私立了承学園
5日目 4時間目 Heart to Heart

作成者:ERR

 昨夜のエリアのふとした言葉から発生した問題も無事解決し、誠達五人は昼食及び 夕食の買い出しのために商店街地区を歩いていた。  授業担当がエリアで課題が自習である辺りに作為的なものを感じるが、今更そんな ことを気にかける者はいなかった。 「四人がかりの昼飯かぁ、楽しみだぜ」  買いこんだ大量の食材を両手に提げて嬉しそうに言う誠。 「はい、楽しみにしてて下さいね♪」 「腕によりをかけてつくるから♪」  そんな誠にさくらとあかねは笑顔で応えた。 「フランさん、やっぱり一つ持ちますよ」 「大丈夫です。お心遣い感謝します、エリア様」  買いこんだもののほとんどは誠が持っていたが、それでもフランソワーズの荷物は さくらやあかねより少し多くなっていた。そんな彼女を心配してエリアは手伝うと申 し出るが、フランソワーズなりに譲れない部分があるのか、やんわりと微笑んでエリ アの申し出を断った。 「「あ…」」 「ん、どした?」  他愛のない話に花を咲かせ、帰路につく誠達だったが、突然さくらとあかねが歩み を止めた。誠はそんな二人を怪訝な表情で見やる。 「すみません、まーくん」 「あたし達、ちょっと買い忘れたもの思い出しちゃった」  一瞬の間の後、二人は申し訳無さそうに言った。 「後でじゃダメなのか?」 「ええ、今のうちに済ましておいたほうがゆっくりできますし」 「だからまーくんはエリアさんとフランちゃんと先に帰っててよ、すぐ追いつくから」  再び、一瞬の間があり、 「そっか、解った」  少し釈然としないものはあったが、深く問うことはせず、誠は頷いた。 「ありがと、ゴメンね」 「すぐ済ませて帰りますから」  もう一度申し訳なさそうに言って、さくらとあかねは駆け出した。  誠達はしばらくその場で二人を見送った。 「買い忘れたものってなんでしょうね?」 「さぁ? ま、別にいいだろ、言いたくないものかもしれないし」 「そうですね」  それ以上考えることはせず、誠達は再び歩き出した。  そこでふと、エリアは思う。 (あっ…今はさくらさんもあかねさんもいません…)  そう思うと妙に意識してしまい、顔がほんのりと赤くなるのが解る。  今までならここで終わってしまうところだが、今は違う。  エリアはうん、と頷くと、おもむろに誠の腕に自分の腕を絡めた。 「う、うおっ!?」 「ぁ……」(ポポッ☆) 「え、エリア?」 「は、ハイ!?」 「あー、その、なんだ…」 「は、はい」 「…しょーがねぇなぁ…」 「は、はい」  全く意味を成していない会話をする誠とエリア。そんな二人を嬉しさ半分、羨まし さ半分の表情で一人蚊帳の外のフランソワーズは見つめていた。 ----------------------------------------------------------------------------  さくらとあかねは先ほど視界の隅にとらえた人物、ルミラを追っていた。  一言謝るために。  さくらとあかねも馬鹿ではない。  2時間目の段階では冷静さを失っていたが、今この状況であれば解る。  昨晩予告状を出しておきながら、エリアの所へルミラが現れなかったことの意味が。  紆余曲折あったものの、今は問題は解決しているし、何よりもエリアは悩んだ末、 自ら幸せに向けて歩き出した。  ルミラはエリアのために自分が汚れ役になってまできっかけを作った。  つまりはそういうことである。  それを解さず、一時の感情に押し流されてルミラを攻撃してしまった。  だから、謝ろう。  どちらが言い出したわけでもないが、二人は前時間終了時にお互いそう考えていた。  小さなおもちゃ屋の角を曲がり、騒々しいゲームセンターの前を過ぎ、喫茶店の前 でようやく二人はルミラに追いついた。 「「ルミラさん!!」」  二人は同時に叫んだ。 「ん? あら、どうしたの?」  名を呼ばれ、首だけ振り返るルミラ。彼女の右手には小さな手が握られていた。み ずかである。  みずかはさくらとあかねにちょこんとお辞儀をした。二人もそれに微笑みで応じる。 