私立了承学園   5日目4時間目   相沢家

 

 

 

「いちごさんだぉー・・・」

名雪が目を糸ながら、鍋に苺を入れる。

「・・・まぁ、いつものことなのでもう何も言わんが。」

「12時間睡眠がベストの名雪が、いつも私たちと同じ時間帯に寝てるものね。」

祐一と香里がフライパンの中身をひっくり返しながら、談笑している。

「でも・・・すごいです、名雪さん。」

「・・・常人には真似できませんね。」

栞と美汐がボウルの中身をかき回しながら、簡単のため息をつく。

「・・・名雪、凄い。」

「はえ〜・・・名雪さん、器用ですねぇ。」

舞と佐祐理が牛肉・タマネギなどを炒めながら名雪を見る。

「うぐぅ・・・また失敗だよ・・・」

「あぅー・・・」

あゆと真琴の周りには何がなんだか分からない物がつまさっていた。

「しかし名雪・・・なぜ眠りながら料理が出来るんだ?」

祐一はため息をつきながら、名雪を見る。

 

賢明な方はもうお分かりだろうが、相沢家の本日の授業は調理実習である。

何の混じりっけもない、純粋に調理実習である。

「まぁ、久々に平和な空気を満喫できるなぁ・・・」

これは授業内容を聞いたときの、祐一の言葉である。

だが、そこは了承学園。ただの授業で済むはずがない。

まして、本日の授業監督は秋子さんなのだから・・・

 

 

 

 

話は授業開始時。

「おい、起きろ名雪。」

「くー・・・・」

「名雪、速く起きないと授業が始まるわよ。」

「けろぴー・・・」

祐一と香里が、休み時間から睡眠モードに入った名雪を起こそうとしている。

「・・・名雪、眠っているのですか?」

この時間の授業監督の秋子さんが、名雪をみる。

「うにょ。」

「半覚醒状態ですね。」

秋子さんは目が線になっている名雪をみて、にこやかに笑う。

「半覚醒状態?」

「ええ。今の名雪は無意識のうちに行動しています。」

「そういや、前に寝たまま制服着替えて学校まで行ったことがあったな・・・」

秋子さんの言葉に、祐一が以前の名雪の様子を思い出す。

「おそらく慢性的な寝不足でしょう。」

「寝不足・・・・・」

ベストな睡眠時間が12時間の、『眠り姫』という称号を持つ名雪である。

最近は祐一達と睡眠時間が同じくらいになっていたため(それでも名雪の方が多い)、この状態になったのだろう。

「名雪・・・授業はどうします?」

「だいじょうぶだおー・・・・」

どう考えても寝ぼけているとしか思えないような返事をする。

名雪の返事に秋子さんは、非常に嬉しそうに微笑み、

「それでは・・・この授業は調理実習です。」

 

 

 

それからしばらくは平和な授業だった。

秋子さんが謎ジャムを制作課題にしたわけでもなく、真琴が花火を火にかけようとしたわけでもなく(そんなこと

しないわよ!by真琴)、万事滞りなく、授業は進んでいた。

 

そして、試食・・・

 

 

 

テーブルの上には、相沢家の面々が作った料理が並んでいた。

祐一はチキンライス。

名雪はイチゴジャム。

栞はバニラアイス。

香里は生姜焼き

舞は牛丼

佐祐理はホットケーキ

あゆは鯛焼き

真琴は肉まん

美汐は天ぷら

 

 

「一番不安だったあゆがまともに作れてるなぁ・・・」

祐一は、あゆの作った鯛焼きを食べる。

「えへへ・・・この間の鯛焼きの作り方、覚えてたから。」

あゆが顔を赤くしながら言う。

「ねえねえ祐一、真琴のは?」

「ちょっと見た目は悪いけど、なかなかいけるぞ。」

祐一の言葉に、真琴が嬉しそうに笑う。

「・・・祐一、私のは?」

「佐祐理のはどうですかー?」

舞と佐祐理が祐一の前にそれぞれの料理を出す。

「祐一さん。私のも食べてみて下さいね。」

「感想聞かせてね。」

「私の自信作です。」

栞と香里と美汐も二人に習う。

「わたしもー・・・」

名雪も寝ぼけながら、祐一にイチゴジャムを差し出す。

「よし、じゃみんな順番にな。」

祐一は妻達の作った料理を順番に食べていった。

 

 

 

 

 

