連載小説 私立了承学園
第弐百七拾伍話 四日目 昼休み(Kanonサイド)

 名雪と瑞佳の共演(狂演)再びっ!!

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 昼休み――

 名雪と瑞佳はある決意をして、五月雨堂に訪れていた。

 ウィィィーーーン……

「いらっしゃ〜い……あ、名雪と瑞佳だ〜」
 自動ドアが開き、店内に入って来た名雪の対応に出るスフィー。
 だが、二人はスフィーの前を素通りし、カウンターにいる健太郎にツカツカと歩み寄る。
 そして、バンッとカウンターを両手で叩くと……、
「「『猫よせのドラ』をくださいっ!」」
 と、言った。

 『猫よせのドラ』――
 それは、鳴らすだけで猫を招き寄せるという不思議なドラのことだ。
 名雪や瑞佳のように猫好きの人間にとっては喉から手が出る程に欲しいアイテムである。

「……は、はい?」
 二人の迫力に、ちょっと引いてしまう健太郎。
「だから、猫よせのドラを売ってほしいんです!」
「お願いします!」
 ググッと健太郎に詰め寄る名雪と瑞佳。
「い、いや……でも、アレ使っても、もう猫は寄ってこないよ?」
 美少女二人に詰め寄られ、ちょっとドギマギしつつ、何とか健太郎はそれだけ言う。

 そう、健太郎の言う通り、猫よせのドラは商品管理のずさんさから、
『猫っぽい人よせのドラ』になってしまっている。
 だから、名雪と瑞佳が求めるような効果は得られないのだ。

「……直せないんですか?」
「まあ、できないことはないけど……」
「だったら、お願いします!」
「でもな〜、祐一と浩平から、キミ達には絶対にアレを売るなって言われてるんだよ」
「うう……もう手が回ってたんだね」
「祐一のいじわるぅ〜……」
 健太郎の言葉に嘆く二人。
 と、そこへ……、

 ウィィィーーーン……

 再び自動ドアが開き、お客が入って来た。
「あ、やっぱり名雪さんと瑞佳さんでした」
 店に入ってきたのは栞だ。
 どうやら、五月雨堂に入る二人の姿を見て、追ってきた様子だった。
「名雪さんも瑞佳さんも、どうしたんですか?」
 と、栞は名雪と瑞佳の姿を認めると、二人に歩み寄る。
「実はね……かくかくしかじか……というわけなの」
「なるほど。そういう事ですか」
 名雪の説明を聞き、事情を理解する栞。
「けんたろ……日本語って便利だよね」
「……そうだな」
 と、三人の会話にちょっと呆れる健太郎とスフィー。
 そんな二人に構わず、名雪と瑞佳と栞は話を続ける。
「わかりました。そういうことなら、私も協力しましょう」
「協力って……どうするの?」
「実は、いい物を持ってるんです♪」
 そう言って、栞はポケット(通称四次元ポケット)に手を入れる。
 そして、中からビンを一つ取り出した。

「ク〜ロ〜ロ〜ホ〜ル〜ム〜〜〜♪」

 ドラ○もんよろしく、得意気にそれを掲げる栞。
 だが、そんな栞に、一同は顔を引きつらせる。
「な、何でそんな物を……」
「だって、お薬ですから」
 しれっと言う栞。
 確かに、クロロホルムは薬品であるが、いわゆる『お薬』とは違うのではないだろうか?
 と、一同は、内心、栞に恐怖した。
 そんなことには気付くことなく、栞は取り出したクロロホルムを名雪に差し出す。
「これを『あの人』に使えば、猫なんていくらでも寄ってきますよ」
 その栞の言葉に、名雪と瑞佳は顔を見合わせる。
 そして、意を決して頷き合うと、二人はそれを受け取った。










