「…………………」
「わ〜、わ〜、わ〜、ちょっと〜、火を止めて〜!」

「…………………」
「ゴホッ、ゴホッ、煙たいよ〜」

「…………………」
「コラ!みさき、やめなさい!」

「…………………」
わぁわぁ、きゃっきゃっ♪

「…………………」
「あはは〜、なんか大変だね〜」

「…………………」
「…………………はぁ」

「…………………」





「…………地獄絵図だ」






私立了承学園 5日目 放課後(3) ONEサイド   作者:マサ






「なんでこんな状況になるかなぁ……」

うなだれながら、俺は呟いた。
あたりを見回してみると………


留美が焦げた鍋を持って慌て、
瑞佳はそれを何とかしようとするが、結局どうすることもできずに逆に煙を吸いこんでむせている。
みさき先輩はそんな状況にもかかわらずつまみ食いのためにあちこちに手を伸ばし、
そんなみさき先輩を、深山先輩がとがめている。
さらに、ちびちびシスターズ(澪、繭、みずか)はクリームを顔につけながら部屋の中を走り回り、
また、こんな状況においてでもなお詩子はあっけらかんとしていて、むしろ楽しんでいるようだ。
そんな中、茜は一人で黙々と作業を続けていた。ここらへんはさすが茜である。

……とまあ、ずらずらと述べてきたが、一言で言うと、悲惨な状態だ。



「はぁ…………」

思わずため息が漏れた。
なんでこんなことになったのだろうか…………



事の始まりは……1時間くらい前だったかな……

……………

………

















俺達は新たに瑞佳の猫コレクションに入った仔猫のために、買出しに出かけた。
もちろん、ほかにも猫が8匹いるため、買いだめしていたものは十分あった。
しかし、その猫には合わないらしくそれらでは対応できなかったらしい。
まぁ、仔猫だしな(←実際は違います)


買出しのメンバーは、瑞佳、茜、詩子、そして俺である。

ちなみに、子供達(みさき先輩含む)のお守りは留美に任せてきた。
家を出てくるときに、何か唸り声が聞こえた気もするが、無視してきた。
きっと疲れていたのだろう。


俺達は雑談を交わしながら、了承学園内にあるペットショップに向かった。
そこでで必要なものを一通りそろえた後、俺達はどこによるのでもなく、まっすぐ家路についた。

その帰り道…………






「あれ?」

やっと自分達の家に着こうかというところで、見知った顔を見かけた。

「ん?どうしたの、浩平?」

「いや、あそこにいるのって、南条先生と城島じゃないかな、と思ってな」

そう言って、俺は向こうを指差した。
その先には、何か買い物袋らしいものを持っている南条紗江子と、城島司が歩いていた。


「あ〜〜〜、本当だ〜〜〜。お〜〜〜〜〜い、紗江子せ〜んせ〜〜〜、司〜〜〜」

そう叫びながら、二人の元へと走っていった。
それを見て、茜はちょっと考えてから、

「浩平、行ってきてもいいですか?」

と言った。

「ああ、別に構わないぞ」

特に断る理由もなかったので、俺は承知した。
茜はうれしそうな顔をして、3人のもとに走っていった。



俺は俺でどうするか考えた。
別にあの二人とは仲が悪いわけではない。(むしろ城島とは住井同様、親友になりつつある)
しかし、特別話があるわけでもなかったし、また、4人の邪魔をしたくなかった。


「浩平、邪魔しちゃ悪いから先に行こうよ」

そんな俺の様子を察したのか、瑞佳が言った。

「……そうだな」

瑞佳の言葉に促され、俺はうなずいた。



「茜、詩子、俺達は先に家に行ってるぞ」

そう行って、俺達は立ち去ろうとした。


「あ、浩平、ちょっと、待って」

突如、詩子に呼び止められ、俺は振り向いた。

「どうした、詩子………って、どわ!!!」

すでに詩子が何ともない顔でそこにいた。

「いつの間にここまで来たんだ、お前は!」

「いいじゃん、いいじゃん、いつものことなんだし♪」

「まぁ、そうだが…………」

確かにいつものことではあるが、さすがにまだ慣れたとは言えない。
茜ほどの長い付き合いが必要だろう、本気で。(ちなみに、本気と書いて、マジと読む)

