了承学園4日目 第5時限目(痕サイド) 「またせたな、まいスチューデンツ!」  まるで大志のようなセリフをいいながら元気良く入室してきたのは…デュークだっ た。 「…あのデュークさん?」 「うむ、どうした同志耕一?」 「いや、どうしたって…どうかしてるのはデュークさんじゃないんですか!?」  耕一の背後でうんうんと妻達も頷く。 「デュークさん、ご自分の出番が少ないからといってそういう方向でご自分のキャラ を変えてしまうのはどうかと思いますが…」 「そーだよ。いくらティリアのおまけみたいなもんだからってさー」 「…九品仏さんの真似をしても、住井さんの二番煎じですし…」 「とりあえず、ラブコメ路線でも誠さん達に存在感負けてるのは仕方ないけど…で も…」 「…何気に容赦ないね、キミタチ」  さほど気にもしていないように、デュークはからりと笑った。というより、何かお もしろがっているというか、イタズラを企む悪ガキのような顔をしているようでもあ る。 「フッフッフッ…気づかないかねキミタチ?」  ふきし!ふきし!  デュークは妙な擬音と共に拳を握った両腕を前に突き出した。そのまま顔の前で両 腕を交差させると、ゆっくりと広げていく。  同時に妙なBGMと共に画面がうみょ〜んと歪む。 「って、画面って何だーーー!?」  とか言ってるうちに、エフェクトは終了し、画面は元に戻った。そしてさっきまで デュークが立っていたところには… 「ふはははははははははははははははははは!エクセレンツ!」 「お前は怪人二十面相かーーーーーーーーーー!?」 「ああっ、今回もまた初っ端から若者置いてきぼりネタ…」  耕一と千鶴が頭を抱えるのをよそに、デューク・・・に変装していた大志は高笑い し ながら教卓についた。 「…うむ。BDバッジは道しるべとして使う他にパチンコのタマとしても使えるのだ よ。最近はパチンコではなくスリング・ショットというのがオッシャレ〜?な感じで あるな!」 「…ロボター7っていましたね、そう言えば」 「…楓お姉ちゃん…なに、それ?」 「…あんたあたしより若いくせにどうして少年探偵団なんて知ってるんだ…?」  表情を失ってしまっている梓と初音に、鷹揚に顔を向けて楓は…呟いた。 「…ヒミツです」 「ああっ!?なんかスゲー気になるっ!?」 「あ、梓お姉ちゃん落ち着いて…!」 「…と、いうわけでとりあえずツカミはオッケーということで今回の課題だが」  暴れる梓を放っておいて、大志はチョークを取るとおもむろに今回の課題を黒板に かきつけた。意外に無難な方法である。 「ここでギャグやってもあまり意味ないしな」 「…どうせなら最初からギャグなしでやってもいいんだぜ…つーかいつも普通にして くれお願いだから」  思わずぼやいてしまう耕一である。まあそれはともかく、一同はその課題とやらに 視線を向けた。 『しーしー・さくら』 「…って、あれか?国営放送の例のヤツ?ピーチじゃなくて?」 「うむ!原作CLAMPな例のヤツだ!」 「…伏字使ってないし…マジにやるわけ?」 「要するに、コスプレですか?」  首をひねる耕一の代りに楓が要点を察して問いかける。その言葉にあっさり大志は 頷いた。 「補足するならさくらちゃんと知世ちゃんの二人を、年少組と年長組に別れて扮して もらう。その上でそれぞれの趣というものを比較検証してみようか」  耕一は半眼で大志を見つめた。 「なんかもっともらしげに聞こえるけどやっぱりオタクな発想だよなそれって…で、 俺は審査役ってわけか?」 「何をいっとる。キミは当然ケロちゃん役だからしてこの黄色いケロちゃん着ぐるみ を着てもらわねば」 「なんでだーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」 「とりあえず更衣室を用意せねばな…ポチッとな」  耕一を無視して、ボヤッ○ーな口調で大志は教卓の上のボタンを押す。  ウイーン。  教卓の一部に穴が開き、そこから金属製の小さな椰子の木が伸びた。その木にヘコ ヘコとブタロボットが登っていく。 