了承学園4日目 第2時限目(痕サイド) 「おい、悪い子ちゃん」 「なんだよ、困ったちゃん」  一瞬、殺気が爆裂しそうな雰囲気が満ちた。一瞬だけで治まったが。  お互い完全密封された劣化ウラン入りバケツを両手にぶら下げ、首から大きなカー ドをぶら下げた姿で、耕一と柳川はシニカルな笑いを交わした。ちなみに耕一のカー ドには「ボクは本能のおもむくまま教室を壊した悪い子ちゃんです」、柳川のカード には「私は感情に流されて保健室を荒らした困ったちゃんです」と、マジックで大き く書かれている。  了承学園職員室前の廊下では、今、バケツを持って立ちんぼというやや前時代的な 懲罰の光景が再現されていた。まあ、謎ジャムに較べれば軽い罰であろう。時折、出 入りする教職員や生徒の笑いを含んだ視線が痛いが。  耕一と柳川は、しばらくの間は互いの存在を無視して沈黙を崩さなかったのだが、 しかし、これまでの様々な経緯は無視できるほど小さなものではない。友好的な雰囲 気からは程遠いものの、それでも二人はぽつぽつと口を開き始めた。 「貴之の具合って、どうなんだ?」 「…まあまあ、といったところかな」  ……………。 「鶴来屋の方は、なかなか繁盛しているようじゃないか。千鶴もお前も、少しボケた ところがあるからな。少々、心配していたんだが」 「余計な御世話だ。まあ、足立さんとか、古参の役員が揃ってるんだ。運営システム そのものは確立されているからな、トップが経験不足の青二才でも、フォローしてく れるから」 「経営なんてものは、そんなに甘いものじゃないはずだがな。お前達だって、そう無 能じゃないという証明だろう」 「…褒められた、と思っておいていいのかな?」 「褒めてるんだよ」  ……………。 「あのさ。前から聞きたかったんだが、お前は、その、血縁上は俺たちの…叔父、っ てことになるわけで」 「叔父さんなんて呼んだら殺すからな?俺はまだ20代で独身だ」 四捨五入すれば30になることを誤魔化しているあたりに、微妙な心理がある。その 辺りの機微は、耕一にはまだまだ汲み取れなかったが。 「わかってるって。たださ、その…血縁者として、まあ、色々その…あるだろ?」  歯切れの悪い耕一に、小馬鹿にした視線を柳川は向けた。 「…安心しろ。創立者の隠し子なんて、鶴来屋グループにもお前らにも厄介ごとの種 にしかならんことぐらい、承知している。…俺だってそんな面倒事はご免だ」  ……………。  耕一は、あるいは自分や千鶴に代わって鶴来屋の会長代理を務めていたかもしれな い男の顔を横目で見た。尤も、鬼の本能を制御できなかった柳川はどの道その役目か ら降りていただろうが。 「…我が子を生まれる前に殺そうとした父親は、情に置いては非難されるかもしれな い。だが結果を見ればそれは賢明な判断だったわけだ」  その固有名詞をぼかした発言は、耕一の心を読み取ったわけではなかっただろう。 あるいは、無意識に信号が同調していたのだろうか。 「恨んでいるのか?」  やはり対象をぼかした耕一の言葉に、柳川は形容しがたい顔になった。 「…別にそういう話をするつもりじゃなかったんだが。が、まあ別に恨みなんか持っ ていないんじゃないかな。所詮、見たことも無い相手だ。イメージが希薄すぎて、恨 めるほどの存在じゃないだろう」  その、どこまでも他人事のような口調は、あるいは韜晦というものかもしれない。 多少だるくなってきた腕を動かしバケツを持ち直すと、耕一は黙り込んだ。  ……………。  ややあって、今度は柳川が問い掛けてきた。 「俺のほうも、前から聞いて見たかったんだが…千鶴の料理ってのはそんなにひどい のか?」 「…実物をみたことはあるのか?」 「幸いにして無い」 「…そりゃ結構なことだ」 「おい。そんなにひどいのか?」 「ひどいというかなんというか…あれは、もう一種の才能なんじゃないかな」 「…話がよく見えん」 「以前、千鶴さんがブイヤベースを作ったことがあった」 「うむ」 「梓が、何故か手近な所に用意していた金魚鉢に、スープを一滴垂らしてみた」 「…即座に金魚が浮いたとか?」 「即座に水が沸騰して、金魚は骨になった」 ぶっ、と隣で無理矢理咳き込むのを堪える音が鳴ったが、耕一は知らないふりをし た。 「後でガチャピン先生に調べてもらったら、水中酸素破壊剤…オキシジェン・デスト ロイヤーと同じ成分が検出されたそうで」 ゲホ、ゲホ、という音が2,3度上がって、それで収まった。