2000TYPE−MOON 『月姫』

「月姫蒼香がやってきた(前編)
  秋葉ちゃんの社会実習 番外編


 

月姫蒼香が遠野家の屋敷に来る前日・・・
秋葉がアルクェイドとシエルを呼び出した

「いもうとー、どうしたの?」

「何かご用ですか?」

挨拶もなしにいきなり用件を聞く2人だが、仕方のない事かもしれない
それほどまでに秋葉からこの2人を呼び出すのは珍しいのだ

「・・・アルクェイドさん、その「妹」はやめて頂きたいのですが・・・
とりあえず用件を言いましょう」

アルクェイドの相変わらずの言葉にむっとするが話を進める秋葉

「単刀直入に言います。 明日から2日間兄さんに・・・、
いいえ、屋敷に来ないで頂きます」

「何よそれー!? おーぼーだー!!」

「ど、どういう事ですか!?」

秋葉の言葉に大声で驚きならが反抗する2人
だが、そんな事を無視して紅茶をすする秋葉は・・・

「どうもこうも言った通りです」

「秋葉、なぜだ?」

秋葉のとなり(強制的に)で同じく紅茶を飲んでいた志貴も理由を聞き始めた
ちなみにレンは猫の姿で志貴の膝の上で丸くなっている
翡翠と琥珀は志貴の後ろに立って控えている

「わからないのですか? 兄さん?」

逆にジト目で聞き返され、考え始めた
翡翠も考えているようだが、琥珀は笑顔で成り行きを見ている

「わかりました、それでは鈍い兄さんに説明します。
明日は何があるかご存知ですね?」

「ああ、確か秋葉の友達が来る日だろ?
たしか・・・、月姫蒼香さん?」

「ええ、そうです。 そこでわかりませんか?」

「・・・全然」

「はぁ」

「・・・!」

志貴の返事に呆れる秋葉だが、翡翠は気が付いたようだ

「毎朝毎朝そこのお2人が屋敷に入り込んで暴れている光景を一般の人に見せるつもりですか?」

「・・・あ」

秋葉の言葉にようやく気付いた志貴だが秋葉の話は続く

「その為に私と兄さんの朝の時間を削られ、夜でもお2人の暴走にまき込まれ・・・」

などなど続くがだんだん秋葉の髪が紅くなっていくのを見た志貴は、
慌ててなだめた

「あ、秋葉、充分に理解できたから落ち着け!」

「・・・そうですか」

「ほっ」

秋葉をなだめながら志貴は改めて考えた

(確かに俺にとっては日常的(?)な事だけど普通はそうは行かないよな・・・)

そんな光景を見せたらどうなるだろう容易に想像できる
確かに充分すぎる理由だ
しかし・・・

(秋葉、兄はお前が1番心配なんだよ・・・)

と口には出さない
さすがに命は欲しいようだ
だが秋葉はそんな志貴の考えを見通したようなタイミングで話を続ける

「もちろん私も気を付けますが、全く関係のない貴方達はいないのが最善の策です」

「それじゃ、レンもそうじゃないの!」

アルクェイドの言葉にレンは志貴の膝の上からジャンプして・・・

ポン!

元の姿に戻った

「わたしはずっと猫の姿でいるので、『元』ごしゅじんさまの様に暴れて、志貴さまに迷惑をかけません」

「ありがとう、レンちゃん」

レンの言葉に嬉しかったのか、志貴は笑顔(女性瞬時にKO)でレンの頭を撫でた
そんなダブル攻撃にKOしたレンは真っ赤になり下を向き、撫でられていた
一方、アルクェイドはその光景に嫉妬メーターが上がり・・・

