私立了承学園
4日目 放課後 Kanon

先に謝っておきます…すいません(^^;


「楽しみだねぇ、花火」 「寝るなよ」 「寝ないよ〜」  にこにこノーテンキな笑顔の名雪を見て、内心信用ならんと思った祐一だったが、 あえて口には出さなかった。 「祐一…失礼なこと考えなかった?」 「いや、そんなことはないぞ」 「ふーん…」  …見かけによらず鋭い、とも思った。 「祐一くーん、名雪ー!」  その後も他愛ない話をしながら歩いていた2人だったが、遠くから自分達を呼ぶ声 が聞こえると、歩みを止めて声のほうを向いた。  見ると、香里が自分達の方へ駆けてくるところだった。 「…香里?」 「どうしたんだ?」 「どうしたんだとは挨拶ね…突然いなくなるから探してたんじゃないの」  涼しい顔で平然と言ってのける2人に、香里は口を尖らせて文句を言う。 「文句なら名雪に言ってくれ、コイツがいきなり暴走したせいだからな」 「うにゅ〜…だって猫さんなんだよ〜」 「…ふぅ」  「猫」「暴走」というキーワードに、またか、という風に吐き出された香里の大き なため息が、2人の耳にやけに響いた。 「まぁそれはいいとして、どこに向かってたの? 家は反対だけど」  祐一達の足の向いていた方向を思いだし、香里は訊ねる。  彼らの向かっていた方向は寮とは正反対の商店街地区だった。 「ああ、実はさっき耕一さん達に花火に誘われたんだ。こっちも手ぶらで行くのはど うかと思ったんで今のうちに買っておこうと思ってな」 「ふーん…んじゃ折角だし、あたしもつきあうわ」 「おう」  そして香里を加えた3人は商店街へ向かった。 「…つーかさ、一応ここって了承学園の敷地だったよな?」 「…そのはずよ」 「…お母さん」  そこらの駅前商店街顔負けの活気を持った商店街地区の様子にしばし絶句する一行。  まだ外部からの客が少ないため、人はそれほど多くなく、全ての店が営業を始めて いるわけではないのだが、これから本格的に仕事を始めようとあちこちの店が開店準 備に追われる様は素晴らしい活気をあたりにふりまいていた。  明日あさってあたりにはどうなっているのか見当もつかないところである。  これが秋子の手腕によるものか、はたまた各方面の助力なのか…  いずれにしても、その中心には水瀬秋子、その人がいるはずである。  自分達の母の底知れなさに祐一達は改めて圧倒された。 「って圧倒されてる場合じゃないな、花火探すか」 「そ、そうね」  気を取りなおした祐一達はさらに商店街の奥へと歩みを進めた。 「ねぇ祐一、折角だから夕ご飯の買い出しもしたいんだけど」  他の店に比べてやや本格的に営業を開始している食料品の店を何店か過ぎる頃、名 雪がそう言い出した。 「ん、そうだな、別にかまわないぞ」 「ありがと」  名雪は微笑むと、手近なスーパーを指差し、中に入っていった。  祐一と香里も後に続く。 「祐一、今日は何が食べたい?」 「お前達や秋子さんが作ってくれるものならなんだって嬉しいぞ」 「あのジャムも?」 「…そんなこと言う人嫌いです」 「…祐一君、それ栞のセリフ」 「手厳しいな……あれ?」  平和な会話を楽しみながら店内を物色していると、祐一の目に見知った顔が飛びこ んできた。 「どしたの?」 「ありゃ長瀬じゃないか?」  祐一の指差すほうでは、祐介が野菜とにらめっこをしていた。 「…なんか主夫が板についてるわね」  香里が思ったことをそのまま口にする。  2本のにんじんを持ってしばらく考え込んだ後、片方のにんじんを棚に戻し、もう 一方のにんじんを買い物カゴに放りこむ様子は、主夫を通り越して料理人、それも頑 固な料理職人のようだった。 「よぅ長瀬」 「こんにちわ〜」 「こんにちわ」 「え? あぁ、相沢、それに水瀬さんに美坂さん。こんにちわ」  祐一達が呼びかけると、祐介も買い物の手を休めてやわらかな表情で挨拶を返す。 「わ、長瀬くん、今晩はカレー?」 