「では皆さん、準備はいいですか」 「ええ、構いませんよ」 「オッケーだよ」 「いいよ」 「準備万端です」 「がんばります」 俺達は宮田家の面々と学園の地下研究所にいる。 なんのためにかって?それは・・・ 「では・・・プラントを起動させます。みなさんサポートお願いします」 ウィィィィィィィィィィィィィィィン 大きな機械が起動した。 ・・・あのおせっかいな奴らを蘇らせるために。 私立了承学園五日目放課後(U)HtHサイド ことは今日の放課後にさかのぼる。 「・・・ですから、まーくんぬいぐるみは生きてるんです」 すべてのことが一段落し俺達が部屋でくつろいでいるとエリアが急にそんなこと を言い出した。 「?、どういう事だ、エリア。ぬいぐるみが生きてるって」 「ですから・・・」 エリアはあの時ここにいたこと、そしてぬいぐるみたちが動き出したこと、 自分を励まし応援してくれたことを話した。 「ふ〜ん、普通はそんなこと急に言われても信じないけど、ここは了承学園、 何が起きても不思議は無いってことか」 「そうですね。あっ、そうだ私あの子達にお礼言うの忘れてました。ちょっと 行って来ます」 「待てよ、俺も行く。なんかおもしろそうだしな。あかねとさくらも行くか?」 「うん」 「いくー」 んでもっておれたちは隣の部屋通称『まーくんの間』に来ている。 ・・・自分で言うととてつもなく嫌な響きに聞こえるが。 「で、エリア。どうやったら動くんだ?」 「え〜と、私もよく分からないんですけど、みなさーん起きてますかー」 部屋のぬいぐるみ群問い掛けるエリア。だがなんの反応も無い。 「あれ?皆さんどうしたんですか?」 エリアは手近のぬいぐるみ取り上げる・・・侍の服を着たやつだ。 「もしもーし、侍誠さん、返事してください」 だが一行の何か動きを取ることはなかった。 「なあエリア、やっぱり何かの間違いじゃなかったんじゃないか?」 「そんなことありません!ぜったいに私は子のぬいぐるみさんたちと話しました!!」 あまりにもエリアが真剣なので俺達はその人形を五月雨堂に持って行く ことにした。この手のことはあそこに任せるに限るからだ。 時は経ち、今は放課後。俺達は五月雨堂にいる。 「・・・てなわけなんだけどどう思う」 俺がそう問うとスフィーちゃんは、 「つまり急にぬいぐるみが動いたり話したりしたってわけね」 「そうです」 「で、どうなんだスフィー。こんなことあるのか?」 「もちろんあるよ」 スフィーは笑って答えた。 「言ったでしょ、物には命が宿るって。特に古いもの、心のこもった物はね。 壷とかみたいなものはただ魔力を持つとかだけど、生き物に似せたもの・・・ ぬいぐるみや人形は自らで意思を持ち、動き出すようになるの」 「じゃあやっぱりまーくん人形は生きてるんだね!で、どうやったら動くの?」 「それは・・・」 急に元気がなくなり目をそらすスフィー。 「・・・何かまずいことでもあるんですか?」 「うん・・・実はね」 スフィーちゃんの話によると、この命を持った人形たちには絶対の『掟』があるらしい。 それは決して人に見られてはならないと言うこと。もし見られた場合、 「「「「魔力を失い永遠に動けなくなる?!」」」」 「うん・・・そうなの」 「じゃああの子達は・・・」 「元の動かぬぬいぐるみに戻ったんだよ」 「そんな・・・じゃあ、じゃあ・・・」 フラリ エリアは倒れかけた。 「おい?エリア、しっかりしろ!」 「うっ、うっ、ひっく、ど、どうしましょうあたしのせいであの子達・・・」 ぽろぽろと涙を流すエリア。 「馬鹿!別にエリアのせいじゃないだろ。あいつらは自分の意思でお前を助けた。 違うか?」 「そうかも・・・しれませんけど・・・」 「だったら気にすることは無いって、それより・・・」 誠は健太郎達の方へ向き直った。 「なあ、スフィーちゃん。あいつらを元に戻す方法ないのか?」 「あの子達の『魂』は別に消えたわけで無く『封印』されているだけよ」 「だったら」 「でもいくらあたしたちの力でもあの数の人形はどうしようもないわ・・・」 まーくんぬいぐるみは一体ではない。その数は1500を超える。 「そんな、じゃあやっぱり・・・」 「・・・あのねエリアちゃん、一つだけ言わせてもらうとあのぬいぐるみ達は幸せだった はずよ?自分達を作り可愛がってくれた人達のために何かしてあげれたんだから。 だったらこのままでも・・・」 「・・・・・・・・」 エリアは無言のまま答えない。変わりに誠が答えた。 「・・・確かにそうかもしれないな」 「そうでしょ?だったら・・・」 「そうかもしれない・・・だからっていって納得できるものでもねえよ」 「誠さん・・・」 「どういうこと?」 「少なくともあのおせっかいな奴らどもに一言言ってやらないと気が済まねえ。 だからなんとしても直す方法見つけてやるさ!」 「誠さん!」 「ま、そう言うんなら何も言わないけど。