ややあって、ぽつり と柳川が呟く。 「…結構苦労してるんだな、お前。で、どう処理したんだその産業廃棄物」 「ガチャピン先生がドラム缶詰めにしてたけど…まあ、うまく処理してくれたんじゃ ない?」 どちらからともなく、はあ、と溜息がもれた。  ……………。  ……………。  ……………。 こんどの中断は結構続いたが、やがて、柳川は顔だけ耕一に向けて口を開いた。 「…ところで、例の皇女四姉妹のことだが」 「なんだよ?」 「そう嫌な顔をするな。自分の考えがまとまらないうちは、そのことをあいつらに打 ち明けたくはない、という気持ちもわからんわけではない。だが、はっきり云ってお きたいことがあってな」 耕一は、ゆっくりと柳川に顔を向けた。柳川の、眼鏡越しの冷ややかな視線につい 気後れしてしまいそうになるが、逆に反撥で強く睨み返す。それを察したのか、柳川 は僅かに苦笑したようだった。 「ま、ごく基本的なことだ。…自分の前世、過去と向き合うのは、結局各々の、本人 だけの問題だということだ。当たり前だが、これはつまり、本人以外の者にとっては 他人事でしかない。そして他人には、この問題に対して何もできん、ということさ。 お前が今気をもんだところで、はっきりいって無意味だな。当人の問題だ、当人に 任せるしかあるまい?」 「…俺に、ほっとけっていうのか!?」 「お前に何ができる」 毒のこもった口調で、冷然と柳川は吐き捨てた。 「何もできないくせに、自分は力になってやれるなんて根拠のない甘い幻想を持つん じゃない」 「…お前に何がわかる!お前なら、俺よりうまくやれるっていうのか!?」 「少なくとも、俺はこの問題は他人には手の出しようがない、という現実は見ている さ。ま、仮に何かしてやれるとしても、俺はお前らのために役立ってやる義理なぞど こにもないが」 「こっちだってお前の助けなんざ必要としないさ!」 「結構な答だ」 皮肉を形にした笑いを浮かべて、柳川は平然と耕一の語気を受け流した。 「だが、現実はしっかりと把握しておけ。自分が、大事な人間の抱える苦しみに対し て無力だとしたら、何の力添えもしてやれないとしたら、苦しいだろう。 だがな。誰の力添えも受けられず、自分一人で抱えた苦しみに向き合わなければな らん当人に比べれば、そんなものはカスのようなもんだ。甘っちょろいタワゴトだ な」 「…何故………何も出来ないなんて決めつける?」 「なんだと?」 「出来ることは、助けになってやれることは、何かあるはずだ!何かきっと!…わ かったようなことを言うな!」 「…少なくとも、お前よりはわかっているつもりだがな」 「もういい、黙れ!お前とこんな話をすること自体、間違ってたんだ」 「…愛だの可能性だの優しさだの未来だの」 「黙れといっている!」 だが、柳川は黙らなかった。 「努力すれば、ひたむきならば、愛があれば、希望を持って前に進めば、必ず道は開 けるなんて、そんな甘い幻想にすがって何になるというんだ?…何かに対して責任を 取るということはな、まず現実を直視することから始まるんだ」 もはや一言も発せようとはせず、耕一は殺気のこもった目で柳川を睨んだ。それに 臆することもなく、平然とその視線を柳川は受け止める。 「…お前らの親がいい例だな」 突然、全く予想もしていなかったことを言われて耕一は気を逸らされた。一瞬持っ た疑問は、しかし次の瞬間解答を得られる。 それは決して快いものではなかったが。 「お前らの父親どもも、鬼の本能を抑制することができなかった。そして一度制御で きなかったら一生制御できない。やり直しはきかない。救済する手段はない。逃げる こともできない。己の中の鬼との戦いだからな。だから、他人には助勢してやる ことも、代りに鬼と戦ってやることもできない。 無論、都合のいい奇跡なんておこらない。 妻や子供という、愛する対象がいてもどうにもならない。徐々にボロボロに壊れ て、苦痛にのたうって、そして最後には本能に屈して殺戮を喜びとする鬼となるか、 その前に自らその命を閉じるか。ま、どっちにしろ行きつく先は破滅の二文字しか無 い。 ボロクズのような人生だな」 ガシャン!! 「貴様ッ…!」 重い、重いバケツは柳川の顔面に叩きつけられようとして、それは柳川が自身の 持ったバケツに阻まれて目的を達成することはできなかった。