「え? よく解ったね」 「この買い物カゴ見ればなんとなく解るよ〜」 「へぇ…さすが秋子さんの娘だね」  名雪の言葉に、にんじんとじゃがいも、たまねぎの入った自分の買い物カゴを見て 少し感心する祐介。 「ところで、君達も夕飯の買い物?」  空の買い物カゴをぶら下げる祐一を見て祐介が問う。 「おう。花火買いに行くついでにな」 「花火?」 「おう。今晩耕一さんたちと花火することになったんだ」 「へぇ、楽しそうだね」 「あ、なら長瀬くんたちも一緒にやろうよ」  名雪がにこにこ微笑みながら祐介を誘う。  しかし祐介は申し訳なさそうに、 「ゴメン、今夜は皆でゆっくりするって決めてたんだよ」  と、名雪の誘いを断った。 「うにゅ…残念」 「ま、先約があるなら仕方ないな」 「ゴメン、また誘ってよ」 「おう」 「あ、そういえばルー見なかったかい?」  思い出したように祐介が祐一達に質問する。  先ほどから探していたのだが、どこにも見当たらなかったのだ。 「ルー? 見たか?」 「うーん…わたし達が歩いてきたところにはなかった気がするよ」 「そうね…確かに見なかったわ、ごめんね、お役にたてなくて」  香里が申し訳なさそうに言う。 「あ、全然かまわないよ、変なこと聞いてこっちこそごめん」  祐介はそんな香里を見て慌ててフォローした。 「…ルーなら、レジの横にあるわよ」 「えっ?」  突然声をかけられて、全員声のほうを見る。  そこには蒼い髪の女性が立っていた。歳は一行より2、3上といったところだろう。 「どうしたの?」  黙りこくる祐一達を見て、その女性が小首をかしげる。 「あ、す、すいません、突然のことに驚いてしまって」  皆あわてて女性に謝る。 「ふふふ、別にいいのよ、突然声をかける私も非常識だし」  その女性はやわらかに微笑んで、皆をたしなめた。 「いえ、わざわざ教えていただいてありがとうございます。じゃ相沢、僕はこれで」 「ん、ああ。またな」 「うん、それじゃ水瀬さんに美坂さんもまたね」 「さよならだぉ〜」 「またね」  最後にもう一度蒼髪の女性に会釈して祐介は駆けていった。 「あら、私も今日はあまりゆっくりしてられないんだわ。私もこれで失礼するわね」 「あ、はい。どうもすみませんでした」 「だから別に怒ってないって。それじゃね」  軽く手を振って女性は行ってしまった。  その背中をしばらく祐一たちは黙って見送った。 ---------------------------------------------------------------------------- 「?? レジの横って言ってたけど、どこだろう?」  祐介は女性に教えられたとおり、レジの横にやってきた。  しかし、どこにもルーらしきものは見当たらない。ただダンボールが積まれている だけだ。 「何かお探しですか?」  レジの近くで悩む祐介を見た男性店員が、商品整理の手を休めて祐介のところへや ってきた。  祐介もそれに気づき、その店員に聞くことにした。 「すみません、カレーのルーを探しているんですけど…」 「ルー? うわっ、すみません、まだ出してませんでしたよ!」  男性店員は慌てると、レジの横に積まれていたダンボールの一つを床に降ろしてふ たを開ける。  そこにはカレールーが入っていた。 「あ、わざわざすみません」  祐介は軽く頭を下げてそれを受け取る。 「いえ、こちらの不手際です。すみません」  男性店員は祐介が頭を下げるのを見て慌ててフォローし、自分も頭を下げる。  そしてその後肉を購入して、祐介はスーパーを後にした。  そこでふと、妙なことに気がつく。 (あのダンボール…何も書いてなかったし、空けられた様子も無かったような… だったらなんであの女性はルーがあそこにあるって知っていたんだ?)  その疑問に答えるものは、当然いなかった。 ---------------------------------------------------------------------------- 「それじゃ花火買いに行くか!」  夕食の買い物を済ませた祐一達は、花火を求めてスーパーを後にした。  