「ほらほらエリアちゃんっ、これなんとどぉ?」
「わぁっ、可愛いですねぇ…」
「エヘヘ、でしょでしょ?」
「こっちなんかもどう? エリアちゃんに似合うと思うわよ」
「わぁ、香奈子ちゃんセンスいいねぇ」
「まね。昔っから瑞穂のも選定してきたしね」
「そうなんです。私こういうのよく解らなくて…」
「…瑞穂ちゃんらしいね」



 …向こうでは女の子達が楽しそうに服を選んでいる。
 残念ながら、僕はセンスに自信が無いので、見てるだけだ。
 向こうには香奈子ちゃんも沙織ちゃんもいるから大丈夫だろうし。



「アンタも結構ヤな奴よね、あたしも人のことは言えないけどさ」

 隣にいるメイフィアさんが苦笑しながら言う。

「そう…ですか? そうかもしれませんね」

 …そう言って、僕も苦笑する。

「でも、むしろこういう自然な方がいいでしょ? 変に気を使うより、ずっと」
「プッ…アンタやっぱヤな奴だわ」
「メイフィアさんほどじゃないと思いますけどね。メイフィアさん目的なんて一言も
喋ってないですし」
「まーね、言う必要も無いと思ってたしね」
「期待してくれてたんだって受け取っておきますね」
「どーぞご自由に」



