ここは数ある調理実習室の一つ。
 第一体育館にもっとも近い場所。
 その調理場の中を、真っ白な割烹着に身を包んだいわゆる「給食のおばちゃん」風
の女性達がせわしなく動き回っていた。

「さぁみんな! この学校にはみさきちゃんやみさきちゃんに匹敵する大食漢が多数
いるって話だからね! おまけにこれはパーティ用の料理っていうじゃないか! 生
半可な量じゃ足りないよッ!!」
「わかってるって!!」
「久々に腕がなるねぇ!」

 威勢のいい声とともに、女性達の動きが更に洗練されたものとなってゆく。
 元・高校の学食のおばちゃんとは思えぬ手際のよさで、彼女達は次々と料理を仕上
げていった。



「すみません、遅くなりました」
「調子はどうですか?」
 まさしく戦場と化している調理場に、秋子とひかりが現れる。
「あ、秋子さんにひかりさん! まだせいぜいノルマの四分の一ってところですよ!」
 先ほどから全体の指揮をとっていた女性が苦笑混じりに、しかし作業の手は止めず
に秋子達に答えた。
「そうですか…それじゃ私達もいつにも増して気合入れないとね、ひかり?」
「ふふ、そうね。腕が鳴るわ…」
 お互いに顔を見合わせ、微笑む二人。次の瞬間には仕事師の顔になっていた。





私立了承学園  五日目 教師サイド   舞踏会準備編 作成者:ERR
 ここは商品搬入庫。  そこで二人の少女が大量の荷物を前に絶句していた。 「『ちょっと』ねぇ…」  長い沈黙の後、片方の少女…女性と言っても差し支えないかもしれない…が心底嫌 そうに口を開く。 「あ、あはは…」  その嫌そうな口調にもう片方の少女…こちらは少女で問題ない…がばつが悪そうに 笑う。  そして再び沈黙。  今度の沈黙を破ったのも先ほどの女性である。今度は深いため息によって。 「ふぅー……よーく解ったわ、由依。アンタの『ちょっと』の基準が…」  呆れとも非難ともとれる言草で、そう言う。 「そ、それは光栄ですぅ…」  その言葉を受け、少女…由依は苦笑してごまかす。  その苦笑を見て、また深くため息。 「これでちょっとっていうなら…アンタの胸は0…いやマイナスね」 「うっわー!? なんかものすごく酷いこと言ってませんか晴香さんっ!?」  しれっと酷いことを言う女性…晴香に、顔を真っ赤にしてうるさいくらいの大声で 怒鳴る由依。 「うっさいっ!! これのどこがちょっとだっ!! あーもうこんなことなら郁未ん とこで未悠ちゃん『で』遊んでるんだったっ!!」  その怒声を受け、今度は晴香が大声で叫ぶ。 「『で』ってなんですか『で』って!! しかもそれって思いっきり暇してるってこ とでしょぉっ!? 暇してるんなら『少し』くらい手伝ってくれてもバチはあたりま せんよぉっ!?」 「だから! これの! どこが! 少しかーっ!?」  成人近い女性同士の口論としては少々程度が低い口論を大音響で続ける二人。まさ に泥沼である。  とそこへ、一匹のラルヴァがやってくる。  無論、この倉庫の荷物を所定の場所へ運ぶため…由依と晴香と同じ仕事をおおせつ かってやってきたのである。  もはや外部の者からは何で争っているのかすら理解できぬ口論を続ける二人の方へ ラルヴァは近づいていった。そう、ごく当たり前のことを言うために。 「オイ…叫ンデル暇ガアルナラ手伝エ」 「っさい!! 今取りこみ中よ!」  バシッ 「グフゥ!?」  振り向いた晴香の瞳の色が黄金になったと思った瞬間、ラルヴァは鋭い衝撃波を受 け吹飛ばされた。鈍い悲鳴をあげ、その場にのびる。 「…とゆーわけだから…って、なにこれ?」  その後更に5分ほど不毛な口論を続け、おもむろに視線を横に向けた晴香の目に、 黒いモノが飛びこんできた。 「…ふー、ふー…あ、それはラルヴァっていうんですよ」  呼吸を整え、晴香の疑問に答える由依。割と律儀である。 「『コレ』トカ『ソレ』トカ、人(?)ヲ物ミタイニイウナー!!」  晴香に吹飛ばされた時の態勢のまま、ラルヴァは顔だけを上げ魂の叫びをあげた。 「うわ、なんか叫んでるよ?」 「そりゃそうですよぉ、ラルヴァですもん」 「ふーん? ま、いいけど。で、そのラルヴァが何でそんなトコで寝てるの?」  