二次創作投稿(月姫)
「翡翠ちゃん・洗濯する」
(作:阿黒)



 翡翠ちゃんは遠野家のメイドさん。
 今日も一途にご主人様に尽くして尽くして尽くしまくりやがってます。

「私はあの星に誓います!いつかきっと志貴さまにお仕えするに完璧なメイドになってみせると!具体的にはお料理とか!」
 いやそれムリっぽいしー。

  * * * * *

 翡翠ちゃんの仕事は屋敷内の清掃・管理と、主人である志貴の身辺の世話です。
「…ああっ。志貴さまの着替えを用意するメイドの喜び…(ぽっ)」
 青い空に白い洗濯物はよく似合います。清々しいです。
 その下で、年頃の娘さんが男物の下着を抱きしめてボーっとしてるのは傍目から見てどうかとか思いますが、本人は素朴な家庭的幸福と分類できなくも無い感慨に浸っているようです。
「…志貴さま…」
 だから、男のトランクス抱きしめて頬を染めるなんて痴女っぽいんですがー。
「危ない翡翠ちゃん―――――!!!」
「はうっ」
 いきなり炸裂する琥珀チョップ!
 左斜め15度の角度がタイムリープでいいカンジ!
「めっ!ですよ翡翠ちゃん!いくら志貴さんのおパンツがおいしそうだからって食べちゃったら人として女の子として問答無用で大事な何かを捨てちゃいます!ていうか単なる変態さんですよそれじゃー」
「食べません!姉さんじゃあるまいし」
「あはー?おねーちゃんがいつそんなことしたっていうんです?」
「…それでは聞きますが、私の下着がよく無くなるのは何故なんですか?」
「え?そうなんですか?いけませんねー、私の可愛い翡翠ちゃんの下着を敷き詰めてゴロゴロ転がってあふー翡翠ちゃんのカヲリ〜〜〜とか悶えるのは私だけの特権なのに!」
「そ、…そんなことをやってたんですかっ!?」
「だって翡翠ちゃん可愛いんだもん!」

 嗚呼、麗しきかな姉妹愛。
 妹は思いっきり引いてますが。

「あと頭から被ってま○ろし▲ンティごっことか」
「死んでください姉さんっ!!!」

 翡翠、泣きながらマウントポジションで姉メッタ打ち。
 …いや無理もないが。

「姉さん殺して私も死にます!」
「あはー?心中愛ですかー?失楽園ですねー」
「なんでそんな元気なんですか姉さんは!!」

 翡翠・姉タコ殴り続行。
 結局夕方近くまで続いた模様。

  * * * * *

「え?着替えの洗濯がまだ済んでない?…なんで?」
「申し訳ございません。少々、雑事が入りまして…」
「あはー。色々あるんですよ志貴さんー」
 ちょっと汗をかいたのでいつもより早めに入浴した志貴は、バスタオル姿のままで困惑した。
 自分の失態で沈み込んでいる翡翠と、怪奇包帯ミイラ女になっている琥珀を等分に見比べて、とりあえず志貴は素朴な疑問を口にしてみた。
「琥珀さん元気そうですね」
「あはー。
 …いや実は体中くまなく痛いんですけど。私、痛いのはイヤなんですが、でもこれも翡翠ちゃんの愛だと思うと何だかだんだん痛みを通り過ぎて快感に…」
「お願いですからそれ以上深みに嵌まらないでください!」(×2)
 いやもうそんな懇願しかできなかったのであるが。
「しかしどうしたもんかな…」
「何かバスローブでもあればよろしかったのですが…」
「志貴さんのバスタオル姿はこれはこれで萌えですねー」
「や、やだなー琥珀さん冗談きついよー。そんな男の裸なんかおもしろくもなんともないでショーHAHAHA!」
 アメリカンに笑う志貴である。ごまかしきれない冷や汗が、じったり浮かんではいるようだったが。
「…あ…脛に毛が生えてる…」
「もー翡翠ちゃん男の人に慣れてないんだからー」
「なに見てるんですかキミタチ!!?」
 さり気なく向けられる熱視線に耐えかね、思わず悲鳴交じりの声を上げながら胸を手で被う志貴っちです。いやんばかん。

 ばた―――――ん!