 そして僕は楽しそうな皆のほうに顔を向けた。
 …本当に楽しそうだった。





私立了承学園 4日目 2時間目 雫
 2時間目が始まり、教師が入ってきた。  今回はエリアちゃんとメイフィアさんの二人だ。 「んじゃ、今日は街に繰り出すわよー♪」  そしてメイフィアさんが嬉しそうにそんなことを言った。  面倒くさがりのメイフィアさんにしては珍しく行動的だ。  まぁそんなわけで、僕らは『商店街地区』へ繰り出した。  どうして先生が二人必要なのか、疑問に思ったけど。 ---------------------------------------------------------------------------- 「祐くん祐くん、ヤックいこヤック!」  沙織ちゃんが嬉しそうに言う。 「さっき朝ご飯食べたばっかりじゃない。沙織ちゃんは食いしん坊だね」  僕は苦笑しながら、ちょっとからかう。 「むー、祐くん女のコに失礼だぞっ!」 「あはは、ゴメン」  沙織ちゃんが僕をポカポカ叩く。  もちろん力は入ってないので痛くはない。  そんなやりとりを。  そんな何もない瞬間を。  僕は楽しいと思っていた。  …その瞬間、なんで今回エリアちゃんがいるのかが解った気がした。  …メイフィアさん、一言も言ってくれないし。  そんなことを思ってメイフィアさんの方を見ると、いつもどおりの薄ら笑いを浮か べているだけだった。  ふと目が合う。  彼女は一瞬目を細めたが、何事も無かったようにまたもとの表情に戻り、目をそら してしまった。  …まったくこの人は……  思わず苦笑してしまう。 「あー、祐くんまだ笑ってる!!」  沙織ちゃんがさっきよりちょっと強く僕を叩く。  今度のはちょっと痛かった。 ----------------------------------------------------------------------------  それから僕達は色々なところに行った。  ヤックで軽くハンバーガーを食べた後、ファンシーショップでぬいぐるみと遊んで。  そしてブティックで女のコ達が洋服やアクセサリを色々選んで。  ちょっと気恥ずかしかったけど、たまにはいいものかもしれない。  皆楽しんでくれてるみたいだし。 「そんじゃ私はお仕事していくから、後は適当に頼むわね〜」  パチンコ屋の前でメイフィアさんは手のひらをひらひらとやる気なく振り、そんな ことを言って中に入っていってしまった。  面倒くさがりの世話好きか……  それこそ面倒くさい性格ですね、メイフィアさん?  でも、そこがメイフィアさんらしいんですけどね。 「おーい祐くーん!! 早く来ないと先に撮っちゃうぞー!!」 「「祐介さーん!!」」  おっと、考えごとしながら歩いてたら遅れちゃったみたいだ。  声のほうに顔を向けると、ゲームセンターの前、プリクラの機械のとこに皆がいた。  沙織ちゃんと瑞穂ちゃん、エリアちゃんが手を振って僕を呼んでいる。  瑠璃子さんはいつものように静かに微笑んでいる。  香奈子ちゃんもいつものように腕を組んでヤレヤレといった風に苦笑してる。 「ゴメーン!! 今行くよ!!」  そう言って、僕は駆け出した。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  ・  ・  ・ 「でも、むしろこういう自然な方がいいでしょ? 変に気を使うより、ずっと」 「プッ…アンタやっぱヤな奴だわ」 「メイフィアさんほどじゃないと思いますけどね。メイフィアさん目的なんて一言も 喋ってないですし」 「まーね、言う必要も無いと思ってたしね」 「期待してくれてたんだって受け取っておきますね」 「どーぞご自由に」  ・  ・  ・ 「…楽しそうね、エリア」 「そうですね。結局僕は何もしてないですけどね」 「そんなことないわ、今の状況はキミがいるからなりたってるのよ。あのコ達のあの 表情は、キミが引き出して、キミが守ってきたものなんだから。だから、その輪の中 でエリアもああして楽しめるのよ。だから、何もしてないなんてことないわ」 「ははは、ありがとうございます」  …きっと彼女の、エリアちゃんの小さな体には、これまで信じられないほど大きな 宿命がのしかかり続けていたのだろう。  人はみな平等だなんていうけれど。  彼女は、こっちの世界の若者がバカな話で盛り上がってる時に何をしてただろう?  彼女は、こっちの世界の若者がテスト問題に悩んでる時に何に悩んでただろう?  彼女は、こっちの世界の若者が適当に今を生きてる時、どのように生きてただろう?  …もう、終わったから。  まだ、きっととりもどせるから、さ。  ゆっくり、今までの分も楽しんでね。  優しくて、小さな勇者さん。 <おわり>
 ERRです。  よさげなメイフィアを書きたくて書きました。  でも、祐介のほうがよさげ…?  今更かもしれませんが…エリアも、しっかり今を楽しんでほしいです。  もっとも…4日目はこのあと酷い目にあうことになるでしょうけど(苦笑)  ちなみにクラスが誠家でないのは、もう誠家が埋まってるという大人の事情(笑) 以外に、「友人との楽しみ」というのを楽しんで欲しいと言うメイフィアの意向が あったりします。  誠家とだと、誠が意識しなくてもエリアが意識しちゃうと思いますし。  それでは、また。
 ☆ コメント ☆ 綾香 :「メイフィアさんって大人よねぇ」 セリオ:「そうですね。とても素敵な方だと思います」 綾香 :「うんうん」(^^) セリオ:「魔族にも、まともな方っているんですねぇ」 綾香 :「そんな、しみじみ言わなくても……」(^ ^; セリオ:「……って……あれ?」 綾香 :「ん? どうしたの?」 セリオ:「よくよく考えてみると……殆どの方はまともな様な……」(−−; 綾香 :「…………へ?」(−−;;; セリオ:「メイフィアさんにエビルさん。アレイさんにフランソワーズさん。      イビルさんにたまさん。      多少、性格に問題のある方はいますが、一応は、みなさんまともだと思いますよ」 綾香 :「そ、そうね。言われてみれば、確かに」(−−; セリオ:「すると……魔族の中でまともじゃないのって……」(−−; 綾香 :「……………………あの人、だけ?」(−−;;; セリオ:「……………………おそらく」(−−;;; 綾香 :「…………メイフィアさんたち……苦労してるんでしょうね」(−−;;;;; セリオ:「…………ですね」(−−;;;;;  ・  ・  ・  ・  ・ ル○ラ:「あ、あたしはまともだからね!! 変な誤解しないでちょうだい!!      あたしは、了承学園教師陣の良心って言われているくらいなんだから!!」 メイフィア:「…………………………………………はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」(−−;;;;;



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