『ブタもおだてりゃ木に登る』  プーーーーーーーーーーーーーーッ!!  一つ大きな鼻息を噴くと、ブタと椰子の木はまた教卓に収納された。 「ツカミはオッケー!」 「掴まなくてもいいんだよ!!」  思わず両手の爪を鋭く伸ばしながら、血走った目をして耕一は叫んだ。 「ふはははは。一度はボタンを間違えるのは御約束というもの。では、ポチッと…」 「そこでオシイナモウチョットが出てきたら、暴れるぞ俺は」  ……………。 「まあ、若者置いてきぼりなネタはこれくらいにしておこうか」 「暴れるぞコンチキショーーーーーー!」 「ああっ耕一さん落ち着いて!気持ちはわかるけど落ち着いて…!」  千鶴に取りすがられてどうにか気を静める耕一を完全に無視したまま、大志はボタ ンを押した。  ガキョン!ガキョガキョガキョ…! 「え?え?え?」「な、なんだなんだー!?」  教室内の、ほとんど使われていない机と椅子が一斉に変形を開始した。どこがどう いう風に変形したかわからないまま、あっという間に合体し、組み合い、そして5秒 後にはデパートの更衣ロッカーが4つ、耕一達の前に出現する。 「ふっ!トイレットペーパーからクレムリン宮殿まで、何でもトランスフォームさせ られるのが日本アニメのデザイナーというものよ!それに最新のナノマシーンの技術 が加わればこのような芸当は雑作も無い!」 「…絶対今の科学水準越えてるだろ…まあこの学園のやることだから今更驚かないけ どさ」 「耕一お兄ちゃん、それってなんだか悲しいね…」  初音の言葉に一同は黙って頷いた。なんだか自分が純真な心を失ってしまったよう な気分だった。  ************  結局ケロちゃん着ぐるみは却下となり、1人普段着のままで耕一は4人の着替えを 待っていた。それぞれの更衣ロッカーからはゴソゴソという物音を気配がずっと続い ていたが。 「ど、どうかなお兄ちゃん…」  最初に更衣ロッカーのカーテンを開いて姿を見せたのは、ピンクと白の天使のよう なイメージデザインされたOPコスチュームを身につけた初音だった。ピンクでロリ ロリな子供服ならではのピラピラスカートが、無茶苦茶似合っている。 「うわ…可愛いいなぁ。すごく良く似合ってるよ!」 「そ、そうかな…?」  頬を恥ずかしげに染めながらもまんざらでもなさそうに初音ははにかむ。 「かわいいですわ、さくらちゃん」  御約束なセリフと共に出てきたのは白と黒の色彩でデザインされた制服をまとった 楓である。「知世ちゃん」としては髪の長さが決定的に足りないが、こちらもびっく りするほど良く似合っていた。 「…二人とも…中学生、いや小学生でも十分通用するかも…」 「そ、それは…」 「…複雑です…」  思わず顔を見合わせて溜息をつく二人に、耕一は慌ててフォローを試みた。 「い、いや、子供っぽいとかそういう意味じゃなくて…なんというか、十代前半の女 の子特有の魅力があるというかそういう意味であって…」 「つまり一言で述べるとロリロリというわけだな同志耕一!」 「そうそう…ってそうじゃなくてだな!」  うむうむ、何もいうな俺はみんなわかってるぜベイベーという感じで大志は二度頷 いた。 「何故だろうな…ツルペタな胸というものが、これほど男の淫らな欲望を刺激するの は…それは汚れを知らぬ清純な蕾を汚してしまいたいという嗜虐的な願望なのか…」 「真面目な顔してどーしようもなく人聞きの悪いこと言ってるんじゃねぇっ!!」 「ふっ。そんなことでは『投○△真』に採用されるようなパンチラ写真隠し撮りはで きんぞ、まい同志、心の友よ」 「そういう事やってんのかお前――――――――――――!!?」 「物の例えだ。心配せずとも我輩は3次元の女性はあさひちゃん以外興味が無いので 安心したまえ」 「…それはそれでスゲー問題あると思うけど…」 「…九品仏さん」  楓が、静かに大志を見つめながら口を開いた。 「…ナコ○ルのフルアクションドールは3次元ですけど」 「うむ!無論チェックしておるともまいシスター!やはりオタクの基本であるな!」 