この店で済ませられればよかったが、どうやら置いていないようだった。  夏ならともかく、今は時期はずれだし、なによりまだまだ本営業では無いので、あ るほうが凄いくらいだったが。  食料品店地帯から少し離れたところに、おもちゃ屋やファンシーショップの並ぶ所 があった。  開いている店も結構あるが、やはり準備中の店のほうが目立つ。  昨日までより慌しくなってるあたり、近いうち本格的な営業が始まるのかもしれな い。本番前のラストスパートといったところだろうか。  そんなおもちゃ屋街を歩いていると、一行の目の前に一つの小さなおもちゃ屋が現 れた。  ─『夢工房』  店の看板にはそう書かれていた。  他の店が慌しく動いているのに対して、この店は静かだった。  他にも何店か開いている店はあったのだが、祐一と香里にはこの小さな店は他のど の店よりも圧倒的な存在感を持っているように見えた。  一行は黙ってその店を見ている。 「? ねぇ、どうしたの2人とも?」  一人蚊帳の外の名雪が祐一と香里の顔を交互に見て2人に呼びかける。 「あ、ああ、すまん」 「う、うん。とりあえず入りましょ?」  名雪の言葉にハッと我を取り戻したように慌てて取り繕う2人。 「??? 変なの」  そんな2人を見て名雪はまた小首を傾げた。  カララン  扉につけられた鈴が小気味よい音をたてる。  店内は外から見た印象よりはずっと広く見えた。  よく整理された商品がより一層その印象を強くしているのだろう。 「あら、いらっしゃい」  軽く店内を見まわしている祐一達のところへ店主と思われる女性が姿を現した。  その女性を見て祐一達は驚く。  その女性は先ほどスーパーでルーの場所を教えてくれた蒼髪の女性だったからだ。  女性はしばし言葉に詰まっていた祐一達を見て苦笑し、口を開いた。 「また会ったわね。今度は何を探してるのかしら?」  またまた呆然としていた祐一達は、女性の言葉で我に返ると、慌てて頭を下げる。 「あ、すみませんボーっとして。え、えぇと花火を探してるんです」  まだ少しどもりながら祐一が用件を言うと、女性はにっこり微笑んで、入り口そば の棚を指差す。 「今日は開店記念で花火特売よ。どれでも好きなの買って行ってね」  見ると確かに、花火の置いてある棚には「開店記念セール!」の札が貼ってあった。 「開店初のお客さんがあなた達っていうのもなにかの縁ね。ちょっと味見してみてほ しい料理があるんだけど、お願いできるかしら?」  適当にいくつか見繕って会計を済ましたところ、女性が唐突にそんなことを言った。 「えっ?」 「大丈夫よ、別に変な材料なんて使ってない普通のクリームシチューだから」 「い、いえ、そういうことじゃなくて。俺達でいいんですか?」 「ええ、できればお願いしたいわ。何だか見た感じ味にうるさそうだしね」 「そうですか…俺はかまいませんが…お前らは?」 「わたしもいいよ〜」 「あたしもかまわないわ。夕食に差し支えが無いくらいの量なら」 「だそうです」 「ありがと。それじゃちょっと待ってて」  祐一達の答えに、女性は嬉しそうに店の奥に入っていった。 「…美味いっすよ! なんか懐かしい味って感じです」  祐一は振舞われたシチューを夢中で食べる。 「うん、美味しいねぇ」  名雪も満足そうに食べる。 「学食に匹敵するわね…って、あまり誉め言葉に聞こえないですね」  香里は自分の言葉に苦笑する。  学食とは勿論、了承学園の学食のことである。 「うふふ…そんなこと無いわよ、それは大層な誉め言葉だわ」  女性は香里の言葉に嬉しそうに微笑む。  彼女も了承学園の学食のことを知っているのだろう。 「ふぅ、ごちそうさまでした」 「美味しかったです」 「ふふ、おそまつさまでした」  全部平らげられた皿を満足げに見て、女性はこの料理について聞かせてくれた。 「この料理はね…母の料理の中でも私の一番のお気に入りだったの。自立するにあた ってこの味だけはモノにしたかったんだけど…どうも何かが違う気がするのよね」  それがいわゆる「おふくろの味」ってやつかしら、と苦笑して付け加える。 