自分で吹き飛ばしておいてあまりといえばあまりな晴香の言草。 「…スマン、殴ッテイイカ?」 「イヤよ、殴られたら痛いもの」 「……」 「……」 「……」 「スマン…ヤッパリ殴ラセテクレ…」 「だからイヤだってば」 「ラルヴァさん…気持ちは痛いほどよく解ります。でも悲しいですけどラルヴァさん じゃ凶悪狂暴傍若無人の代名詞である晴香さんには逆立ちしても勝てませんから諦め たほうがいいですよ」  ガツン☆! 「☆※■○×!?」  脳天を思いきりグーで殴られ、言葉にならない悲鳴を上げる由依。 「さっ、とっとと荷物運ぶわよー!!」  晴香は何事もなかったように荷物のほうへ歩き出す。 「…大丈夫カ…?」  流石に心配になったのか、ラルヴァが由依の顔を覗きこむ。 「………ラルヴァさん、こーなったら手を組みましょう! 一人でダメなことでも二 人でならきっと為し遂げられます!! いつか二人で晴香さんのノーテンを思いっき りグーで殴りましょう!!」 「ア…アア、ソウダナ…」  由依の妙な勢いに気圧されたラルヴァはにできたことは、そう言って頷くことだけ だった。 ---------------------------------------------------------------------------- 「やぁ、はかどってるかい?」  慌しく動き回る人々(人で無いモノのほうが多いが)で埋め尽くされた第一体育館。 そのステージの上からあちこちへと指示を飛ばす住井に話しかける者があった。 「ん? おお、氷上か」  住井が呼ばれたほうへ振り返ると、いつの間にいたのか、そこにはいつもの通り中 性的な笑顔を浮かべた氷上が立っていた。 「こんにちは、住井君。 …どうやら愚問だったみたいだね」  普段は無愛想な様相を見せる体育館も、今は今夜の舞踏会に向けてその姿を徐々に 華やかなものへと変えていっている。  その様子を確認し、感心したように氷上は言った。 「そうでもないぜ、ラルヴァって数が多いだけで力も大して無いし、この手の知識も 全然無いみたいだからな。まぁでも空が飛べるってのはかなりありがたいけどな」  はじめは困ったように語っていた住井だったが、高い天井に細工するラルヴァ達を 見上げると、満足げに頷いた。 「うん…それにしても、変えれば変わるものだね、これが体育館だなんて言わなきゃ 解らないんじゃないかな」 「全くだな…まぁ、それもこれも深山先輩のセンスの賜物なんだけどな」  住井は自分の手元にある書類を見て感心して言う。 「へぇ、この体育館の装飾は深山さんのデザインなのかい」 「ああ、デザインだけじゃなくてしっかり計画書のほかに指示書まで作ってくれてる んだ。  …深山先輩って確か昨日来たんだよな…まぁ、話自体は前から聞いてたかもしれな いけどな…デザインそのものもだけど、仕事の早さもスゲェな」 「そうだね…大したものだね」 「ああ」  氷上も感心して頷く。 「さて、それじゃ僕は搬入庫の方に行くよ」  ちらりと腕時計を確認し、氷上はステージを下りる。 「あれ、手伝ってくれんじゃねぇの?」  いささか拍子抜けした様子で住井は氷上に言った。 「あはは…情けない話だけど、力仕事は苦手なんだ。それに、荷物の方は僕が手配し たものだから、僕が確認するのが筋だからね」 「そうなのか…ま、それなら仕方ないな」 「期待にそえなくてすまないね…それじゃ深山さんの分まで頑張っておくれよ」 「ああ、任せとけって」  住井の言葉に微笑むと、氷上は搬入庫へ向けて走り出した。 「さて、と…ん? あ、おーい、そこはそうじゃないって!!」  そして住井は元どおり指揮に戻った。 ----------------------------------------------------------------------------  再び調理室。  元々素晴らしいスピードで出来あがっていた料理の数々だが、秋子とひかりの登場 により更にそのスピードが上がる。それらを体育館へと運び込む用意をするラルヴァ 達もそのスピードを増してゆく。 「ナ、ナントイウスピードダ!!」 「10体モイレバ十分ダト思ッテイタガ全然間ニ合ワンゾ!!」 「体育館カライクラカ連レテ来イ!!」  