そしてすぐにルミラに顔を向けなおす。 「誠君は一緒じゃないの?」 「はい」 「まーくんは関係ないですから」 「あらあら。それでなんの用かしら? 見てのとおりお守の途中なんだけど」  いつも通りの微笑のルミラに対し、真剣な表情のさくらとあかね。  しばしの沈黙。  やがて二人は意を決して頭を下げた。 「「ごめんなさいっ!!」」  謝罪の言葉と共に。  ルミラは変わらぬ微笑のまま、そんな二人を見つめていた。みずかは「ほぇ?」と いう擬音が似合いそうな顔をしていた。  頭を上げようとしない二人に、やがてルミラは口を開いた。 「何について?」 「「へ?」」  ルミラの言葉が予想外だったのか、少々間の抜けた表情と返事を返してしまう二人。 「いやだから、何について謝ってるの?」 「何についてって…」 「だって、2時間目に酷いことしちゃったから…」 「あー、そのこと。それなら謝る必要なんて無いわよ、悪いのは私だったんだし」  苦笑しながら二人の言葉をルミラはさらりと流す。 「ルミラさんは悪くないです!!」 「そうだよ、エリアさんのためにやったんだから!!」  白を切ろうとするルミラにやや興奮気味に二人はまくしたてる。 「エリアのため? なんのこと? 私はただエリアの血を狙ってただけだけど?」 「だったら、なんで昨夜来なかったんですか?」 「だって、あれだけ苦手なものそろえられちゃったらねぇ」  確かにあの時、誠はルミラの苦手なものを一式揃えていた。そのために来られなか ったのだと言われてしまえば反論の余地はない。 「用事はそれで終りかしら?」 「…はい」 「…うん」  謝罪の気持ちを受け取ってもらえなかったため、やや気落ちして返事を返す二人。  そんな二人にルミラは優しく声をかける。 「後でちゃんと謝りに行こうと思ってたんだけどね、折角だからこの機会に謝ってお くわ。ゴメンね二人とも。誠君とエリアにもよろしく言っといてくれるかしら?」  言い終わると、ルミラはほけーっとしているみずかの手を引いて歩き出した。  が、すぐ歩みを止め、まだ黙って突っ立ったままの二人に顔を向け、一言。 「あーそれと、もう私は誠君とエリアの血は狙わないから」  そして、本当にその場を後にした。  離れていくルミラとみずかの後姿をただ黙って見送るさくらとあかね。  何を言うべきか、自分達はどうするべきか、二人は考えていた。  数瞬の間に、思考力を総動員して考えた。  そして、答えを見つけたのか、二人は同時に叫んだ。 「「ありがとうございました!!」」  と。  二人に顔を向けることはせず、ルミラはただ左手をやる気なさげに上げて応じた。  それを見てさくらとあかねはお互いに顔を見合わせ、静かに笑った。 「わっ、あかねちゃん、結構時間を使ってしまいましたよ!!」 「大変! エリアさんとフランちゃんにまーくん取られちゃうよ!!」 「急ぎましょう!」 「うん!!」  いつもの調子を取り戻し、誠達の待つ場所へと駆け出す二人。  暖かな陽射しが気持ちいい、のどかな午後の出来事だった。 <おわり>
 ERRです。  余計なことかなー、とか思いつつ、やっぱりやってしまいました(^^;  2時間目及び3時間目を見てもさくらとあかね、殴りっぱなしでしたし。  みずかがルミラと一緒なのは…まぁ、気にしないで下さい(笑)
 ☆ コメント ☆ 綾香 :「う〜ん。ルミラさん、かっこいいわね」(^^) セリオ:「なんか……大人の女性、って感じです」(^^) 綾香 :「うんうん」(^^) セリオ:「元々お美しい方ですから、このままならファンも急増しますよ、きっと」(^^) 綾香 :「そうね」(^0^) セリオ:「はい」(^0^) 綾香 :「ルミラさんって、黙ってれば美人だし」(^^) セリオ:「……………………(ノーコメント)」(;^_^A 綾香 :「でもさぁ」(−−) セリオ:「ん? なんです?」(・・? 綾香 :「結局は『蚊』なんだけどね」(−o−) セリオ:「……………………(ノーコメント)」(;^_^A



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