「そうですね、同じ手順で作った料理でも母の料理だと一味違う気がしますよね」 「うんうん、わたしもお母さんの料理真似して作っても、やっぱりお母さんが作った ほうが美味しく感じるよ」 「母は強し、ってやつだな…ちょっと違うか?」  女性の言葉を祐一達は深くかみ締めた。 「あら、娘が目を覚ましたみたい」  祐一達と女性はその後しばらく談笑していたが、突然そんなことを言って女性は立 ち上がる。 「「「む、娘ぇ!?」」」  どうみても自分達より少し年上のお姉さん、といった風貌の女性の口からでたその 言葉に祐一達は大いに驚いた。 「あはは…やっぱり19歳で子供がいるなんて感心できないわよね…」 「「「じゅ、じゅうく!?」」」  やはり見た目どおり、自分達と大差ないその女性の歳にまた驚く。 「…ふけてるかしら?」 「い、いえ、そんなことは全然ないですけど…」  どうしても語尾が濁る。 「…確かに私はまだまだ小娘かもしれないけど、それでも、娘にはたくさんの愛情を そそいで育ててみせる。私がそうしてもらったように」  真剣な表情で言いきる女性の目には、確固たる意思が見て取れた。  その目を見て、祐一達は女性に対して少しでもよくない感情を持ってしまったこと を恥じた。 「す、すみません…」 「「ごめんんさない…」」 「どうして謝るの? っと、泣き出したらまずいから行くわね。またヒマな時にでも 顔を出してね。喜ぶから、私が」  元のにこやかな笑顔に戻った女性はそれだけ言い残すと、奥に入っていってしまっ た。 「色々な人がいるんだね」 「…そうだな…」 「人の数だけ物語があるのよ」 「…あぁ」  あの時の女性の目に秘められた意思の強さは、並ならぬものであった。  あの目があの女性が描いてきた物語の凄さを示しているようだった。  カララン 「やっほー郁…あれぇ?」  祐一達が女性がいなくなったほうを見たまま立ちつくしていると、新たな客人がそ んなことを言いながら入ってきた。  後ろを振り向くと、長髪の女性が2人、入り口に立っていた。 「ねぇあなた達…ここの店主は留守かしら?」  薄紫色の髪をした女性が祐一達に訊ねる。 「え、えぇ。なんか娘が目を覚ましたとかで奥に入って行っちゃいましたけど」 「そ。それであなた達は?」  祐一の返答をさして興味無さそうに受け流すと、今度は祐一達のことを訊ねてきた。 「あ、ちょっとしたことでここの店長さんと仲良くなっておしゃべりしてたんです」 「ふ〜ん…」  祐一の代わりに答えた香里の言葉を聞いて、興味深そうに香里を頭の上から足の先 までじっくりと眺める。 「…あ、あの、何か?」 「あ、気にしなくていいわよ、別に襲ったりしないから」  さすがに居心地が悪くなったのか、香里が少し非難めいた口調で声を出す。  それまた軽く流すと、今度は祐一の方へ視線を向け、軽く微笑んだ。  祐一は思わずドキッとしてしまう。  店主の女性も綺麗だったが、こちらも綺麗な女性だった。 「祐一…」  名雪がジト目で祐一を睨む。 「べ、別に見とれてたりしないぞ!」 「見とれてたのね…」 「ぐっ…」  香里の鋭いツッコミに言葉を詰まらせる。 「郁未さんと友達ってことは、私達とも友達ですね!」  もう一人の女性…頭のリボンが印象的な、綺麗というよりまだまだ可愛いと言った ほうがイメージにあう女性は、あどけない笑顔でそんなことを嬉しそうに言った。 「郁未…さん? ありゃ、考えてみれば俺達自己紹介してなかったなぁ」 「あ、そうだねぇ」 「…気付きなさいよ。まぁ、必要無いくらい自然な流れだったものね」  香里の言葉に祐一と名雪はうんうん、と頷く。 「って結構長居しちゃったわね、そろそろ戻らない? お邪魔しちゃ悪いし」 「ほえ?」 「ほえ? じゃなくて。わざわざ友達が訪ねてきたんだから俺らがいたら邪魔だろ?」 「あー、そうだね」  相変わらずのんきな名雪に苦笑する祐一達。 