……って、いつものことって自分で言ってるってことは、自覚してるな、こいつ。
この第一級確信犯め。



「で、何だ?」

話を元に戻しておこう。
このペースだと、止まらなくなってしまうからな。

「南条先生が、ちょっと用事があるんだって」

「ん?俺にか?」

俺を呼び止めたんだから、当然そうなるだろうな。
俺、なんかまずいことでもしたか!?
いや、ここに来てから何も問題を起こしてないはずだ……
だから説教の類ではないだろう………多分………おそらく………

「ん〜、正確にはわたしたち家族に、かな?」

「俺たち家族?」

ほっと胸をなでおろしたのと同時に、意外だ、とも思ったが、口には出さなかった。



「それで、わたしたち家族に用事って何かな?」

俺の横で黙っていた瑞佳が聞いた。

「ん〜とねぇ……、実はねぇ……」

急に神妙な顔をして、詩子が言った。

「実は…………?」

それにつられて、俺も同じような顔をして聞いた。

「…………………」

「…………………」



ゴクッ…………



ただならぬ雰囲気に、あたりに異様な緊張感が漂った。

なんだ!?妙に空気が重過ぎるぞ。
もしかして、何か大変なことでも起きたのか!?



「…………………」

「…………………」









「…………………何だっけ?」

…………………



ガクッ!!!



クッ、不覚にも意表をつかれて、ワンテンポずれてコケてしまったではないか。






「あらあら、みなさん足腰が弱いのねぇ」






ドガシャアアアアアン!!!






南条先生のいきなりのギャグに、またコケてしまった。
しかも今度は、茜、詩子、司もである。
さらに、いきなり言われたのと、南条先生がという意外性のため、ダメージはみんな大きそうである。

「うぅ……なんか、南条先生のキャラが違うよぉ……」

うな垂れながら瑞佳がつぶやいた。


「ここでさらに、僕チャー○ー、あんただ〜れ?、なんていったら怒りますよ」

俺は俺で、何とか気力を振り絞って立ちあがりツッコんだ。

「…………それじゃあ、とりあえずあなたたちの部屋に行きましょう」

「ちょっと待てーーー、今の微妙な間は何だーーー!」

「気にしない、気にしない、早く行きましょう……………う〜ん、それから入るべきだったわね

「小声でなんか言ってるし〜〜〜」

俺たちのツッコミを無視して、南条先生は先を歩き始めた。


クッ……住井以上の強敵に出会えるとは……やるな、南条紗江子!
早速、俺のライバルリストに付け加えねば!



「もう、馬鹿なこと考えてないで、早く行こうよ〜」

「なにぃ、馬鹿なこととは何だ、馬鹿なこととは!?」

「はぁ、馬鹿なこと以外、何があるんだよ〜」

「クッ、俺の生きがいを否定するのか、だよもん星人め!!!」

「だよもん星人なんかじゃないよ〜」

「なにぃ、そうなのか!?」

「本気で驚かないでよ〜」

「うぐぅ」

「浩平、キャラが違うよ〜」

「あう〜」

「…………はぁ、もう行くよ」

さすがにあきれられてしまったらしい。

「分かった分かった、行くぞ」

仕方なく、言うことに従った。

というか、お前もちょっとキャラが違ってるぞ。




「どっちもどっちです」

遠くで茜がため息をついた。















ガチャ!



「「「「ただいま〜」」」」



…… ドタドタドタドタドタドタ



「おかえり〜」

『おかえりなさいなの』

「おかえりなさい」

「おかえり〜、お腹すいたよ〜」


最後だけちょっとズレた迎えの挨拶に苦笑しながら、

「みさき先輩、それが帰ってきた人への第一声か?」

「だって、お腹すいたんだもん」

全然答えになっていないが、実にみさき先輩らしい答えが返ってきた。



「ん〜、何か食べ物買ってきたか?」

「え〜と、キャットフードとかならあるけど……」

「…………まぁ、ペットショップに行ってきたんだから当然か」

…………キャットフードくらい、みさき先輩なら食べるかもしれないが。


「今、なんかすごくひどいこと考えなかった?」

うっ!