そこまで言うと、一匹のラルヴァが手に持つ料理に目線を落とす。 「ニシテモ…美味ソウダナ…」 「…チョットクライツマンデモバレナインジャナイカ…?」 「ソ、ソウダナ…チョットクライ…」  そう言ってきょろきょろと周囲を確認し、手に持ったから揚げをつまみ食いしよう とするラルヴァ達。しかし。 「こらっ!! 腹減ってるんなら後でなんか作ってやるからソレには手をつけるんじ ゃないよっ!!」 「「「ハ、ハイィッ!!」」」  仮にも魔王の使徒であるところのラルヴァ達だが、ただの主婦であるおばちゃんか ら思いきり怒声を飛ばされ、縮こまってしまった。  調理場に立つ調理師は正しく戦士であるということを身をもって知ったラルヴァ達 だった。 「ったく…油断も隙もありゃしない」 「あらあら」 「でもちょっと可愛そうだったわね」  大慌てで、しかし慎重に料理を運んでいくラルヴァ達と、調理の手は止めず、しょ うがないねぇ、とでも言いたげな顔でぼそりと呟くおばちゃんを交互に見やり、秋子 とひかりは顔を見合わせ苦笑した。 「でもそうねぇ、体育館の皆も休憩とかしてない人も沢山いるし、ここらで交代で休 憩いれてもいいんじゃないかしら?」  走り去るラルヴァの背を眺めながら調理室に入ってきた浩平の叔母、由起子がそん なことを言う。 「あら由起子さん、来てくれたんですね」  その女性の姿を確認し、微笑む秋子。視線をそちらに向けながらも調理の手が止ま らない所がただものでないものを感じさせる。 「遅くなってすみません…って言いたいところですど」  苦笑してそのままラルヴァ達の去った方へと視線を向ける由起子。 「そうねぇ…それじゃ由起子さんには体育館の皆のこと、お願いしていいかしら?」 「ええ、そうさせてもらいます」  同じような苦笑を浮かべたひかりの言葉に頷くと、由起子はそのまま調理室から出 て体育館の方へ向かっていった。 「じゃ、由起子さんの分も私達が頑張らないとね」 「そうね」 「よっしみんな! 後半分、一気に仕上げるよッ!!」 「「「おおーっ!!」」」  威勢のよい掛け声とともに、調理室の慌しさに更に拍車がかかった。 ----------------------------------------------------------------------------  搬入庫。 「うわーっ!! ぜ、全然減りませーん!! 晴香さん、不可視の力とかでどうにか できないんですかぁーっ!?」  両手で大きな箱を抱えた由依が泣き言を言う。 「粉々に吹き飛ばすことくらいはできると思うけど?」  同じく大きな荷物を両手で運びながら答える晴香。 「うわー、物騒なだけで全然役にたちませんねぇ」  ボソッと、しかしそばにいる晴香に聞こえるくらいの音量でつぶやく由依。  ゲシッ!!  晴香は無言で、しかし額の青筋を隠すことはせず、由依の尻を思いきり蹴飛ばす。 「い、痛いですぅっ!! 何するんですか晴香さんっ!!」 「それ本気で言ってるならもう一発蹴るわよ」 「ごめんなさい…暴力女晴香さん」  ゲシッ!! 「い、いたいですーっ!!」  いちいちいらんことを言う由依に、いちいち制裁を加える晴香。  そんなことをやってるからいつまでも終わらんのだ、と先ほど晴香にぶっ飛ばされ たラルヴァは思ったが、思うだけにしておいた。 「うん、全部届いてるみたいだよ、お疲れ様。それじゃ僕は早いところ失礼するよ。 男手が何もしないで突っ立てるのをさっきの女性に見られたりしたら何か言われそう だしね」  搬入された物品のリストを折りたたみ、氷上は苦笑しながら近くにいたなラルヴァ に言う。 「アア、ソウダナ。ゴ苦労サン」  声をかけられたラルヴァはそっけなく返事をすると、手近な荷物を掴んで体育館へ 向けて飛んでいった。 「さて、と…それじゃ僕は僕で今夜の準備でもさせてもらおうかな」  ラルヴァの背を見送り、幾分か楽しそうに呟くと、氷上は搬入庫を後にした。 ----------------------------------------------------------------------------  第一体育館。  住井の指揮の元、体育館は順調に舞踏会場へとその姿を変えていた。 