投稿SS(To Heart)

「努力と天分」

(作:阿黒)

 


「はっ!」

「ひゅっ…」

 しゃっ、と空気の裂ける音が自分の耳元でしたような気がして、俺は思わず首を竦めた。無論、それは錯覚にすぎないとわかっている。わかってはいるが…。

 一瞬の攻防を交わした後、再び俺、葵ちゃん、セリオの見守る前で、綾香と坂下は再び膠着状態に…。

 

 ぴゅっ!

 

 暗黙の了解で引きかけた、と見えた綾香がローキックを小刻みのステップからいきなり繰り出す。が、それを坂下はきれいにブロックしつつ、間合いを僅かに広げた。綾香もそれ以上追撃はせず、今度こそ幾度目かの牽制と様子見の膠着状態に戻る。

「…俺だったら多分ひっかかってたな」

「私も…対応できたかどうか、自信ありません。やっぱりすごいです、綾香さんも先輩も」

 綾香の強さは単純に技のキレだけではない。相手の動き、考えの読みといった心理戦、フェイント等を絡め、二歩・三歩先を見通した攻撃の構築を仕掛ける戦術、鍛錬によるものもあるだろうが、常人離れした反射神経と冷静かつ的確な判断能力、そして――自分の動きを気取らせないこのポーカーフェイス。

 俺みたいな格闘初心者はつい次に攻撃を仕掛けようとする部位を目線で追ってしまうわけだが…綾香などから見ればそれは「次はそこを攻撃するぞ」と予告してもらっているようなものだ。更に筋肉の動きからどのような動きをするか、見るものが見れば予測できるのだそうだ。(だから、何かと上半身裸になっていた故・カンフーアクション俳優のようなことは実戦では不利なのだそうだ。まあ、でもあの人はあれでいいのよね、と綾香は言っていたが)

 無論、達人の域ではそのほんのちょっとした仕草もフェイントとして使われるので、簡単に相手の動きを見切れるわけではないが、綾香の怖いところは全然何でもなさそうな顔をして、いきなりとんでもない場所に正確な攻撃をしかけてくるという…なんていうか、俺レベルからすれば『そんなんありか!?』と言いたくなるような、ほとんど反則技に等しい鉄面皮…というか横着というか我侭というか傍若無人唯我独尊、物理法則に反した変態的インチキ殺法……

「誰がインチキかっ!?」

「あべしっ!」

 まさしくインチキ的ないきなりの綾香キックをくらい、俺は懐かしい悲鳴を上げて吹っ飛んだ。

「す、すごいです綾香さん!今の動き、全然予測できませんでした…って、あああああっ、藤田先輩っ!?」

「…今の綾香お嬢様の行動を予測できる人がいるとすれば、……その方、人類ではありえません」

 とりあえず鼻血は出てないことを確認しつつ、仰向けにひっくり返った俺は三人を見上げた。エクストリーム部の練習場であるいつもの神社の境内…とは名ばかりの空き地。まあ、ひっくり返ったのが地面であることはマシなのだろう。アスファルトの路面に比べれば。畳やマットの上ならなお良かったとか、そもそも蹴られなければ良かったのにとか、そういうことは考えるだけ空しいので無視することにする。

 ひっくり返ったまま、俺はこちらに近寄ってきた皆を見上げた。

 いつものブルマ姿の葵ちゃん。

 寺女の制服に、流石にスパッツを穿いた綾香。

 そして同じくこちらはいつものままの、寺女の制服の…

「ですとりゃあああああっ!!?」

 目が火傷したような気分で、俺は慌てて身を起こした。こ…これは事故だっ!不可抗力というものだっ!

 しかしセリオ…綾香の趣味かもしれんが、意外に…

「?私がどうかいたしましたか、藤田さん?」

「いやっ!何も見てません!見てませんたら見てません武田鉄○風にいうとぼくは見てましぇぇん!!」

「黒のレースとか?」

「おおう、あれってやっぱり綾香の趣味か?」

 何気ない綾香の一言につい反射的に応えてしまう俺。

 ああ、なんて正直者な俺。単なるバカってゆーな。実はわかってるから。

「記憶を失えいっ!!」

 視界の死角から襲い掛かる綾香のハイキック!

 更に離れ際に肘の一撃をもらい、俺は再び昏倒した。…といいつつ、意識は保っているが。

「フッ…ムエタイとはやるじゃねーか、ジョー」

「どこのジョーよ、どこの」

「うわああああっ、藤田先輩っ!!…なんだか事情はわかりませんけど、結構余裕ですね?」

「………」

 とりあえず沈黙を保っているセリオと、葵ちゃんの手を借りて立ち上がると、俺は理不尽暴力女にいちおー、抗議してみることにした。

「おい、綾香」

「…忘れた?」

「…バッチリ忘れました」

 シュッ…シュッ…!

 死神のような目つきで、鉤状に構えた左腕を振り子のように振っている綾香に、何を言えるというのでしょーか。

「…でも、なんで俺の考えてることがわかるんだよ?」

「ん〜〜〜?」

 ちょっぴり考え込んで、割とあっさり綾香は答えてきた。

「自分でもよくわかんないけど、なんかこう、ここんとこにピピッと電波?が来たようなそんな感じ」

「あ、私もよく来ますよ、電波」

「そりゃーセリオはそうだろうけど」

 自分のこめかみを指差してケラケラ笑う綾香。お前ひょっとして宇宙世紀の人?