そうでなければ、柳川 の顔面はトマトのように叩き潰されていたはずだ。 「…フン。じゃあ聞くが、お前や千鶴たちは何かしてやれたとでもいうのか?壊れて いく親を助けてやれたというのか?破滅の運命を回避させることができたというのか ? 現実を見ろよ。どんなに愛したって、優しくしたって、希望を持ったって、どうに もならなかったろうが。努力が必ず報われるなら、人間もっと楽に生きることができ るさ。 だがな、生きるってことはそんな甘っちょろいもんじゃない。それが現実だろう が」 ガシィ! 再び重い音が響いた。振り上げられたもう片方のバケツを、今度は柳川は自身の腕 で辛うじてブロックした。みしっ、と嫌な音が鳴る。 「俺達の親父はなぁ!親父は…お前なんかに…お前なんかにボロクズなんて嘲弄され るような、そんな生き様を送ったんじゃない!親父は…最後まで…負けるとわかってて も逃げずに戦って!俺や母さんや千鶴さんたちを想って!生きて!死んだんだ!それ を…!」 「…勘違いするな。俺が問題にしてるのは、その立派な親父さんにお前たちが何かし てやれたかってことさ。お前らに何ができた?ってことさ。…何かできたのか?あん ?」 「…………」 「何もできやしないさ。できるとしたら、精々気休め程度の労わりだけだな。それす ら、離れた途端に冷めていくような温もりにすぎん。無いよりはマシ、だがな」 無言のまま、耕一はゆっくりとバケツを降ろした。その顔にはやり場のない怒りが 消えてはいないが。 「たとえ先に絶望しかないとわかっている人生でも、…お前達が生まれてきている。 決して無価値でも無意味でもない人生だったのだろうがな」 その柳川の小さな呟きは、半ばは自分自身に言い聞かせているように耕一には聞こ えた。自分が何かを忘れているような、そんな小さな刺が心の隅に引っかかってい る。 「話がすっかり逸れちまったな。まあ、皇女の件は…破滅的な結末になると決ってる わけではないしな。大体、基本的には同一人物なんだ。案外、あっさり片がつくかも しれないし」 「…結局、どうしろというんだ?」 その耕一の問いかけに、柳川はわざとらしい溜息をついた。 「…なんでもかんでも俺に聞くな。本来はお前たちの問題だろうが。人に安易に答を 求める前に、自分の頭で考えてみろ。自分で考えない奴には何を言ってもムダだ」 「冷たいやつ。…わかっちゃいたけどさ」 「大体、一朝一夕で答が出せるなんて思うな。優柔不断も良くはないが、安易な答で 満足するな」 「どーしろ、ってんだよそれじゃ!?」 物分かりの悪い犬に芸を教え込むサーカスの調教師のような目つきで、柳川は出来 の悪い甥を見た。 「もし、お前が千鶴たちに何かしてやれることがあるとしたら、…あいつらが各々の 答を出した時、あいつらをちゃんと受け止めてやることぐらいだろうが。 それは絶対にしなきゃいけないことで、しかもお前にしかできんことだろうが。だ がら、お前はそれだけを考えていればいいんだ」 「…言われなくても」 「うん?」 「言われなくても、そんなことはわかっている…」 「ならいい」 柳川は興味を無くしたように、視線を逸らした。そのまま半ば目を閉じ、心持ち背 中の壁に体重を預けるように姿勢を変える。…態度で、それ以上の問答を拒否してい た。 「柳川」 「なんだ?」 「…いや、なんでもない…」 「どーでもいいが、お前、いい加減人を呼び捨てにするのは止めろ」 「なんて呼べばいいんだよ?」 「そうだな。ま、あまり仰々しく柳川先生なんて呼ばれるのもこそばゆいし気軽に」 「おう」 「柳川様と呼べ」 「お前なんか柳川で十分だ!」 「勝手な奴」 「お前にだけは言われたくないわーーーーーーーーーーーーーーー!!」 ぜーはーと肩で息をする耕一を完全に無視して、柳川は目を閉じた。顔は笑ってい るが。 そんな柳川を幾分不機嫌に見ながら、耕一はそれでも柳川が幾分話しやすい相手に なっていることを認めざるを得なかった。以前の、近寄るだけで全てを切り裂くよう な危険な雰囲気は無くなってはいないが、それでも随分影を潜めている。 「お前さ…ひょっとして…」 「…星の光はな」 一瞬、何を言われたのか耕一には理解できなかった。柳川も明確な意志があっての 言葉ではなかったのだろう。それは無意識に口に出た独り言のようだった。 「たとえ見失っても、先のない男にも、平等に…照らしてくれるんだ。