千堂家 4日目 4限目 「さて、この授業を終えれば飯の時間だな」 和樹は伸びをしながらそう呟いた。 「なに?おなかすいたの?」 瑞希があいづちを打つ。 「ああ。っていうか、朝からずっとハイテンションだろ?腹が減らない方がおかしいよ」 「ま、そらそうやな」 「ここのご飯は美味しいですからねぇ」 などと和やかに談笑していると、教室の戸が開いた。     がらっ 「それじゃ、今から授業を始めます」 「あ、この授業は編集長なんですね」 教卓に立った真紀子を見て、和樹が言う。 「ええ。それじゃあ、早速だけど……」 言うなり真紀子は白チョークで黒板に大きく文字を書いた。 その文字は……、    精神鍛錬 「…………精神鍛錬?」 「あ、和樹、何残念そうに言ってるの。またど〜せまたHな事考えてたんでしょ?」 「い、いや、決してそういうことを期待してたわけじゃないと思わない事もないぞ」 和樹はかなり動転しながらもそう答えた。 「そ、それよりも。編集長、具体的に何をするんですか?」 露骨に話をそらす和樹。はっきり言ってばればれである。 「そうね……。とりあえず、四コマ漫画をひとつかいて頂戴」 そう言うと、澤田は和樹に一枚の原稿用紙を渡した。 「トーン無しの、突発本を作るみたいなノリで良いわよ。題材も自由。ただし……」 この時、澤田の目が光った……ように和樹には見えた。 「自分一人で、この時間内に仕上げてね」 この条件を聞いて、和樹は不審に思った。 (編集長なら俺の力も把握しているはず……。それなのに、この条件は優し過ぎる。 なにか裏が………?) 「それとも」 澤田は挑発するように続ける。 「自信が無い?和樹君?」 和樹にもプライドがある。ここまでいわれて (引き下がれるかっ) 「わかりました。やりましょう」 「そう……それじゃ今から初めて頂戴。ああ…そうそう、彼女達はこっちに…」 そう言って、澤田は妻達を連れて教室から出ていった。 「さて、何を書いたら良いもんかね」 一人になると、和樹は独り言を漏らした。 (いくら四コマと言っても気を抜くわけにはいかない。相手はあの鬼編集とまで言われる澤田さんだ) (……………) (だぁぁぁぁぁぁっ。こんな時だけ特別なものを書いてもしょうがない。いつも通りに書こう) ネタも決まり、和樹が枠線を引き始めると………、 「あの…………和樹さん」 「あん?」 和樹が声を聞いて振り向くと。    ぶっ セーラー服を着た彩がいた。 「あの………和樹さん……これ、似合いますか?」 「い、いや、似合うって言うか…………」 (似合いすぎてるんだよ!!) 和樹は心の中で絶叫した。 事実、彩のセーラ服姿は非常に似合っていた。 和樹の理性を揺さぶるほどに。 「はぁっ。……和樹さん………私…」 「あ、彩。よりかかるなっ」 「そんなぁ……」 そう言って、彩は和樹にしなだれかかってきた。 (うわ。そんな潤んだ目で見られたら……。ああっなんか妙に色っぽいし……) この時、和樹は自分の細い理性の音が切れる音を聞いた。 すなわち。      ぷつ 「おっしゃああぁぁっ、かわいがってやるぜぇぇっ!!」 「はいそこまで」 狼と化し、彩に飛びかかった和樹を待ちうけていたのは製図用の大型定規だった。 テンプルにその大型凶器をカウンターで貰った和樹はその場に崩れ落ちた。 「和樹君……。よくもまぁあっさり引っかかるわね……」 定規を肩に当て、嘆息しながら澤田は呟いた。 「へ、編集長……金属補強した定規はきついっすよ……」 「そんなことはどうでも良いの」 「どうでも良いって…俺、マジで三途の川が見えたんですけど……」 「和樹君。さっきも書いたとおり、この授業は精神鍛錬なの」 澤田は強引に話を戻した。 「だから。原稿を上げるまで飴は我慢するのよ。プロを目指すんなら、原稿があがるまで自分のことは全て 後回しにするなんてことは常識よ?