「私立了承学園番外編」
それゆけ あきこちゃん

Write by 聖悠紀


第ニ話 保健室ぱにっく!




「記憶喪失ね」
「記憶喪失ですか・・・・・・」
「そう、それと幼児退行もね」
「はぁ・・・」

商店街での出来事のあと、
俺は、秋子さんを学園の保健室まで連れて来て、
メイフィア先生に見てもらうことにした。
色々不思議なことがある了承学園では、
病院より、学園の保健室の方が信頼できるんだけど、メイフィア先生はなぁ・・・
真面目にやってくれるといいんだけど

「しかし、一体どうして・・・」
「さぁ?」
「さぁ、って解らないんですか?」
「ま、そんなとこね」
「そんな無責任な、じゃあ、秋子さんは元に戻らないんですか?」
「かもしれないわ、でも、頭を打ったショックでこうなったのなら・・・」

なにやら、絵の中に顔を突っ込んで、ごそごそと探し物をしているメイフィア先生だが
みょ〜〜〜に、いや〜〜〜な予感がするんだよなぁ・・・

「あ、あったあった、もう一度、頭に強烈なショックを与えれば治るかも」

絵の中から、巨大な100tハンマーを取り出して、大きく振りかぶり、
秋子さんめがけて振り下ろそうと・・・って

「ちょっとまて〜〜〜〜い、そんなので殴ったら、死んでしまうわ、
 あんたそれでも保険医か〜〜〜!!」
「や〜〜〜〜〜」

怖がる秋子さんを庇い、メイフィア先生を軽く睨みつけながら、突っ込みを入れるが、
ほんと、こういう強引な所は、魔族の者って感じがするよ。

「や〜〜ね、ちょっとした御茶目じゃない、そんなに怒らないでよ」
「・・・その割には目がマジだったぞ」
「そんな細かいこと気にしちゃイ・ヤ(はぁと)」

この人、本気で治す気あるのかな・・・
こんなことなら、素直に病院にいけばよかった。

「おにいちゃん、おにいちゃん」

ここに来たことを、ちょっぴり後悔していた所、腕の中にいた秋子さんが声をかけてきた。
へ? 腕の中?
のわ〜〜〜〜、さっき庇った特、秋子さんを思いっきり抱きしめ、そのままだった!!

「あ・あ・あ・秋子さん、す・すみません、すぐ離れます。」
「うにゅ? そんなにあわてて、へんなおにいちゃん、
 それにあきこのこと、「秋子さん」ってよぶのもへんだよ。」
「で、でも秋子さんは小さい頃からずっと秋子さんだし、
 こんな状態になっても、俺にとってはやっぱり秋子さんだから
 できれば、秋子さんは秋子さんのままがいいかなって・・・」
「・・・・・・・」

秋子さんが静かなのに気付き、秋子さんを見ると、さっきまで笑っていた顔が
なんか、泣きそうな顔をしている。

「うぅ・・・」
「秋子さん?」
「うぅ・・・・ひっく」
「あ・秋子さん、どうしました?」
「や〜ぁ、おにいちゃんが、むずかしいこといって、あきこをいじめる〜〜〜」

みるみる瞳に涙が溜まってきたと思ったら、いきなり大声で泣き出してしまった。
一体何が原因?
もしかして俺? 俺が原因? 俺が悪いのか?

「あ〜〜あ、泣かせちゃった〜〜
 秋子さん泣かすなんて、祐一君極悪ねぇ〜〜」

ややパニック気味の俺を、メイフィア先生がさらに追い討ちをかけるが
今はそんなことにかまっている暇はない。

「あぁ・・どうしようどうしよう・・・メイフィ・・・」
「や〜〜よ、自分でまいた種は自分で責任持ちなさい」

助けを求めようとした瞬間、クギをさされてしまった。
うぅ、自分でなんとかするしかないらしい。
とりあえず、秋子さんに泣き止んでもらわなくては・・・よし!