「あああああああああああああああああああああああああああああ」 「楓お姉ちゃん…戻ってきて…」  思わず泣き崩れる耕一と初音だった。 「どうしたんですか耕一さん?」 「あっ、千鶴さ…」  涙に濡れた瞳を後ろに向けて、耕一は。 「…どうしました耕一さん?初音も?」  メデューサに睨まれた冒険者のように石化してしまった二人を不思議そうに眺め て、千鶴は顎に指先を添えて首を傾げた。楓と同じ服装で。 「おお!やはり素晴らしく似合うぞ同志千鶴!その流れるような黒髪!おのずと醸し 出される上品且つもの静かな雰囲気!正しく知世ちゃんであるな!」 「あらいやだ、そんなこと…」  一応褒め言葉であるから、千鶴も少し照れてしまう。恥ずかしげにほんのりと頬を 染めるが、内心結構悪い気分ではなかった。 「何と言っても2×歳という年齢も省みず小学生キャラの制服を着てしまうその臆面 のない無謀な勇気!まともな大人ならとてもそんな恥知らずな真似はできまい!その 色々な意味でギリギリな制服のミニは非常に魅惑的ではあるが、客観的に見ると30過 ぎのババアのくせしてセーラー服を着るAV女優と同根というのは我輩にも情けはある ので言わないでおこう!」 「言ってるだろ!しっかり言ってるだろオイ!?」  怒声というより悲鳴を上げる耕一の背後で…  ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!  室温が倍率ドン!さらに倍という感じで一気に12度低下した。 「大志さん…あなたを殺します…」 「あああああああああああああああああ、俺は知らんぞ、知らねえぞ〜〜〜〜!?」 「こわい…こわいよ耕一お兄ちゃん…!」 「千鶴姉さん…」  リズエルが出てくる一歩手前、という感じで戦闘力を上昇させる千鶴を前に、大志 は悠然とメガネの位置を直すと、言った。 「フハハハハハハハハハハ!我輩も命は惜しいので靴を舐めろというならいくらでも 舐めますから許してください」 「土下座してそんなこと言うくらいなら最初っから危険な発言すんなーー!!」 「…傲慢に卑屈ですね…」  米ツキバッタのように額を床に擦りつける大志に、鬼女モードになりかけていた千 鶴も一瞬、毒気を抜かれてしまった。と、その一瞬の空白に、初音がごく自然に口を 開いた。 「あれ?ところで梓姉さんは?」  ……………。 「着替えはもう終わってると思うけど…」  その楓の言葉に頷きながら、知世らしくハンディカムを持った千鶴はいまだカーテ ンが閉じられたままの梓のロッカーに近寄った。カーテン越しに声をかける。 「梓、どうしたの?みんな待ってるわよ?」 「い、いやだっ!絶対出るもんかあっ!」 「いやだって…着替えは終わったんでしょ?どうなの?…あら?」 「う、うわっ、見るな千鶴姉っ!」  カーテンを少し捲って中を覗き込んだ千鶴は、僅かに目を瞠ったようだったが…お もむろにハンディカムの電源を入れると、構えた。 「うふふふふ、かわいいですわ梓ちゃん」 「やめろーーーーーーーーーっ!撮るなっ、見るなーーーーーーーーッ!!」 「そういうことを言われると見てみたくなるのが人間の性というもの。…ポチッと な」  大志が、絶対におもしろがっているだけの顔つきで教卓のボタンを押した。  ガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャッ!  同時に、合体時と同様によくわからない変形をしながらロッカーが元の机と椅子に 戻った。 「い、いやああああっ!?見ないでっ!!」 「…な!?」  耕一はポカンとアホのように口を開けた。  初音と同じ、基本的なラインは子供服な衣装である。  ピンクと白の色彩の、ロリロリでフリフリでミニな、プリティー&ラブリーな衣装 である。  でも、巨乳。  恥ずかしさに涙まで浮べ、胸元で両手を握り締めて立ちすくむ梓には、普段の強気 で粗暴な雰囲気は微塵もなかった。逆にいかにも内気そうに、頬を染めて、おどおど と上目遣いでこちらに視線を向けてくる。  …何というか…ある意味はまり過ぎるくらいはまっていた。  