私立了承学園 4日目 番外編 作 H・Wiz 暖かく非常に気分の良い昼下がり、 英国でも有数の迎賓館、バートン屋敷の執事兼管理人、ラグエル=フォスターは屋敷の庭園でメイド頭のクレアが煎れてくれた最高の紅茶を賞味していた。 つい最近まで、この大事な屋敷の維持のために国中を奔走していて、ここまでのんびりとした時間は過ごせずにいた。 それもあってか限界を超えた忙しさから解放された今、暫くは屋敷での接待を休止していようかなどとフォスターは考えていた。 紅茶を飲み終え、暖かな日差しにまどろもうとしていた。 そんな時、屋敷からメイドの1人のメイがフォスターの元に駆け寄ってきた。 「フォスター様、日本からお客様です」 日本から? フォスターは首を傾げた。日本人にここを訪ねて来るような知り合いは1人しかいない。しかし、彼女とはこの屋敷の人間は皆、面識がある。 「どんな人が訪ねてきたんだ?」 メイに問い正す。 「どなたかは存じませんが、流れるようなものごしのご婦人と鋭い眼光の老執事です」 「ふむ、おまえがそう言うなら相当のものだな。鋭い眼光の老執事・・・・まさかな」 いいながら、フォスターは客人の待つ応接間へと急いだ。応接間にフォスター達が入るやいなや、部屋にいた老執事はフォスターに声を掛けてきた。 「元気だったか?ラグエル」 老執事の声を聞いたフォスターは、やっぱりという表情と共に嬉しそうな表情を浮かべていた。 「やはりあなたでしたか。お久しぶりです。長瀬さん」 「ラグエル。いやさ、ラグエル=フォスター殿、元気そうでなにより。最後に会ってから20年になるかな?」 フォスターと老執事・セバスチャンこと長瀬源四郎の出会いは25年前に遡る。 当時、長瀬は世界でも有数の企業・来栖川グループの会長秘書としてすばらしい才能で会長をバックアップしていた。 そんな頃、英国の資本家達の組織「キュレイポート」の若き敏腕エージェントとして頭角を表していたフォスターと出会ったのであった。 英国の資本家達の代理人としてフォスターは来栖川との交渉にあたった。 そして、来栖川側にはいつも、会長の側に控える長瀬の姿があった。 二人は好敵手として気を許し合い、一緒にバーへ繰り出すことも多かった。 しかし、初対面の時から5年程たったある日、フォスターは一人の女性を連れて「キュレイポート」を辞め、その行方はそれから15年間ようとして知れなかった。 二人の対面はそのとき以来である。 「あの時、あなたには申し訳ないことを・・・・」 フォスターは謝罪の言葉を発しようとしたが、それを長瀬の大声が遮った。 「気にするなラグエル。こうしてまた会えたのだから」 豪快に笑う長瀬。 それまで、その様子をにこやかに眺めていたご婦人が、長瀬に声をかける。 「あのぅ、長瀬さん。旧友の再会はそれくらいにして、そろそろお互いの紹介とここを訪ねた本題に入りたいのですが」 あごに手を当て長瀬のほうへと微笑む。 「これは申し訳ありませんでした。秋子理事長」 長瀬は、ご婦人に礼をし、フォスターにご婦人の紹介を始める。 「ラグエル。こちらは日本の私立了承学園の理事長・水瀬秋子女史だ」 「どうも(にこっ)」 長瀬の紹介に合わせてにこりと微笑む秋子さん。続けて長瀬は、秋子さんにフォスターの紹介をする。 「秋子理事長。こちらがこのバートン屋敷の執事兼管理人のラグエル=フォスターです」 「はじめまして」 フォスターが握手を求める。しっかりとその手を握り返す秋子さん。 だが、フォスターがにこやかだったのはそこまでだった。 「早速ですが、秋子女史。今回この屋敷を訪れた理由を教えていただきたい。」 フォスターの顔は、キュレイポート時代を思わせる真剣な顔になっていた。 「そんな真剣な顔をなさらくてもよろしいですのに。 