私立了承学園  5日目 放課後2 その他(でいいのかな?) すたすたすた・・・。 一人の女子生徒が了承学園の廊下を歩いていた。 まぁ、それ自体は何でもないことなのだが、彼女のことを知っている人ならば少々驚くかもしれない。 彼女が一人でいることは珍しいといって差し支えないからだ。 川澄舞。 いつもいっしょに行動している倉田佐祐理は、彼女とは別行動をとっていた。 「・・・・」 無言で歩いている(一人で歩いていたらたいてい無言だろうが)舞が歩いている先には十字路がある。 その十字路に差し掛かるのがほんの十秒でもずれていたら、 あるいは今回の騒動は起こらなかったのかもしれない・・・。 同時刻。 舞と同じ十字路にさしかかろうとしている女子生徒がいた。 その女子生徒――来栖川芹香は、本を読みつつ歩いている。 二人はお互いの存在に気づくことなく進んでいき、 ドスン! ぶつかった。 ちなみに音は芹香が廊下に倒れた音である。 「・・・・」 「・・・・」 ぶつかったのにもかかわらず、お互いにまったく声を出さなかった。 「・・・・」 その代わりに、舞が倒れた芹香に無言で手を差し伸べる。 「・・・・」 やはり無言でその手を取り、立ち上がる芹香。 「・・・怪我、ない?」 二人の間でようやく交わされた言葉も、そんな簡潔なものだった。 「・・・・」こくっ。 うなずく芹香。そして、 「ありがとうございました」 小さな声でそう言った。 「・・・別にたいしたことじゃない」 少し照れながら、舞が落ちていた本を拾う。 「・・・新版黒魔術大全?」 いかにもな本だった。 「はい・・・あの・・・」 芹香が勇気を振り絞るかのように言う。 「オカルトに興味はおありですか?」 「・・・・」 二人はオカルト研究会の部室にいた。 「・・・部員は?」 部屋の中にはほかの人影は見当たらない。 「・・・・」 「・・・目に見えないけどたくさんいます?」 「・・・・」こくっ。 「・・・30人くらいいる」 舞の言葉に芹香は驚いた顔をする。(といってもあまり変化はないが) 「見えるのですか?」 こくっ。 舞はうなずき、続けていった。 「私は魔物を討つものだから・・・」 「そうなんですか」 微妙にかみ合っているようでかみ合っていない会話だった。 「・・・・」 「・・・これをどうぞ?」 「・・・・」こくっ。 芹香が差し出したのは、いわゆる魔女ルック(帽子と黒マント)だ。 暗い部室の中で、魔女ルックに身を包みつつ沈黙を守っている美少女二人。 なんだかとてもシュールな光景だった。 がきんっ! 時々何もないところで音がしたりするが。 「・・・・」 「今日は、今までの活動をお話します?」 「・・・・」こくっ。 「わかった、聞く」 「前の学校では、普段は様々な本を読んで知識を深めたり、占いやオカルトに 関係のある遊びを、ある特別な日になると降霊術や召喚などをしていました。 他には薬を作ったり、魔法を試したりなどの活動をしていました」 「・・・この学校では?」 「霊的な濃度が高いため、降霊術や召喚をいつでもすることができます。 とはいえ、頻繁にはやりませんが・・・」 「・・・占い」 「はい・・・」 そして棚の中からタロットカードらしきものを取り出す。 しゃっ、しゃっ、しゃっ・・・。 カードを切る音があたりに響く。相当手馴れている手つきだ。 「・・・・」 ぴた。 動きが止まる。 「・・・・」 「とても素敵なことが起こり、いろいろな人と仲良くなれるでしょう?」 「・・・・」こくっ。 ばたんっ!! その時、部室のドアが開け放たれた。同時に、一組の男女が入ってくる。 「耕介さん!!ここです!!」 「くっ、本当だ・・・これだけの数がいるなんて・・・」 部室に入ってきたのは、槙原家の槙原耕介と神咲薫だった。 手には霊剣「十六夜」と「御架月」がそれぞれ握られている。 