題目   『 来栖川芹香の日記 』

3月1日 土曜日

今朝、浩之さんから昼食を誘われました。
今年から、来栖川の仕事の一部を受け継いだお陰で、多忙を極め、ゆっくりと浩之さんや皆さんと、お話すら出来ない日々が続いていましたし、気分転換には丁度良かったので、快良くお受け致しました。
浩之さんは、所用が有るとの事なので、12:00に駅前広場で待ち合わせです。
早速、会社に電話をして、本日のスケジュールを(無理矢理)全てキャンセルさせると −何故か電話の向こうでは、私の秘書が絶叫をあげていた様な気がするのですが・・・・軽く無視しましょう。  大声出す人嫌いです。(ぷん)− 午前中一杯かけて着て行く服を選びをしました。
何時もなら、綾香ちゃんに手伝って貰うのですが、浩之さんが、『今日は、みんなには内緒で。』と、言われましたので・・・。(ぽっ)
悩んだ挙句の果て、春らしく、薄手のニットのセーターに、ブラウン系のミニスカート、おそろいのミュール、それから下ろしたての白いスプリングコートに決めました。
それから、一応私も社会人の仲間入りをしましたので、少しだけ薄化粧を・・・・・・浩之さん、気が付いて頂けるでしょうか?(ぽっ)

時間に遅れない様に、少し待ち合わせの時間より早く家を出ました。
ですが、既に浩之さんは来ていらした様で・・・時間前では有りましたが、浩之さんをお待たせしてしまい、心苦しく感じておりました。
浩之さんは、私の姿を暫し呆然と眺めて、『芹香、何時も以上に綺麗だよ。 服もバッチリ似合ってる。』と、仰られました。(ぽっ) 
私は、自分でもそれと判る程、恥ずかしさの余り顔を赤らめておりましたが、多分浩之さんも一緒だったのでしょう。
私の手を取ると、こちらも向かずに歩き出されました。
私は、街中を男の人と、手を繋いで歩いた事など無かったので、周りの人全てが私達二人を見ている様な気がして・・・・・
でも、不思議です。
少しだけ恥ずかしいかったのですが、浩之さんとなら、良いなって・・・・・。(ぽっ)

昼食は、浩之さん行きつけの洋食屋さんで頂きました。
浩之さんは、偶にいらっしゃるらしく、御店の方とも面識が深い御様子で、親しげにお話をされていました。
たまに、私にも話題を振られる事もあったのですが、何とお話して良いのか判らず、少々困惑してしまいました。
それでも、浩之さんと二人だけで、浩之さんのお顔を見ながら頂くお食事は、何もかもが新鮮そのもので、私の胸を躍らせます。
ただ、残念なのが、幸せの余り舞い上がり、お食事の味を良く覚えていない事です・・・・。(・・・しくしく)

お食事も終わり、浩之さんはホットコーヒーを、私はレモンティーを楽しんでいた時の事です。
浩之さんは、テーブルの上に置いた私の手を何時までも握り続け、ぼんやりと眺めていらっしゃいました。
私は、『どうしましたか?』と浩之さんに尋ねました。
浩之さんは、『不思議なんだ、俺の目の前にいるのは、間違い無く俺の大好きな芹香だ。 でも、今日は、化粧してるせいかなぁ、何時もの芹香じゃないみたいで・・・・こうやって、手を握って芹香を再確認しながら、芹香を惚れ直してるところなんだ。』

ぱふっ!!

思わず、頭から湯気が出た様な気がします。 多分、耳まで真っ赤になり、ついつい慌ててしまって・・・コップを落としてしまいました。(・・・しくしく×2)

会計を済ませ、店を出た私達。  でも、お店で粗相をしてしまったので、浩之さんに対して申し訳なさで一杯です。(くすん)
でも、浩之さんは、優しく私の肩を抱いて下さいました。
それから、『芹香に見せたいものが有る。』と仰られました。
私が何度も、『何処ですか?』とか、『見せたい物って何ですか?』と伺ったのですが、『な・い・しょ!』と言って教えて頂けません。
少し、からかわれている様な気がしました。(ぷぅ−)
でも・・・不思議です。
お店の件で、悲しい気持ちがいっぱいだった筈なのに、浩之さんに肩を抱かれているだけで、浩之さんに寄り添っているだけで、先程の悲しさが嘘の様に、嬉しさと喜びでいっぱいになります。 (ぽっ)
浩之さんの温もりに、甘えっぱなしの私です・・・。 (ぽっ)

街中を抜け、町外れの河原に来ました。
前に、綾香ちゃんが言っていた、浩之さんや子供達と一緒に野球をやったと言う河原・・・でしょうか、遠くで歓声が聞こえてきます。
『こっちだよ。』と言われた先を見た時、私、声を失ってしまいました。

