私立了承学園
4日目 5時間目 ONE 〜輝く季節へ〜


「さぁ、それでは授業を始めようか」  この時間の担当である緒方英二が入ってきた。  そして、その後ろにもう一人。 「こんにちわ、お久しぶり」    後から入ってきた少女は、はにかみ笑いを浮かべながら、そんな挨拶をする。 「なっ!? 深山先輩!?」 「!!」 「えっ、雪ちゃん?」  その少女──深山雪見──を見て(といってもみさきには見えないが)浩平、澪、 みさきは驚いていた。  だが、驚きはそれだけではなかった。 「えっと…これからこのクラスの副担任になります、深山雪見です。よろしく」  一見さんもいることを配慮し、やや他人行儀に自己紹介をし、お辞儀する雪見。  しばらくあっけにとられていた浩平たちだったが、すぐに笑顔になる。 「ふふふ、これからより一層楽しくなるね」 『またいろいろ教えてもらうの』 「またこれからよろしくな、深山先輩。えっと、深山先輩は元演劇部の部長でみさき 先輩の親友、澪は部活の後輩だ」 「あ、えっと、長森瑞佳っていいます。よろしくお願いします深山先輩」 「七瀬留美です。よろしく」 「しいなまゆ」 「…里村茜です。よろしくお願いします、先輩」 「柚木詩子です」  そして数分の間、みんなでおしゃべりを楽しんだ。 ---------------------------------------------------------------------------- 「さて、それじゃ授業をはじめようか」  しばらくみんなを遠くから眺めていた英二が授業開始を促す。 「あ、はい、すいません、長話になっちゃって」 「いやかまわないさ。久々の再会なら積もる話もあるだろう」  律儀に謝る雪見を英二はたしなめる。 「そういえば、今回は二人がかりで何やらかそうってんですか?」 「今日はね、君たちに「演技指導」をする」  浩平の疑問に英二が答える。 「でもね、今回の指導は演劇じゃないの。「声優」なのよ」  雪見が付け加える。  その雪見の言葉に澪は悲しそうにうつむく。  しかたないだろう。彼女には声が無いのだから。 「雪ちゃん…」  目は見えずとも、人の感情の流れには非常に敏感なみさきが、漆黒の瞳に非難の色 を浮かべ、親友を見つめる。 「ゴメンね、上月さん…でも、上月さんには別にお願いしたい仕事があるのよ」 「?」 「ちょっとこっちへ来てちょうだい。…すいません緒方さん、よろしくお願いします」 「おや残念。元演劇部部長の手腕を拝見したかったんだけどね」 「すいません。なるべく早く戻りますから」 「ああ。せいぜい発声練習くらいしかしておかないよ?」 「十分です。お願いします」  最後にお辞儀し、雪見は澪を連れて出ていく。 「さて、と…それじゃ始めようか」  残った皆の方を向き、英二はニヤリと笑い……プロの顔になった。 ----------------------------------------------------------------------------  しばらく教室の皆が発声練習をしていると、教室の扉が開き……  小人がたくさん、とてとてと入ってきた。 「わ、可愛い!」  詩子が嬉しそうに言う。  もっとも、全員似たようなことを考えていただろうが。  そして小人たちに続いて雪見と澪が入ってきた。 「お待たせ。…この小人たち見て解ったかもしれないけど、皆には人形劇……と言え るか解らないけど、「白雪姫」の声優をお願いしたいのよ」  確かに、入ってきた小人たちを見ると……いかにもお姫さま、といったものや、意 地の悪そうな女性─おそらくお后だろう─や、7人のホビットのようなもの達がいた。 「はぁ……でも、澪のスケッチブックの力で生まれたんなら何も声をつけてやらなく てもそいつらが喋れるんじゃ?」 「それが…そうもいかないみたいなのよね。基本的にこのスケッチブックから出てく るコ達の意思ってのは上月さんの意思とつながってるらしくてね。人格のようなもの を持ったコは、せいぜい一人くらいしか出せないらしいのよ。