口の中がカラカラに乾いているのを自覚しないまま、耕一は梓から視線を外せずに 呆然としてしまう。  そんな耕一をチラチラと見ながら、半ばヤケ気味に、梓は口を尖らせて小さく呟い た。 「に…似合わないだろこんなカッコ?笑えよ…」 「そんなことないですわ梓ちゃん〜」 「…瑞希さんと…同じですね…」 「梓お姉ちゃん…な、なんかすごい…」 「ぬははははは!これも一種の恥辱プレイというヤツかな!?」  無言で耕一は大志をはたき倒した。内心、萌えるものがあることを指摘されてし まったような気がしたので。 「なんていうか…すげー複雑な気分…」 「素直に己の率直な感想を述べてもよいのではないか、同志・耕一?」  何事もなかったかのようにあっさり復活してくる大志に、げんなりとした気分で耕 一は言った。 「いや…確かに滅多に見られないものを見せてもらったけど…」  開き直ったのか、いつもの調子で不機嫌そうにそっぽを向いている梓にちら、と視 線を向ける。 「まあ……………かわいいよな?」 「こ、こういち…」  その一言で、再び真っ赤になってしまう梓である。 「さて。とりあえず着替えは終わったということで、第2段階に移ろうかな」 「…第2段階?」  そこはかとなく嫌な予感を覚えて、耕一は眉をしかめて大志を見た。他の4人も同 様である。が、そのような事はまったくものともせず、大志はややハイテンションな ノリで頷いた。 「なんせしーしーさくらだからな」 「…なんだよそれ」  フッ、と笑って大志は一同を見回した。 「感が鈍いな、諸君。…古来より、しーしーといったら放尿プレイに決っているでは ないか!!!」 「決っとるかああああああああああああああああああああああっ!!!?」  問答無用で手加減なしの耕一キックが炸裂し、大志は半分ひしゃげなから窓ガラス を突き破って飛んでいった。 「…まだ…懲りてなかったんですね…下品ネタ」 「しかもダジャレかいっ!」 「…でも…耕一さんがお望みなら…」 「ち、千鶴お姉ちゃん…」  そんな姉妹達の声を後ろに、しみじみと耕一は考えていた。 (和樹…コスプレって…結構いいな?) 【後書き】  今回はいつもより少々短め。ちょっとだけね。  えー、私の瑞希の第1印象というのはPiaキャロ2の日ノ森あずさと痕の梓を足し て2で割ったようなキャラだなーというものでして。結構この二人似てるなぁ、と。 梓は姉妹の中では幼なじみ路線担当ですし。強気だけど料理上手で家庭的だし。巨乳 だし。  と、いうわけで梓がCCさくらのコスプレ似合う(?)のも当然というわけですな! (ホントか?)  まあ、今回ホントのネタは『しーしー』だけなんですけどね(爆)
 ☆ コメント ☆ マリナ:「梓サン、カッワイ〜〜〜♪」(*^^*) 雪音 :「ほんとほんと」(*^^*) マリナ:「ア〜ン、抱キ締メラレタ〜イ」(*^^*) 雪音 :「私は抱き締めたいです」(*^^*) マリナ:「アアッ、襲ッテシマイタイ」(*^^*) 雪音 :「襲いたいぃ〜」(*^^*) マリナ:「ココハ……ヤハリ」(^〜^) 雪音 :「実行あるのみ、ですね」(^〜^) マリナ:「フッフッフッフ」( ̄ー ̄)ニヤリ 雪音 :「くっくっくっく」( ̄ー ̄)ニヤリ  ・  ・  ・  ・  ・ セリオ:「ああっ、梓さんがピンチです」(@◇@;;; 綾香 :「まったく、あのレズカップルは」(^ ^; セリオ:「梓さんに教えた方が良いでしょうか?」 綾香 :「そんな必要ないわよ。放っておきなさいって」 セリオ:「で、でも、梓さんが襲われちゃいますよ」 綾香 :「大丈夫だって。梓だったら返り討ちにできるわよ」 セリオ:「なるほど。それもそうですね」 綾香 :「それに、レズっ娘の扱いには慣れてるだろうし」(^ ^; セリオ:「……あ、あはは」(;^_^A  ・  ・  ・  ・  ・  梓 :「慣れてなーーーーーーい!!      ううっ、他人事だと思って……」(;;)



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