってるんですか?」 芹香 :「またたびです」(´`) セリオ:「なるほど。      しかし……妙に納得してしまうのは何故でしょう」(;^_^A 綾香 :「………………ぽー」(*−−*)



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