「別に気にしなくてもいいのに」 「そうですよぉ」 「いえ、先に帰った連中も心配してると思いますから今日は帰ります」  引き止めようとする女性達にそう告げると、祐一達は最後にもう一度会釈して店を 後にした。 ---------------------------------------------------------------------------- 「…あら?」 「どうした? 香里」 「郁未さん…だったかしら、あの人…娘が目を覚ましたって言ってたわよね?」 「あぁ、それがどうかしたか?」 「どうして解ったのかしら?」 「ヘ…? そりゃ…」  泣き出したから、と言い出そうとして、祐一もハッと口を噤む。  泣き出してはいないはずだ。祐一達にはその泣き声は聞こえなかったのだから。  なによりも、あの時女性は「泣き出したらまずいから」と言っていた。  あの時、確かに「娘」は泣いていなかったのだ。 「それがお母さんの愛情の成せる技なんだよ〜」  名雪はそう言いきった。  そんなバカな、と一瞬思った祐一と香里だったが、もう一度言葉をかみ締めると、 不思議な説得力があった。だから、そういうことなんだ、と納得した。 ---------------------------------------------------------------------------- 「久しぶり、郁未」 「やっほ〜、郁未さん! あっ、未悠ちゃんもこんにちわぁ」 「あら晴香、由依、いらっしゃい」  「夢工房」の奥の居住空間。  郁未は久しぶりに訊ねてきた友人達に笑顔で応じる。 「結構いい感じの店ね」 「ありがと」  薄紫色の髪の女性…晴香の言葉に嬉しそうな顔をする郁未。 「いつ越してきたんですか?」  リボンの女性…由依が部屋を見まわして訊ねる。 「昨日」 「うわ、その割に綺麗ですねぇ」 「気合入れて片付けたからね」  やわらかな表情で郁未は応える。  しばらくはお互いの近況などを語り合って時間を潰した。 「そういえばさっきの人達、なんか郁未さんや晴香さんに似たような感じがしたんで すけど…何が似てるかって聞かれても解りませんけど」  由依が突然そんなことを言い出す。 「…由依のクセに結構鋭いわね」  晴香が心底感心したように言う。 「…貧乳なのに」  郁未が真面目な顔をして言う。 「わっ、どうして郁未さんが言うんですかっ! それにあたしのクセにってどういう ことですかっ!」  すぐさま由依は膨れっ面になる。当然だが。 「言葉どおりの意味よ」 「言ってみたかったのよ」 「うぅ〜〜〜〜〜〜〜っ、2人とも嫌いですっ!!」  即座に帰ってきた2人の言葉に、半ば泣きそうになって拗ねる由依。 「あぁっ、ゴメン由依! でもホント鋭いわね」 「うぅ〜〜〜、どういうことですかぁ?」  まだ膨れっ面のままだが、謝る郁未に向き直る。  ちなみに、晴香はニヤニヤ笑っているだけだ。 「そうね…あのおっとりした感じの女の子。あの子意外は、私達と同じ「力」を持っ てるわ」 「そうね、出所は解らないけど」  郁未がやや含みを持たせたような言い方をし、晴香もそれに続ける。 「へ? それって、あの「不可視の力」ですか?」  言葉は少なくとも、由依にはちゃんと解っていた。当然である。目の前の友人2人 が持つ「力」とは、すなわち「不可視の力」なのだから。 「そう。あっちは私達のことに気付いてないみたいだけどね」 「ま、アンタも私達と付き合ってるせいでソレについては敏感になってたのね」  晴香は納得したように言った。 「なるほど…そういうことだったんですねぇ」  うんうん、と由依は頷く。 「で? 結局その辺が関係してるんでしょ? ココに呼ばれたのは」  まだ頷いている由依を横目に見ながら、晴香は郁未に問い掛ける。 「んー…それもあるわね。でもやっぱり私のことを気にかけてくれてるみたい」 「ふーん…まぁ何にしても結構いいところだし、よかったじゃない」 「うん…… それで、晴香たちはどうするの? 誘われたんでしょ?」 「まぁね。