少しも難しい頼みでは無いとおもうのですが、実はこの屋敷の皆さんに当学園の専任指導員になっていただきたいのです」 それを聞いた途端のフォスターの顔には疑問が浮かんでいた。秋子さんはさらに続ける 「私どもの了承学園はあまりに広大な敷地をもっている上にトラブルも多いので、それを維持するために数多くのメイドロボット、HM−12型とHM−13型が稼働しているんです。 こちらの皆様にお頼みしたいのは彼女たちメイドロボットの様々なメイド技術の指導なんです」 「メイドロボの指導ですか。確かに当屋敷にはメイドのプロフェッショナルが大勢おりますが、そのために日本へ行くとなると・・・・。この屋敷の管理の事もありますし」 「そのことでしたらご心配無く。私どもの特殊技術でこの屋敷ごとわが学園の敷地にお送りできますから」 とてつもないことをさらりと言ってのける秋子さん。あまりのことにフォスターは長瀬の顔を驚きの表情で見つめる。その目は、 (今の事は本当か?) 語っていた。それを受けた長瀬は同じく目で、 (本当だ。この人に不可能はない) と返すのだった。 「それなら、お受けしましょう。実は一年間位はこの屋敷を休業させるつもりでいましたから」 フォスターはかなりさばさばした表情で答えた。 「お受けくださってありがとうございます。 ほんと長瀬さんのおっしゃるとおりの良い方のようですわ、フォスターさんって」 「褒めても何も出ませんよ」 フォスターは破顔する。 「それでは、秋子女史に当屋敷の皆を紹介しましょうか」 そういうとずっと傍らに控えていたメイに全員を集合させるように命じた。 それから数分後、応接間には9人のメイドが勢ぞろいし、順番に自己紹介をしていった。 「エミット=コールといいます。調理が担当です。前菜なんかが得意です」 見るからに純朴な顔にそばかすを残した少女。 「エリザベス=バージェラックです。屋敷内の清掃が担当です」 美しく流れるような金髪の小柄な少女。 「リリィ=カースンです。こっちが妹のフローラです。」 ボブカットの姉と褐色の肌の妹。二人とも利発そうな瞳をしている。 「屋敷の機器全部の保守管理をしているモニカ=ハーベストです」 気の強さを秘めたポニーテールの少女。 「スミス=ランフォートです。屋敷の経理をしています」 眼鏡をかけ、理知的に輝く瞳をした女性だ。 「メイ=クルサードです。主にこちらの屋敷の洗濯と宿泊客の応対を任されております」 先程からフォスターの側に控えていた女性で、赤い髪をし前髪で視線を隠した所が印象的だ。 「リース=ウェン=ネフタです。えーと、担当は屋敷の書斎・書庫の管理と炊事全般です」 眼鏡をかけているが、先程のスミスとは違い優しい目をした女性。 「この屋敷のメイド頭のクレア=バートンです」 流れるように美しい亜麻色の髪をした女性。その紹介を聞いて、秋子さんはあることに気がついた。 「クレアさん。あなた、ファミリーネームからしてバートン財閥の関係の方なのかしら?」 「はい、一応バートン財閥の役員の末席に名を連ねてはおりますが、実務についてはフォスターに一任しております。 私には気ままなメイドが性に合っておりますので」 クレアはそう答えたが、本当は少し違う。 クレアが興味を示していないだけでバートン財閥に対して絶大な発言力を持っている。 またこの屋敷自体、クレアの持ち物なのだから。 「以上9人と私がこの屋敷の人間です」 フォスターが締める。 「ところで屋敷の移転と引越しは何時ごろになるのですか」 呼びに来たメイに詳細を聞いていたクレア訪ねる。 「それは、すぐにでも」 にこやかに答える秋子さん。 「そうですか」 クレアはそれを聞いて2、3日中かしらと引っ越しの算段を始めた。フォスターも同様だ。 