皆さん、こんにちは。私はこの話の案内人を勤めさせて頂く、トモノブ・アイナです。
 この話は、ちょっと違った未来に存在する、藤田家の物語です。

 みんなの未来は光に満ちているか

 序章
『それは失って始まった』

 そんな・・・そんな馬鹿なことが・・・。
『我が社は・・・我が社は・・・倒産と言う形を取らざるを得なくなりました』
 記者会見での発表は、たちまち日本中をパニックに陥れた。
 不況にもかかわらず、来栖川グループはメイドロボの開発・発売で繁栄の絶頂期だった。が、比例しておごり高ぶりも絶頂に達していた。誰の目にも無謀な業務拡張をしていた。気がついた時はもう遅かった。転落はもう止められなかった。
「だめです!来栖川鉱業、手形が落ちません!」
「来栖川証券、手形が落ちません!」
 次々と伝えられる、手形不渡りの知らせ。そして、グループの崩壊・・・。
 かろうじて生き延びられた系列企業は、ほとんどが、別の大企業グループに買収、あるいは吸収合併された。
 天下の来栖川でも、不況には勝てなかったのだ。こうして来栖川グループは、事実上崩壊した。

 何もかも、すべては終わってしまったのだ!!
 
 引責辞任した来栖川の総帥、つまり綾香と芹香の祖父は、家族ともども屋敷を追い出されてしまい、そのまま行方不明となってしまった。
 執事のセバスチャンこと長瀬は、心労が重なって倒れ、入院してしまった。

 そして・・・藤田家も大ピンチにさらされた。
 来栖川家からの、金銭の援助は当然なくなった。そして、大学を卒業したら、好条件で来栖川グループに就職する、将来は安泰、もう何も心配なし・・・この予定が粉々に壊されてしまった。

「そんな・・・じゃあわたしら、どうなるんや!?」
 智子の声が居間に響く。みんな屋敷の居間に集まっている。そこにあった家具は売られてしまい、殺風景ながらんとした部屋だった。いや、家中の家具と言う家具は全部売られてなくなってしまった。
「もちろん、この屋敷を出ていかなくちゃならないわ。もうここは売りに出されてる」
 綾香が言った後、長い沈黙があたりに流れたが、浩之がしばらくして、
「とにかく、荷物をまとめよう。とりあえず、俺ん家に行こう。狭っ苦しいけど我慢してくれ」
 みんな、無言で立ち上がると、荷物の整理を始めた。

 荷物をまとめ終えて、浩之たちは屋敷を出た。
 一行はとぼとぼと、重い足取りで浩之の家に向かった。

 家に到着した一行は居間に集まり、今後どうするかを考える家族会議を開いた。前にいた屋敷とはうって変わって、ぎゅうぎゅう詰めだった。
「今までの生活を支えてくれた、来栖川の家があんなことになってしまった。これからどうするか、考えないといけない」
 浩之が真剣な面持ちで言う。
「まず最初に、みんなの気持ちを聞きたい。ここに残るも、実家に帰るも自由だ」
 一同、しんとなる。
「正直言って俺は、みんなにいてほしい、大事な家族だから。でも、これからは苦しい生活が待っている。つらい思いはさせたくはない。だからとりあえず、今は別々に暮らそうというわけだ。これもみんなを思えばこそだ。だが強制はできない。そこで聞きたい、みんなはどうしたい?」
「わたし、ここにいたい!浩之ちゃんと離れるなんていや!」
 あかりがまっ先に言った。続いて芹香、レミィ、マルチ、綾香が、
「わたしもです」
「アタシ、ヒロユキと離れたくないヨ!」
「浩之さんと離れるなんていやですぅ!」
「あたし、浩之といたい!」
 そして葵、琴音、理緒、智子、セリオも、
「わたしも先輩と一緒にいたいです!」
「わたしもです!」
「わたしも!」
「わたしもやで!」
「わたしもです!」
 全員、異口同音に浩之と一緒にいたいと言った。
「そうか、わかった。でも、大変だぞ。苦しい生活だぞ」
「覚悟してる!」
 あかりの言葉に、みんな大きくうなずいていた。
「よし、決まった!じゃあ、これからのことを考えよう」
 ひと息ついて、浩之が続ける。
「あんなことになっちまったのは、非常に残念だ。でも俺たちにはどうすることもできない。これからは、不自由しなかった生活費は、自分らで稼ぐことになる。みんな総出でバイトをしなくちゃならなくなった。そうすれば、ひとまずみんな食っていけるはずだ。しかし、以前のような生活は望めないだろう」
「今まで、贅沢しすぎたものね」
 綾香が言う。もっともなことだった。金に不自由しないのをいいことに、無意識にみんな無駄遣いをしていた。買い食いはするわ、服やアクセサリーは衝動買いするわ、ゲーセンで遊びまくるわで、それでも金に困ることはないから、これでまともな金銭感覚が保てたら、むしろ不思議なくらいだ。
 あの真面目なあかりでさえ、栄養をつけるためと言って食材に無用なぜいたくをするようになってしまった。そして理緒までも、藤田家に来るまでの苦しい生活の反動で、無駄遣いぐせがついてしまった。
「わたしたち、成長するどころか、悪くなってたんやな」
「・・・確かにそうですね」
「だけど、くよくよしてたって始まらないぞ!心を入れ替えて、みんなで力を合わせてがんばろう」
 みんなの瞳が輝いた。 
「よし、じゃあ、ここで気合いを入れよう。みんな、右手出して」
 浩之の出した右手の上にあかりが右手を重ねた。そしてみんなが、次々と先に出た手の上に手を重ねていった。
「よーし、心機一転がんばるぞーっ!!」
「「「「「「「「「「おーっ!!!!!」」」」」」」」」」
 黄色い叫び声が、家中に響き渡った。

