了承学園               四日目 放課後  To Heart サイド   俺とあかりはいつものように学校へと向かう途中、昨夜急に可決した 法案の事について話ていた。 「でも急にあんな法案が通るなんてね。」 「俺もテレビを見てびっくりしたぜ。」  昨夜、国会で急に可決された多夫多妻制の承認  なんでも、小子化傾向に歯止めを掛けるための苦肉の策らしい。  それにしてもなぁ。いくらなんでも。  よっぽど、切羽詰まっていたのかねぇ。  「でも、まあ俺達には関係無いけどな」  「えっ? なんで?」  なんで? ってお前。 「俺にはあかりだけで充分だよ」  真っ正面からあかりの目を見て言い切った。  さすがに、ちょっと恥ずかしかったが、あかりだって俺と同じ気持ちだろう。  「・・・浩之ちゃん」  あかりの奴、もう目を潤ませてる。  ・・・ったく、しょうがねぇなぁ。 「凄く嬉しい。わたし、本当に幸せだよ」  うっ。て、照れくさい。 「でもね」 「?」 「でもね、わたしは、みんなにも幸せになってもらいたいの」 「・・・・・・・・・は?」  みんな? 「わたし、浩之ちゃんが大好き。でもね、浩之ちゃんの他にもわたしの事を大好きな男の人っていっぱいいるんだよ」 「お、おい、あかりお前何を言って・・・・・・・・」 あかりが一体何を言おうとしているのか理解できた、だがあかりの口からそんなことが言われようとは思いもしなかった。 「わたしね、その人たちにも幸せになってもらいたいの。幸せの独り占めは良くないと思うの」 「ちょ、ちょっと待て!!それはまずいんじゃ・・・・」 「ええ〜?せっかく決まった法案だもん。有効に使わせてもらおうよ」 「でもな〜〜〜」 「別に浩之ちゃんを捨てるつもりなんて無いよ。ただ、みんなで幸せになりたいだけ。だから、ねっ」 「わ、分かった・・・・・・・・・・・」 そしてあかりと俺達男達との共同生活が始まった。 男達は俺、矢島、雅史、垣本、そして何故かセバスチャンのメンバーであった、俺は一番付き合いが深いということで 辛うじて第一主人の座におさまることができた。  ・・・・・・ってちょっと待てぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!  ガバッ!!  俺は慌てて目を開き、勢い良く体を起こした、一瞬でも早くあの悪夢から逃げ出したかった。  目を開け、体を起こしてみれば、そこは薄暗い部屋の中だった。  俺の周りには、あかり達藤田家の女の子達が眠っている、俺の他に男の姿は見えない  月見の宴の後、昨日のお詫びと言う事で10人全員を「愛して」いたんだっけ、そしてそのまま全員雑魚寝  という事になってしまったわけだった  やっぱりあれはただの悪い夢だったようだ、念の為頬をつねってみる、軽い痛みを感じた。  「ふう・・・・・・」  ようやく俺は安堵のため息をもらした。  しかし、本当たちの悪い夢だったぜ、よりにもよって矢島や雅史達があかりの夫だとはな。  雅史は親友だし、矢島はあかりとの事でぎくしゃくはしたが、嫌な奴とは思っていない、垣本、セバスチャン  にしても同様だ、しかし藤田家の女の子達のこととなると、話は別だ。同じ女の子の夫としてやっていく気持ち  なんてさらさらない、あかりも、芹香も、綾香も、委員長も、レミイも、理緒ちゃんも、琴音ちゃんも、葵ちゃんも、  マルチも、セリオも他の男には絶対に抱かせたくない。皆、俺の大切な女の子達だから。  独占欲丸出しだな、俺って・・・・・、そして勝手な奴だぜ・・・・・・。  複数の女の子達を「愛して」いながら、その逆は嫌だという、身勝手な奴だ。  けど、それを言うならこの学園にいる男達のほとんどが勝手な奴になるんだろうな。右を向いても左を向いても  身勝手な奴らばかりですかい、身勝手学校「了承学園」ときたもんだ・・・・・・、けっ。  いけねえ、つい自棄になっちまった。みんな、すまねえ・・・・・・・・・・・・。  