十六夜と御架月は耕介たちに続いて部室に入ってきた。 「どうする?薫」 「大丈夫ですよ、耕介さん。ここの霊たちは悪意を持っていませんし、まだ霊障も起きていません。 ただ、確かにあまりにも大きな力が集中していますが・・・」 「耕介様。あまりあせってもいい考えは浮かばないですよ」 「ああ、わかってる・・・けどこれだけの霊がいるといざという時にとてつもない力になる・・・」 「あの、それよりもまず説明をしておいたほうがいい気がするのですが・・・」 「・・・理由」 「「「えっ!?」」」 舞の声に反応して、三人は振り向いた。 「ここにきた理由」 「あ、すまなかった。いきなり説明もなしに騒いで」 「す、すみません・・・」 「すみませんでした・・・耕介さん、 別に一刻を争うというわけでもないですし、わけを説明してからにしましょう」 「うん、そうしようか」 「まったく・・・薫も耕介様も御架月も、みんなそそっかしいんですから・・・」 「私たちは、退魔師という・・・まぁ、一種のお払いをする仕事なんです」 「それで、ここの部屋から大量の霊を感じたから、調査に来たんだよ。 今のところは実害ないけれど、この霊たちが悪意を持てば危険だからね。 今は何の問題もないけれど、ここにはこれからどうなるかわからない、 とてつもなく大きな力が集まっている。様子ぐらい見ておかないと・・・」 「このような事態はあまりないのですが」 「えっと・・・何か呼び寄せるようなものがあるのではないでしょうか?」 「・・・・」 芹香がボソッと小さな声でしゃべった。 「「「え?」」」 その言葉を聞き取ることができず、耕介と薫、それに御架月は聞き返す。 「みんなお友達です、って言ってる」 「お、お友達・・・」 「・・・・」こくん。 芹香の言葉に、耕介たちは戸惑った。 「本当なのかな?(ひそひそ)」 「確かに妙な説得力がありますけど・・・(ひそひそ)」 「はい。彼女にも常人とは違う力が備わっているみたいです(ひそひそ)」 「わたくしも、あのような力を持ったお方は何度か見たことがあります(ひそひそ)」 「では姉様、信用できるということですか?(ひそひそ)」 「はい、おそらく(ひそひそ)」 『なんじゃなんじゃ、信用できないってか?』 突然、部室にいた霊の一人が実体化ししゃべった。 「・・・・」 「じ、実体化した・・・」 通常、霊は思念体としてこの世にとどまっている。 その思念体の状態では、霊気を消費することも少なくてすむが、人の目に触れることや 人とはなすことはできない。(霊気が通常よりある人、それを感覚として感じられる人は別) 実体化した姿は・・・なんというか・・・番長(古代精霊語)だった。 詰め襟の学ラン(ぼろぼろ)半分ちぎれた学生帽、竹串をくわえた口等など・・・。 さらに極めつけは、『わがマドンナ七●(読めなかった)』などと縫い付けられていることだ。 はっきりいって、天然記念物状態とさえ言えるスタイルである。 まあそれはともかく、実体化した姿もだが、実体化すること事態も驚きだった。 十六夜や御架月などは、耕介と薫から霊気を供給されて実体化している。 それをあろうことか、自力でやっているのだ。 物付き以外でも地縛霊ならば実体化できるが、それはその場所に強く思いを残している場合である。 この了承学園の敷地は特殊だ。地縛霊とも考えられない。 「ど、どうやって実体化してるんですか?」 御架月が驚きながら聞いた。 『ふふふ・・・それはな・・・』 そこで一度息を吸い、一拍あけて 『根性じゃーーーー!!!!』 とさけんだ。 ぱちぱちぱちぱち・・・・。 多少、問題があるような気がしないでもないが、とにかく散発的な拍手がもれる。 「か・・・かっこいい・・・」 御架月は心を奪われていた。 「・・・・」 『おう?