「やっぱりわたしも志貴と一緒にいるー!」

両手をブンブン回しながら体全体で抗議を始めた
シエルも黙っているがこの理由を改善することを考えていた

「あ、あのね・・・」

さすがに呆れた秋葉だが、志貴の後ろにいる琥珀が提案を出した

「あのー、秋葉さま。 このまま無理やり決めてもお2人は必ず来ますよ。
それなら、今日からここに泊まっていただいた方がよろしいんじゃないですか?」

「こ、琥珀!?」

「ね、姉さん!?」

「あ、もちろん行動は自粛してもらうと約束してですよー」

一瞬、秋葉と翡翠は驚いたが琥珀の言葉に納得し始めたが・・・

「でも、この未確認生物が暴れないとは・・・」

確かに今までの経験から200%守れないだろう
志貴とレンは黙って成り行きを見ていた
どうやら、決断は秋葉に任せるようだ

「もし約束を破ったらどうするのですか?」

「そうですねー、私としては薬の実験台になっていただきたいと思うのですけど・・・」

「こ、琥珀さん・・・、それはちょっと・・・」

「えー、残念ですー」

翡翠のもっともな疑問な事を琥珀は笑顔で答えると、
さすがにまずいと思い志貴が止めたようだ

「琥珀、これは私の事だから私が決めます」

「ではどうしますか?」

「そうね・・・
約束を守れなかったら、1ヵ月間兄さんに会わないでいただきます」

「にゃにー!!」

「そ、それは・・・」

「変更はありません。 どうします?」

余裕しゃくしゃくの秋葉を無視して真剣に悩む2人
大人しく2日間我慢するか、リスクの多い(一応自覚している)この条件を受けるか・・・

悩む事1分・・・

「いいわよ、妹。
受けて立とうじゃない」

「私もその条件で構いません」

「わかりました。
翡翠、琥珀、2人を部屋に案内して」

「はい」

「わかりましたー」

蒼香に気付かれないように対策する秋葉
準備を進めていく中、志貴は考えていた

(これぐらいで2人が大人しくするのか・・・
それに秋葉、やっぱりお前も心配だよ・・・
翡翠とレンちゃんは大丈夫だろう・・・
琥珀さんは大丈夫・・・なのだろうか・・・
不安だ・・・)

志貴の不安を無視して時間は確実に進んでいく・・・

 

 

次の日・・・

浅上女学院の放課後・・・
秋葉と蒼香は屋敷向かう為、廊下を歩いていた

「そういえば、秋葉」

「何か?」

「その兄は家に帰っているのか?」

「ええ、兄さんもすぐに帰ると言っていたので、
私達が着く頃にはいるでしょう」

「そうか」

「こちらもお聞きしたい事があるのですが?」

「何だ?」

蒼香の質問に答える秋葉だったが、
前から疑問を持っていた事を訊ねた

「蒼香がそこまで他人というより男性に興味を持つのは、私と知り合って初めてですね」

「ああ、自分でも多少驚いている」

「どうしてそこまで?」

「そうだな・・・」

蒼香は立ち止まり廊下の窓から外を見た

「まず、会ってみたいと初めに思ったのは秋葉の想い人はどういう男だと思ったからだ。
それからはお前の相談に乗って色々話を聞く内に、その遠野志貴自身に興味を持ち始めた」

「・・・・・・」

秋葉も窓から外を見ながら蒼香の話を聞いていた

「秋葉の他に数人からも好意を持たれているのにプレイボーイなどでは決してなく、
色恋沙汰には鈍いのに、自分を犠牲にしてでもその人達を守る優しさを持っている」

「・・・・・・」

「おそらくお前達に何か危険があれば自分を犠牲にしても、
時にはその大切な人達にも恨まれる事があっても、
気付かれないように解決しようとするだろう。
それを解決する力があるかは別にしてな」

「っ!!」

確かに秋葉も身に覚えがある
幼い頃、暴走した秋葉の本来の兄『四季』に襲われそうになった時は身代わりになった
最近の事件の真相であるネロとロアと融合した四季の時もそうだった
しかも、志貴にはそれを解決する力もあった
それに事件の大事さは違うが志貴のバイトの件もそうだ
秋葉に秘密にして文句を言われても志貴は続けた

「その性格はきっと変わる事はないだろう」

「・・・そうですね」

「だが、やはりその本人に会ってみたいのが今は1番の興味だな」

「・・・もしかしたら、貴方の方が私達より兄さんの事を理解しているかも知れませんね」

「・・・かもな」

蒼香は秋葉の話を聞いただけで、そこまで志貴の事を理解しているのだ
もし秋葉が話を聞いていただけでそこまで理解できるかと言われれば自信はない

「・・・では、その本人に会いに行きますか」

「・・・ああ」

再び歩き始めた秋葉と蒼香
だが、蒼香はもう1つの理由を言っていなかった

(秋葉には悪いがもしかしたら、私も遠野志貴に好意を持っているかも知れない。
それを確かめる為にも実際に会ってみたい・・・)

その想いに似た気持ちを持ちながら歩いて行く

 