だが、俺のもやもやとした気持ちはおさまることはなかった。先程見た悪夢が、いや、悪夢への  俺の拒絶が俺の考えを袋小路に追いやっていた。あの悪夢を悪夢としたことで、悪夢から逃げようとした  事で、俺の本音を再確認させられた。  いくら身勝手とはいえ、俺は俺のなかの独占欲を否定はできない。妻たちには俺だけを愛して欲しい・・・・・、  その気持ちは変わらない、だがその一方で、皆を束縛しようとする気持ちを否定するものがある。それは、俺を身勝手  な奴となじっている。  俺は眠っている妻たちを見渡した。  もし、今の俺の気持ちをみんなが聞いたとしても、みんなは笑って俺の独占欲を認めてくれるだろう、「まったくしょうがない  旦那様よねえ・・・・・。」なんて綾香あたり言いそうだよな。だけど、みんなそれでいいのか?俺一人だけを愛し、俺が他の  女の子を妻として愛することを当然の事としているこの状況を良しとするのか?もし逆だったら俺は耐えられない、我慢できない  ・・・・・・・・・・・・・!なんでみんな幸せだなんて言えるんだ!?  「それは、浩之ちゃんだからだよ。」  「男なんて身勝手な生き物だってわかってるわよ。」  あかり!綾香!い、いつの間に・・・・・・・・・!?俺は心臓がとまるような思いだった。  「浩之ちゃんが飛び起きたときに、一緒に目が覚めちゃった。」  「すぐに寝るかなあって、思ったのに、ずっとぶつぶつ言っていたから何事かと思ったわよ。」  ・・・・・・・・頼むから、人の思考を読むのはやめてくれ・・・・・・、しかし・・・・、口に出していたのか、あれを・・・・・。俺は  二人を気まずそうに見た。  「何?その気まずそうな顔は?別に浩之が悪い事したわけじゃないでしょうが。」  「まあ、そうだけどよ・・・・・、俺の独り言を聞いていたんだったら分かるだろ、俺がどんなに・・・・・」  「さっきも言ったでしょ?身勝手なのは承知のうちって。」  「・・・・・・・・・・・・」  綾香のあまりにあっさりとした言い方に俺は言葉を失った。綾香はそんな俺をみてくすくすと笑った。あかりも同じように 俺を見て笑った。そんな二人を前に俺は先程の、忌々しい葛藤の思いが薄らいできているのを感じた。そうだよな、俺の 身勝手さを彼女達が知らないわけがない。それでもみんなは俺と一緒になったんじゃないか。  「まったく・・・・、本当あんたって自分のことになるとてんでだらしないんだから、と、いうより行動派のあんたが、ガラに  もなく考え事をしていたっていうのが、間違いのはじまりなのかもね。まったくしょうがない旦那様ね。」  ほっとけ!!  「まあまあ、綾香さん・・・・。」  苦笑してあかりが綾香をたしなめていた。そして、俺の方に向き直って話し出した。  「浩之ちゃん、どんな理由があったかは知らないけど、みんなの浩之ちゃんへの想いを疑っちゃだめだよ、わたしも  綾香さんもほかのみんなも、浩之ちゃんが大好きだから、浩之ちゃんがわたし達を、他の男の人になんか渡したく  ないって思うくらい愛してくれているから、今の暮らしが幸せだと言えるんだよ。」  「大体、自分を身勝手な奴と言っておきながら、他の男にあたし達は渡さないって、何矛盾した事言ってるのよ。」  「矛盾しているから悩んでんじゃねえか!」  「あ、そうか」  「まったく・・・・・、しかし、悩んだってしょうがないんだよな、どっちかが絶対正しいってわけじゃないんだから。」                   「そうそう、今までの『身勝手な』浩之で、充分すぎるくらいうまくいってんだからそれでいいじゃない。」  「わたしはね、そんな『身勝手な』浩之ちゃんが大好きなんだから。」  「あら、あたしだってそうよ。」  顔をあわせてふふふっ、と笑いあう二人、俺はなんであんなことで悩んでたんだろう・・・・・・?  「すべてはあの忌々しい悪夢のせいだ・・・・・・。」  あの悪夢が、俺がいままでまともに考えなかった事を考えさせたが為に、俺は悩まされる事になったんだ・・・・・・・・。  