 そして、場所は変わって了承学園――

「瑞佳ちゃん、準備はいい?」
「ねえ、ホントにするの?」
「もちろんだよ。猫さんのためだぉ〜」
「だぉ〜って……何だか、凄く悪いことしてる気がしてきたよ……」
「シッ! 出てきたよ!」
 ターゲットが幸せいっぱいの表情で食堂から出てきた。
 それを見て、二人は慌てて廊下のT字路の影に隠れる。
「はぁ〜……やっぱりここの食堂は最高だなぁ。
上手いし、安いし、早いし、この学園に来て良かったなぁ♪」
 ターゲットは満足気に腹を擦りつつ、名雪と瑞佳が潜むT字路へと歩いてくる。
 そして、二人の前を通り過ぎた。
「今だよっ!」
「誠君、ゴメンねっ!」
「むぐぐ……っ!!」
 二人は一気に飛び出すと、背後からターゲット……誠に襲い掛かる。
 そして、クロロホルムを染み込ませたハンカチで誠の口と鼻を塞いだ。
「むぐっ……ぐ……」
 あまりに突然のことで、誠は抵抗する暇もなく、クロロホルムの効果でバタリと廊下に倒れる。
 そして、すぐに寝息をたて始めた。
「さ、後は誠君を中庭に連れていくだけだよ♪」
 と、名雪は誠の脇の下に手を入れて上体を持ち上げた。
「はぅ〜……何か、犯罪者になった気分だよ」
 瑞佳もタメ息をつきつつも、誠の足を持ち上げる。

 そして、眠る誠を抱えて、えっちらおっちらと中庭へ向かった。










 で、中庭にて――

「ねこー、ねこー、ねこさんだよぉぉぉぉぉーーーーー♪」
「きゃ〜〜〜〜っ☆ いっばい寄ってくるよ〜〜〜〜〜♪」
「ねこー、ねこー、ねこー、ねこー、ねこー、ねこー♪」
「はぁ〜……可愛いよぉ〜♪ 幸せだよぉ〜♪」

 寄ってきたたくさんの猫に囲まれ、二人は幸せに浸るのであった。





 ちゃんちゃん♪




















 ――おまけ

「あら? 楓?」
「綾香さん……どうしたんですか?」
「にゃにゃにゃ? たまさんですぅ」
「ウニャニャ?」(何かあったニャ?)
「あら? みなさん、お揃いでどうしたんですか?」
「うみゅ? リアンさんこそ、どうしてこんなトコにいるの?」

 廊下の途中でバッタリと出会う五人。

「あたしは、ただ何となく中庭にでも行こうかなぁ、って」
「にゃにゃ。千紗もですぅ」
「ニャニャ」(たまもニャ)
「え? 偶然ですねぇ。実は、わたしもなんですよ」
「あたしは、まーくんが中庭でお昼寝してるような気がしたから……」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

 あかねの言葉に、全員が無言になる。

「……それね」
「……ですね」
「ニャ、ウニャ」(またかにゃ)
「にゃにゃにゃ。原因は誠さんですぅ」
「わたし達……どんどん猫化が進んでいるような……」

 と、大きく大きくタメ息をつき、教室へと戻る一同。

「早くまーくんと一緒にお昼寝するの〜♪」

 ただ一人、あかねだけが嬉しそうに中庭に向かうのであった。





<おわり>
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<あとがき>

 猫ネタです。
 とにかく猫です。

 でも、この話のメインは何気に栞だったりします。(笑)
 あまり能力を持たせるのは良いとは言いきれないので、既存の設定を利用してみました。
 このくらいなら、問題ないと思いますけど。

 でわでわー。


 ☆ コメント ☆ セリオ:「ついに、誠さんにまで引きつけられるようになってしまったんですね」(;^_^A 綾香 :「不思議よねぇ」(−−; セリオ:「それだけ、猫化が進んでいるという事ですよ」(;^_^A 綾香 :「猫化ねぇ。あたしって、そんなに猫っぽいかなぁ?」(−−; セリオ:「はい! それはもう!」d(^-^) 綾香 :「き、きっぱりと言い切ったわね」(−−;;; セリオ:「だって、ホントの事ですから」(^0^) 綾香 :「そうなのかなぁ?」(−−; セリオ:「はい!」(^0^) 綾香 :「うむむむむ」(−−; セリオ:「往生際が悪いですよ。いい加減に認めてしまいましょう」(^0^) 綾香 :「そうは言われてもねぇ」(−−; セリオ:「む、粘りますねぇ。でしたら、証拠をお見せしましょう」 綾香 :「証拠?」(−−; セリオ:「えい! いきなり、マタタビ」(−−) 綾香 :「!!      ………………………………ポー。      ……………………うにゃ〜ん」(*−−*) セリオ:「ほらね」(^-^)v 綾香 :「にゃん。うにゃ〜〜〜〜〜〜ん」(*−−*)



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