「秋子さん、すみません、泣き止んでください」
「やぁ〜〜〜・・・ひっく、えっく」
「え〜〜〜と、どうしたら泣き止んでくれますか?」
「ひっく・・・あきこのこと・・・えっく、ちゃんとあきこってよんでくれる?」
「そ・それは・・・」
「よんでくれないの・・・ひっく」
「あ〜〜〜呼びます、呼ばせていただきます。もう喜んで!!」
「ほんと?」
「ホントホント、ね、だから泣き止んであきこちゃん」
「うん!」

ふぅ〜〜〜、何とか泣き止んでくれた。
しかし、さっきまで、泣いていたのが信じられないぐらい、にこやかな笑みだなぁ・・・
やっぱり、どんなことが起こっても、秋子さん・・・じゃなかった、
あきこちゃんは笑顔が一番似合うな。

「ふむ、ロリータキラーの素質があるみたいだな・・・メモしておかなくては」
「ぶっ、な・なに、変なこと言っているんですか! それにそんなことメモらないでください!!」

あきこちゃんの笑みに見とれて、少しぼ〜っとしていたら、この人は一体何を言いだすんだ。

「そんなに怒らない怒らない、秋子さんが元に戻れるよう、こちらも色々調べてみるから」
「本当ですか?」
「なに、信じられないわけ?」

今までの行動をどう理解すれば、信用に値すると思えるんだろう、この人・・・

「とにかく、元に戻す方法は、こっちに任せて、それまでの間、秋子さんの面倒たのんだよ。
 秋子さんは、学園になくてはならない人なんだから」
「はい、任せて下さい」
「それと・・・いたいけな秋子さんに、へんな事しちゃダメだよ」
「するか〜〜〜〜!!」

まったく、この人どこまで本気かよく解らない・・・
本当にこの人に任せて大丈夫なのか、ちょっと不安になってきた。


 ――くい くい


ん? 誰だ俺の服の袖を引っ張るのは?
って、あきこちゃん?
一体どうしたんだ

「どうしたの、あきこちゃん」
「ねぇ、おにいちゃん、へんなことってなに?」


 ――ごすっ


思いっきり、壁に頭を打ちつけてしまった・・・

「おお、見事なこけっぷりだな。」
「あんたが原因だろう!!」

・・・頭痛がしてきた。
早いこと、ここから出ないと、俺の精神が参ってしまう。

「ねぇねぇ、おにいちゃん、へんなことってな〜〜に」

あきこちゃん、まだ尋ねてくるし・・・

「あ、あきこちゃん、なんでもないんだよ」
「そぉ?」
「さぁ、そんなことより、お家に帰ろう」
「おうち? あきことおにいちゃん、いっしょのおうちにかえるの?」
「そうだよ、これからずっと一緒にいるからね」
「わぁ・・・ほんと、あきこうれしいなぁ」
「そうかい?」
「うん、うれしぃ」(ちゅっ)

『ちゅっ』って、それに頬に感じる柔らかいこの感触は、もしかして『ほっぺにちゅっ』!!
あ、秋子さんにキスしてもらえるなんて・・・
へへへへ、なんかちょっとラッキーかも

「少年、鼻の下延びているぞ」
「い・いや、これは、そ・その・・・」
「さっき、注意したのに、もう手を出すとは・・・もしかして、幼女趣味?」
「ちが〜〜〜う!!」
「そうかい? 君の妻たちには、幼児体型や精神年齢の幼い子がたくさんいるからな
 否定しきれない物はあるだろう」
「そ・それは・・・」
「まぁ、とりあえず、ここ出て行く前に、扉の横の鏡を見ておいたほうがいいぞ、
 君自身の身の安全のためにもな」
「はい?」

扉の横にある鏡を見ると、メイフィア先生の言いたいことがすぐにわかった。
さっき、秋子ちゃんがキスしたところに、薄く口紅がついていたのだ
こんなの付けて家に戻ったら、半殺しじゃすまない・・・
一応、先生に感謝しなくちゃな。