「…ちょっとあんたら、いい加減にしたらどうなの?」

「あ。ご、ごめんごめん好恵、ソーリーソリー」

 本来の空手部部活の合間を縫って、綾香との組み手の時間を捻出して来ているにも関らず、一人捨て置かれていた坂下は、苦虫を3ダースばかりまとめて噛み潰しながら再び構えをとった。 坂下は生真面目で頑固で、日常生活ではさほど気の長そうな性格とも思えないが、これだけ目の前でおちゃらけられては気を悪くするのも無理はない。まして彼女にとって綾香が相手ならば、練習とはいっても実質、真剣勝負にも等しいだろう。

 再び互いを注視しながら一定の間合いをとってフットワークでグルグル回り、時折思い出したように牽制のジャブや蹴りを放つという、ギャラリーにとっては面白みのない光景が再開されはじめた。

「…綾香さんと先輩、お互い相手の力量はよくわかっていますからね。迂闊な手出しはできません」

「そうだな」

 俺は肯定し、セリオも無言で頷く。ズブの素人ながらもとにかく格闘というものを経験し、また葵ちゃんに綾香という、高校生としてはトップクラスの二人の鍛錬を毎日のように見てきて多少、見る目と知識は養ってきたつもりである。あの単純なグルグル回りを続けながら、その実二人が極限まで気を張り詰め、緊張し、精神的な消耗に耐えているのか。

 その怖さを、実感はできぬまでもおぼろげに感じることはできる。

 だが……

「どちらが勝つでしょう…?」

「若干の不確定要素があり正確な数値は出せませんが、まず90%以上の確率で綾香お嬢様の勝利かと」

 そうなのだ。

 俺程度のレベルでこの二人を分析するというのもおこがましいことだとは思うが、2,3度二人の組手を見てきて、俺なりにこの評価は間違ってはいない、と思う。

 坂下は決して弱くはないと思う。いや実際、地区大会優勝者というだけあってその実力は大したものだと感歎する。

 けれど綾香はもっと強い。

 修得した空手の技の技量に、さほど圧倒的といえるほどの差は、無いと思う。全体的なスピードやパワー、スタミナ、耐久力にも。

 だが技の切れ味、切返し、体捌き、諸々全ての面で、僅かだが確実に綾香が坂下を上回る。更に付け加えるなら、空手をはじめ様々な武術を学んできた綾香の技の多彩さに比べれば、空手一筋…悪く言えば思考が硬直し幅の狭い技しか持たない坂下は不利だろう。

 綾香の技は、様々な武術の良いところだけを、パッチワークのようにただ切り取って貼り付けただけの底の浅いものではない。学んだ技を自らの血肉として吸収し、『綾香』の技として、己のものとして習熟したものだ。最初の頃、それを所詮にわか仕込みの小手先技と侮る坂下は、まずそこで間違っていたわけだが。

 戦術の構成、駆け引き。精神的なタフネスさ。これも、綾香の方に軍配があがる。

 なんというか、坂下は女としては可愛げがない強面で、融通がきかない頭の固い頑固者。なかなか自分の意志を変えはしないが、一旦己の非を認めれば、素直にそれを認める潔さを持っている。

 よく言えば生真面目な正直者、悪く言えば体育会系にありがちな単純バカ。

 少し肩の凝る相手だが、サッパリとしてわかりやすくはある性格である。

 そんな坂下が移り気で自分勝手でワガママで調子屋でお祭り屋でトラブルメーカーで横紙破りで横暴でいい加減で気まぐれな刹那の衝動で生きているくせに、己の利益と興味が絡めばしたたかで抜け目がなくて狡猾に現実的な打算を張り巡らせて人をおちょくるのが大好きな底意地悪さを常備した、激烈非道リーサルウェポン人間極道兵器・綾香の悪辣さに対抗できるわけがない。

「ヒ〜ロ〜ユ〜キ〜〜〜〜〜!?アンタ今、何かスペシャルゴージャスにしっっつれいなこと考えてない!?」

「いえっ!そんなことは決して!」

「藤田さん…」

「先輩…なんだか全然説得力が無いんですけど…」

「…むぅ…何故かわからないが私もなんだかムカツクぞ藤田…?」

 うわ、坂下まで!?う〜〜ん、武闘家ってのは突き詰めるとなんか人間やめちゃってるからな〜。スーパーサイヤ人とか。

「な、セリオ」

「なんでしょう?」

 来栖川重工謹製、次期主力商品メイドロボの試作機であるHMX−13・セリオは鷹揚にこちらを向いてきた。

「ちょっくら聞きたいことがあるんだけど」

「…スーパーサイヤ人は元々宇宙人ですから、厳密にはホモ・サピエンスの範疇には入らないかと思いますが」

「いや、それ関係ないし。大体そーゆーこときいてない」

「ははぁ。…それで私に何のご用命でしょうか?」

「いや…あのさ。さっきセリオ綾香の勝率は9割以上、って言ったよな?」

「はい。概ねそのような意味の事を申し上げました」

「なんでもっと高い勝率じゃねーんだ?100%とは言わないけど、98%くらいとか。

 坂下には悪いけど…俺には、あいつに勝てる要素はまるでないように見える」

 流石に声を潜めて俺達は会話を続けた。話題の当事者達はそちらに気を向ける余裕はなく、傍らの葵ちゃんは二人の先輩の一挙一動を少しも見逃さないよう、完全に集中しているが。