「そ、そんなことないぞ」

ぐあ、いつもながら鋭すぎるぞ。
というか、何で俺が考えてることを…………もういいや…………いじけてやる。
って、そんなことはどうでもいいか。


「う〜、あやしすぎるよ〜」

みさき先輩が非難の声をあげているが、とりあえず無視しておこう。






ここで、今更ながら、あることが気になった。

「ところで留美はどうした?さっきから姿が見えないが…………」



ビクッ!!!



「いつもなら真っ先に来て、

『ちょっと、遅いわよ、あんたたち』

なんて言いそうなんだけどな………」



ビクビクビクッ!!!!!!



「なぁ、お前ら、留美はどうした…………って、なにしてんだ?」

「な、な、な、何でもないよ〜、あはははは」

『う、うんうんっ』

あからさまに怪しく、忍び足のような歩き方をして、
部屋を出ていこうとしている時点で何もないわけないだろうが。
しかも、言葉の様子からして、十分に動揺してるのが見て取れるし。

「…………何かしたな?」

「な、何にもしてないよ、ね、みんな」

コ、コクコク

「う、うん」

どうやら、あくまでシラを通すつもりらしい。
ふ〜む、どうしてやろうかな。






「な〜にが何もしてないって言うのよ」(怒)



「どわっ!な、なんだ!?」

突然の地獄の底から響いてくるような唸り声に、さすがに驚いてしまった。

声のしたほうを見てみると、留美がぶっ倒れながらも、鋭い目つきでこちらをにらんでいた。
はっきり言って、どこぞのヤクザものである。

「ヲヲ、ドウシタ、留美」

そんな留美の姿を見て、俺は誠意を持って接することにした。

「…………あんた、良い度胸してるわね」

さらに一層ニラミをきかせてきた。
何か気にさわったらしい。

「ナンダ、人ガセッカク心配シテヤッテルトイウノニ」

「そのしゃべり方が白々しいのよ!」

そうらしい。
まったくもって心外である。


「というか、あんたこうなるって分かっててあたしを置いていったでしょ!」

「…………………そんなことないぞ」

「今の間は何よ、今の間は!」

相変わらずの鋭さである。

「俺だって、ここまでになるなんて予想してなかったさ。まったく、お前はいつも騒がしいな」

「あんたに言われたくないわよ!!!」



ガバッ!



そう叫んで留美が立ちあがった。

「おお、それだけの元気があればもう大丈夫だな」

「くぬー(怒)、うるさいわね、もう!」

そう言って、プイッとそっぽを向いてしまった。
どうやらやりすぎてしまったらしい。

「まったく、あんな状態で倒れてるんだから、やさしく手を差し伸べて起きあがらせてくれるとか、
それぐらいのことしてくれたっていいじゃないのよ」

どうやらではなく、完全にやりすぎてしまったようだ。
完璧に機嫌を損ねているとしか言えないような言い草だった。
しょうがない………


「おい、留美」

「なによ、今更謝ったって……………」






チュッ☆






振り向き、こちらを向こうとした留美にキスをした。
もちろん、今は昼間であるため、軽く触れる程度のものであるが。


「な、な、な、なにすんのよ、いきなり!」

された当の本人は、顔を真っ赤にしながらも反論してきた。

「ん?嫌だったか?」

「い、嫌ってわけじゃないけど………み、みんなの前で恥ずかしいじゃない………


最後のほうは小声だったが、明らかに恥ずかしそうに言った。

「そんなことぐらいで、恥ずかしがるなよな」

「そ、そう言うあんただって真っ赤じゃないのよ」

「そ、そうか?」


ぐっ、留美に指摘されるとは、不覚!