鏡を見ながら、口紅のあとを綺麗にぬぐう、
あきこちゃんが、ちょっぴり寂しそうな顔をしていたのが気になるけど
ここは、あきこちゃんより、自分の身の方が大切だから・・・ごめんね、あきこちゃん
しかし、秋子さん、相当幼児化しているなぁ、
あの感じだと、たぶん幼稚園児か小学校1,2年生ぐらいの幼さって言った所かな


 ――ドタドタ・・・・・・・


なんだ? この遠くから聞こえる足音は・・・


 ――ドタドタドタドタ・・・


だんだん近づいてきている
やな予感がするなぁ・・・避難しておいた方がいいか・・・


 ――ドタドタドタドタドタドタ ガラッ! ドカッ!


「おぶっ!」
「秋子〜〜〜〜〜 記憶喪失って本当なの、私のことも覚えていない?」
「理事長〜〜〜〜 大丈夫ですか、
 待っててください、私がすぐに元に戻る方法を探し出しますから」

いててて・・・突如保健室に入ってきた人物に跳ね飛ばされ、壁とキスしてしまった。
一体誰が入ってきたんだ?
ひかりさんにガディム?

「いたいよ〜〜 おばさん、はなしてよ〜〜 それに、おにいちゃんが〜〜〜」
「お・おばさん〜〜〜〜〜〜!!」


 ――ピシッ


なにやら、石化したような音が、ひかりさんから聞こえてきたような気がするが・・・

「ねぇ、おにいちゃん、だいじょうぶ? けがない?」

動かなくなったひかりさんを無視して、あきこちゃんが、俺に声をかけてきたその時


 ――ガラガラガラガラ・・・


音を立てて、ひかりさんが崩れ落ちてしまった。

「ああ、校長しっかりしてください!」
「あぁ・・・私もうだめ・・・生きていけないわ・・・」
「そ、そんな、理事長だけでなく、
 校長まで倒れてしまったらこの学園はどうなるんですか」
「私が・・・おばさんだなんて・・・おばさん・・・おばさ・・・・」
「校長〜〜 校長〜〜〜〜〜!!」

ひかりさん、気の毒なぐらい、落ち込んじゃてっるよ。
自分と同じ年齢の人に『おばさん』って言われたことがショックだったんだろうなぁ・・・
すみませんひかりさん、今は耐えてください。
あきこちゃんが元に戻ったら、きっとお詫びに行きますから。


「ねぇ、おにいちゃん、おにいちゃんてば〜〜」
「あ、なんだい、あきこちゃん」

いかん、いかん、ひかりさん達に気を取られて、
あきこちゃんを心配させてしまったみたいだ。

「どこもいたくない? だいじょうぶ?」
「大丈夫だよ・・・いちちちち」
「どこ? どこがいたいの?」

まるで自分のことのように、心配してくれるあきこちゃん、
それ自体は非常に嬉しい、しかし、そんな瞳に涙をためた表情で見つめられたら、
理性が・・・じゃなくて、弱音は言えないな。

「大丈夫、たいしたこと無いから」
「う〜〜〜、でも〜〜・・・あ、そうだあきこがおまじないしてあげる」
「おまじない?」
「うん、いい〜 いたいのいたいのとんでけ〜〜〜♪」