「ですから、不確定要素があると」

「不確定って…なにが?」

「不明です。ですから不確定なのですが」

 なんだかはぐらかされているような気分になって、俺は眉をしかめた。そんな俺に逆にセリオの方が質問してくる。

「藤田さんは、私の推測が誤りだと?」

「………」

 少し考えて。

「いや。妥当な数字だと思う」

「…その根拠は?」

「勘」

 短く言い捨てて、しかしすぐ俺は言い足した。

「っていうか…彼我の力量を測れない坂下じゃないだろう?けど、あいつの顔は…あれは、端から勝負をあきらめて練習と割り切ってる奴の顔じゃないぞ」

 と。

 景色が動いた。

 綾香の半ば牽制のローキックをまたブロックしつつ、坂下が一歩退く。それを綾香が、今度は追った。間合いは縮まらない。綾香の奴、勝負に出る気か?

 だが、更に坂下が引く。綾香もまた追うが、その動きには僅かに躊躇いがあった。やや消極的ともいえる坂下の動き。それは彼女らしくない。あるいは誘いのフェイントか?

 迷いつつも、相手が反撃に出ても対処しうる距離を保って、綾香が追う。当然その前進速度は落ち、若干の間合いが開く。

 たたっ。

 二歩。一気にそれだけ坂下が引いた。逃げている、とも見られかねない坂下の動き。そして、綾香はそこで止まった。

 たっ……

 坂下が、更に一歩。二人の間は目算で2メートル弱の距離が開いている。

 射程距離外。

 互いに相手に攻撃を加えるためには若干の移動を要する距離である。つまり一動作、を付け加えなければいけない。それは相手に隙を与えかねない余分な一動作にもなりえる。跳び蹴りならばまだ届く距離ではあるが、単発の飛び蹴りなど容易に当たるものではないし、安易な跳び込みは無用どころか有害ですらある。

 これは、坂下が守りに入ったということだろうか?

 更に坂下が一歩、後退した。

 それを綾香が一歩、追う。

 ように見えた。

 瞬間。

 

 ざしゅっ!!

 

「なっ!?」

 射程距離外。

 なのに坂下の右足…蹴るのか!?

 届くわけが無い。

 安全距離。間合いの外側。

 まるで地面を滑るように坂下が動いている。

 …いつ、距離が詰まった!?

 …これは…届く!

 

「スライディング・キック!?」

 

 葵ちゃんの、近いのに遠い叫び。

 全ては瞬間。 

 瞬間では征服できない距離がゼロになる。

 狙いは綾香の…踏み出した足!

 そして。

 

 ずどおっ!!

 

「ぐっ…!!」

 倒れていたのは坂下だった。立っているのは、綾香。

「…大丈夫、好恵?」

「あ、ああ…転んだだけだし」

 一瞬だけ躊躇って、差し出された綾香の手をとって坂下は立ち上がった。道着の埃払いながら、バツ悪そうにぼやく。

「…なんで今のに対応できちゃうのよ綾香。絶対決まるって思ったのに」

「あはは。うん、確かに普通ならねー。っていうかあたしも今の、かなりマジでビビったわ。意表つかれたし」

「なら、普通、前に出る!?防御しようとするか後に引くかでしょ!?まあ引いててもそのまま追いつけたけど」

 はあ、と大きなため息をつくと坂下はやや大げさに肩を竦めた。

「まったく。…天賦の才ってのは、怖いわね。真面目に鍛錬するのが馬鹿らしくなってくるわ」

 

* * * * * * * * * * * *

 

 片づけを終えた後、着替えもあって一度部室に戻る坂下と、それに空手部へ出稽古、という名目でついていった葵ちゃんと別れ、俺と綾香、セリオの3人は学校を出た。

 …坂下の奴、どうもまだ葵ちゃんの空手部入りを完全にはあきらめていないようで、今でもたまにこんなアプローチをかけてくる。もっとも、綾香と葵ちゃんが今日みたいに坂下をこっちの練習に誘うのも、実は同じような理由だったりするから、あまり偉そうなことは言えないのだが。

 校門から続く長い坂道を歩きながら、俺は左の綾香に話し掛けた。

「なあ綾香。これからどうする?」

「……」

 少しぼんやりしているようにも見える綾香に、俺はもう一度、言った。

「綾香、今日、これからどうする?ヒマあるか?」

「え?ヒマ?…どうだったっけ、セリオ?」

「今日は16時から日本舞踊の稽古が入っております」

 打てば響くように返ってくるセリオの答えに、綾香は露骨に顔をしかめた。

「えー。やだー。たるいー。…セリオ、なんか適当な理由つけてキャンセルしちゃってよ」

「はあ…」

 若干、困ったようにも見えるセリオは少し間を置いて、提案してきた。

「…とりあえず留置場と居残り補習、どちらがよろしいでしょうか?」

「ブタ箱行きが妥当かな」

「勝手に決めるな」

「ではそのように」

「そっちもすんなり受領してんじゃないわよ!?」

 俺とセリオは顔を見合わせると、言った。

「でも妥当だよな?」

「妥当ですよね?」

「…どーも一度あんたらとはじっくり腰を据えて話しあわなきゃいけないみたいね…?」

 いちおー世間的な解釈では深窓の令嬢と、表面的には表現できるようでできなさそうで、非常に微妙な位置にいる者とも思えない凶悪な笑みを浮かべながら指をボキボキ鳴らすな綾香。姉の芹香先輩と容貌だけは似ているだけに、異様に怖いんだが。