今なんて言ったんでぇ、芹香嬢』 「あまり大きい声を出さないでください、といった」 『おお、そいつはすまねぇな。ガハハハ』 「あらあら、元気なのは良いことですね」 「十六夜さん、それはちょっと違うような気が・・・」 「耕介さん」 「何?薫」 「耕介さんも、昔ああだったんですか・・・?」 その目には、なんと言うか、落胆のような気持ちが現れていた。 「え!耕介様もあんな風だったんですか?」 薫とは反対に御架月の目は輝いている。 「ちがう!!なんでそうなるんだ!!」 「千堂から聞いたんですが・・・」 「く、瞳のやつ。黙ってろって言ったのに・・・」 「え、じゃあやっぱりあんな風だったんですか?」 御架月の目が光を取り戻す。 「ちがぁ〜う!!俺はなぁ・・・」 そして耕介の言葉は延々と続いた。 「あらあら、まあまあ」 その中で、十六夜はとても楽しそうだった。 「他にも変わった人たちいっぱいいる・・・」 「まだまだたくさんのお友達がいますよ」 『ガーハハハ、そろそろ疲れたので戻るとするかっ!それではなっ!』 「はい、お元気で」 御架月に手を振り、番長も思念体に戻った。 「さて、結局ほうっておくってことか」 「はい。それにこの学園ならたいていのことは大丈夫でしょうし。安心して良いでしょう」 「それじゃあ、俺たち結局なんだったんだろうな・・・」 「・・・・」 「平和が一番です、っていってる」 「・・・確かに」 「そうですよ」 「ええ。争い事はないに越したことはありません。己の鍛錬である勝負はなら別ですが」 和やかな談笑の中、時間は過ぎていく。 とどまることも無く・・・。 「ところで、何故幽霊になったんでしょうね?」 「・・・閻魔大王にもどれって言われたから」 「いや、それはないと思いますが・・・」 「この世界に心残りがあったのでは?」 「きっとそうですよ、何か大切なことをやり残したんです」 「・・・恋とかいうオチはないだろうな。マドンナとか縫い付けてあったけど」 「あらあら、恋がかなわなかったら大変ですねぇ」 「いくらなんでも・・・な」 終わり  あとがき DILMです。 皆さんに賛成の意見をいただきうれしい限りです。 しかし、なんだか妙に番長の評判が良いような(^^;;;ちょっと意外でした。 まだまだ精進するべき点もたくさんありますが、どうかよろしくお願いします。 それと、掲示板に乗せたのと多少変化してあります。問題は無いと思いますが。 続きがありそうですが、特に今のところ考えていません。別に続きが無くても大丈夫だと思います。 わざわざ名前出さなくてもわかっていらっしゃると思いますし。 それでは。
 ☆ コメント ☆ 綾香 :「……霊と友達」(^ ^; セリオ:「さ、さすがは芹香さんですね」(;^_^A 綾香 :「ま。『了承学園』の世界だったら、極々普通のことなんだろうけど」(^ ^; セリオ:「あ、あはは」(;^_^A 綾香 :「でも、『霊と友達』に限っては、やっぱり姉さんの専売特許かな?」(^ ^; セリオ:「幽霊が苦手な人もいますからね」(;^_^A  ・  ・  ・  ・  ・ 沙織 :「イヤー。おばけ怖いぃ〜〜〜」(T△T) 芹香 :「優しい方ばかりなのに。……沙織さんの右となりにいる方なんて特に……」(´`) 沙織 :「み、み、み、み、み、み、み、み、み、み、右ぃ〜〜〜!?      にょえ〜〜〜っ! イヤイヤイヤ〜〜〜〜〜〜!!!!!!      ひ〜の〜た〜ま〜すぱ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いくっっっっ!!!!!!」(T△T) 芹香 :「…………あなたの方が怖いです(汗)」(´`)



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