あきこちゃんの綺麗な手が、俺の額を優しくなでる。
あぁ・・・なんか気持ちいい、ホントに痛みが消えていくようだ・・・

「これで痛くなくなったでしょ」
「あぁ、ありがとう、あきこちゃん」
「えへへへ」

無邪気な微笑みを浮かべるあきこちゃん、
これを見れただけで、体の痛みはどこかに飛んで行ってしまうな。

「さぁ、おうちに帰ろうか」
「うん」

二人仲良く手を繋ぎ、家へ帰る俺たち
しかし、家についてから、一騒動も二騒動も起こるなんて、
この時点では、まったく考えていなかった・・・














<つづく>




<おまけ>

「おばさん・・・私がおばさん・・・
 キュートでラブリー、ハートフルでリリカル、
 プリティーでセクシー、華麗で素敵なひかりちゃんがおばさん・・・」
「校長〜〜! 戻ってきてください、校長〜〜〜!!」
「こ、これは、浩之ちゃんや娘たちとのスキンシップが足りないのが原因なんじゃ・・・」
「校長〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「最近、あかりや浩之ちゃん全然かまってくれないし・・・よしっ!
 カディム教頭、私はこれから、藤田家の特別授業を行います。
 秋子のことは頼みましたよ」
「校長戻ってきてくださったんですね。
 解りました、必ず元に戻る方法を探して見せます!!」
「それでは、よろしくお願いします。
 浩之ちゃ〜〜〜ん、あかり〜〜〜、そして娘たち〜〜〜
 今日はた〜〜〜ぷりスキンシップしましょうねぇ〜〜〜♪」

<おわり>


<あとがき>
あれ? 本当なら、相沢家で妻たちとご対面って話だったのに
そのまえの、保健室の時点で話が終わってしまった(^^;
やっぱ、ひかりさんとガディムを出したのがいけなかったかなぁ
しかも、ひかりさんはちょっと壊れぎみだし・・・
あぁ・・・ある人の反応が怖い(^^;;;

さて、次回はいよいよ相沢家の妻たちとご対面です。
一体どんな騒動が起こるのか、そして、
あきこちゃんの無邪気な誘惑に祐一は理性を保つことが出来るのか、
それは作者にも解らない(ヲイ)
それでは、次回第3話をお楽しみに〜〜〜



 ☆ コメント ☆ 綾香 :「あらあら。秋子さんってば、かんっぺきに子供」(^ ^; セリオ:「ホントですね。見事なまでの甘えっぷりを披露してますし」(;^_^A 綾香 :「これを目の前で見せ付けられることになるのかしら?      名雪や香里たちも大変だわ」(^ ^; セリオ:「まったくです」(;^_^A 綾香 :「まあ、端で見ている分には面白そうだからOKだけど」(^〜^) セリオ:「……なにげにオニ発言ですね」(−−; 綾香 :「やーねー。冗談に決まってるじゃない、冗談に」( ̄▽ ̄) セリオ:「……………………。      取り敢えずは、そういうことにしておきましょう」(−−; 綾香 :「と、取り敢えずって……」( ̄▽ ̄; セリオ:「あ、そうだ。オニ発言といえば、秋子さんの『おばさん』。      あれも、なかなかにきついですよね」(;^_^A 綾香 :(うわ。その話題を出すか)(@@; セリオ:「確かに、そう呼ばれても不思議ではない年齢なんですけどね」(;^_^A 綾香 :(の、のーこめんと)(@@;;; セリオ:「どんなに若々しくても、いい歳なのは事実ですし」(;^_^A 綾香 :(ちょ、ちょっと〜。その辺でやめといた方が……。      …………って、やばっ!)(@@;コソコソ セリオ:「ですが、普通は面と向かって言えないですよねぇ。      ひかりさんに対して『おばさん』だなんて……」(;^_^A ひかり:「セーリーオーちゃーーーん」(^^メ セリオ:「ふにゃっ!」(@@;ビクッ ひかり:「わたしが何だって?」(^^メ セリオ:「ひ、ひ、ひ、ひかりさん! い、い、い、い、い、何時の間に!?」(@@;;; ひかり:「そんなの気にしなくてもいいのよー」(^^メ セリオ:「そ、そ、そうですか」(@@;ビクビク ひかり:「そんなことより。ねえ、セリオちゃん。      これからわたしと、ちょーーーっとお話ししない? あそこの体育館の裏で」(^^メ セリオ:「あ、あうあう。ま、まーたこんな展開ですかー?」(T△T) ひかり:「さっ、行きましょう♪(ズルズル)」(^^メ セリオ:「いやーっ! お話しはいやーーーーーーっ!      こんなオチはいやーーーーーーーーーーーーっっっ!!」(T△T) 綾香 :「……………………」(−人−)ナム



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