「…それではオーソドックスですが、生理ということで」

「うーん…もう仮病バレバレって感じだけど、ま、いっか。できればもう少し捻りを加えて欲しいけど」

「それでは、多少アレンジを加えまして」

 セリオは僅かに俺に視線を向けて、言った。

「生理がこない」

「「ちょっとまたんかいいいいいいいいいっっ!!!?」」

 俺と綾香、ダブルで突っ込んだ。

「でも、割と信憑性はあるかと思いますが」

「だから困るのよおおおおおおおおおおおおっっ!!ああもう、なんでこんな風に育っちゃったかなこいつわ!!」

 セリオの対人関係の中で、最も大きな影響力を持つと思われる人物は、天に唾棄するようなことを堂々と言ってのけた。

「自覚が無いってのがタチ悪いんだよな」

「??何わかんないこと言ってるのよ浩之?…とにかく、無難っぽくて穏健そーで適当でしかももっともな理由つけておいてね、セリオ」

 そーゆー無理難題をいうからこーゆー風にAIが育つのかもしれない。

「じゃ、まあそういうわけで。…どうしよっか浩之?あたしは、特に希望とかはないけど」

「んー。ちょっと小腹も空いたし、メシには早いけどラーメン屋か牛丼屋にでも入らない?」

「女の子を誘うのに、もう少しムードのある選択肢はないわけ?食べ物関係にしてもせめてヤックとか」

「じゃあヤックに行くか?」

「ラーメンの方がいいかな♪旦々麺の激辛5に挑戦してみたいし」

「…ムードは?」

「そんなの食べられないじゃない」

 さも不思議そうな顔をする綾香である。

「……俺って、実は結構忍耐強いのかもしれないな…」

 ぽんぽん。

「がんばってください」

 俺の肩を叩き、セリオがそう励ましてくれた。

 心なし、同類を憐れむような目をしていた。

 

* * * * * * * * * * * *

 

 やや早めの時間帯ということで店は空いていたが、俺達はテーブルではなくカウンター席に座った。カウンターは狭いが、丼ものはカウンターにて食すべしというのは日本古来の伝統と男の美学である。

「…私のデータにはそのような記録は無いのですが」

「…お前、どうしてそう真顔でウソを吐くかな?」

「やーねー。フレンドリーなパーティジョークよん」

 俺は生まれも育ちも中流家庭で社交界のことなんぞわからんが、それはキッパリとパーティージョークではない。

 とりあえず激辛旦々麺を二つ、注文する。

「なあ。…ところで坂下のあの蹴り、結局お前のカウンター貰っちまったけど、ありゃなんだ?」

 綾香が坂下を追って踏み出した足を狙った下段蹴り。

 一撃で相手を倒すような派手な技ではない。下段蹴りは相手の隙を作る、体を崩す、足をとめるといった牽制や、次の攻撃に繋げるたのの仮当てとして使われることが多い。だが、うまく使えば相手を突き崩す最初の鏨の一撃にもなるだろう。坂下もそのつもりでいたに違いない。

 が、逆に更に綾香に間合いを詰められて――目算を狂わされて、軽い突きをもらってしまった。カウンター気味とはいえ突きの威力より、バランスを崩されて坂下は転倒したわけだが。

 スライディング・キック、と葵ちゃんは言っていた。

 どういったものかは、なんとなくだがイメージできる。

 昔、ゲーセンで似たような技(正確には出だしの一部だが)を見たことがある。

「あれだよな。要するに鳳○脚の発動みたいな。あの、偽善者テコンドー使いが、一本足でウリャー!と一本足で構えたままつつつーっと滑っていってめったやたらにドツキ回す愉快な技。あれの出だしみたいな」

「ヒロユキ…!」

 ぽんっっ。

 少し強めに俺の両肩に手を置くと、綾香は、頬に一筋の汗を垂らして言った。

「アンタの言いたいことはよくわかる。…よ〜〜〜くわかるけど、でもソレ好恵の目の前で言っちゃダメよ!?いい!?絶対よっ!!?」

「お…おう」

 何時になく真剣な綾香と、その背後でガクガクと何度も頷いているセリオに、俺は額にじんわりと浮かんでいた汗をおしぼりで拭った。

「…まあ、その話は置いといて。傍から見ててさ、坂下が蹴りに入った時、あれっ、届くわけないと思ってたのに…実際、届くわけが無い距離だったわけだけど、それが何時の間にか近付いててさ」