「ごめん住井君、遅くなっちゃって」 「おっ、深山先輩、待ってたぜ」  自分の元へ駆けてきた雪見の姿を確認し、嬉しそうに笑う住井。  雪見はステージに上がると、そこから体育館全域を見渡す。 「へぇー…随分進んでるじゃない…大したもんだわ」  あちこちへと視線を移しながら、心底感心したように言う。 「まぁな。この住井護にかかればこれくらい…」  その言葉に気分を良くしたのか、住井はえへん、とばかりに胸をはってみせる。 「…やっぱ作業員が優秀だと違うわねぇ」  雪見はそれを意識的に無視し、作業員を賞賛する。 「せ、せんぱ〜い…」 「ふふ、冗談よ。住井君ご苦労様」  情けない声を上げる住井の方に、雪見はいたずらっぽい笑みを浮かべてふり返る。  すると住井もまた立ち直って微笑むと、雪見の書いた指示書を取り出す。 「まぁ、それもこれも先輩お手製の指示書があったからだけどな。これがあれば折原 だってできるぞ」 「あら、折原君ならもっと進んでると思うけど?」  さりげなく誉めてくれていることはとりあえず置いておくと、やはりいたずらっぽ い笑みで雪見は言った。 「せ、せんぱ〜い…」 「ふふ、残念だけど今度は冗談じゃないわよ? あれで結構指導力あるからね、折原 君って」 「うぐぐ…まぁそうかもなぁ…」  住井も思うところがあったのか、大人しく浩平に負けを認めた。 「うん、そうそう。あ、でも…それ、誉めてくれてありがとね」  一通り住井をからかい終えると、雪見は今度は嬉しそうに微笑んだ。 「あらら、随分楽しそうね」  ステージの裏手から入ってきた由起子が二人の様子に抱いた感想はそんなものだっ た。 「あ、由起子さん。ちっす」 「こんにちは」 「ええこんにちは、住井君、深山さん」  軽く挨拶すると、由起子もステージから全域を見渡す。 「へぇ、変えれば変わるものね」  由起子もまた体育館の変わり様に感心する。  そして更に全域を見渡すと、二人の方へ顔を向けた。 「結構進んでるようだし…ぼちぼち休憩入れていこうと思うんだけど、いいかしら?」 「ええ、構いませんよ。ね? 深山先輩」 「そうですね。じゃ、後の指揮はわたしがやるから、住井君もとりあえず休んで」 「あっゴメン、深山さんにはちょっと手伝ってもらいたかったんだけど…」  雪見に休憩を勧められ、住井が頷くより早く、由起子がいささか申しわけ無さそう に言った。 「え? なんですか?」 「うん、皆に軽くつまめるものでも作ろうと思って。流石に私一人じゃきついからね。 無理にとは言わないけど…」 「いえ、わたしは構わないんですけど…」  雪見はちらりと住井の方へ目線を送る。  すると住井は任せろ、といわんばかりに胸をはる。 「いや、俺のことは気にしなくていいですよ。飯も食ったし」 「ゴメンね住井君。それじゃ深山さん借りてくわね」  軽く頭を下げてから、由起子はステージを下りていった。 「じゃ、悪いけど任せたわね」 「おう。任せとけ。 …それより深山先輩って料理できたんだ」 「まぁね。みさきの友人続けてればいやでもできるようになるわよ」  雪見は大喰らいの友人の姿を思い浮かべ、やや疲れ気味に苦笑する。 「うーむ、もしかして、いやもしかしなくても深山先輩っていいオンナ?」 「あら、今ごろ気がついたの?」  腕を組んで真面目な顔で何をいうかと思えば…とでも言うように、雪見は肩をすく めておどけてみせる。 「なぁ深山先輩」 「なに?」 「ニブチンな折原なんてほっといて俺にしない?」 「ちょ、ばっ、なっ、なに言ってるのっ!!」  先ほどまでの余裕たっぷりの態度はどこへやら、雪見は見てる方まで恥ずかしくな るぐらい真っ赤になってあたふたと意味不明な動きをしている。 「ぷっくく…深山先輩真っ赤だぜ」  住井は必死に笑いを堪えるが、しかし堪えきれなかった笑いがこぼれる。その態度 で我に返る雪見。恥ずかしさと入れ替わりに腹立たしさがこみ上げてくる。このまま やられっぱなしではしゃくだ、そんなことを考える。 「まったく…つまんないこと言ってると稲木さんに言いつけるよ?」 「な、なにぃっ、なっ、なんでそこで佐…稲木の名前が出てくるんだよっ!?」  今度は住井がみっともない姿をさらす番であった。