「何をやってるのですか兄さぷうっ!?」
「ああっ秋葉さまが鼻腔から血を!」
「もー青いんだから秋葉さまー」
 いきなり脱衣所に乗り込んできたと同時に何故か鼻血噴いて倒れた秋葉(遠野家当主)。
 血気盛んな16歳の全寮制女子校育ちです。免疫ありません。
「兄さんセクハラですっ!」
「俺かっ!?俺が悪いのかっ!!?」
「いやー、ある意味志貴さんのせいではありますねー」
 秋葉の首のうしろをとんとん叩いてやりながら感慨深げな声を出すミイラ琥珀さんです。
「ともかく。話は大体わかってます」
「どうやって!?」
「ふっ。…それくらい当主としては当然の心得!」
 先日知り合いになった錬金術師の持っていた擬似神経(エーテルライト)っぽいものを後に隠すお嬢様です。う〜ん、わかりやすい。
 ともかく、秋葉は冷たい視線をかしこまっている翡翠に向けました。
「翡翠。あなた、兄さんにこんな格好させて、そんなことで兄さん付の使用人と言えるの!?」
「はい…申し訳ございません秋葉さま」
「翡翠ちゃん…でも結果的にはオッケーです!」
 グッ!と親指立てる諸悪の根源です。
 こっそり秋葉さまも親指立ててるんは内緒ですがー。
「兄さんの鎖骨の線が意外にきれいだということはともかくとして!」
「秋葉…お兄ちゃん何だか泣きたいよ」

 いや実際マジ泣き寸前です志貴っち。

「あなたに兄さんの世話を任せるわけにはいかないようね。…ならば!」
「えーそんなー私が代りに志貴さんをー?いやん、体がもつかしらはぶふうっ!!!?」

 どかべきぃ!!

 翡翠のボディブローと秋葉の踵落しのバリアブル・コンビネーションを受けて、琥珀は沈没した。
「ってかヤバ!ヤバいよ琥珀さん血が!耳から血ぃが!!」
「大丈夫です。姉さんがこれくらいで死んでくれるなら苦労はしません」
「大丈夫です。仮に万一のことがあったとしても、うちの敷地は広いからちょっと奥まったところに深く穴を掘って」

 鬼畜外道かキミら。

「とにかくそんな様ではあなたに兄さんは任せられません。…ならば、私が兄さんの面倒を看ます!」
「ええええええええええっ!!?」(×2)
 志貴と翡翠の悲鳴が、見事にハモった。う〜んさすがは主従。
「いやお前そんな自分の世話もよくせん奴にそんなことできるわけが…」
「志貴さまのおパンツを洗うのは私ですっ!!」

 ぶふうううっ!!

 主従、ものの見事に意見が枝分かれ。全然接点ありゃしねぇ。
 っていうかおパンツですか翡翠さん?

「いいえっ!遠野家宗主として兄さんの下着は私が責任をもって洗濯してみせます!」
 いや秋葉さまそんな拳握って力説せんでも。ちゅうかそんな責任ヤです。
「あはー。志貴さんの洗濯物からエロ妄想繰り広げるなんて乙女チックな劣情は私と翡翠ちゃんにお任せして秋葉さまはブラにいれるパッドを増やすことだけで頭使ってくださいな〜多分ムダですけど」
 ホントしぶといです琥珀さん。できればツッコミどころは一発言につき一つ程度に納めていただきたいんですが。

「志貴さまのおパンツは私が洗います!」
「いーえっ私が洗います!」
「私が洗いますよ〜!」

 なんなんだキミら。

「志貴さまのワイシャツにアイロンかけるのは私です!」
「いーえっ私がアイロンをかけてあげます!」
「私はそれパスしよっかな〜〜〜」

 ホントになんなんだキミら特に琥珀さん。

「でも裸ワイシャツで起こしにいっちゃおっかな〜〜〜」
「ね、姉さんそれは反則です!絶対ダメです!」
「はだか…わいしゃつ…?」

 お父さんのパンツ一緒に洗わないで!なんて娘に言われる世の親父たちからすればいっそウラヤマシイのかもしれないな。

 そんなことを考えながら、フライパンやら檻髪やらショッキングピンクの謎の薬液が詰まった注射器が乱れ飛ぶ戦場から、志貴は腰にバスタオル巻きつけただけの姿で撤退を始めた。
 …まあ、部屋で毛布包ってれば風邪ひくようなことにはなるまいて。