「なんか最近、浩平のすることって、どんどん恥ずかしくなってきてるよね」

「しかも、必ずあとで真っ赤になってたりするよね〜、自覚してないのがほとんどだけど」

「でも、嬉しいことは嬉しいです」

「茜〜、正直だね〜。でも、確かにそうだよね〜」

『うんうん』

「でも、あの二人みたくはなって欲しくないな〜」

「あの二人って?」

「ほら、あの…………………」












その頃の藤田家………



「へ〜っくしょい!」

「浩之ちゃん、大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」

「誰かが噂してたんじゃないの〜?」

「さあな」






さらにその頃の千堂家………



「ぶわっくしょい!」

「きゃっ!きったないわね〜、もう」

「風邪でも引いたんか〜?」

「いや、誰かに噂されたような気がしたんだが………」















「あの〜〜〜〜〜〜(汗)」

「もしも〜〜〜し(汗)」

玄関から寂しそうな声が響いてきた。

「仲が良いのは分かったんですけど〜〜〜〜〜(滝汗)」

「ちょっとはかまって欲しいかな〜〜〜〜〜(滝汗)」

ぐはっ!南条先生と司をほうって置きっぱなしにしてしまってた。
俺とした事が!

「ご、ごめんなさい、えっと、あの、ど、どうぞ!」

瑞佳が照れながら、さらに力みながら言った。
この光景が見られたのがよっぽど恥ずかしかったのだろう。
って、お前に直接関係ないじゃん!

「家族のこんな光景を見られたら誰だって恥ずかしがるよ〜」

…………そうらしい。
また心を読まれたことはあえて無視する。
もう反応するのにもいい加減疲れたし………









「で、用って何なんです?」

みんなを居間に集め、瑞佳の出したお茶とすすりながら俺は言った。
ちなみにこのお茶は玉露というものらしい。
なんでも高級なお茶らしい。
まぁ、俺にはどんなお茶でもいっしょだけどな。
っと話がずれたな。

「え〜〜〜と、ちょっとこれを見てくれるかな?」

そう言って、会った時から持っていた買い物袋から、中身を取り出した。
何やら見なれないものばっかりだが………

「これは………」

真っ先に反応したのは茜だった。

「ケーキの材料……ですね?」

「そのとおり、さすが里村さん、自分で作ってるだけのことはあるわね」

「いえ………で、これをどうするんですか?」

確かに、いきなり目の前に並べられても分かるわけがないからな。

「単刀直入に言うわね…………………」

「はい………………」






「…………ケーキ作ってちょ〜だい♪」






「…………………はい?」

思わず、自分でも驚くぐらいうわずった声が出てしまった。
というか、いきなり作ってくれって言われても………

「えっと、単刀直入すぎたわね」

ばつの悪そうな顔をして南条先生が言った。

「というか、そのまますぎです」

「ごめんごめん、えっと、それじゃ説明するわね」

そう言って、おもむろに立ち上がった。
何故立つ?


「実はね、秋子理事長から呼び出しをもらって……といっても、私一人じゃないけど。
えっと、そこで理事長から、ケーキを作らなきゃいけなくなったので、作ってくれませんか、って言われたのよ」

「え?でも、学園内都市にもケーキ屋さんってありましたよね?」

「確かにあるわよ。でも、そこにも注文はしたらしいんだけど、まだちょっと数が足りないらしいのよ。
それで、わたしたち教師にその火の粉が飛んできたってことなのよ」

そういってふたたび座った。
う〜む、いまいち行動が読めん。


「それで、何であたし達なんですか?」

当然のごとく、留美が聞いた。

「う〜ん、そのときは問題ないと思って引き受けたんだけど…………」

「ど?」

「実はケーキなんて作れないんだよね、私」

「…………………」

「…………………」

「…………駄目じゃん」

「…………ツッコミが普通ね〜」

「そんなのどうだっていいじゃないですか………」

「まぁ、それはいいとしておいて……
それで、ケーキ作れる人いないかな〜って考えてたら、里村さんが頭の中に浮かんできたのよ。
さらに家族のみんなとも楽しく作れたらな〜、とも思ってね。
てなわけで、お願いに来たんだけど………」

「作りましょう」

「って、早っ!」

南条先生が言い終わる前に茜が即答した。
相変わらずの早さである。

「みなさんもいいですよね?」

「そうね、別にかまわないわよ」

「なんか楽しそうだしね♪」

『作るの』

「つくる〜〜〜〜〜♪」

「………どうやら満場一致のようだな」

「それじゃあ、私は雪ちゃんを呼んでくるよ」

「いいねそれ、さらに楽しくなるよ」

「深山先輩って料理作れるんですか?」

「もちろん、かなりの腕前だよ」

どうやら俺の予想以上にみんな乗り気のようだ。
みんなの様子を見てるだけで楽しい気分になってきそうだ。


「でも、何でいきなり、ケーキ屋さんが手におえないほどの量のケーキを作るんです?」

「あ、確かにそうだね〜」

「そう言えばそうだな………」

ケーキ屋にはよく行くほうだが、ケーキを作る量なんか知ったこっちゃあない。
が、店のガラスケースの中にはいつも、かなりの量のケーキがあるのが普通のはずだ。
それでも追いつかないほど量のケーキをどうするんだ?


