私立了承学園
4日目 5時間目 雫


「ですから、お二人ならきっとできるはずです!」  5時間目。  担当であるアレイが持ってきた課題。 『電波の優しい送り方』  基本的に、外部からの電波の進入は苦痛を伴う。  その電波を、なるべく苦痛を与えないように送れ、ということだ。 「なるほど…でもこの課題は僕と瑠璃子さんしかやれないと思うけど」 「ええと…それは…」  祐介の当然の意見に、アレイは何か言いたそうだが、言い出せないでいる。 「私達を、練習に使うってワケね?」  言いにくそうにしていたアレイから、自分達の役割を察した香奈子がアレイの代わ りに言う。  それに対して、アレイは申し訳なさそうにうなづく。 「ちょっと怖いけど……でも、祐くんと瑠璃子ちゃんならきっと大丈夫だと思うから… 私はいいよ、実験台でも」 「私も…かまいません。それでお二人の電波が優しくなるなら…」 「だから、気合入れて練習してよね?」 「みんな…」 「…うん、がんばるよ。ね、祐介ちゃん?」 「…もちろんだよ。そんなことができるようになったらきっと素敵だと思うしね」 「…そうだね」 ----------------------------------------------------------------------------  ちりちりちりちり… 「ン…く…」 「ご、ごめん、大丈夫かい沙織ちゃん?」 「う、うん、まだ平気…」  ちりちりちり… 「ふぅッ…まだ大丈夫よ」 「…これくらいなら、まだまだ…私も大丈夫です」 「…うん…わかった」  ちり…ちり…ちり…ちり…  ちり…ちり… 「だいぶ楽になったわね」 「うん、連続して受けてたからちょっと疲れたけど」 「これなら大分楽ですね」  …そして。 ---------------------------------------------------------------------------- 「う〜ん、まだちょっと苦しいけど、これなら大丈夫なんじゃないかな?」  授業も終了間近というところで、沙織が言った。 「そうですね、もともと送られてくる情報が優しいものであることも手伝って、これ ならだいぶ楽です」  瑞穂も好感触だ。  だが。 「確かに、ね。最初に比べれば楽だとは思う。でも、連続して電波を受け続けてたか ら慣れただけかもしれないわ」  香奈子は冷静に、もっともな意見を述べる。 「…そうかもしれませんね。でしたら、最後に私に使ってください」  香奈子の意見に、アレイは決意を固め、祐介と瑠璃子に言った。 「…いいの?」 「もしかしたら、苦しいかもしれないよ? 元々皆は僕と瑠璃子さんの影響で電波に ある程度慣れてたわけだし」 「はい! これでも教師なんですから!!」  心配する瑠璃子と祐介に、アレイは胸をどん! と叩いて自身たっぷりに答える。  その決意に、二人も答えることにした。 「じゃぁ」 「…いくよ」 「はい」  …ちり…ちり…ちり…ちり…  …ちり…ちり… 「くッ…」 「「……」」  アレイは苦しそうに目を瞑る。  しかし、瑠璃子と祐介は電波を送りつづける。  …ちり…ちり…ちり…ちり…  …ちり…ちり… 「…あ」  アレイがゆっくり目をあける。  そして嬉しそうに笑う。 「すごい!! すごいですよ!! これなら十分実用範囲です!!」 「…そう?」 「ハイ! お二人ならきっとできると思ってました!」  その言葉に二人は電波を止める。 「ふぅ…完全には無理だったみたいだけどね…そう言ってもらえて嬉しいよ」 「…やればできるんだね」 「そうだね」  満足げな笑みを浮かべあう祐介と瑠璃子。  その二人を優しげに見守りながら。  香奈子はアレイに問う。 「さて、何が「実用範囲」なのかしら、アレイ?」 「あぅっ、それはですね…」  香奈子の鋭い質問に、アレイはちょっと言葉を詰まらせる。  そして、少し間を置いて。 「次の時間、その力を使って欲しいんですよ。目の見えない人達の為に」  そう言った。 <おわり>
 ERRです。  我ながら内容が苦しいような気がかなりします(汗)  とりあえず、折原家5時間目を合わせてお読みください。  その後、6時間目をご覧下さい。
 ☆ コメント ☆ 綾香 :「ふ〜ん。優しい電波の送り方、ねぇ」 セリオ:「口で言うのは簡単ですが、実践するのは難しそうですね」 綾香 :「そうね。あの二人が苦労するくらいだから」 セリオ:「でも、優しい電波なんて何に使うのでしょうか?」 綾香 :「さぁ? 6時間目で明らかになるんじゃないの?」 セリオ:「そうですね」 綾香 :「まあ、それはさておき……。      あたしも祐介たちを見習って練習しようと思うんだけど」(^0^) セリオ:「ん? 何をです?」 綾香 :「優しいツッコミの入れ方」(^0^) セリオ:「……へ?」(−−; 綾香 :「というわけだから……実験台になってね、セリオ♪」(^〜^) セリオ:「え? え? え?」(@◇@;;; 綾香 :「だ〜いじょうぶよ。痛くしないから。…………たぶん」(^0^) セリオ:「イヤですぅ〜。たぶんってなんですかぁ〜〜〜!!」(;;) 綾香 :「気にしない気にしない。      それじゃ、いっくわよーーーっ!!」(^0^) セリオ:「イヤーーーーーー」(;;)



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