連載小説 私立了承学園
第参百八拾参話 五日目 放課後(3)(To Heartサイド)舞踏会編 前編

 久々の了承投稿〜♪

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 夜――

 夕飯を食べ終え、食後の団欒を楽しむ藤田邸に、
一本の電話がかかってきた。

 プルルルルル……
 プルルルルル……

 ――ガチャ

「もしもし、藤田ですけど?」
「あ、あかりさんか? こんばんわ」
「誠君? こんばんわ。浩之ちゃんでしょ? すぐに代わるね」
「いや、いいよ。あかりさんからみんなに伝えてくれればいいから」
「……みんなに? 何かあったの?」
「ああ、秋子さんから緊急連絡なんだ。
これから、学園の第一体育館で『舞踏会』を開催するから、
参加したい人は、すぐに学園に来てくれって」










 プロロロロロロロ……

 キキィーーーッ!

「よう! 遅かったな、浩之」
 校門前に止まったリムジンを、誠とさくらとあかねが出迎える。
「ああ、わりぃわりぃ。みんなの着替えに手間取っちまってな」
 と、慣れないタキシードのネクタイを直しながら、まず浩之が最初に車から降りた。
 そして、浩之と誠は、お互いの姿を見て……、
「……似合わねーな」
「お互いにな」
 と、苦笑をもらす。
「そんなことないよ。まーくんも浩之さんも、とってもカッコイイよ」
「はい。お二人とも、とても素敵ですよ」
「ははは……ありがとな、さくら、あかね」
「サンキュ……さくらちゃんとあかねちゃんも綺麗だぜ」
「あら、浩之さんってば、お上手ですね」
「えへへ♪ 誉められちゃった」
 と、浩之達がそんなやりとりをしていると……、
「ちょっと、浩之! いつまで待たせるつもり!?
いつになったら、あたし達をエスコートしてくれるのよ?」
 車の中から綾香の声が聞こえてきた。
「おっと、すっかり忘れてたぜ」
 慌てて車のドアを開ける浩之。
 そして、中にいるレディーに手を差し伸べた。
「さあ、どうぞ。お姫様」
「ふふ♪ ありがと、浩之ちゃん」
 浩之は最初にあかりの手を取り、車の外へと導く。
 同様に、他の妻達も外に出てきた。
 10回も同じ事を繰り返す浩之は、結構大変である。
「それじゃ、改めてこんばんわ」
 あかりは軽くドレスのスカートを持ち上げると、優雅におじぎをする。
 それに続くように、他の妻達もご挨拶。
「あ、ああ……こ、こんばんわ」
 美しいドレスを着た10人の美女達を前に、さすがの誠もドギマギしてしまう。
 そして、それを見逃さなかったのが綾香だ。
「あら〜? どうしたの、誠〜? 顔が赤いわよぉ」
「や、やかましいっ! ほら、サッサと行こうぜ!
他の奴らはもう全員集まって、とっくに始めてんだからな!
サッサと行かねぇと、料理が無くなっちまうぞ!」
 と、照れ隠しにそう言うと、誠はクルッと背を向けて、スタスタと会場に歩いていく。
「ふにゃ〜ん! まーくん、待ってよぉ!」
「待ってくださーい!」
 それを追うさくらとあかね。
「おい、ちょっと待て、誠」
「あ? 何だよ?」
 と、浩之に呼び止められ、誠はイライラした様子で立ち止まる。
 どうやら、料理が無くなると、自分で言ってて心配になってきたようだ。
「志保の奴、知らねーか?」
「あいつなら、もうとっくに来てたぜ」
 と、訊ねる浩之にそう簡潔に答えると、誠は足早に体育館へと行ってしまった。
「……さてと、それじゃあ、俺達も行くとしますかね」
 体育館へと走っていく誠達に浩之は軽く肩を竦めると、後ろにいるお姫様達に振り返る。
「うん♪」
 浩之の言葉に頷き、素早く浩之の腕に抱きつくあかり。
「…………(ポッ☆)」
 それに続き、芹香は反対の腕を取る。
「あっ! あかりはともかくとして、姉さん、意外と素早いわね!」
「……
ぶいっ
 ちょっと得意気にVサインを出す芹香。
「ちゃんと順番やで。体育館に着くまで一人3分交代や」
「「「「「「「「「はーい♪」」」」」」」」」
 体育館までの距離と時間を素早く計算し、仕切る智子。
 その智子の言葉に、元気良く返事をする藤田家妻一同。
 そんな愛しい妻達の様子を見て……、
「やれやれ……ったく、しょうがねーなー」
 と、浩之は優しく微笑むのであった。










 さて、舞踏会会場である体育館へとやって来た浩之達。

 入り口で出迎えたフランソワーズに案内され、中に入ると、
その内装の艶やかさに一同は感嘆のタメ息を吐いた。

 フロアの床全体に敷かれた真っ赤な絨毯――
 天井から吊り下げられた豪華なシャンデリア――

 舞台上では、ガディムの指揮の下、楽器を構えたラルヴァ達が、
優雅かつ落ち着いた音楽を奏で、そんな中、会場の一角に設けられたカクテルバーでは、
フランク長瀬がグラスを拭いて、何とも大人の雰囲気を醸し出していた。