「う〜んと、それは………後でのお楽しみってことにしておいてくれないかな?」

「………なんですか、それは」

俺は苦笑しながら言った。
お楽しみって言われても………なぁ………

「怪しいことじゃないですよね………?」

「あら、ひどいこと言うわね〜。大丈夫よ、純粋に楽しみにしてていいわよ」

「そうですか……それじゃあ、早速製作開始といきますか!」



「「「「「「「「お〜」」」」」」」」






「ところで城島…………」

「ん?なんだ、折原」

「南条先生っていつもあんなペースなのか?」

「…………………何も言うな」

「…………………そうか」

「……………………」

「……………………」

「「…………………はぁ」」

仲良く溜息をつく二人であった。









その後すぐに深山先輩が来て作業開始した。

しかし、このメンバーで物を作るのは非常に困難極まりないものである。
その証拠に…………まぁ、冒頭のとおりである。









さて、どうするか………



 1、留美の鍋を何とかする
 2、つまみ食いをしているみさき先輩を止める
 3、走り回っているちびちびシスターズを何とかする
 4、唯一まともな茜の手伝いをする
 5、男のロマン、後ろから抱きつく(爆)



………なんだ、最後のは(汗)
と、とにかく………え〜と、まずは鍋からだな。






「わ〜〜〜わ〜〜〜わ〜〜〜!!!」

「わ〜〜〜、留美さん、落ち着いて〜〜〜」

どうやらかなりの修羅場のようだ。
見るからに留美は混乱状態、瑞佳は止めるに止められない状態のようである。
よし、まずは………

ガシッ!

瑞佳の頭をわしづかみにした。
とりあえずこいつから落ち着かせないとな。

「え、なに?こ、浩平?」

「お前まで慌ててどうする、あれじゃ落ち着けようにも落ち着けないぞ」

「う、うん、そうだけど………」

「まあ、とりあえず俺に任せろ」

「え、どうするの?」

「こうするんだよ」

そう言って、俺は留美のほうを向いた。

「ほれ、留美!」

「え?」






バシャアアアアアアアアアアアアン!!!






俺はなぜか近く似合った水の入ったバケツを留美に、もとい、鍋にかけた。
まずはもとから消さないとな。


「…………………」

「おい、留美、大丈夫か?」

「…………………」

「まったく、焦げた鍋なんか持って走り回ったらとんでもないことになるだろ」

「…………………」

「お前はもうちょっと落ち着きを持って行動をだな……






ガコン!!!






 ……ぐはっ!」



いきなり留美が持っていた鍋で俺の頭を殴りやがった。
ああ、永遠(とき)が見える………
じゃなくて………

「る、留美、いきなり何をする…………」

「それはこっちのせりふよ!人が大変な目に合ってるって時にいきなり水かけてくるなんて」

な、鍋で殴るほうがひどいと思うんですけど………

「あ〜〜〜もう、びしょ濡れじゃないのよ〜、ちょっと着替えてくるわね、はい、瑞佳」

そう言って、留美は鍋を瑞佳に手渡して自分の部屋へと戻っていった。


「………一応、問題解決なの……かな?」

瑞佳が引きつった顔をして俺に言った。

「そ、損害はかなり大きいがな………」

「それは浩平が悪いよ、いきなる水かけるんだもん」

「で、でも、鍋の火はちゃんと消えただろ?」」

「そうだけど〜〜〜」

「ど、どうでもいいが、俺の心配はしないのか…………」

依然、俺はうち伏したままの状態である。
というか、鍋で殴られたんだから、血なんか出ててもおかしくないだろ。

「う〜ん、じゃあ膝枕してあげよっか?」

「そ、そうか、それじゃあ頼む」

冗談抜きできつかったので、瑞佳の言葉に甘えることにした。
そういえば、こういうのはなんか久しぶりだからなじっくりと堪能しておこう。


「気持ち良い、浩平?」

「ああ、気持ち良いぞ」

ああ、マジで気持ち良すぎて、なんか眠くなってきた。
このまま寝てしまいたい気分だな。
寝ちゃお…………

………………

…………

……







ぶぎゅっ!!!