由依はどうかしらないけど」  そう言って由依に視線を向ける。  さすがにもう頷いてはいない。 「あ、私も誘われましたよぉ。学校の方の雑務ですけど」 「それで2人ともどうするの?」 「私はとりあえず断ったわ」 「え!? 私受けちゃいましたよぉ?」 「別にイイでしょ、ふらふらしてるより」 「むー…」 「どうして断ったの晴香? 何かあるの?」 「ん、だってまだ未悠ちゃんは小さいし、この子いたらあなた外出も一苦労でしょ? この店の手伝いでもしながら、専属のベビーシッターでもしてあげようかな、ってね」 「あー! ずるいですぅ!」 「何がよ。だったらアンタも断ればよかったでしょ」 「むぅー…」 「あはは、ありがと晴香。でも、目潰しはしないでよね」 「ぐはっ」 「あははー」 「笑うなっ!」 「い、痛いですぅ! 郁未さん、こんな狂暴な人に任せたら大変ですよぅ」 「なんだとー!!」 「わーっ怒ったーっ!!」  広くない部屋の中で暴れまわる晴香と由依を眺めながら、もう少ししたら止めに入 ろう、と郁未は思った。  そこに流れる時間は。  確かに無邪気なものだった。 <おわり>
 ERRです。  謝るくらいならやるな、と言われればソレまでなんですけど…(汗)  ごめんなさい。  郁未・晴香・由依というのはTacticsの作品「MOON.」の主人公達です。  秋子さんが何故郁未を誘ったかと言うのは…またの機会に。  そちらで2人の関係を書きますので…  …もっと自制ができるようにならないと…  「MOON.」知ってる方は少ないでしょうから…
 ☆ コメント ☆ 浩之 :「なんつーか、また変な奴らが出てきたな」 綾香 :「ちょっと。その言い方は失礼よ。      せめて、『妙なひとたち』くらいにしときなさいよ」 浩之 :「それも十分失礼だと思うぞ」(^ ^; 綾香 :「あ、あらそう?      気のせいよ。気のせい」(^ ^; 浩之 :「……なんだかなぁ」(^ ^; 綾香 :「そ、そういえば……『夢工房』だっけ? 例のお店。      なんか、面白そうよねぇ」(^ ^; 浩之 :「あからさまに話題を変えやがったな」(^ ^; 綾香 :「う゛っ」(^ ^;;;;; 浩之 :「……ま、いいけどな。      でも、確かに面白そうな店だよな。不思議な雰囲気が漂ってるみたいだし」 綾香 :「うん」(^^) 浩之 :「今度、みんなで行ってみようぜ」 綾香 :「うん!」(^^) 浩之 :「それに……ぜひ、美人の店員さんにも会ってみたいしな」(^^) 綾香 :「……うん!?」(ーーメ 浩之 :「睨むなよ。別に手を出しやしないって」(^ ^; 綾香 :「……むーっ」(ーーメ 浩之 :「信じろよ」(^ ^; 綾香 :「…………信じてはいるけどさぁ。でも、少しだけ不安なのよねぇ。      浩之って、美人に対する抵抗力が弱そうなんだもん」 浩之 :「失礼な。ひとを煩悩の固まりみたいに言うなよ。      これでも、人並みの理性は持ち合わせているつもりだぞ」(−−) 綾香 :「……う〜ん、それもそっか。      浩之って、意外と理性があるもんね」 浩之 :「『意外と』は余計だ」(−−メ 綾香 :「あはは。      でも、そうよねぇ。浩之は『性欲魔人』であって『煩悩魔人』じゃないもんね。      うんうん、納得納得」(^^) 浩之 :「…………まあ、分かってもらえればいいんだ。      すっげー嬉しくねぇ納得のされ方だけどな」(−−;  ・  ・  ・  ・  ・ 瑞希 :「ふ〜〜〜ん。      ということは、『煩悩魔人』である和樹は美人に対する抵抗力が弱いわけね」(ーーメ 和樹 :「そ、そんな事はない……と思うぞ」(^ ^;;; 瑞希 :「ふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」(ーーメ 和樹 :「……………………」(^ ^;;;;;



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