「蹴りと同時に身体は前に出てるのよ。えっと…」

 スツールから立ち上がり、テーブルとカウンターの間の狭い空間で、綾香は少しポーズをとってみせた。

「ポイントは軸足。体は勢いよく飛び込みながら、軸足は膝をゆるめて足裏で床を擦る。そして、相手を蹴る瞬間に、膝を伸ばして足裏と地面の摩擦を大きくしてブレーキ、体が前進してきた力を全て蹴り足に乗せ、相手に叩き込むようにするの。移動の勢いを攻撃に加味できるし、このスライディングの技術は突きにも応用できるから、飛び蹴りと違って攻撃に幅を持たせることもできるわよね。

 届くわけの無い距離からの攻撃で相手の不意をつけて、その上突きかくるかそれとも下蹴りか?…迷うわよね」

「でも、お前はあっさり坂下を迎撃したじゃないか」

 スツールに座りなおして、綾香は苦笑した。

「……余裕あったわけじゃないわ。ほとんど無我夢中で、ただもう反射的に前に出たら当たっちゃった、そんだけなのよ。やっぱり片足で滑りながらの攻撃だからね、バランス取るのはかなり難しいし」

「そんなものなのかねー。…しかし、話を聞くとなかなか有効そうな技なのに、俺は聞いたことないんだがな、この技」

「ま、それは浩之は素人だからね。…話だけ聞くと凄そうだけど、実際にはあんまり有用じゃないのよね。普通は、まあ飛び蹴りを使ったほうがまだマシかな、って思う」

 水を飲むと、ユラユラと残った水をコップの中で綾香は揺らした。

「さっきも言ったけど、やっぱバランスとるの難しいし。難度の高い割に迎撃は容易だし。だからあたしも技は知ってるけど、自分でやったことはないし使うつもりもない。

 …この技を極めるには技術もだけど、何より相手の先の先まで読み切れる洞察力が必要なんじゃないかな。だから滅多に成功する技じゃないのよ」

 そう言って、綾香はカウンターの上についた、コップの丸い水滴の痕に正確にコップを戻した。

「…まあ…好恵の瞬発力は、あたしの想像以上だったけどね。あんな速度で迫られるなんて、ちょっと予想外だった」

 俺は黙って頷きながら、コップの水に視線を落としている綾香の横顔を見守った。見守り続けた。

 さほどの間を置かず、綾香はまた口を開いてきた。

「好恵くらいの腕前になると、もう飛躍的に成長する、ってことは無いのよ。だから、そこから更に力を伸ばすためには、普段からよほど根を詰めて鍛錬してなきゃできない、って思う。

 自分より強い相手に勝つためには、相手と同じ戦い方をしてちゃ無理。

 なら、ペテン、インチキ、騙し、けれん…とにかく何か一つでいい、相手を隙をついたり、意表をついて、一点でもいい、相手を上回らなきゃいけない。

 それは戦術としては正しいことだと思う。むしろ正統的なものよ。

 効率的で、隙のない戦い方を心がけるのは当然。野球に例えるなら、一発逆転のホームランより、確実なヒットを選ぶのはその方がずっと現実的で堅実よ。素人はすぐに見た目が派手の、ホームランを好むけれど、そんなけれんだけで勝って、勝ち続けることができるものじゃない…格闘っていうのは。

 でも、そのけれんもまた技の一つ…」

 そして、綾香はぽつんと言った。

「けれんも、立派な技よ」

「なるほどな…」

 素直に、俺は同意した。実際、奥が深いものなのだと、思うし。

「そうなると、ようやく坂下も綾香と同じような戦い方ができるようになったってことかな…あいつ、そういうけれんとか侮ってそうな感じだったし。第一、あいつはお前ほど人は悪くないしな。だから人をペテンにかけたり騙したりなんて、出来そうにないし」

「……どーゆー意味よ?」

「はっはっはっはっは」

「ざーとらしい笑い声を上げるなっ!」

「わはは。まあそれはさておき」

「さておくんじゃない…」

「さておいて。…まあ、理屈はわかったけど、だからって即座に俺にもできる技じゃないよな。そんな蹴りと同時に踏み込みなんて、どうすりゃいいかわかんねーし。素人が安易にマネができるようなもんじゃねー」

「ま…ね。まあ難度の割に成功率低いけど」

「だからって、俺が迎撃できるようなものでもないだろ?俺、完全に意表突かれたし、あのスピードに反応できたとはとても思えねー」

「そりゃあね。相手、好恵だもん」

「だから、綾香が勝ったのは、純然たる力の差だろ。坂下が空手に入れ込むように、お前だってエクストリームに入れ込んでるわけだし。だから鍛錬だって毎日欠かしたことはないだろ?」

 綾香は勉強でもスポーツでも才能に恵まれている。それもズバ抜けた才能を、だ。

 けれど、どんな才能も磨かなければ光はしない。そして綾香は己を磨くための努力を欠かしたことはない。まあその努力をおくびにも出さず、飄々としているところが綾香の器量なのだと思う。

