「謎ジャム販売します。一日限定五〇個のみ」 この張り紙が了承学園の購買部の一角に張られたとき、俺はたいして気にしなかった。 「「「「「「「「「秋子さんも無謀なことを・・・」」」」」」」」 了承学園に通い、僅かなりとも謎ジャムに冠する知識を有するものたちは異口同音・・・・訂正、口には出さなかったが皆そう思ったはずだ。 「え〜〜、どうして〜〜?おいしいのに〜〜?」 「茜・・・やめろって。」 またまた訂正・・・ごく一部というか一人を除いて・・・。 そしてそれから一週間が経った。 「大変よ!大変よ!大変なのよ〜〜〜!!」 ばたばたと騒がしく俺たちの教室を騒がす奴がいる。 ちっ!ここしばらく静かだと思ってたのに・・・。 「何だよ、うるせ〜な・・・信用度及び正確度皆無のおめぇの情報なんてききたかね〜ぞいっとくが・・・」 「な〜〜〜んですって、ヒロ〜〜〜」 お決まりというか、パターンというか・・・俺と志保の関係はそう簡単に変わるものではなさそうだ。 「まぁまぁ、浩之ちゃん・・・で、どうしたの?志保もそんなに慌てて・・・」 あかりが俺たちの間を取りなすのもこれも昔からのことである。 「そ、それが大変なのよ!あの購買部の謎ジャムが・・・」 その言葉にそれまで「いつものことだ」と平然としていた妻たちが騒ぎ出す。 「ま、まさか瓶の底が抜けてメルトダウンでもおこしたんか?」 い、委員長・・・何もそんな・・・・否定しきれないのが怖いけど。 「まさか、野良猫が舐めて巨大化してしまったとか・・・」 あ、葵ちゃんまで・・・。 「そんな生ぬるいことじゃないのよ〜〜〜!!」 ・・・・俺たち明日まで生きてるかな・・・。 「あ、あの・・・あの・・・あの謎ジャムが・・・」 ゴクリ・・・!! 全員の生唾を飲む音が聞こえる。 「ここ一週間、完売しちゃってるのよ〜〜〜!!」 「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・ふぅ〜」」」」」」」」」」 全員が呆れたようにため息を付いて次の授業のための準備にかかってたりなんかする。 ちなみに俺もだ。 「ちょ、ちょっと〜。何よあんたたちその反応は?」 「おめぇな・・・今までさんざん志保ちゃん情報ってのは聞かされてきたけどよ。今までで一,二を争うくらい信憑性がないぞ?」 「な、な、な、な、な、なんですって〜〜??この志保ちゃん情報のどこが信憑性がないって言うのよ〜〜〜」 「全部だ全部!!」 「そうね。あのジャムが売り切れって言われてもね〜」 「ソウソウ。『火のないところに煙はたたぬ』ネ!」 「レミィさん・・・そのことわざ間違ってます・・」 「ムキィィィ〜〜〜」 俺の言葉に続く言葉に志保がくやしげに唸っている。 「謎ジャムが売り切れるのってそんなに信憑性がありませんか?」 ピピピクゥ!! 俺の背後を見ていたみんなが固まっていたりするが志保とのやりとりに集中している俺は気が付かない。 「そりゃそうさ。何たってあの謎ジャムだぜ〜?」 「ひ、浩之さん」 「は、はわわわわ。ひ、浩之さ〜〜ん」 セリオとマルチが俺の後ろを指さして泡を食っている。 「おいしいのに残念ですね〜・・・」 ぐげっ!! 「あ、ああああああ秋子さん!?」 反射的に3mほど後ろに飛び退いてしまう。 「ここここ、これは言葉のあやというか何というか・・・」 「そ、そうそう、ちょっとしたお茶目って言うか・・・」 「ソ、ソウね。『嘘からでた真ネ』!!」 「レ、レミィ〜!そ、そのことわざは今はまずすぎや〜!!」 その場の全員が半ばパニックに陥っている。駄目だぁ!!謎ジャムの刑決定なのか〜〜?? 「でしたら見学してみます?」 だが秋子さんの口から出たのは意外な科白だった。 「け、見学?」 「謎ジャムが、本当に売れているのかどうなのかです」 ニコニコ・・・いつも笑みを絶やさない秋子さんだがどうやら今日は本当に機嫌がいいようだ。 