練習すれば同時にたく さん出すこともできるようだけど、今の上月さんにはまだ無理みたい。実際、今試し たんだけどね、皆一緒の動きして一緒のこと喋ってたわ」 「はぁ…それって、バケ○くんみたいなもんですか?」 「そうよ」 「そ、そうですか…(うわ、素で返されたぞ…深山先輩、好きなのか?)」  自分では結構マニアックなネタだと思っていたが、あっさり返されて、浩平はちょ っと驚いていた。 「ま、そういうことでね…声は皆に頼むわ。動かすだけなら、この位の人数ならなん とか上月さんの思い通りになるみたいだし」 「ふ〜ん…それなら仕方ないですね」 「さて、それじゃ俺はもう傍観者でいいのかな?」 「はい、ご苦労様でした緒方さん。至らない点がありましたらご指摘下さい」 「ああ、任せてくれ」  そして英二は教室の後方の座席に座った。 「さ、それじゃ人形の動きにセリフを合わせるわよ。皆で小人たち一人一人を担当し てもらうとして……私がお后と鏡をやるわ。王子様は折原君で決まりよね。さて、小 人と掛け持ちになるけど、誰かに白雪姫をお願いしたいんだけど…」 「「「「「「はーい!!」」」」」」 「よ、予想してたけどね、うん…」  流石に雪見も、これには苦笑するしかなかった。 ----------------------------------------------------------------------------  結局公平にじゃんけんという事になり、白雪姫役はみさきになった。 「そういや、こんなこと練習してどうしようってんですか?」  しばらく練習し、一休みしてる時、浩平は当然の疑問を口にした。 「それはね…次の時間のためよ」  その疑問に雪見が答える。 「次の時間? なにがあるんですか?」  今度は瑞佳が問う。  もっとも、全員同じことを考えているだろうが。 「ええとね、見てもらうのよ。子供達に。だから、頑張りましょ?」  雪見は微笑みながら答える。 「ええっ!? み、見てもらうんですか!?」 「な、いきなりぃ!?」 「みゅー?」 「うわぁ、楽しみだね」 「…緊張します」 「そうねぇ、緊張するわね」 「嘘つけ、お前がこんなことで緊張するかよ詩子」 「わ、失礼だよ折原君」  みな流石に驚いている。 「急な話だが……さっきから見てれば、君達なら大丈夫そうだな」  そんな皆を見て、後ろから英二が激励をこめ、言う。  これほど心強い言葉も無いだろう。 「だってさ。緒方英二のお墨付きよ! さぁ、皆気合入れていきましょ!」  皆それぞれにまだ緊張しているようだが、どこか楽しみなのだった。  そしてこの時間は、時間いっぱいまで練習した。 <おわり>
 ERRです。  深山先輩の顔見世です。  内容的には顔見世は希薄になってしまったかも。  とりあえず、長瀬家と合わせてご覧になった後、6時間目をお読みください。  バ○ルくん…ドラえ○んの作者のマンガですね。  マニアックネタが多発する「了承学園」の中では全然普通の部類だと思いますが…  どうなんでしょう?
 ☆ コメント ☆ 綾香 :「もしも、あたしたちが『白雪姫』を演じるとしたら……」 セリオ:「白雪姫の役はわたしですね。      やはり、お姫様を演じるには清楚で可憐でないと……」(^^) 綾香 :「……自分で言うか」(−−; セリオ:「綾香さんは魔女役で決まりですね」(^0^) 綾香 :「なんでよ!?」(ーーメ セリオ:「あんな性悪な役。      わたしたちの中では綾香さんくらいにしか出来ません」(^^) 綾香 :「……………………おい」(ーーメ セリオ:「ホント、はまり役ですよ」(^0^) 綾香 :「…………あ、そう。…………だったら」(ーーメ セリオ:「……だったら?」(^^) 綾香 :「白雪姫を眠りにつかせないとねぇ」(ーーメ セリオ:「え?」(^ ^;;;;; 綾香 :「毒リンゴは持ってないから、あたしの拳で我慢してね」(ーーメ セリオ:「え、遠慮しておきます」(^ ^;;;;; 綾香 :「問答無用!! どりゃーーーっ!!」凸(ーーメ セリオ:「うにゅ〜〜〜〜〜〜!!」(;;)



戻る