 努力を鼻にかけるような醜悪さは、綾香には無縁なものだ。

「へい、おまち!」

 カウンターの向うから湯気のたつドンブリが二つ、ヌッと差し出されてきた。いかにも辛そうな真っ赤なスープに、俺たちは思わず顔を見合わせた。

 それでも親父からそれぞれドンブリを受け取ると、割り箸を取った。自分で注文しておいてなんだが、目の前のソレは、本当に可食物なのか、という一抹の不安を覚える。

 チラリと綾香に目線を向けると、俺同様少し後悔しているような顔をした綾香のソレと、鉢合わせした。おもわず、ゴクリ、と唾を飲んで。

「…じ、じゃあ食うか」

「う、うん」

 俺たちは踏ん切りをつけると、パチン、と割り箸を割った。

 

* * * * * * * * * * * *

 

 ……………。

 ……………。

 ……………。

「葵?生きてる?」

「…死んでます。……八割がた」

 もう誰もいなくなった空手部の練習場。その畳の上で大の字になった葵の顔に、冷やしたタオルを好恵は落としてやった。

「あ。ありがとうございます…」

「いいから。もうしばらく寝てなさい」

 僅かに笑みらしきものを口元に浮かべて、葵の枕元に腰を下ろす。

「…スタミナとパワーで完全に負けちゃってます…」

「そーね。葵は小さいから…仕方ないといえば仕方ないけど」

 なんだかんだといっても、体格差というものは、やはり大きい。

「…でも、あたしに勝てるだけの実力を持ってるくせに、情けないこと言うんじゃないの」

「ううっ…でも一度だけですし、やっぱりまぐ…」

「あたしは、まぐれで勝ててしまう相手だっていうの?葵?」

「い、いえ、その…」

「まったく。あなたはもっと自分に自信を持つべきだと思うけど」

「……でも。3本中1本も先輩からとれないんじゃ、自信なんて持てません…」

 葵をこてんぱんにのした本人は、誤魔化すようにゴホンと咳払いなどした。

「まあそれはともかく。…どうだった?久しぶりにやってみた“空手”は」

「………」

 どうにか上体だけ起こしてきた葵は、顔に乗っていたタオルを手に落としながら。

「…楽しかったです」

「そうか。私も楽しかった」

 ほう、と息をついて好恵はやや視線を上方に向けた。練習場の窓の外は日も落ちて、そろそろ暗くなり始めている。

「私は空手が好きなんだ」

 葵は黙って頷いた。それはよく知っていたし、自分もそうだったから。

「だから、綾香がエクストリームなんてものを始めて、葵までそれを追いかけて空手を止めてしまった時、私は、空手が貶められたように思えて、そして…あなた達に裏切られたような思いだった」

「すみません…」

「あやまらなくてもいい。お前たちの真剣さは、私も今はわかったから。

 綾香の言うことも…今の空手は形式と伝統に囚われて自らの可能性を狭めているという言い分も、わからなくもない。

 でも、それでも、私は空手を捨てられない」

「私も空手を捨てたつもりはありません!…た、ただ、なんていうか…今までとは少し違う道を、歩くことを選んだ…というか。

 私、異種格闘のために投げ技や関節技も学んでますけど、でも、基本的にはやっぱり、打撃系の人間なんです!私のルーツは空手なんです!!」

「…すまん。葵を責めてるつもりじゃないんだ。…言い方が悪かったかな」

 少し逡巡すると、好恵は首にかけたタオルで顔を拭いた。そのままで、言う。

「でも、私はやはり、空手の道を進んでいきたい。そして坂下好恵は、空手者として来栖川綾香に勝ちたいんだ」

「坂下先輩…」

 タオルを顔にやったまま動かない好恵に、葵はそっと声をかけた。と、つるりと顔を撫でて、好恵は葵の方を向く。

「私は、聖人でも賢者でもないんだ。ものわかりのいい方でもないし。まだ高校生で、社会的には未熟な未成年だ。

 全ての事に悟りきれるような、都合のいい人間じゃあない。

 理屈で理解しても、感情で納得しても、自分でも何故だかわからない、…しこりというものがあるんだ。そしてとりあえず、綾香と戦うことしか、その答を見つける術を私は持ってない…」

 元々、多弁ではなく話術に優れているわけでもない。それでも、好恵は言葉を継いだ。

「今日、私はまた綾香に負けた。綾香に勝つために、知恵を絞り、鍛錬を重ね、技を磨き上げた。

 懸命に努力したんだ。

 なのに、また、負けた。

 綾香が毎日鍛錬を重ねているのは知っている。だが、練習量で負けているとは思わない。

 結局、私とあいつとの、持って生まれた才能の差なのか?

 私はどうあがいても綾香には勝てないというのか?私の努力など、するだけ無駄なものにすぎないのか?」

「坂下さん…!」

 たまらなくなって、葵は声をあげかけ…そして止めた。

 好恵の顔は、悲壮でも悲痛でもなかった。

 歪んではいなかった。

「…結局、そこに自分の隙があったんだろうな。

 あの瞬間、綾香は驚いていたよ。そして、私は勝ったと思ったんだ。

 そこに隙があったんだな。

 それでも綾香ならば無意識にでも反応できるかもしれない、ということを忘れてしまった。今までにも何度かそんな事があったのに。

 それを忘れて、そして自分の努力と技に自信があったからこそ…負けたんだろうな。

 綾香の天賦の才を、侮ってしまった」

「先輩…」

 好恵は、葵を促して立ち上がった。そのまま連れ立って更衣室に歩きながら、しみじみと呟く。

「なあ、葵。綾香は強いな」

「はい。だから、私も目標にしているんです」

「そうだな。…しかし、なんであんなに強いのかな、綾香は?」

 その問いに、葵は、少し考え込んで。

 何気なく、言った。

「それは…綾香さんだからじゃ、ないでしょうか?」

 