あるいはもしかして本当に売り切れているのだろうか? 俺たちは恐怖と好奇心から一斉にコクコクと頷いていた。 「秋子さんが直々に販売しているんですか?」 購買部にやってきて見ると驚いたことにレジに立っているのは秋子さん本人だ. 理事長が購買部の売り子をやっているなんて聞いたこともない。 「ええ、ちょっとコツがいりまして」 コツって・・・・ジャムを売るだけだろう?? 「あ、誰か来たようです」 葵ちゃんの言葉に一斉におれたちの視線がそちらを向く・・・ってなに?? 「謎ジャムをモライニ来タ」 やや不自然な発音こそするものの流麗な日本語。 真っ黒なスーツに黒ネクタイ、黒の帽子にご丁寧にサングラスまで・・・。 どっかの映画に出てきた某国の対異星人特殊組織の一員のような怪しげな男が二人。 思わず俺と綾香、そして葵ちゃんが身構えてしまう。 「了承!!」 しかし至極あっさりと男たちは謎ジャムを受け取ると金を払い引き上げていったのだった。 「あ、秋子さん・・・あの人たちは?一体」 何か見ては行けないものを見てしまったような気がするけど・・・。 「お得意さんよ」 しかし秋子さんはあっさりその一言ですましてしまう。 「お、お得意さんて・・・売っても大丈夫なんですか?」 何か凄く怪しげなことに使われそうな気が・・・。 「大丈夫、悪事に使おうとする人には売らないわ」 ま、まぁそれなら・・・でもあいつら何に使うんだろう・・・あのジャム? 「パンに塗るんじゃないかしら?」 秋子さんの言葉にしかし頷くものは誰もいなかった・・・。 「天の声に導かれ我はこの地にやってきた・・・・謎ジャムなるものをいただきたい。」 次にやってきたのは極彩色の謎な衣装に、頭にお札やら派手な色のはねをつけた見るからに怪しげな宗教団体だった。 「了承!!」 あ、秋子さ〜〜ん!! 「大丈夫、悪事に使うのではないわ」 ・・・・・・・・・・・・・・マジか? 秋子さんの言葉ではあったが思わず疑わずに入られない俺だった。 ・・・本当に何に使うんだあいつら?? パアアアァァァァァァッ!! 唐突に天が目映い輝きを放った。ってここは屋内なのに?? 神々しいまでの美しい輝き。 無神論者の俺ではあるが思わず崇めたて祭ってしまいたくなるような凄まじいまでのオーラを放ちソレは現れた。 「天使・・・?」 誰の呟きだろうか?掠れた声が聞こえる。 城戸家クラスのコリンやユンナにソレは似ている・・・が何て言うかこの凄まじいまでのオーラは・・・。 「あら、ミカエルさんいらっしゃい」 ドンガラガッシャーーーーーン!! 「ミ、ミカエルゥ〜〜〜!?」 神を信じずそんなものはまやかしだと豪語するものであってもその名を知らぬものはいないだろう大天使長!? 「えええ、そうですよ。お得意さまなの。あ、もちろん悪事に使うわけじゃ・・・」 いや、それはわかってますけど・・・・(絶句 「そんなに驚くようなことかしら?」 小首を傾げる秋子さん。 そりゃあ、まぁたいていのことにはもう驚かないつもりだったんですけど・・・。 「そうそう、ミカエルさんのふるいお知り合いのルシファーさんて人もよく来ますよ」 グワキャァァァァァ!! 再び全員がひっくり返った。 「・・・・・・・・・そ、その人(?)もいわゆる・・・・」 「ええ、悪事に使うわけではないわ」 秋子さんの交友(?)関係って・・・いやそれよりもあの人たち(?)って、あのジャムを何に使うんだ??マジで? 「パンに塗るんじゃないかしら?」 いや、それだけはないと思う・・・・。 その後も奇妙な来客は続いた。 白衣を着て髪はぼさぼさ、怪しげな笑いを浮かべたマッドサイエンティスト風な男たち。 向こう側が透けて見えるような人も何人かいたりした。 ガチャピン先生の知り合いらしい異星の人たち来ていた。 全身黒タイツにご丁寧にマスクまでかぶった「世界征服組合の下っ端戦闘員です」と言われても思わず頷いてしまいそうな連中もいた。 