「ぐはっ!!!」






うとうととしていた俺の腹に、急に何かが乗ってきた。
何にも身構えていなかったために、俺は身悶えるしかなかった。
というか、は、吐く………


「わあ!こ、浩平、大丈夫!?」

「あい…………おう……いえう…あ(大丈夫に見えるか、と言いたい)」

もはや声すら出なかった。
ク、クソ、誰だ!?

「あ、あう、ご、ごめん、浩平………」

「みゅ〜」

『おろおろ』

チ、チビチビシスターズか………
さ、先にこいつ等を止めておくべきだったか………

「コラ!、駄目でしょ、踏んだりなんかしちゃ!」

「う、うん……」

「みゅ〜、ごめんなさい」

『ごめんなさいなの』


…………なんかこうやって見てると、瑞佳って本当にお母さんって感じだな。
繭がうちの学校に来たときもそうだったけど、なんていうか、母性の塊っていうか。
将来はきっと近所の良いおばさんになるな。
…………全然関係無いけどな。






…………次行くか(まだ後遺症が残ってるが)
っと、さっきので選択肢が一気に2つも減ったのか。
よし、それじゃあ次は………みさき先輩だな。






「も〜〜〜〜〜、みさき、いい加減にしなさ〜〜〜い!」

「う〜〜〜、おいしいよ〜〜〜」

「…………………はぁ」

深山先輩がとうとう溜息までつき始めた。
今回のみさき先輩はどうやらかなりの強敵らしい。

「深山先輩、どうですか?…………って聞くまでもないですね」

「あ、折原君。まあね、見てのとおりよ」

そういって、改めてみさき先輩のほうを見なおした。
…………一向に止まる気配はなしのようだ。

「………仕方がないな」

そう言って、俺はみさき先輩のほうに歩いていった。


「みさき先輩」

「あ、浩平君、どうしたの?」

………どうしたの、と言いますか、この状況で。

「………食べてるね」

「うん、おいしいよ、浩平君も食べる?」

「これ以上食べたら晩ご飯抜き(ニッコリ)」

「浩平君、一生懸命手伝わせてもらうよ」

即答だった。


「…………みさきの手なずけ方、上手ね」

深山先輩に感心されてしまった。
どうやらかなりすごいことらしい。

「一緒に住めば、自然と身につきますよ………」

「そう……それじゃあ、今度一緒に住もうかしら」

「う〜〜〜、2人ともひどいこと言ってるよ〜〜〜」

非難の声を上げてるみさき先輩はとりあえず無視しておいて、次いくか。






え〜っと、次は………茜の手伝いだな。
これなら特に問題も起こらないだろう。

「お〜い、茜、手伝うぞ」

「終わりました」

「…………………茜、手伝うぞ」

「終わりました」

「…………聞こえなかったが」

「終わりました」

「…………マジか?」

「はい」

「なにぃ!じゃあ俺のこのケーキ作りに燃える情熱をどうしろというんだ!?」

「知りません」

あっさりと一蹴されてしまった。
じゃあ、この情熱を最後の選択肢(男のロマン、後ろから抱きつく)に…………

「注がないでください」

「…………はい」

またあっさりと一蹴されてしまった。
しかも今度は声に出す前だというのに。









「あら、すごく良く出来てるじゃない」

俺達の出来上がったという声を聞いて、南条先生が居間から顔を出した。
というか、今まで何してたんだ?