* * * * * * * * * * * *

 

「ふっ…」

 口元を拭いながら、俺はシリアスに、言った。

「ヌルい戦いだったぜ…」

「…顔を汗まみれにして言っても説得力ないわよ、浩之…」

 ゲホゲホと咳をして、それからコップの水を口に運ぶ綾香の顔も真っ赤になっている。まあ、難敵ではあったが、それでも俺たちは旦々麺・Lv.5の退治には成功していた。

「…スープまで飲み干すことはないと思うのですが…」

「なに言ってるのセリオ、ラーメンは汁まで飲み干さなきゃごちそうさまになんないのよ?」

「そうそう」

「…………」

 似たもの同士。

 なんとなくセリオの無機質な瞳にそんな言葉が浮かんでいるような気がしたが、まあ、気のせいだろう。

「あ、でも食べ終わるのは私の方が早かったわよね?

 ふっふ〜ん、この勝負は私の勝ちね♪」

「何時の間に勝負してたんだよ?それに、お前はまだ完食はしていない!」

「なにいってんの、この最後の一滴まで貪るように啜ってきれいになったドンブリを見なさい!」

「綾香お嬢様…」

 セリオが、なんだか辛そうな声で、言う。

「ふっふっふっ…甘い!甘いわ綾香!お前はまだ完食などしておらんわ!見てみろ!!」

 ビシッ!と俺は綾香のドンブリの、縁の外側に僅かにこびりついていた、ネギの破片を指差した。

「フッ!舐めあげるように貪り啜った俺と違って僅かに残ったこの汚点!どんなにいじ汚くみえても所詮は贅沢暮らしが身に付いたお嬢様!食い物に関する執着など、庶民の俺に敵うわけがないのだ!!」

「そんなつまんなくてくだらないことを堂々と誇るなあああああっっ!!」

「藤田さん…」

 激昂する綾香と、何だか色々と大事なものをあきらめたよーなセリオ。

「おい…お前ら…」

 と。

 カウンターの向うで、包丁を片手になんだかステキな笑みを浮かべている店の親父と視線が合った。

「…食べ終わったんなら、そろそろお勘定をお願いしたいんだがねぇ?」

「…はい…」

「そ、そうね、浩之、気がつけば何だかお客さんが入り始めたみたいだし…って、ああっいつの間にーーーー!?」

「…恥…晒しまくりですね…」

 セリオの一言が、耳に痛い。めちゃ。

「え、えーっと。じゃあとりあえずあたしが…」

「いいよ、俺が払う。…ほい」

 ポケットから、周到に用意しておいた二人分丁度の料金を渡すと、俺は綾香とセリオの背を押して足早に店を出た。

「…あーあ。この店、結構おいしいトコだったのに。しばらくこれないなぁ」

「まあ過ぎたことをとやかくいっても仕方がない。前向きにプラス思考で夢とか希望とか明るい明日とか、まあそういったおためごかしで自分を騙しつつも建設的な方向で未来を考えようじゃないか」

「…それって結局逃避なのでは?」

 わかってるよセリオ。そんなことはよう。

「あ、浩之。ラーメン代、幾らだったっけ?」

「いいよ、今日は俺のおごりで」

 ゴソゴソとポケットを探っていた綾香がきょとん、とした目で俺を見た。

「…どしたの浩之?なんか悪いものでも食べた?何の理由もなくアンタが奢ってくれるなんて」

「さっきお前と同じもん食ったばかりだろうが。…理由はあるぞ。今日はいい試合を見せてもらったってことと、あと、解説料ってとこかな」

「あ、そう?ラッキー」

 綾香は大財閥のお嬢様としては、割とシビアな金銭感覚の持ち主である。無論気前はいいし太っ腹ではあるが、だからといって無闇に他人におごったりはしない。なにか賭け勝負でもした時以外は、払いはワリカンという鉄則をきっちり守っている。

「な、綾香」

「うん?なに?」

「…でも、今日は結構危なかったんじゃないか?うかうかしてると、坂下や葵ちゃんに足を掬われるぜ?

