「ううう…………」 あたし、新城沙織は今、最大の危機を目の前にしてます。 ……怖いよぉ。下手なお化け屋敷とか、月島先輩の電波なんかよりずっと。 でも、誰も助けてくれない。 誰も、目の前の'これ'から、あたしを救ってくれない。 祐君、助けてよぉ。 いつもみたいに、あたしを助けてよぉ………。 長瀬家 五日目 ニ限目                         キヅキ作  「つー訳で、この時間は健康診断だ」 教室に入って開口一番、サラ先生はあたし達にそう言った。 「ええ〜〜! ちょ、ちょっと待ってよぉ〜!」 その言葉に、あたし慌てたように反応する。 「なんでそんなものがあるの? 大体、そんなのがあるんだったらもっと前もって ………」 「しょうがないだろ? 『抜き打ち』って理事長に言われてるんだからさ」 あたしの正当な抗議の言葉をさえぎるようにして、サラ先生は言う。 「それとも……何か都合の悪い事でもあるのか?」 「べ、別になにも!」 ないわけない! 健康診断なら、きっと'あれ'がある! 「……でも」 うう…。都合悪いか、なんていわれると、なにも言えないじゃない! 「み、みんなはどうなの!? もちろん反対だよね!」 そうよ! あたしだけじゃない、他のみんなだって嫌に決まってる! でも、あたしのそんな淡い期待はあっさり壊された。 「いいんじゃない? 健康診断。最近診てもらってなかったしね」 「そ、そんなぁ〜」 香奈子ちゃんはなんか乗り気だし………。 「私も、別に構いませんよ」 「みずぴーまで〜」 みずぴーも反対じゃないみたい。 なんでぇ〜! 「ね、ね。るりるりは反対だよね?」 こうなったら、るりるりに望みをかける! 「私は……かまわないよ……」 …こう言う事に、るりるりが頓着するわけないか……。 「? 何で沙織ちゃんはそんなに嫌がるの?」 そんなあたしをみて、祐君は不思議そうな顔をしている。 もう! 祐君って、こう言う所は鈍いんだから! 「ううぅぅぅぅぅぅ………。なんで? なんでみんなは我慢できるの!?」 「あ、それ、あたしの台詞……」 香奈子さんのつっこみも無視して、あたしは頭を抱えた。 なんで!? ど〜して!? みんな、乙女の恥じらいってものは無いの! 「おらおら、往生際が悪いぞ。…つっても、別にお前らの了解をとる必要も無いん だけどな」 「え? それってどう言う……」 あたしが最後まで言い終わる前に、教室全体が輝き始めた……。 秋子さん特製空間転移装置で保健室に飛ばされて、あたしはしかたなくいろんな検 査をした。 耳鼻科、レントゲン、心臓検査………。 でも、あたしが怖い'あれ'は始まらない。 ………今日はないのかな? あたしが思った、今日二つ目の淡い願いも、メイフィア先生のやる気のなさそうな 一言であっさり壊された。 「はいは〜い。んじゃ、今から身体測定もするから、全員脱いだままこっちきて〜」 もう、だめだ…。 あたしはその瞬間、心の底からそう思った。 ………あたしは、身長はそんなに低い方じゃない。 お腹もそんなに出てないし、胸は正直自信があるほう。 でも………。 「お〜い。沙織。早く体重計に乗ってくれ」 メイフィア先生があたしにものすごいプレッシャーをかける。 そう、あたし…ちょっとだけ重いの。 あくまでちょっとだけね! ちょっとだけ! 最後に測ったときは52kgだったけど…。 うう。こんな事なら、朝に祐君のカレーおかわりしなければよかった。 …一晩寝かせたカレー、美味しかったなぁ…。 何てこと考えてる場合じゃない! あたしの頭は今、限界ぎりぎりまでフル回転してる。 ……泣きつく。 だめ、そんな事したらひねくれもののメイフィア先生の興味を煽っちゃう。 ……今やせる。 そんな事できたら苦労しないよね。 ……誰か(特に祐君)に助けてもらう。 でも、祐君は心臓検査の時の、あたし達の着替え見て倒れちゃったし……。 どうしようどうしようどうしよう。 って、あたしの頭がショートする寸前、誰かの声が聞こえてきた。 「……しょうがない。舞奈、手伝ってやれ」 「はい」 「ああっ! 悪の魔女の手下その一があたしに近づいてくるっ!」 「だれが悪の魔女か!」 「私は手下その一じゃありません!」 あたしの言葉に、悪の魔女とその手下は一緒になってつっこんできた。 そしたら悪の魔女はあたしから目をそらさず、手下に命じた。 「舞奈ぁ……なんか今の発言にすっごくむかついたから手加減無用な?」 「はい、私もちょうどそう考えていました」 そう言って、なんだかそーぜつに笑ってあたしとの距離を詰めてくる悪の軍団。 しかも、なんか手をわきわき動かしながら。 ええっと……。 この魔女と手下は乙女の純情を暴こうとしていて、それであたしはそれから逃げようと してるんだよね。 だから、あたしは被害者なんだよね。 あたしは……悪くないんだよね。 …なんだ、簡単な事じゃない。 なんで今までこんな事必死に考えてたんだろ。 なんだか、笑いがこみ上げてくる。 そしてその瞬間、あたしは飛んで、叫んだ。 「ひぃのたまぁ…………すぷぅぁぁぁぁぁぁぁいくぅぅぅぅぅっ!!!!」  追記、 「………結局壊されるの? あたしの職場」 乙女パワー(?)によって半壊した保健室の瓦礫の中、悪の魔女はそんなようなことを 呟いた。 〜あとがき、というか独白〜 ども、キヅキです。 ………なんか、最近どつぼにはまってます。 なんて言うか、頭に浮かんでくる言葉がえらくまとまらないんです。 ……無理して文体を改造しようとしたのが悪かったのかもしれません。 それに、女の子の一人称は不慣れなもので、結構変かも…(汗) ……昔の小説、読み返して初心に帰ろう…。 まぁそういうことで、それでは。
 ☆ コメント ☆ 綾香 :「わかるわ、さおりん。あれは怖いわよねぇ」(;;) セリオ:「ふっ」ヽ( ´ー`)ノ 綾香 :「むっ。なによ、その余裕の表情は?」(−−) セリオ:「わたしは、体重計なんか怖くないですもーん」(^0^) 綾香 :「そりゃー。あんたはそうでしょうよ」(−−) セリオ:「増えたりしないもーん」(^0^) 綾香 :「む、むかつくわねー」凸(ーーメ セリオ:「いつも同じだもーん。      その証拠に……ほら、体重計に乗っても……って、あれ?」(−−; 綾香 :「ん? どしたの?」 セリオ:「……ふ、増えてる。……な、なんで〜〜〜っ!?」(;;) 綾香 :「おいおい」(^ ^; セリオ:「ふえーん。ふとった〜〜〜。      あーーーん、体重計が怖ーーーい!」(;;) 綾香 :「あんた、どんどんロボットから離れるわね」(^ ^;



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