そのうちの何人かはラルヴァに引っ立てられてどこかへと連れて行かれた。 秋子さん曰く「謎ジャムを悪事に使おうとしてた人です」だそうだ。 ちなみに何故わかったのか?と言う質問については笑って答えてくれなかった。 俺たちも怖くて深くつっこめなかった・・・(^^: 「・・・・・ハァ・・・・・」 「あら、どうしたんですか?浩之さんため息なんて付いて・・・?」 人生に疲れきったような深いため息をつく俺に秋子さんが尋ねてくる。 ははははは・・・。 乾いた笑いを返しながら後ろを向くと妻たちは全員目を回していたりする。 俺もいっそ夢の世界へ現実逃避したい気分なんだが・・・。 「・・・・・・・・・・・」 その時聞き慣れた・・・と言うか俺たちしか聞き取れないような声が・・・。 「謎ジャムをください・・・だそうです。」 そしてもう一人聞き慣れた声に俺は振り返る。 「先輩!?琴音ちゃん!?」 先ほどから姿の見えなかった二人に驚きの声を上げる。 そう言えば、最近よくこの二人の姿が見えないときがあったけれども・・・。 「・・・・・・・・」 「あ、浩之さん」 「な、なにしてるの?こんなところで?」 こんなところ?と後ろから冷気が吹きつけてきて30分ほど謎ジャムにのたうち回ったがとりあえず置いておく。 「・・・・・・・・」 「謎ジャムを買いに来たのですが・・・・だそうです。」 いや、それは見ればわかるんだけれど・・・。 「何に使うわけ?」 おれの疑問は今までの凄まじく怪しげな連中のおかげで頂点に達していたりする。 「・・・え?知りたいんですか?」 琴音ちゃんが驚いたように聞き返してくる。 見れば先輩の感情の起伏少ない表情も驚いているように見える。 「・・・聞きたいんですかって・・・そりゃあ・・・まぁ」 何やらひたすら嫌な予感がするんですけれど・・・。 「それは・・・・・・・・・・・クス」 ゾワゾワゾワゾワゾワ・・・・。 「や、やややややっぱりいいや・・・・あはははは」 「え?そうなんですか?・・・・・・・・・・・・おもしろいのに」 なにが!!?? 「・・・・・・・・・・・・」 「それでは、部活があるので」 そう言って二人は立ち去っていった。 俺たち家族に隠し事はない。聞けばきっと喜んで教えてくれるだろう。 ・・・・・・・・・心の準備がいるけど・・・・。 秋子さ〜〜〜んほんとに大丈夫なんですか〜〜〜〜??? 「了承!!」 <了> どもk。mです。 ・・・駄目駄目やん。 って言うか俺って了承学園のオーソドックスな形を一つも書いてないような・・・。 次はシリアスに挑戦しよう^^::
 ☆ コメント ☆ 綾香 :「姉さ〜ん。あんなジャム、いったい何に使うのよ〜〜〜?」 芹香 :「……知りたいですか?」(´`) 綾香 :「それは……まあ」 芹香 :「……本当に知りたいですか?」(´`) 綾香 :「うん。知りたい」 芹香 :「……どうしても?」(´`) 綾香 :「…………う……うん。知りたい……んじゃないかなーと思う」(^ ^; 芹香 :「……そうですか。後悔しても知りませんよ」(´`) 綾香 :「……へ?」(−−; 芹香 :「それでは言います。……実は……」(´`) 綾香 :「ちょっと待った!! やっぱりいい!! 聞きたくない!!」(@◇@;;; 芹香 :「賢明な判断ですね。……………………くす」(´`) 綾香 :「…………ね、姉さん。こわひ」(;;)  ・  ・  ・  ・  ・ マルチ:「結局、芹香さんは何に使っていたのでしょうね?」 セリオ:「マルチさん。世の中には知らなくていい事もあるのですよ」(−−;;; マルチ:「は、はあ」(;^_^A  ・  ・  ・  ・  ・ 芹香 :「……………………くす」(´`)



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