もっとも、今まで自分の身勝手さをまともに考えてなかった罰ともいえる。  「ねえ、悪夢って何?」  突然、あかりが聞いてきた。あ、あの悪夢の話をしていいのだろうか?しかし、あかりに嘘はきかない・・・・・・・。  あかり、怒らないでくれよ・・・・・・・。    しかし、俺の願いとは反対に、俺の悪夢の話を聞いたあかりは膨れっ面で俺を睨んだ。  「う〜っ・・・・・・・・」  「・・・・・・・・・・・・」  何も言えない俺  「浩之ちゃん・・・・・、わたしは浩之ちゃん一筋なんだよ」  「は、はい・・・・・・・」  「夢の中とはいえ、わたしを他の男の人とくっつけるなんて許せないよ・・・・・。」  「・・・・・・・・・・・・・」  「でも、その夢から逃げ出してくれたから、軽いお仕置きで許してあげる」  と言って俺にすりよってきた。な、なんかいちゃつく理由が欲しかっただけじゃねーのか?ま、それは言わないでおこう。  だけど・・・・・・!!  「お、おい、他の子達が寝てるんだぞ・・・・・・。」  「大丈夫よー♪」  と、綾香が言った。何が大丈夫なんだ?  「皆、目を覚ましちゃったみたいだから。」  周りを見れば皆、起きあがっていて、俺をじっと見つめていた。その目は「わたしも、わたしもー♪」と訴えていた。  「ふう・・・・・・」  俺は息をついた。ひょっとしたら明日は遅刻かもな・・・・・・、一時間目が秋子さんの授業だったらどうしようか?  やっぱりジャムのお仕置きかな・・・・・?ま、それでもいいか。  この幸せな一時を過ごすなら・・・・・・。  こうして、俺達の「愛の宴(笑)」の第二ラウンドが始まった。あれ?第二だったっけ?第四、五ぐらいじゃなかったっけ?・・・・・・・  ・・・・・・そんな事どうでもいいや。  もう、俺は迷わねえぞ!!身勝手だろうがなんだろうが、俺は今の俺達を信じていくだけだ!!                            終    後書き  久しぶりの了承学園の投稿です。Hiro様、冒頭の部分を「たさい」の第一話から拝借  させていただきました。変な話に変えてしまい、すいません(汗)                    くのうなおき
 ☆ コメント ☆ 綾香 :「まったく、しょーがない奴。      なーに、つまんない事で悩んでるんだか」(^ ^; セリオ:「ホントですねぇ」(;^_^A 綾香 :「わたしたちが浩之以外の人を好きになるわけないじゃない」 セリオ:「うんうん」(^^) 綾香 :「でもまあ、それだけ、      あたしたちの事を真剣に考えてくれてるんだろうけどさ」(^^) セリオ:「愛されている証拠ですね」(*^^*) 綾香 :「そういうことね。えへへ〜」(*^^*) セリオ:「でも、今度またこんな事で悩んだら……」(−−) 綾香 :「……な、悩んだら?」(^ ^; セリオ:「も・ち・ろ・ん、きっつーいお仕置きです」(^〜^) 綾香 :「なんで、そんなに嬉しそうに言うのよ?」(^ ^; セリオ:「だって……浩之さんに対するお仕置きと言えば……(ぽっ)」(*^^*) 綾香 :「……あんたねぇ」(^ ^; セリオ:「でも……途中から、お仕置きをしているのか、お仕置きをされているのかが      分からなくなるのが難点なんですよねぇ」(−−) 綾香 :「それは……まあ……何と言っても浩之だからねぇ」(−−) セリオ:「浩之さんですからねぇ」(−−)  ・  ・  ・  ・  ・ 浩之 :「あいつら……俺のこと、いったい何だと思ってるんだ?」(−−; 智子 :「そんなの『性欲魔人』に決まっとるやろ」(^ ^; あかり:「そうだね。わたしもそう思う」(^ ^; 芹香 :「わたしも……以下同文、です」(´`) 浩之 :「……………………」(−−;;;



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