「それにしてもあなた達の家、大きい割には探しがいがないわね〜」

「あさってたんかい!!!」

「せ〜んせ〜〜〜〜〜い?」

さすがに、詩子他みんなの気に触ったのか、ジト目で南条先生をにらんだ。

「や〜ね〜、冗談よ」

「…………冗談に聞こえなかったんですけど」

「まあ、それはおいといて………」

もうこの人のペースについて行けないんですけど…………


「あら、予定よりも多く作ったのね」

「え、多いって?」

「確か、材料的には4つ作れる量を買ってきたはずなんだけど………」

見てみると、5つほど、上手にデコレートされたケーキがそこに並べられていた。
どれもこれも今すぐ食べたいほどの出来である。
しかし、ケーキの数は材料的には4つ、今目の前にあるのは5つである。
…………何故?Why?

「企業秘密です」

あっさりとそう茜が答えた。
というか、それ秋子さんじゃ………

「う〜ん、まあいっか♪」

こちらもそうあっさりと返した。
いいのか!?それでいいのか!?



「予定より多くなっちゃったけど、これでケーキは出来あがったわね」

「そうですね」

あいかわらず出来あがった数のことは無視して話を進めていた。
もう慣れるしかないのか………

「それじゃあこれを持っていてちょうだい」

「「「「「ハイ」」」」」

いきなりどこからともなくラルヴァが現れて、ケーキをきちんと梱包して持っていった。
とても悪魔とは思えないほどの手さばきである。


「さてと………後は私達ね」

「え、私達って?」

いきなりの南条先生の発言に、瑞佳が尋ねた。

「そうよ、私達も準備しないとね」

「え、準備って何の………?」

「さっき言ったでしょ、楽しいことだって」

「そう言えば………そうでしたね。ケーキを作るのに夢中になっててすっかり忘れてました」

思い出したかのように茜が言った。
確かに楽しいことがあるって言ってたよな。

「それで、結局何なんですか、楽しいことって?」

「まあ、とりあえず………はい、これ」

そう言って、どこからともなく旅行に持っていくような大きいかばんを取り出し、瑞佳に渡した。
さらに同じようなものを女性陣みんなに渡していった。

「これ……開けてもいいんですか?」

「もちろん、むしろ早く開けて頂戴♪」

「は、はい、分かりました…………」



ガチャ!



「こ、これは………」

かばんの中身を見た瑞佳がかなり驚いていた。
それに続いてかばんの中身を覗いた女性陣も同様の反応を示していた(約1名除く)

「先生、これって………」

「さあさあ、着替えてらっしゃい、もうすぐで迎えが来るはずだから」

「は、はい」

せかされるようにしてみんな自分の部屋に着替えに行った。
…………残された俺はどうしたらいいんだ(汗)

「で、折原君はこれ」

そう言われ、一着の服を受け取った。
これは…………タキシード!?

「折原君も早く着替えてらっしゃい」

「は、はい、分かりました」






「さあ、ダンスパーティーの始まりよ」















To Be Continued to RYOUSYO Dance Party......







後書き

やっと書き終りました、これ。
書き始めてはや1ヶ月とちょっと………
これだけ書くのにいったいどれだけの時間をかけてるんでしょうか、わたしゃ………
しかも、これだけ時間をかけておいて内容は薄々で文だけ長い………
しかも後半ぼろぼろ………
うう……もっと精進します〜(T_T)




 ☆ コメント ☆

セリオ:「ケーキ作りは、わたしも大の得意です」(^0^)

綾香 :「そうね。セリオは料理上手いもんね。
     …………ダウンロードすれば、だけど」(−−)

セリオ:「む。
     その言い方では、ダウンロードしなかったら下手みたいに聞こえるのですが」(−−)

綾香 :「下手でしょうが」(−o−)

セリオ:「そんなことありません」(−−)

綾香 :「この間、あなたがレシピをダウンロードしないで作ったみそ汁。
     あれ、何故か緑色してたわねぇ」(¬_¬)

セリオ:「…………そ、そんなこともありましたねぇ」( ¨)オヨグメ

綾香 :「ふぅ。やれやれ」(−o−)

セリオ:「で、でも、ケーキは別です。これはダウンロードしなくても得意なんです」(;^_^A

綾香 :「本当でしょうねぇ?」(¬_¬)

セリオ:「もちろんです。完璧です」(^0^)

綾香 :「そ。そこまで言うなら信じるわ」(^^)

セリオ:「…………………………見た目だけは(ぼそ)」(−o−)

綾香 :「…………ん!?」(−−;




戻る