「秋子理事長、そろそろ学園に戻りませんと」 それから、暫くの間メイド達と秋子さんは楽しく談笑していた。 談笑しているうちにすっかり打ち解け、中々に話は尽きない。 その楽しい時間も長瀬のこの一言で終わりを告げた。 「あら、もうこんな時間なの?残念だわ、もう少し話をしていたかったのに」 非常に残念そうな秋子さん。 「まあまあ、これからも話す時間はあるでしょうから、そう残念がらないように」 フォスターは秋子さんを慰める。 「そうですね。それでは皆様、名残惜しいですが、また後日学園でお会いしましょう」 「ラグエル、また学園で会おう」 「ああ、学園で・・・・」 挨拶を交わし、客人は屋敷を後にする。 「随分と朗らかな方でしたね」 クレアが秋子さんに対しての正直な感想を述べる。 「ああ、あれでいて世界中にさまざまな影響力を持っているから驚きだな」 フォスターも伊達に裏社会を歩いてきたわけではない。 水瀬秋子という人物がどれほどの力と影響力を持っているかをしっかりと把握していた (了承学園の超常技術については把握していない。それを次の日実感することになる)。 「さてと、引っ越しの準備でもしはじめるとするか。クレア」 「ええ、フォスター」 簡単な準備を始め、キリの良いところで準備をやめ2人は眠りに就いた。 次の日、 寝室から外を眺めたフォスターは、いつもの冷静さを欠いて驚いた。 何故なら、既にバートン屋敷は了承学園に移転していたからだ。 「い、何時の間に??」 フォスターは、そう呟くのが精一杯だった。 了承学園 理事長室 「ガチャピン先生ありがとうございます。 こんなに早く[秋子特製瞬間転移装置]の大出力型を完成させていただくなんて」 「いえいえ、この位お安に御用です」 登校してきた生徒達は学園の片隅に西洋風の屋敷が庭園と共に一夜にして建っているのを見ても誰も驚かなかった。 「この学園ならなんでもありだしな・・・・」 誰からともなく、そんな呟きが聞こえた。 了 あとがき  了承学園をお読みの皆様はじめまして、H・Wizと申します。 前々から参加したいと思っていたのですが、重大なことに気づいてしまったんです。 既に出ている作品で所有しているゲームが、「痕」だけだったということです。 そこで、所有しているゲームから「了承にだしたいなぁ」というセレクトで雛鳥の囀としたのですが、了承にふさわしかったでしょうか? その辺、非常に不安です。了承にあうようにあちこち設定を変えて見ましたが了承されるでしょうか? 了承学園のメイドロボ軍団の教育にやってきたバートン屋敷の面々。 皆様にかわいがって頂けたら幸いです。
 ☆ コメント ☆ 綾香 :「なんか、いっぱい出てきたわねぇ」 セリオ:「そうですね。覚えるのが大変です」(;^_^A 綾香 :「まったくだわ」(^ ^; セリオ:「この人たちって、オリジナルキャラクターなんでしょうか?」 綾香 :「う〜ん。違うんじゃない?      あとがきに『雛鳥の囀』がどうとか書いてあるし」 セリオ:「『雛鳥の囀』って何ですか?」 綾香 :「…………雛鳥が囀ってるのよ」(−−) セリオ:「……………………そのままじゃないですか」(−−;;; 綾香 :「仕方ないじゃない。知らないんだから」 セリオ:「だったら、素直に知らないって言えばいいじゃないですか」 綾香 :「やっぱり、取り敢えずはボケとかないとね」 セリオ:「なるほど、そういう事ですか」 綾香 :「そういう事よ」 セリオ:「…………さすがは『ボケ役』ですね」(−−) 綾香 :「うぐっ。…………今のは自業自得なんだけど……      あんたに言われると、すっごくむかつく」(ーーメ



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