俺は、借りな り恩なりを…」 そこで、自分の言葉に気づいたように、バツが悪そうに柳川は口を閉じた。頭をか こうとして…両手のバケツの存在を思い出したのか、すこしその素振りをみせただけ だったが。 「なんだか…わからん話をしてしまった。忘れてくれ」 「…まあ、努力はするよ」 ふう。 なんとなく息をついて、耕一も壁に背を預けて、ぼんやりと天井を見上げた。見上 げたからといって別段おもしろいものが見えるわけでもないが。 「おーーーい、こういち〜〜〜〜!」 耕一の黙考は、不意にかけられた梓の声に遮られた。 廊下の向こうから、柏木家の四姉妹がそれぞれ何やらバスケットを抱えて近づいて くる。隣の柳川とはあまり視線を合わせないようにしながら。 「耕一さん、もう立ちんぼはいいそうです。さ、そんなバケツは降ろしてください な」 「はー、ありがてー。やっぱダルイよなこういうの」 ずしん、という重い音を立ててバケツを降ろすと、耕一は胸にかけたカードも外 す。 「ごくろうさま、耕一兄ちゃん」 「お疲れ様でした、耕一さん」 「いや〜、別にどうってことは…それより、みんな何持ってんの?何気にいい匂いが するけど」 「へへ〜、知りたい?知りたいよね?知りたいだろやっぱり?」 「耕一さん、変身してお腹減ったでしょう?とりあえず、軽くつまむものを作ってき ましたから、召し上がってください」 「千鶴姉〜〜〜〜〜〜、せっかくアタシがじらしてんのにアッサリばらさないで よ〜〜〜」 「バレバレたっつーの、梓」 軽くチョップをくれる手真似をして、耕一は初音が持っていたバスケットを受け取 ると中を確認した。中身は様々な具を挟んだサンドイッチにフライドチキン、グリー ンサラダといった軽いピクニックのお弁当料理が入っている。揚げたてのチキンの匂 いが程よく空腹な身には魅惑的だ。 「うまそーだなー。よし、早速みんなで食うか!」 「はーい!」(×4) 「と、その前に…」 自分同様、さっさとバケツを放り出して去りかけていた柳川の背中に向かって声を かけようとして、耕一は僅かにためらった。しかし。 「おい、柳川。お前これから…」 「学食に行く。ま、その前にちょっと書類の整理があるが」 冷厳に言い放つと、柳川は手近の扉を開けて、職員室に入っていった。それ以上の 会話を拒否するように、やや強めに扉は閉じられる。 「…一朝一夕には変らない、ってわけか…」 「お兄ちゃん?」 「いや、何でもないよ。…じゃあ行こうか。中庭で食べる?それとも屋上がいいか な」 「屋上がいいよ、お兄ちゃん」 その初音の一言で、やや早めのランチタイム、あるいはお茶の場所は決定した。 「耕一。ひょっとしてさ、あいつも誘うつもりだったの?…言っとくけど、あたしゃ あの下衆野郎には、アタシらの作ったメシは米の一粒だって食わせたくないんだから な」 歩きながらぼやくその梓の言葉は過激すぎる表現だったが、それは他の姉妹達も程 度の差こそあれ同感であったらしい。初音でさえ、何も言わなかった。 「まあ、確かに、俺だって急にあいつと仲良くしたいなんて思わないよ。あいつは、 嫌な野郎だしな。…それでも、一応、礼はしたかったんだ」 「お礼ですか…?」 不審そうな顔をする千鶴に更に言葉を続けかけて…耕一は止めた。なんとなく、先 程の会話は誰にも話すべきことではないと思えた。 「まあ…まがりなりにも、親戚だしな」 それで会話を打ち切りたい気配を察して、それ以上姉妹達も尋ねようとはしなかっ た。 *************** 柳川は自分の机上のアルミホイルの包みを不審そうに眺めた。まだ湯気の立つ湯飲 み茶碗も一緒に置かれている。 包みを開けると、中にはやや歪な形のおにぎりが数個現れた。 「ああ、マインさんが持ってこられたんですよ、それ。先程まで先生を待ってたよう でしたが」 隣のガチャピンが気さくに説明してきた。それに無言で応じると、柳川はおにぎり を一つつまんで口に放り込んだ。二口三口、咀嚼すると飲み込む。 「…35点というところか」 「辛いですね」 「50点満点で、の話だがね。…マインの奴、何か用事があるようなことを言ってま したか?」 「いえ、特にそんな話は」 入れたばかりの熱い茶を一口含んで口の中を湿すと、割と旺盛な食欲を見せて柳川 は二つ目のおにぎりを頬張った。変身して空腹だったのは事実である。そのことをわ きまえているからこんなものを用意しておいたのだろうが…。 