・・・でも意地っ張りね、素直に『助けたい』 って言えばいいのに」 「うるさいやい」 「まあいいわ、私達も力貸すよ、いいよね健太郎」 「まあね」 「ありがと二人とも。だけどどうすりゃいいんだろ・・・?」 「こう言う時は・・・あの人の力借りるしかないんじゃない?」 「秋子さんか・・・」 今の時刻は午後十一時。 舞踏会も終わり誠達は秋子さんに連れられて研究所にいた。 健太郎さん達も一緒だ。 「秋子さん・・・」 「一応方法は考えておきました。ぬいぐるみ達を蘇らせるんでしょ」 「そうなんですけど・・・どうやって?」 「これを見てください」 秋子さんが指をさす方向には大きな機械があった。 「これは一体・・・」 「これは『プラント』と呼ばれ本来は人工的モンスター『キッズ』を作り出す装置 なんです」 「キッズ?」 「この本を見てください」 そういって秋子さんは一冊の本を手渡す。それは・・・ 「マ・・・マ・・・ト・・ト?なんですこの本、えらく古いですけど」 「それははるか昔・・・もしくは異世界でのとある戦争のお話なんですが、 その本にこれの設計図があったのです。発明者は不明ですが恐らくは本の中に 登場する『純白の聖賢』と呼ばれる人と思いますが」 「でもなんのためにこんなもんを・・・」 「まあ最初は学園の雑用用に開発してたんです。なにぶんこの学校広すぎますから」 「そうなんですか」 「はい。では作戦を説明しますね」 秋子さんがコントロールパネルを叩き何かの画像を出す。 どうやら手順の図解らしい。 「まずスフィーさんたち魔法の使える人で一時的にぬいぐるみの魂の『封印』 を解除します。そしてその間にプラントを起動。まーくんぬいぐるみをあらたなる体を 与えます・・・外観は変わらないでしょうが」 「失敗する可能性は・・・」 「ない・・・とはもちろん言いきれません。ですが私は危険な橋を渡るようなことも しません。私を信じてくれませんか?」 しばし考える四人・・・そして、 「「「「お願いします」」」」 「わかりました。では皆さん準備を・・・」 こうして『あいつら』を助ける計画が始まった。 「Krez……Ji……Hanam…」 四人が呪文の詠唱をしている。 もう二十分が経過した。秋子さんの話ではあと十分・・・ 「みんな、あと少しだ」 「うん、わかってる。Jedem……kras…Von……」 みんな辛そうだ。 くそっ、俺も魔法が使えれば・・・。 くいくい 「まーくん・・・」 気がつくとあかねが俺の袖をひいていた。 「信じましょう?スフィーちゃんたちを・・・そしてエリアちゃんを」 「さくら・・・」 スフィーちゃんは言っていた、『信じることが魔法の力』だと。 信じなくちゃいけないんだったな。 「そうだったな・・・がんばれエリア!スフィーちゃん、リアンちゃん、なつみちゃん!」 精一杯応援する俺。 ・・・・・・・だが無常にも魔法の力は少しずつ弱り始めている。 ユラリ プラントを包んでいた魔方陣が歪む。 やっぱりだめなのか・・・、俺が少しあきらめかけたその時、 「まだあきらめては行けません!」 朗々とした声が当たりに響き渡った。 放課後(V)につづく 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 あとがき どうも、まおんです。 最初は夜から始まってるのに放課後(U)になってますがあまり気にしないで下さい。 とにかく私はまーくん人形を助けると言う形を取りました。 ちょいと長くなったのでこれは放課後(V)に続きます。 ・・・現在の心配はまだ舞踏会が始まってないこと・・・(汗)。 それでは。
 ☆ コメント ☆ セリオ:「……………………」(−−) 綾香 :「なんとか、ぬいぐるみ達を蘇らせる事が出来そうね。      みんな、頑張れ!!」 セリオ:「……………………」(−−) 綾香 :「―――って、どうして、あんたは不機嫌そうな顔をしてるのよ?      ぬいぐるみ達を助けたくないの?」 セリオ:「いえ。そういうわけではありません」(−−) 綾香 :「だったら、どうして?」 セリオ:「わたし……思うんです。      ぬいぐるみさん達は蘇る事を望んでいるのでしょうか?」(−−) 綾香 :「え?」(−−; セリオ:「ぬいぐるみさん達は幸せでした。幸せの中で眠りにつく事が出来ました」(−−) 綾香 :「……………………」(−−; セリオ:「それを……わたしたちのエゴで起こしてしまっていいのでしょうか?      許される行為なのでしょうか?」(−−) 綾香 :「……………………」(−−; セリオ:「つい……そんなことを、考えてしまうんです」(−−) 綾香 :「えっと……と、とりあえず……      次の時間に続いているみたいだから、そっちを先に見てみましょ。      もしかしたら、考えも変わるかもしれないわよ」 セリオ:「そうですね。そうしましょう」(−−)



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