 坂下のヤツはしつこそうだから、ちょっと負けたくらいでヘコんだりしないし、葵ちゃんはマジメな努力家だからな」

 …………。

 すこしだけ、黙り込んだ綾香。その目元がふっ、と緩んだ。

「そうね。でも、だからおもしろくて、楽しいんじゃない。あたしを倒せるもんなら倒してみなさい、ってもんよ?こっちもそれくらいの気概を持ってもらわないと、張り合いがないし」

「はー。余裕だな」

「まーね。さてと、これからどこ行こうか?」

「そうだな。ま、歩きながらぼちぼち考えるか」

「いーかげーん」

 そう言いながらも、綾香は冗談っぽく俺の腕をとって、ほんの軽く自分の腕をからめてきた。そのまま、少し後ろに下がったセリオと一緒に、俺たちは商店街に足を向けた。

「ね、浩之」

「なんだよ?」

「あんたってさ。……うんん、なんでもない」

「変なヤツ」

「なんでよ?」

「なんだよ?謎なこと言ってるのはおめーだろうが」

 綾香は強い。

 でも、最初から強い人間なんて、いない。

 綾香は、強くなった人間なんだ。

 人間には、各々持って生まれた天分というものがあって、単純な能力的には決して平等ではない。そんな中で、恵まれた才能をもって生まれてくる人間もいる。不公平なほどに。

 だがそれは人間の人格と尊厳には関係ない。その意味では人間は平等だ。

 そして、天分というものは、誰にも、本人にも決められるものではない。

 突出した才能は時に人を不幸にもする。

 綾香は知っている。

 自分の成功は誰かを失敗に導くこともある。自分の勝利は誰かを敗北させている。自分の幸福は、誰かの不幸の上に成り立っているということも。

 たとえ自分だけの幸福を貪ってるわけではないが、自分が人から羨望され、時にそれ以上の悪意で見られていることも知っている。

 だから、他人に嫉妬されることにも、慣れて、受容している。飄々として、マイペースで、気楽に振舞うこともできる。それは彼女の諧謔なのかもしれないが。

 綾香は強い。

 それでも、時に。

 俺は、こいつの肩を、軽く叩いてやりたくなる。

 俺には、そんなことしかできないけれど。

 視線を巡らして、ふと、少し後ろのセリオと目が合った。

「…………」

 僅かに、目礼するセリオに俺は首を傾げた。

「あ、浩之アレ見てアレ!」

「なんっだよお前は唐突に!ったく、まるで猫だな、自分勝手で気侭で…」

「でも、それがカワイイんじゃない」

「自分でゆーな!」

 そう言いながらも、強引に俺の腕を引く綾香に抗わず、俺はそのまま引っ張られていった。

 チラリと見えたセリオが、僅かに俺たちに微笑んでいるようにも見えた。

 

 

<了>

 

 

 


【後書き】

 なんか綾香書くの随分久しぶりって気がします。

 考えてみると綾香メインの話って書いたことないような気がする…。これも綾香(だけ)メインか?というと、???という感じですし。

 とりあえず坂下を出せたので、俺的にはケッコー満足。

 

 私は格闘技に関しては素人でたまにそれ系の雑誌とか立ち読みする程度ですが、そんな流し読みの中でスライディング・キックの記事をちらり、と読んで。

 

 こ、これはまるで「鳳○脚」じゃないか!

 こんなオモロイ技、是非ともネタにせねばッ!!(笑)

 

 と、ゆー理由で今回のSSを執筆したりしてます。ワハハ。

 一応執筆にあたってそれなりに勉強したり、詳しい方にお話を伺ったりはしましたが(ご協力感謝します○×△さん)所詮私は素人、完璧な考証に基づいた話など作れるわけはありません。

 しかしそんなことを言っていてはいつまでたってもテイク・オフはできないわけで。

 「ここ間違ってるぜ、へっへっへっ」とか言われるのがイヤなら最初から書かなきゃいいだけのことです。そして、恥をかくのが嫌なだけで書かないのは私の性分ではない。

 それほど間違ったことは書いてないつもりですし。

 実は、開き直ってるだけですが。

 とりあえず、読んでおもしろいと思っていただければそれでいいんですからね。

 

 実は、それよりも芹香を一度もまともに取り扱っていないことに気がついて、ちょっとショッキン。う〜〜〜ん、好きなキャラなのになぁ…。




 ☆ コメント ☆

 楓 :「偽善者テコンドー使い?」(・・?

 梓 :「ま、まあ、世の中にはそういうのもいるのよ」(^ ^;

 楓 :「……偽善者テコンドー使い。
     ……偽善者。
     …………。
     千鶴姉さんのこと?」

 梓 :「こらこらー! なんてことを言い出すのよあんたは!」(@@;

 楓 :「……違うの?」(・・?

 梓 :「違うわよ!」(@@;

 楓 :「……そうなんだ」

 梓 :「あったりまえでしょうが。
     そもそも、あのトロい千鶴姉にテコンドーなんか使えるわけないでしょ」(^ ^;

 楓 :「…………あ」(・・)

 梓 :「運動神経ゼロの千鶴姉に修得できるほどテコンドーは甘くないわよ」(^0^)

 楓 :「…………」(・・)

 梓 :「ま、偽善者ってとこだけは同じだけどね」(^0^)

 楓 :「…………」(・・)

 梓 :「……ううん、そんなことはないか。
     だって、千鶴姉の偽善はレベルが違うもの。
     某テコンドー使いなんか敵じゃないわ。比べちゃ千鶴姉に失礼よね」(^〜^)

 楓 :「…………。
     …………さよなら、梓姉さん」(・・)

 梓 :「? 楓?
     なによ、話の途中でどこに行こうって…………。
     ……………………。
     う゛っ!
     な、なに? この身体に突き刺さるような冷気は?
     全身にのしかかってくる異様なまでのプレッシャーは?
     ああっ! なんだかとってもデンジャラスで危険が大ピンチな感じ!」(;;)








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