そして、それは起こった。

祐一が名雪の作ったイチゴジャムが上に乗ったトーストを口に入れたときだった。 

「ぐっ!!」

祐一はうめき声を一つ上げて床に倒れ伏した。

「「「「「「「「祐一(君)(さん)」」」」」」」」

名雪を除く妻達が祐一の元へ駆け寄る。

「そ、そんな・・・ばかな・・・」

祐一は息も絶え絶えに何かを呟く。

「どうしました、祐一さん。」

秋子さんが祐一の側に来る。

「あ、秋子さん・・・・あのジャム・・・混ぜました?」

祐一の言葉に、妻達は名雪の作ったジャムに目を向ける。

秋子さんのジャムが紛れ込んでいたのだろう。

1名を除いて、妻達はそう思った。

が、

「いえいえ、今回は私は何もしてませんよ。」

秋子さんがいつもの穏やかな笑みを浮かべて、祐一の言葉を否定した。

・・・・・・・・・

しばしの沈黙。

そんな中、秋子さんは黙って祐一の食べかけのトーストを口に含む。

「なるほど・・・・」

トーストを食べ終わった後、秋子さんは満足げに何かを納得したように頷く。

「うぐぅ・・・どういうこと?」

「どういうことです?」

あゆと栞の言葉に、秋子さんは名雪の作ったジャムを差し出す。

「食べてみて下さい。」

二人はスプーンですくってそのジャムを口に入れ・・・

「うぐぅ!」

「うっ!」

断末魔(死んでないよ!byあゆあゆ)の悲鳴を上げて、あゆは祐一の横に倒れ伏す。

「こ、こんなジャム・・・全世界の敵です・・・」

かろうじて意識のある栞は、それだけ言って意識を失った。

「ま、まさかそれ・・・」

香里が小刻みに震えながら、名雪の作ったジャムを指さす。

「私の作るジャムと非常に味が似ていますね。」

一同は完全に沈黙する。

それはそうだろう。あの材料不明、作り方不明、正体不明の謎ジャムを名雪が作った・・・もとい、作って

しまったのだから。

「・・・やはり子は親に似るものですね。」

美汐がポツリと呟いた言葉は、間違いなくその場の全員の心中を代弁していた。

 

 

その後、割と早く復活した祐一とあゆ(免疫が出来ていたのだろう)を加えて、ジャム以外の料理を食べていった。

名雪の作った謎ジャムは、ほとんど名雪の胃の中に。

「うにゅ、おいしいよ〜〜〜。」

さらに、この時間の名雪の記憶が無かったことは言うまでもない。

 

 

 

 

数日後

「ねぇ、名雪。このジャム食べてみない?」

「え?香里、このジャム何?」

「間違いなくイチゴジャムよ。」

「わ!嬉しいよ!」

ぬりぬり・・・パク・・・・どさっ。

「やっぱり普段の状態じゃ食べれないわね・・・」

 

 

                    おわり

 

 

あとがき

ども、久方ぶりの滝月十夜です。

最近、全然創作系の活動が出来ない・・・

AIRやってドラクエやって・・・受験勉強してたら創作系に集中できない・・・

なんか、文章のまとめ方もちぐはぐっぽいし・・・

どうしたもんでしょう。

ではでは

 

 

 



 ☆ コメント ☆ 名雪 :「ヒドイよ、香里ぃ」(;;) 香里 :「自業自得よ」(−−) 名雪 :「ヒドイよヒドイよ。わたし、何にもしてないのにぃ〜」(;;) 香里 :「よく言うわねぇ」(−−) 名雪 :「うう〜。わたし無実だもん」(;;) 香里 :「あのジャムを作ったの名雪なのよ」(−−) 名雪 :「う、ウソだよ。あんなジャム、わたしが作るわけないよぉ」 香里 :「事実よ」(−−) 名雪 :「うー、覚えてないよぉ〜」 香里 :「覚えてなくても事実なの」(−−) 名雪 :「うー」(;;) 香里 :「やっぱり親子ねぇ」(−−) 名雪 :「え? わたしと香里が!?」Σ( ̄□ ̄;; 香里 :「……………………」(−−) 名雪 :「なーんちゃって」(^^) 香里 :「……………………」(−−) 名雪 :「……な、なーんちゃって」(^ ^; 香里 :「……………………」(−−) 名雪 :「……………………」(^ ^;;; 香里 :「じゃ」(−−) 名雪 :「うー、ごめんよー」(;;)



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