To HeartSS

〜再会〜

『ほらほら、なにそんなにちんたら歩いてんのよ?』
『んなに急がなくっても逃げやしねえって』

 頭の中に繰り返されるのは、懐かしいその会話。
 もっとも慕っていた、特別な二人の。

『ん? もしかして今、笑ったか?』
『え? そうお?』

 思い出の中の二人が、私の顔を覗き込む。
 そう、これは思い出だ。
 『現実』ではない。
 たった四週間(それでも姉さんよりも長い期間だった)の中で経験した、色あせる事の無い、大事な私の
 『記憶』。

『このこは私の親友なのよ』
『確かに、綾香にはそっちの方が似合いそうだ』
『なによそれ? どういう意味?』

 『記憶』の中では、いつも三人でいた。
 私を親友とおっしゃられる、綾香お嬢様、そして………。

『ん? 俺の顔に何かついてるか?』

 不思議そうな顔で、私の事を見つめ返す、浩之さん。。

『様付けで呼ばないでもいいって。別に元々無関係な人間だったんだから』

 最初に会ったとき、私が浩之様というと、『苦笑』しながらそうおっしゃられ、私は不肖ながら浩之さん
 と呼ぶようになった。

『まぁ、困った時はお互い様だろ? マルチにだってそう言ってたんだし』

 いつもそう言って、私の事を何かと気にかけてくれた。

『綾香、やっぱり学校じゃ………』
『まぁね……、数人は味方もいるんだけど、大体浩之の考えているとおりよ』

 別にいいのです。私はメイドロボなのですから。

『俺はそんな風に考えてねーよ。セリオは女の子だろ?』
『そーよセリオ、いつも言ってるじゃない。あたし達親友だって』

 私がそう言うと、決まってお二人は険しい顔をなさってそう言われました。

『もうすぐ試験最終日だなぁ』
『ホント。もうセリオと何年も一緒にいるみたいだったのに……』

 川原でお二人は寝転がったまま、浮かない顔をなされていました。
 何故、私の事なのにお二方はこんなに配慮してくださるのでしょう?

『セリオが親友だからよ』
『ほっとけねぇだろ?』

 私の質問は、いつもその決まった言葉で返されてきました。
 明確な返答ではないはずなのに、何故か胸が軽くなるような感覚をその度に覚えていました。

『明日で、最後……か』
『ん……』

 最終日の前日、『悲しそうな顔』でお二人はいつもの川原で寝転がっていました。
 そのまま、いつもなら商店街の方向に向かわれるのですが、その時綾香様はこう言いました。

『そだ、浩之、ちょっと……』
『ん?』

 そう言って綾香様は浩之さんになにか耳打ちをなさりました。
 私には何をおっしゃられているか分かりませんでしたが、浩之さんが急に驚いたような声を上げました。

『いい!? 綾香!? お前マジか!?』
『マジもマジ。オオマジよ。で? どうするの? 無下に却下する訳?』
『って、お前、別にいいのか? 本当に?』
『しつこいわねぇ、あたしがそんな冗談言う訳無いでしょ?』
『ったく、しょうがねぇなぁ』
『とかなんとか言っちゃって、嬉しいくせに』
『うっせぇ!!』

 一体どのような会話がなされたのか、何も知らされることのないまま、私は何故かその晩、浩之さんの自
 宅に泊まる事になっていました。



 そして、私はその次の日、お二人に見送られて、お二人と別れたのでした。



 その時、マルチさんのお気持ちが少しだけわかったような気がしました。



『じゃな、セリオ』



 そう言って、浩之さんは私の頭を軽く撫でてくださりました。



 いつも、マルチさんが言っていたように。



 優しく……。












 














 今はもう、私の中の思い出。記憶。過去の日々。

 いつものように振り返る、過去の『思い出』。

『システム・スタンドアップ』

 ……?

 突然私の記憶の中に、今まで決して浮かぶ事の無かった単語が浮かび上がりました。

『システム、オールグリーン。各部、グリーン』

 これは……起動プログラム?

 何故、このようなものが?

 しかし、それは私の思惑に関係なく、自動で私の体を起動状態へともっていきます。

 不意に、視界が強烈な光に包まれました。

 が、すぐに眼球の光量調節機能が働き、すぐに視界が回復しました。

 そこは、見慣れた私のメンテナンス・ベッド。

 しかし、そのすぐ前におられる方々は……。

「おはよ! セリオ!」
「よう! 元気だったか? って、なんか変だな……」
「あうう〜! お久しぶりですぅ〜!!」

 私の、大切な、方々……。




 後書き

 えーと、なんかもう勢いだけで書いてしまいました。
 あれだけ色々考えていたのに、それを全く使わない無茶苦茶な書き方ですよ。
 書いた時間、本当に40分なんですから。
 え〜と、あちこちから非難続出するかもしれませんね。
 でも書きたかったんですよ。セリオのお話。
 このお話はプロローグで、結構続けられたりもするんですが……、なんか堂々とそう宣言するのは自信な
 いんで、とりあえずは、皆様の反応しだいと言うことで。
 今回どうやって書けばいいかというところからの悩みからでしたから、メールどうすればいいのかわかん
 ないんですよ。
 では、今回はこんな所でお開きとさせていただきます。
 hiroさん、こんな拙い作品でよかったら、どうぞお願いします(低頭)。




 ☆ コメント ☆

綾香 :「で、起きたらこんなのになってた、と」

セリオ:「こんなの!?」

綾香 :「もう少し詳しく言うと、おしとやかで清楚で可愛らしかったセリオは過去のもの、
     思い出となってしまいました、まる……て、ところかしら」

セリオ:「思い出!? うう、綾香さん、それはひどいですよぉ」

綾香 :「仕方ないじゃない、事実なんだから」

セリオ:「取り付くシマ無し!?」

綾香 :「だってさぁ……今のセリオは……生意気だしお笑い担当だしマニアだしマニアだしマニアだし」

セリオ:「あうあう、無茶苦茶な言われよう。てか、なんでマニアだけそんなに連呼!?」

綾香 :「なんでって……セリオだし?」

セリオ:「何故に疑問形? しかも全く答えになってませんし」

綾香 :「細かいことを気にしちゃダメよ」

セリオ:「こ、細かいですか?」

綾香 :「そんなんじゃ大物になれないわ」

セリオ:「なんの大物ですか、なんの!?」

綾香 :「それは……あたしの口からはとても……」

セリオ:「なぜ言いよどむんですか!? 気になるじゃないですか!?」

綾香 :「だから、細かいことを気にしちゃダメだってば」

セリオ:「細かくないです! 今度のは間違いなく細かくないです!」

綾香 :「……いいこと、セリオ。世の中には知らない方が幸せなこともあるのよ」

セリオ:「なんなんですか、それは!? どうして遠い目をするんですか!?」

綾香 :「でも、何時かはあなたも知ってしまうのでしょうね」

セリオ:「だからなにを!?」

綾香 :「真実を知ったセリオ。そんな彼女に振り掛かる過酷な運命。果たして、その時セリオは……
     次回に続く」

セリオ:「続きません! 続きたくないです! 続かせないで下さい!」

綾香 :「ぶーぶー。ノリが悪いわねぇ」

セリオ:「……」

綾香 :「なによ?」

セリオ:「すみませんが、わたし、もう一回眠りについていいですか?
     てか、寝かせてくださいお願いしますホントもうマジで今すぐに」

綾香 :「却下」

セリオ:「しくしくしくしく」



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