なんとなく奇妙な話だった。マインの性格を考えれば、ずっと自分が来るのを待っ ていそうなものだが。 「まあ、あいつは元々貴之付なんだ。俺の側にいるのが間違いなんだが」 「柳川先生」 少しためらう気配を見せて、隣の地球外生命体がおずおずと話しかけてきた。 「あまり、御自分を貶めるようなことはなさらない方がいいですよ。…周りの方が悲 しみますし、何よりあなた自身のためにもならない」 「…ま、自分が歪んでいるという自覚はありますがね」 言外にそれ以上の会話を拒否する雰囲気を強く漂わせた答えであり、また、先程の 耕一との会話を盗み聞きしていたことを非難する口調だった。流石に疎いガチャピン もそれは悟っていたが。 「…柳川先生。あなたも、エルクゥの狩猟本能を抑制することができなかった、と聞 いていますが」 「それがどうした?」 無言のまま、ガチャピンは指先についた米粒を口に運ぶ柳川を見つめた。 傲慢で、平然とした静かな顔。 「いえ。なんでもありません」 言葉が飛び出したがっている。だがそれを抑えてガチャピンは会話を打ち切った。 それ以上何も言うべきでは無かったから。 三つ目のおにぎりを口に運ぶ柳川にはもう視線を向けず、ガチャピンは次の授業の 下調べを再開した。決して清々しくはないが、どこか一本筋の通った奇妙な心地よさ を感じながら。 【後書き】 柳川、美化120パーセント(笑) 五人組みのチーム(主人公・チビ・デブ・ニヒルな奴・紅一点)の中で、いつも正 道をいく主人公の傍らで「何言ってやがるバカバカしい」と皮肉るニヒルな奴が ねー。冷めてるくせして本当は熱い奴だったり。この捻くれ曲がった歪んだ矛盾の多 い性格が良し。 例えばコンドルのジョー(もはや定番)。後はハヤトとかね。ハヤトはドリルだし (おい) 品行方正なキャラでほのぼのとした話もいいけれど、時には倣岸不遜な人間が罵詈 雑言をまくしたてる話を書いてみたくなるもので。 でも柳川と耕一、首にカードかけてバケツ持って、あの会話してるんですけどね。 今回、ラストはやはりマインの出番があったのですが、唐突に思い直してガチャピ ンに差し替えました。何故ガチャピンかというと、他の教師陣の顔ぶれを見て、こう いう事言ってくれそうなのはこの人のいいエイリアンしかいないかなー、とか (笑)。長瀬源一郎でも良かったかもしれませんが。 やっぱカタカナの羅列ってのは読みにくいし。差し替えの理由はそれだけじゃない けど。 何故マインが柳川に懐いているのか、その辺りは今までのSSと照らし合わせて見れ ば、なんとなく想像がつくような感じにしたかったもので。原案通りだと直接的す ぎ、あざとすぎかな。 そろそろ日向かおりもフォローしなきゃいかんかなーとか考えてます。どうしてい いものやら、ちょっと見当つかないけど。
 ☆ コメント ☆ マルチ:「なるほどなるほど。とっても為になるお話でしたぁ」(^0^) 理緒 :「マルチちゃん、本当に理解してる?」(^ ^; マルチ:「もっちろんですよ!」(^0^) 理緒 :「…………そ、そう」(^ ^; マルチ:「耕一さんが『悪い子ちゃん』で、柳川さんが『困ったちゃん』だっていうお話ですよね」 理緒 :「……………………。      それは本筋じゃないよ。……間違ってはいないだろうけど」(^ ^; マルチ:「ほえ?      でしたら、バケツを持って廊下に立たされるとみなさんに笑われてしまう、      というお話ですか?」(@◇@) 理緒 :「違うって」(^ ^; マルチ:「はう〜。      ではでは、千鶴さんのお料理はゴジラでも倒せるという事を説いたお話ですね」(@◇@; 理緒 :「……ノーコメント」(^ ^;;;;; マルチ:「ではではでは、柳川さんはおにぎりが大好きだという……」(@◇@;; 理緒 :「なんか、どんどん正解から離れていってるような……」(^ ^; マルチ:「はうぅ〜。ではではではでは…………えっと…………ですから…………」(@◇@;;; 理緒 :「……………………」(^ ^; マルチ:「はうぅぅぅ〜〜〜。      本当はよく分かってませんでしたぁ。す、す、すみませ〜〜〜ん」(;;) 理緒 :「最初っから素直にそう言えばいいのに」(^ ^;;;



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