その姿に心底満足そうに笑う雪 見。 「あららー? 冗談だったのにぃ」 「せっ、先輩っ!!」 「あははー、んじゃあと任せたね♪」  そして逃げるように、しかし楽しそうにその場を駆け足で去っていった。 「ったくよー…」  憮然と意味の無い言葉を発する住井。  だが、心なしかまんざらでもないように見えた。 「ふむ、同士住井め、なかなか様になっているではないか」  腕組みなどしながらステージ上の住井を見、満足げに頷く大志。 「エラソーに感心してないでアンタも働きなさいよ」  しかし働いてはいない大志を、ルミラが咎める。  その手にシャンデリアをぶら下げながら。 「へへっ、こりゃ今夜は楽しみだねぇ」 「うむ、そうだな」  搬入庫から荷物を体育館へと運び込むサラと雄蔵。  うわばみの本能なのか、その中身をしっかりと把握しているようだった。 「ふむ、そろそろオーケストラ隊にも準備させるか」  本日分の事務を片付けたガディムは、時計を確認すると一言呟き、職員室を後にし た。 「どうですかこの『大宇宙台車』は!!」 「んー、確かに楽チンだけどなんだか凄い科学力の無駄遣いな気がしますよ」 「? 何故ですか?」 「何故ですかねぇ」  台車に荷物を乗せ、仲良く並んで運ぶ源一郎とガチャピン。  ガチャピンが言うには、この台車は重力だかブラックホールだかを操作し、荷物の 重さをほぼ0とし、更に絶対の安定感で荷物が運べる優れものらしい。  確かに優れてはいるが、源一郎は科学力の無駄遣いの気がしてならなかった。 「柳川さん、なんか俺すげー大事なこと忘れてる気がするんだけど」 「ん?」 「アノ…舞踏会ノ準備トカ…」  ………  少々の沈黙。 「…これはうっかりしていたな」 「あはは、今夜の余興のことでキレた人の発言とは思えないねぇ」 「…ほっとけ。マイン、お前も覚えてたなら言え」 「ス、スミマセン…」 「しかし…だとすると随分のんびりとしてしまったな。ちょっと急いで行くか」 「そーだね、行こうか」  そして柳川達は身支度もそこそこに、職員寮を出ていった。 「いやぁ、こんなにやりがいのある仕事は久しぶり…いや、初めてかもねぇ!!」 「まったくまったく」  調理場の戦いはまだ続いていた。  だが、その作業もいよいよ終盤戦を迎えているのは確かである。 「それにしても凄いですね、これだけの量をこれだけの出来で仕上げられるなんて」 「そうね、小学校なんかの給食のおばさんでもこうはいかないんじゃないかしら」  割烹着の女性達の仕事振りに、心底感心したような声を洩らす秋子とひかり。 「わはは、そんなこと言ったら一介の主婦(のはず)のアンタ達の仕事振りの方がよ っぽど不思議だよっ!!」 「「「そうそう!!」」」  女性達の、威勢のよい笑い声。 「あらあら」 「これは一本取られたわね」  そう言う秋子とひかりも心底楽しそうだった。  喧騒は、まだまだ終わらない。 <おわり>
 ERRです。  妙な話になってしまいました。エキストラの存在感が強い感じですし(笑)  普段目立たない人を使ってみました。  …MOON.からも(死)  ああ、晴香っていくらなんでもここまで暴力的じゃないよなぁ…(笑)< 笑うな
 ☆ コメント ☆ セリオ:「晴香さんって…………」(−−; 綾香 :「元気があって良い感じじゃない。気が合いそうだわ」(^^) セリオ:「気……合うでしょうねぇ。おそらく」(−−; 綾香 :「なによぉ。なーんか含んだ言い方ねぇ」(−−) セリオ:「いえいえ、そんなことはありませんよ」(−o−) 綾香 :「むー」(ーーメ セリオ:「それはさておき……なんか、由依さんって他人に思えないです」(;^_^A 綾香 :「あはは。余計な一言をボソッと言うところなんかは確かにそっくりね」(^ ^; セリオ:「近くに凶暴な人がいるところとかも似てますしね」(−o−) 綾香 :「はい? なんか言ったかしら?」(ーーメ セリオ:「いーえ、なーんにも。      …………お互いに頑張りましょうね、由依さん」(;;) 綾香 :「むー」(ーーメ



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