特に娯楽なんて原稿があがればいくらでも出きるんだから…」 「そ、そんな殺生な」         ぐち 涙目で訴える和樹に、澤田は容赦無く手にした凶器を振り下ろした。 「文句言うんじゃないわよ!大体ねぇ、原稿を待たされる印刷屋さんや編集者がどれだけ苦労してるかわか んないの? ずっと喫茶店とかで時間つぶして、時にはきったない部屋にとまんなきゃ行けないのよ? それで原稿遅れた時とかは、上司に小言言われて!そういう文句は作家に回して欲しいわよ! この前、H先生の原稿後れたとか言って深夜にいきなり拉致られてベタやらされて! それで原稿遅れた理由聞いたらBM98やってた?ふざけるんじゃないわよ!」 「へ、編集長、それ作者の叫びが混じってます……」 「やかましい!」         べちぁ 今度こそ、和樹は沈黙した。 「とにかく!今から和樹君好みの格好した子達が来るけど、誘惑に耐えて原稿上げるのよ?」 澤田は般若のような顔で和樹に詰め寄った。 「は……はい」 「声が小さい!」 「はいぃぃ!」 「にゃああっ。お兄さん大変ですぅ」 「した僕のぽちでもかわいそうだよあれ〜」 「伊達に鬼編集と呼ばれとらんな〜。はっきり言ってワイの修羅馬モードの何倍もきついで、あれ」 「でも、和樹がプロに近づくためだよ。ここは私達も心を鬼にして……」 「和樹さんのため……私、がんばりますっ」 「にゃははは。どこまであたし達の誘惑に絶えられるかな〜」 「玲子さん。楽しんでません?」 「あらあら。和樹さん、真紀子さんとボケの練習でもしてらっしゃるんですか?」 「牧やん、あんなつっこみ何発ももろうてたら体もようもたんわ」 追記、和樹はこの後、ピーチやワイシャツ、うさぎさん、ねこさんの誘惑に耐え速攻で原稿を上げた。    しかし、この授業は煩悩魔人の精神に大きな痕を残したそうな。     りとるはっぴーえんど 〜あとがきというか独白〜  どうも、学校が早めに始まってしまいめちゃブルーなキヅキです。 と言うか、今日と明日に試験があるのにSS書いてる自分はだめ人間の道を爆走中です。 さて、この話は私の気分転換兼和樹の煩悩魔人の更なる進化にブレーキをかけるために書いたんですが…。 編集長に、私の霊が乗り移ってしまったようです(爆)。 私の実話に見える実は実話な話がこれにはいくつもあります。←わかりずらい。 とりあえず、編集長の持っていた武器は一回食らってみればその恐ろしさがわかります。 今後は、パロディと一人称にも挑戦したいです。 それでは、またどこかでお会いしましょう。
 ☆ コメント ☆ 綾香 :「何というか……      一番ストーリーの核になりそうな部分が、追記で済ませられちゃってるんだけど」(^ ^; セリオ:「ちょっと勿体ないですね」(;^_^A 綾香 :「うん」(^ ^; セリオ:「それにしても……和樹さんにとっては辛い授業でした」 綾香 :「つーか、理性がなさすぎだって」(^ ^; セリオ:「ですね」(;^_^A 綾香 :「煩悩魔人の面目躍如、ね。      やれやれ、こりゃ、瑞希さんたちも苦労するわ」(^ ^; セリオ:「うんうん、まったくです」(;^_^A 綾香 :「和樹さんの様な野獣といっしょに暮らしてる瑞希さんたち。      ……尊敬に値するわ」(^ ^; セリオ:「同感」(;^_^A  ・  ・  ・  ・  ・ 瑞希 :「ひとの事、言えないでしょうが」(−−) 由宇 :「ホンマや。あいつらにだけは言われたくない言葉やな」(−−) 瑞希 :「浩之くんなんて、性欲魔人のくせに」(−−) 由宇 :「うんうん」(−−)  ・  ・  ・  ・  ・ 浩之 :「ひでー言われよう」(−−; 和樹 :「お、俺たちって……」(−−;



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