 こうして新しい生活が始まった。
 バイトの予定、食事当番、掃除当番、買い物当番など、様々な役割分担を決めた。
 食事当番は、あかり、セリオ、葵、琴音が今まで通りやるが、二人一組で交代制となった。その日にバイトのない者がやることになる。
 その他の当番は全員持ち回りとなった。もちろん、浩之もやる。
 食事は、主食におかずが2、3品しかない。これでは浩之、綾香、葵は足りるはずがない。しかし、今はどうすることもできない。ぐっと我慢するしかなかった。
 さて、全員揃っての夕食の時間。
「おかわり・・・って、だめですよね・・・」
 葵がそう言って、茶わんを引っ込めたとき、琴音が、
「葵ちゃん、わたしのご飯、残りでよかったらあげる」
「えっ、でも・・・それ食べたら琴音ちゃんがかわいそうだから・・・」
「いいの、わたしもともと小食だし」
「でも・・・」
「葵ちゃん、せっかくだからもらいなよ」
 浩之が言った。
「それじゃ・・・ありがとう、琴音ちゃん」
 葵と琴音は微笑んだ。
「じゃあ葵ちゃん、あーんして」
 琴音の口まねをして、浩之がふざけて言う。
「やだ藤田さんったら!」
「もう先輩!からかわないでください!」
 琴音と葵が真っ赤になって言う。みんな大笑いだ。
 ・・・今の生活は、まずまずってとこだな。大変な生活だけど、みんな、元気だし・・・ 
 浩之は安心していた。
 だが、もうまもなく、藤田家に大きな嵐が来ようとしていた・・・。

 物語はこれから始まるのです。でも今回はここまで。心機一転、再出発した藤田家ですが、彼、彼女らを襲う大嵐とは何でしょうか?それは次回で。
 (第一章へつづく)
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 あとがき

 どうも、安比奈誠伸(あいな・とものぶ)です。
 寄稿第二弾は、『藤田家のたさいシリーズ』の外伝にしてみました。
 もしも、来栖川家の援助が受けられなくなったら・・・『もしも』の世界です。
 完結までには時間がかかりそうですが、ご了承のほどをお願いします。

 

 


 ☆ コメント ☆

綾香 :「……………………」(^ ^;

セリオ:「……………………」(;^_^A

綾香 :「こ、これは……『IF』の世界とはいえ、かなり思い切った設定になってるわね」(^ ^;

セリオ:「ホントですねぇ。まさか来栖川グループが倒産とは」(;^_^A

綾香 :「まあ、不況だからね。あり得ないことじゃないけど。
     ……某首相は人気は高いけど、これといって成果を上げられてないし……。
     それどころか、下手したら悪化させてるし……」(ーー;

セリオ:「わー! わー! わー!
     そういう社会ネタはやめましょうって。洒落になりませんから。
     ……そ、それにしましても……賛否両論が激しそうなお話ですよね、これ」(;^_^A

綾香 :「そうね。でも、あたしは嫌いじゃないわよ。
     苦難を乗り越えることで更に深まる愛情と絆。
     良いじゃない」(^^)

セリオ:「ですねぇ。次回以降の展開が楽しみです。
     なにやら、まだまだ波乱が起こりそうですし」(^^)

綾香 :「次回以降、か。
     健気なあたしが奔走する姿とか、心優しいあたしが浩之の身も心もあたためてあげる姿とか、
     しっかり者のあたしがみんなを叱咤激励しつつ頑張る姿とか。
     きっと、そういうのが描かれるのよ。そうに違いないわ、うんうん」(^0^)

セリオ:「…………………………………………。
     の、ノーコメント」(−−;;;









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