数十本の紅梅や、白梅が土手いっぱいに咲き乱れています。
時折、微風に乗り、舞い散った花びらと一緒に、梅の花特有の甘酸っぱい香りが漂います。
『・・・・素敵・・・。』
他の言葉が見つかりません。
暫く佇んでいると、『もっと近くに行こうか』と言い、私の手を取りました。
土手を降り、私達は時を忘れて、梅の木々の間を歩き回り、あちらの紅梅、こちらの白梅と、香りを楽しんで回りました。

私達は、梅の木々の間に腰を下ろしました。
『こうすると、良く見える。』と言い、浩之さんは、その場で仰向けになりました。
私も、浩之さんに倣い仰向けになりました。  当然、浩之さんの腕枕付きです。
『わぁ〜〜』思わず声が出てしまいました。  見渡せば、目の前全てが赤や白の花々で覆われています。  
今までに見た事も無い光景、みた事も無い夢のような世界・・・・・・。
3月初旬とは思えない穏やかな日差しに、甘い香りに、優しい微風、隣には愛しい浩之さん・・・・・。 (・・・・zzzzzz)

くしゅん!

自分のくしゃみで目が覚めました。 目の前には、浩之さんの優しい顔。 どれ程居眠りをしていたのでしょうか、多分、仕事の疲れが出たのでしょうが、寝顔を浩之さんに見られていただなんて・・・顔から火が出る程恥ずかしいです。 穴があったら入りたいです・・・・。 (くすん・・・。)
浩之さんは、半べそ状態な私の頭を優しく撫でながら、『何時もご苦労様。 この頃少し疲れた顔してたから・・・・俺には、これくらいの事しか出来ないが勘弁してくれ。』と、言われました。

浩之さんの優しい瞳と、真剣な眼差し。
私は、ふるふると首を横に振りました。
『・・・そんな事、有りません・・・。』私は、浩之さんの首に手を回し引き寄せると、そのまま唇を重ねました。
そっと触れるだけの、淡い口づけ。
まるで、浩之さんの心と、私の心が触れ合ったような、優しい口づけ。
浩之さんを、心から愛せた事を、心から愛された事を誇りにも思えてくる・・・・愛しい浩之さん。
浩之さんと私、暫く見詰め合いました。
言葉なんていらない・・・・。  浩之さんを見詰めるだけで、浩之さんから見詰められるだけで判り合える。
言葉なんて陳腐なもの・・・・。  100万回の愛を囁かれるより、私はあなたに見詰められていたい・・・・。 
私は、瞳を閉じました。




『はぁ〜』
私は一息つくと、衣服の乱れを直し、髪を整えました。
今日は、ホントに『はじめて』が多い日です。 (ぽっ)
『行こうか。』と、浩之さんが言われたので、私は、こくっと頷き、浩之さんの腕を思いっきり抱きしめました。
少し驚いたような、困ったような、少し微笑んでくれた浩之さんの顔が嬉しくって・・・・私も微笑まずにはいられませんでした。
御心配掛けて、申し訳有りません。
芹香は、浩之さんのお陰で癒されました。
でも、私は、浩之さんを癒す存在でしょうか?
浩之さんのために、もっと、もっと、癒して差し上げます。

おしまい











あとがきです

ばいぱぁと申します。
ここまで読んで頂いた方には、深く深く御礼申し上げます。

今回、このSSを書く切っ掛けになったのは、人気投票のコーナーに出ていらっしゃる芹香御嬢様の、
『ほのぼのでらぶらぶなSSが見たい!』の呟きからです。
芹香御嬢様、お気に召しましたでしょうか?

これからも、『ほのぼのでらぶらぶなSS』を書いていきたいので宜しくお願いします。


おわり





 ☆ コメント ☆

セリオ:「浩之さんと芹香さん、ラブラブですねぇ」

綾香 :「ホント。イチャイチャしちゃってまあ」(^^;

セリオ:「ちょっと、恥ずかしくて見てられないって感じではありますね」(;^_^A

綾香 :「うんうん。思わず身悶えしたくなっちゃったわ」(^^;

セリオ:「でも、幸せそうですから全然問題なしですけどね。もうばっちりOKです」

綾香 :「そうね。姉さんも初々しくてとっても可愛いし」

セリオ:「はい」(^^)

綾香 :「……それにしても」

セリオ:「うわ。綾香さんから突然黒いオーラが」(@@;

綾香 :「姉さんってばあたしに内緒で浩之とデートだなんて……」(ーーメ

セリオ:「……」(@@;

綾香 :「今のうちに楽しんでおくのね、姉さん。
     帰ってきたら、ジーックリと話を聞かせてもらう事になるんだから。
     ……うふふ、うふふふふ」(^^メ

セリオ:「……こ、こわっ」(@@;





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