私立了承学園
4日目 6時間目 雫・ONE 〜輝く季節へ〜


「あれ? 折原?」 「長瀬? 子供達ってお前らのことか?」 「え? なんのことだい?」 「???」 「???」  ここは了承学園市街地区の大きな病院。  そこに長瀬家と折原家、そして担当教師のアレイ・雪見・英二が来ていた。 「子供達って、患者さんですか?」  瑞佳が訊ねる。 「そ。この病院には多くの子供達が入院してるの。いろんな所から患者さん移ってき てるみたいだけど、中でも子供が多いのよ」  雪見がこの病院について説明する。 「それでですね、中には失明したお子様もいらっしゃるんですよ」  アレイが補足する。  これは長瀬家に対しての説明だ。 「えっと、僕らは目の見えない人の為に電波を使うって聞いたんですが…具体的に何 をするんですか?」 「へ? お前聞いてないのか? コレから俺達でここで人形劇やるんだ」 「え!? 人形劇!?」 「そ、そんなの聞いてないよ!?」  浩平の言葉に、祐介と沙織は驚きを隠せない。 「ああぅ、すみません、ええとですね…」 「だから、人形劇をやるのは折原家の皆。それで君達には目の見えない子にも劇を楽 しんでもらうために働いてもらいたいのよ」  言葉に悩むアレイをすかさず雪見がサポートする。  アレイは申し訳なさそうに雪見に謝る。 「なるほど…さっきの練習はそのためですね」 「納得。でも、それじゃ私達はすることないね」 「そうですね…」 「いや、君達には雑用をお願いしようと思ってるんだけど。簡単なことだからぶっつ けでも大丈夫だよ」  仕事が無いと思って小さくなっていた沙織と瑞穂に英二は言う。  …そして、一行は会場へ向かった。 ---------------------------------------------------------------------------- 「わぁっ…」 「…結構いるんだな…」 「ま、また緊張してきちゃった…」 「はぇー…」 「……」 「でも、なんだか楽しみだね」 「まぁそうですね、やる気もでてくるわ…緊張するけど」 『がんばるの』  会場に集まった予想外の子供達の数に、皆緊張したり、闘志を燃やしているようだ。 「腕がなるわね」  雪見は流石慣れているのか、やる気十分だ。 「ええと、あちらの席に集まっておられるのが目が見えない方々です」  アレイが祐介と瑠璃子を誘導する。 「解りました。じゃぁあの子達に電波で映像を送ればいいんですね」 「はい」 「…がんばるね」 「お願いします」  祐介と瑠璃子は最後のウォーミングアップをする。 (がんばろうね、瑠璃子さん) (うん、祐介ちゃん)  ウォーミングアップをかねて互いに激励し合う。 「うー、緊張してきたよー…」 「まさかあんなにいるとはねぇ…」 「…1時間練習しただけでこんな」 「みゅー…」 「な〜に固まってんだお前ら。なんつっても俺らはあの「緒方英二」のお墨付きの声 優だぜ? 自信持っていこうじゃねぇか!」 「そうだよ。そんなに固くならないで、楽しもうよ。さっきの練習みたいに」 「そうよ、緊張してたら楽しくないわよ?」  緊張する瑞佳、留美、茜、繭を浩平、みさき、詩子が激励する。 「うん…そだね、やるからには楽しいほうがいいよね!」 「…そうね、なんていっても「緒方英二」のお墨付きだものね!!」 「私も、楽しいほうがいいです」 「うん♪」  そして、皆の緊張もほぐれたようだ。 (お、緊張して固まってるかと思ったけど、なかなか落ち着いてるじゃないか)  心配して様子を見にきた英二が見たものは。  楽しげに本番に向けて最後の練習をする折原家だった。 (この場面であそこまでリラックスできるとはね。度胸は十分だな)  英二はしばらくそんな皆を見てから、観客席のほうへ戻って行った。 「澪…がんばれ、頼むな」 「……!」  うんっ、うんっ!  開演直前。  皆と別の所で練習していた澪のところへ、浩平が励ましの言葉をかけにきた。  少ない言葉だったが。  それは澪のやる気を何倍にも膨らませた。 「えっと、それじゃこんなものかな?」 「そうね、あとはリアルタイムに変更していきましょう。瑞穂、音楽お願いね」 「うん、任せて」  沙織、香奈子、瑞穂は舞台裏で背景の配置や音楽(再生のみ)を担当する。  開演前の準備は整ったようだ。  …そして、それぞれの思惑を乗せ…人形劇「白雪姫」が始まった… ----------------------------------------------------------------------------  ───鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだぁれ?  ───ソレハ、白雪姫デス  (うを…さすが深山先輩だぜ)  (さっすが、演劇部の部長さんだね)  (…小人だけでよかったわ、私…)  (…深山先輩も、その辺を気遣って下さったんでしょうね)  (みゅー?)  ───お嬢さん、美味しいリンゴはいかがかな?  ───わぁ、本当においしそうだね、いただくよ  (先輩、素が出てるよ…)  (え? そうかな?)  (…まぁ飾らない演技ってのも素敵だけどな。白雪姫は大食いじゃないと思うけど)  (…浩平君酷いこと言ってる?)  (いや、全然そんなことはないぞ)  …ちり…ちり…ちり…ちり…  …ちり…ちり…  (折原達、結構上手だね)  (うん、素敵だよ)  (子供達、楽しんでくれてるかな?)  (楽しそうだよ)  (…そうだね)  (香奈子ちゃん!)  (任せてよ、沙織こそそっち気をつけてね)  (まっかせなさーい!)  ──うわーん、白雪姫が死んじゃったー!!  ──えーんえーん…  (…結構板についてるんじゃねぇか?)  (うん、自分でも結構びっくりだよ)  (結構こういうのも楽しいね、茜)  (そうですね)  ──王子様ー!! 白雪姫を助けてー!!  (いよいよクライマックスだな…)  (浩平、ファイト!)  (瑞穂!)  (任せて香奈子ちゃん!!)  ──♪〜♪〜  (…ナイスタイミングね…)  (えへへ…)  ……そして、王子のキスで白雪姫は目覚め…  物語は、大団円を迎えた。 ----------------------------------------------------------------------------  パチパチパチパチ……!!  会場から、惜しみない拍手が贈られる。  それを浩平達は舞台裏で堪能していたのだが。 「何をしているんだい? こういう時は前に出てくるもんだよ」  いつのまにかやってきた英二が、そう言って皆を表へ引っ張り出した。 「わっ! ちょ、待った英二さん!!」 「は、はずかしいよぉ〜」 「ぐぁっ……」 「……」 「みゅー♪」 「うわぁっ…なんかこういうのもいいかもねぇ」  パチパチパチパチ……!!  より一層大きな拍手が巻き起こる。 「浩平君、もしかして私達凄く歓迎されてる?」 「…そうみたいだな」  パチパチパチパチ……!!  パチパチパチパチ……!!  見ると、祐介達もニコニコ笑いながら拍手していた。 ----------------------------------------------------------------------------  すぅ……すぅ…… 「寝てるねぇ」 「寝てるな」 「…寝てますね」 「寝てるわね」 「みゅー」 「寝てるの?」 「もう、澪ちゃんたら寝顔まで可愛いんだから♪」 「…お疲れさま、上月さん」  浩平達が舞台裏に行くと、澪が寝ていた。  彼女は、あの人形達を全部一人で操っていたのだ。  それは、大変に精神力を使う作業であったらしい。  劇が終わった今、その疲れから眠ってしまっていた。 「お疲れさま」 「…みんな、凄いね」  そこへ祐介と瑠璃子もやってきた。 「ねぇねぇ祐くん、私達も頑張ったよ」 「そうね、まぁ、祐介君達や折原君達ほどじゃないけどね」 「そう…ですね」  沙織達もやってくる。 「そんなことはないよ。音楽も背景の交換も、初めてとは思えないくらいいいタイミ ングだったと思うよ」 「…うん、皆頑張ってたよね」 「そうだな、あんたらのおかげで俺のナイスガイっぷりに磨きがかかってたしな」 「ナイスガイはともかく、舞台はもりあがってたよ」 「ともかくとは何だ、瑞佳」 「エヘヘ、ありがと」 「そう言ってもらえるとありがたいわね」 「うん」 「でも、もしかしてお前らが一番疲れてるんじゃねぇか? 目の見えない子供、結構 いたみたいだが」 「う〜ん…正直、結構疲れたかもね。数はともかく、非常に気を使ったからね。折角 楽しんでもらうのに痛いことしたくないからさ」 「…でも、楽しんで貰えてたから…頑張ったかい、あるよね」 「そうだね、瑠璃子さん」 「そっか…ま、ともかくごくろうさん」 「うん、ありがとう」 「…ありがとう」 「う、うえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛〜〜」 「あ、アレイちゃんどうしたの?」 「…よ、よがっだでず、よがっだでず〜白雪姫〜幸せになれてよがだでず〜」 「そ、そこまで泣くかっ!?」 「さて、と。それじゃそろそろ戻りましょ、もう放課後よ?」 「そうだな、帰りにお兄さんが何かおごってやろう」 「…英二さん、その言葉後悔しますよ」 「ん?」  帰り道、HoneyBeeに寄り…  英二のおごりで軽く…  そう、軽く(本人達にとって)、食事などして帰った。 「…緒方英二をなめるなよ! この程度の出費!!」 「無理しなくていいっすよ、英二さん…」 「く、くうぅ〜」 <おわり>
 ERRです。  みさき・誠・楓のいる場所で、安易におごるとか言うべからず(笑)  アレイ…(笑)
 ☆ コメント ☆ 綾香 :「祐介たち、みんな頑張ったわね」(^^) セリオ:「そうですね。子供たちも喜んでくれたみたいですし」(^^) 綾香 :「電波って危険なイメージがあるけど、こういう使い方だったらOKかな」(^^) セリオ:「はい」(^0^) 綾香 :「それにしても、殆どぶっつけ本番なのに……祐介たちって結構度胸あるわね」 セリオ:「まったくです。みなさん、凄いですね」 綾香 :「あたしだったらダメね。きっと緊張で失敗しちゃうわ」 セリオ:「そうなんですか?」 綾香 :「うん。ほら、あたしって繊細だから」(^0^) セリオ:「……………………は?」(−−; 綾香 :「あたしって……せ・ん・さ・い……だから」(^0^) セリオ:「戦災?」 綾香 :「(げしっ!!)」(−−メ セリオ:「うにゅ! ううっ、いたいの」(;;) 綾香 :「あたしの事を何だと思ってるのよ!?」凸(−−メ セリオ:「人間兵器・リーサルウエポン・天然危険物」(−−) 綾香 :「(げしっ! げしっ! げしっ!!)」(ーーメ セリオ:「はうっ! はうっ! はうっ!!」(;;) 綾香 :「失礼な事を言わないでよ!!」凸(ーーメ セリオ:「うう〜っ。事実なのにぃ」(;;) 綾香 :「まだ言うか」(ーーメ



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