「おかえりなさいませ、秋葉さま」

「おかえりまさいませー」

屋敷に着き門をくぐると、翡翠と琥珀が出向かいに来ていた

「ただいま、翡翠、琥珀。
こちらが友人の月姫 蒼香さんよ」

「月姫 蒼香だ。よろしく」

「志貴さま付きのメイドの翡翠といいます。
こちらこそよろしくお願いします」

「秋葉さま付きの琥珀です。
よろしくお願いしますねー」

お互いに自己紹介を済ませると、秋葉は翡翠に志貴の事を訊ねた

「翡翠、兄さんは帰っているのかしら?」

「それが・・・」

「どうしたの?」

「先程、志貴さんから連絡がありましてシエルさんに付き合って夕食を食べてくるので、
遅くなるそうですー」

「何ですって!?」

翡翠が答えにくそうだったので変わりに琥珀が答えたが、
見事に怒りが爆発した
だが、寸前で髪が紅くなる事を押さえる所がまだ理性があったようだ

「落ち着いてください、秋葉さま!」

「これが落ち着けるわけがありません!!
どうせ、シエルさんがわがままを言って兄さんを困らしているはずです!!」

「それと秋葉さま達の夕食には帰って来て、お茶は付き合うと伝えてくださいと、
言ってましたよ」

「・・・そうですか」

そのひと言でなんとか怒りを押さえた秋葉

「では、琥珀。
私たちは部屋に戻るのでお茶を持ってきて」

「わかりましたー。
それでは失礼しますねー」

「失礼します」

翡翠と琥珀はそれぞれの用事に取り掛かった

「・・・秋葉」

「何か?」

「・・・強敵だな」

「なっ!?」

蒼香はそれとなく2人を観察していたのだ
その結果がそのひと言だった

「この屋敷にいるのはそれだけか?」

「いいえ。
後、アルクェイドさんと兄さんの飼い猫のレンがいます」

「そうか、アルクェイドの事は聞いていたが、レンとは?」

「兄さんが拾ってきた黒猫です」

「そうか」

レンの事は蒼香には話していなかったのだ
だから蒼香が疑問に持つのも当たり前だが、
秋葉の口調には大分のトゲが入っていた

 

 

それから秋葉の部屋でお茶を飲みながら話していたが、
そろそろ夕食の時間になる頃に玄関が騒がしくなった

 

「ただいま、翡翠」

「おかえりまさいませ、志貴さま」

「お邪魔しますね」

「やっほー」

「・・・志貴さま」

「ははは、という事だから」

「わかりました、姉さんには夕食は2人分と良いと伝えておきます」

「ごめん。
それと秋葉は・・・?」

「秋葉さまはもちろん帰っています」

「その・・・、不機嫌だった?」

「はい」

「そ、そうか・・・」

「秋葉さまとご友人もお待ちなので、着替えた後食堂にいらしてください。
私は秋葉さまを呼んできます」

「ああ、わかった」

 

 

「帰ってきたようですね」

「その様だな」

相変わらずの志貴の会話に呆れている秋葉に、
おかしそうな笑顔で答える蒼香

 

コンコン

 

「秋葉さま、志貴さまがご帰宅になりました」

「ご苦労様。
兄さんに夕食の前にお話があるので、『お1人』でここに来るように言っておいて」

「・・・わかりました」

「秋葉!?」

「挨拶は早めに済ませるのがいいです。
自己紹介をした後すぐに食事もなんですし」

蒼香にとって珍しく驚いたが、秋葉は当然と言うように答えた

「それはそうだが・・・」

「蒼香?」

「い、いや、なんでもない」

「・・・緊張していますの?」

「そ、そんな事はない!!」

「・・・」

誰が見ても緊張しているはずだが、秋葉は黙った
そんな中、少し時間が経ち・・・

 

コンコン

 

「秋葉、俺だけど」

「っ!!」

「・・・蒼香?」

「あ、ああ」

「よろしいですね・・・」

「ああ、頼む」

「では、兄さん。
入ってきて結構です」

 

ガチャ

 

「ただいま、秋葉。
それと、そちらが・・・」

「は、はじめまして、月姫 蒼香です」

「はじめまして、秋葉の兄の遠野志貴です」

緊張した蒼香と笑顔で自己紹介する志貴
これが2人の初めての出会いだった

 

 

「続く」

 

 

 


 

あとがき

どうも、おひさしぶりです。
siroです。
ようやく番外編を出せました。
私は「歌月十夜」は手に入れていません。
その為 レンと蒼香の性格はわかりませんので、
そのままにしています。
早くほしいよ・・・
そこの所は理解していてください。
この番外編はそんなに長くありません。
後、1話か2話で終る予定です。
では次回で・・・



 ☆ コメント ☆ 綾香 :「蒼香さんが遂に登場ね」(^^) セリオ:「はい。満を持して、って感じですよね」(^^) 綾香 :「さてさて。蒼香さんも志貴さんに心を奪われてしまうのか」(^^) セリオ:「見物ですねぇ」(^〜^) 綾香 :「いや、まったく」(^〜^) セリオ:「……なにげに、それ以上に見物な事もありますが」(;^_^A 綾香 :「アルクェイドさんとシエルさんが2日間もおとなしくできるか、ってことでしょ?」(^ ^; セリオ:「はいです」(;^_^A 綾香 :「普通に考えれば……無理よねぇ、やっぱり」(^ ^; セリオ:「ですよねぇ。でも、意外と我慢し通しちゃったりして」(^^) 綾香 :「どうなることやら。本当に見物よね」(^〜^) セリオ:「はい。      ……ところで……ふと思ったのですが……」(^^) 綾香 :「ん? なに?」 セリオ:「おとなしくしているだなんて、      綾香さんだったら2日どころか2時間も保たないでしょうね」(^^) 綾香 :「し、失礼ねぇ」(ーーメ セリオ:「……否定できるんですか?」(¬_¬) 綾香 :「……………………」(−−;




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