「……スゲェな」
「そうだね……」

 元々が体育館だとは思えぬその変貌ぶりに、
藤田家一同は唖然としつつ、周囲を見回した。

 どうやら、自分達以外のメンバーはすでに来ているようだ。

 中央のダンスホールを囲うように置かれた、
真っ白なテーブルクロスがかけられた丸テーブル。
 その上に並べられた豪勢な料理を食べながら、談笑する皆の姿が目に入る。

「それでは、皆様、ワタシはこれで失礼させていただきます。
ダンスまではもう少し時間がありますので、それまではごゆるりとご歓談をお楽しみください」
 そう言って、浩之達におじぎをすると、
フランソワーズはいそいそとその場を立ち去った。
 自分の役目は終わったので、誠達のところに行くのだろう。
「ああ、フラン、サンキュ、な」
「ありがとう、フランちゃん」
 そんなフランソワーズを軽く手を振って見送ると、
浩之達は顔を見合わせる。
「で、取り敢えずどうする? ダンスの時間まではまだあるって言ってたし……」
 と、浩之が皆に訊ねた、その時……、

「あっ! マルチちゃ〜〜〜んっ!」

 どこからか、マルチを呼ぶ声が聞こえてきた。
 見れば、少し離れたところに相沢家一同がテーブルを囲んでおり、
そこであゆが手を振っている。
「あっ! あゆさんです」
 それを見たマルチはパッと顔を輝かせると、あゆのところへ向かおうとする。
 が、途中で足を止めて……、
「あ、あの……浩之さん」
 と、浩之に訊ねるような視線を向けた。
 そんなマルチに、浩之はニッコリと笑って頷く。
「ああ、いいぜ。行って来な」
「は、はいっ!」
 浩之の言葉を聞き、嬉しそうにあゆのところへと走るマルチ。
 しかし、慌てていたのだろう。

 ――こてっ!

「は、はぅ〜……」

 ドレスの裾を踏んで、前のめりに転んでしまった。

「マ、マルチちゃん、大丈夫っ!」
 転んだマルチを助け起こそうと、マルチに駆け寄るあゆ。

 だが……、

 ――こてっ!

「うぐぅ〜……」

 あゆもマルチと同じようにして転んでしまった。

 二人とも、何とか自分で立ち上がり、ようやく合流する。
 そして、涙目になりながらも、お互いぶつけてしまった鼻の頭を擦り合う。

「あゆさん、大丈夫ですか?」
「うぐぅ、マルチちゃんこそ大丈夫だった?」

 二人とも、自分のことよりも、まず相手の事を心配している。
 何とも微笑ましい光景であった。

「何やってんだか」
 そんな二人の姿に苦笑しつつ、浩之は他の妻達に向き直る。
「なあ、みんな、マルチを見て思ったんだけど、
この舞踏会って、もしかしたら他のクラスとの交流をより深める為に
開催されたんじゃねーかと思うんだけどさ……」
 浩之が言うと、綾香と智子が賛同する。
「あ、やっぱり浩之もそう思った?」
「なんや? 綾香さんもか? わたしもそう思うとったトコや」
 と、頷き合う三人に、他の一同は首を傾げる。
「あの、浩之さん、何を仰りたいのですか?」
 訊ねるセリオに、浩之は少し言い難そうに答える。
「あー、ようするにだな、ここは皆バラバラになって、
他のクラスの連中のトコに行くのも悪くねーんじゃねーかな、ってな」
 と言う浩之のに、ほんの一瞬だけ顔をしかめる妻一同。
 やはり、浩之と、皆と一緒に居たいという気持ちもあるのだろう。
 しかし、たまにはそういうのも悪くない。
 現に、周囲を見回すと、他のクラスの面々も、ほとんどバラバラに行動している。
 参加者全員が、この舞踏会が開催された意味を理解しているようだ。
「そうだね。じゃあ、そうしようか」
 真っ先に同意したのはあかりだった。
 それとほぼ同時に、他の一同も頷く。
「じゃあ、Danceの時間になるまでFreetimeネ!」
「時間になったら、ここに集合や。藤田君と踊る順番決めなあかんからな」
「「「「「「「「はーいっ!」」」」」」」」
 またしても仕切る智子の言葉に返事をしつつ、
妻達はそれぞれ思い思いの場所へと散っていく。
「じゃあ、藤田君。マルチにはわたしの方から話しとくから、
藤田君は藤田君で楽しんで来てぇな。でも、時間に遅れたらアカンで」
 最後に残った智子のもまた、そう言い残して歩いていった。

 そんな妻達の後ろ姿を見送りつつ……、

「さてと、俺はどうするかな?」

 と、浩之は会場をクルリッと見回した。




















 さて、ここで皆さんに質問です。
 浩之は、どこへ向かったと思いますか?

 次の選択肢から選んでください。

1.オーケストラ隊のところへ行く。
2.カクテルバーへ行く。
3.立食テーブルの方へ行く。
4.体育館の外へ行く。






<中編に続く>
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<あとがき>

 というわけで、久々の投稿は『舞踏会編』です。
 今回はちょいと分岐式にしてみました。

 では、中編へれっつらごー♪

 でわでわー。



 ☆ コメント ☆

セリオ:「『ぶとうかい』と言えば……」(^0^)

綾香 :「武闘会……ってオチは無しね」(−−)

セリオ:「……………………」(−−)

綾香 :「……………………」(−−)

セリオ:「……………………」(−−)

綾香 :「……………………」(−−)

セリオ:「……………………」(−−)

綾香 :「……………………」(−−)

セリオ:「綾香さんのイジワルぅ〜〜〜〜〜〜」(;;)

綾香 :「ホントに言うつもりだったんかい」(−−;




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