「たさいシリーズ」番外・超絶外道編『或いはこんな多災の予感』

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 ……朝がやってきた。優しい日差しが俺の頬を撫でるのを感じていた。
「浩之……。ねえ、浩之」
 耳元で優しい声が聞こえる。あいつが俺を起こしに来てくれたんだな。
「浩之、早く起きないと、朝ご飯冷めちゃうよ?」
 まったく、こいつは昔っから変わってねえな。
 一緒に住むことになっても、この世話焼きぶりは相変わらずだな。
「ねえ浩之、早く起きてよ」
「わかったわかった。今行くぜ、雅史」










 気が付くと雅史は居なかった。どうやら、たっぷり十行ほど気絶していたらしい。
 ……ちょっと待て。今、俺はなにを口走りました? っていうか、なんで雅史が起こしに来ますか?
 いつもならあかりが「浩之ちゃん、早く起きてよ」って起こしに来て、んで俺が、キスしてくれなきゃ起きてやらん。などと妄想していると「さっさと起きんかい!」と委員長がハリセンと共に鋭いツッコミをかましてくれて、しかも委員長に妄想の内容がしっかりバレていて、それをネタに揚げ足取られたりしちまったりして、 んでもってあかりが「もう、しょうがないなあ」って顔した後におはようのキスをしてくれる。
 といういつもの朝はどこにいった!? そうだ、これは夢なんだ。そうに違いない。
 自分で自分をなだめつつ、着替えを済まして一階の居間に降りた。
 俺の目の前に居たのは、学生服の上からエプロンをつけて、食卓に座っている雅史の姿だった。
 もちろんあかりや委員長やレミィや先輩や綾香やマルチやセリオや琴音ちゃんや葵ちゃんや理緒ちゃんの姿は見当たらなかった。
「浩之、朝ご飯食べる前に、顔を洗ってきたら?」
 清々しい朝にふさわしい台詞だ。これで声の主が雅史でなければもっと清々しいのだが。
 洗面所に行って、顔を洗って、ついでに歯を磨いて、再び居間に戻ってきても、そこに居たのはやはり雅史だけだった。つまり、これは夢じゃないわけだ。
 するとアレか? 俺がいつも朝寝坊するもんだから、みんなで俺を驚かそうとしてるのか?
 そうでなければ、雅史が俺の家にいて、尚かつ俺の部屋に起こしに来るという不可解な現象は説明が付かない。
 MMRに葉書を出そうかな。と思いつつ、俺は雅史の向かいの席に座る。
 なぜなら椅子が二脚しかないからだ。
 そのうちの一つはすでに雅史が座っているので、消去法により雅史の存在をこの世から消す……違う。俺は雅史の向かいに座らざるを得ない。
「ねえ浩之、何でそこに座るの?」
 椅子に座った俺に向かって、雅史が妙なことを口走った。
「何で……って、ここ以外にどこに座る場所があるんだよ?」
「どこって……、ここだよ、コ・コ(はぁと)」
 そう言いながら、雅史は自分のひざの上を指さした。
「……あのなあ、何で俺がお前のひざの上に座るんだ?」
「えっ? 浩之、妻のひざの上に座るのが、そんなにイヤなの?」




















 今度は二十行ほど気絶した。
「ちょっと待てえぇぇぇっっっ!!! なんで雅史が俺の妻なんだぁぁっっ!!!?」
「あれ? 浩之、半年前に成立したあの法案を知らないの?」
「ん? ああ、一夫多妻を認めるってアレだろ?」
「違うよ。『同性間での結婚を認める』って法案だよ。それで、僕は浩之のお嫁さんになりたいから、その準備として同棲を始めたんだよ。浩之だって、僕が半年前に浩之と一緒に暮らしたい。って言ったら、「ああ、いいぜ」って言ってくれたのに、そんなことも忘れちゃったの?」
 もう、俺の耳に雅史の声は届かなくなっていた。
 ……そうだ、これはどっきりカメラなんだ。どこかに小型カメラが仕込んであって、みんなどこか別の部屋で俺があわてふためくのを楽しそうに見ていて、それで野呂圭介さんが例のヘルメットをかぶりつつ、あのプラカード持って飛び出してきて、「どっきり大成功〜!」とか言うんだ。そうだ。そうに違いない。
「ねえ、浩之……」
 気が付くと、本編のEDCGに負けないくらいの爽やかな微笑みで、雅史が俺を見つめていた。
「僕たち……、友達だよね?」
「違う! ぜってえ違う!」
 全力で否定した。しかし、雅史はさっきの笑顔の当社比1.25倍の爽やかな笑顔で、
「……そうだよね。僕たち、これからは『夫婦』だよね?」
 と、のたまった。





「嘘だあああぁぁぁっっっ!!!」





 おわれ。


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 あとがき。


 皆様おはこんばんにちは。はむらびでございます。

 え〜、この度Hiroさんのサイト「Hiroの部屋」が、
 10000HITを記録したそうで。
 まずは、おめでとうございます。m(__)m

 んで、わたくしも何かプレゼントしたく思い、
 わたくしも「たさいシリーズ」を書いてみましたが……。

 なんでこうなっちゃったかなぁ?(^^;

 というわけで、皆様にこの作品を捧げます。
 受け取って下さい。

 ……そこ、逃げるな(笑)。


 はむらびでした。



 えっと、Hiroです。

 最初『返品不可』というタイトルのメールが届いた時は何事かと思いましたが(^ ^;;
 返すわけないじゃないですか、こんな面白いのを(笑)
 ほんと、ひとりでゲラゲラ笑ってしまいました。

 幸せそうだなぁ、雅史。うんうん、良かった良かった。
 浩之も末永くお幸せに〜〜〜。

 はむらび様、本当にありがとうございました〜〜〜\(^▽^)/




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