  * * * * *

「そんなこともあろうかと、ちゃーんと志貴のベット温めておいてあげたよー」
「って何でお前が俺の部屋にいるんだよアルク!」
「うん、そこの窓から」
「帰れ不法侵入者!」
 人のベッドの中で首だけ覗かせている真祖の姫君に、志貴は頭痛を感じながらもとにかく入室して後手でドアを閉めた。
「えー。でもこの国には昔お殿様の草履を自分の懐にいれて温めた忠義なお猿さんの美談が」
「まあそんな故事もあるがそれとこれとどういう関係がある?」
「……志貴のために何かしてあげること、ないかなって、…思って」
 うっ。
 少し伏目がちにそんなことを言ってくるアルクェイドの言葉には、何の裏も打算もなくて。
 ただ、自分を喜ばせたいというだけの、純粋な気持ちだけで。
 そんなちょっとした仕草が、不意討ちで、可愛くて。
 だからこいつは、卑怯だと思う。
「…まあその気持ちは嬉しいんだけど。でも人のベッドに勝手に入り込むのは慎みに欠けるんじゃないか?」
「うーん…そうかもね」
 実は根は結構素直なアルクェイドに気を良くして、心もち柔らかい口調で志貴は言った。
「わかってくれればいいさ。じゃ、さっさと出てくれないかな」
「…………」
 何故か黙り込んだアルクェイドは、微妙に視線を彷徨わせていた。
 その視線の先を追うと、ベッドの脇に乱暴に――というか単にそこに無造作に脱ぎ散らかした女物の衣類が一式。
「ちょ…ちょっとまてこのバカ!一体何を考えてやがる!!?」
「えっと…だ、だって、肌の表面積の露出が大きい方が早く布団あったまると思って」
 うわ。
 素で言ってますよこの人。
「え、でも、志貴だってそんなカッコ…」
「おっ、俺は風呂上りだか…ら…」

 一つの部屋に二人の男女。
 どっちも裸同然。
 しかも片方は既にベッドイン・スタンバイオッケー。555・ENTER.
 とどめに相手はアルクェイド・ブリュンスタッド。巨ちちーなパツキン外人様。
 これで間違い起こすないいますか?

「な〜んちゃって。流石に全部はちょっと恥ずかしかったから、ワイシャツだけ着てたんだよー」
 そう言うと少し照れが入った笑みを浮かべて、アルクェイドは起き上がってベッドの上で座り込んだ。
 裸ワイシャツで。

「…す…」
「え?どしたの志貴?…なんか、目が怖いんだけ…ど…」
「す……す…」
「す?」
「スケスケ――――!!?」

 志貴っち、ルパンダイブ敢行!!

「この大バカ!大バカ女がああああああああ――――――――――――!!!」
「やんっ、やんやんやん志貴、しきぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 ( 熱 烈 合 体 中 )

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★




○総評
 アルク、1人勝ち。あるいは漁夫の利の勝利。
 いろいろあってもやっちゃったもん勝ちー。恐るべし既成事実。


「「「納得いきません(です)―――――――!!!」」」


 めでたしめでたし。


「「「めでたくなんかありません(ですよ)――――――!!!」」」


(終わる)
























「「「終わるな―――――――――――!!!」」」
「…それより私、出番ないんですか?」

 ありません。


「ひどい話もあったものですわね。えっと…尻先輩?」
「出番、無い方が良かったかもしれませんよオシリ様」
「あはー。かっわいそーですねーア○ル様」
「ちっが―――――――――う!!!特に最後の――――――――!!!」
 でもデフォだし。
「デフォって言うな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

(いいから終われ)



 
【後書き】
 オチを探しにちょっとセミパラチェンスクまで行ってきます。
 探さないでください。
 …いや、我ながらなんでこんな話に?






 ☆ コメント ☆

和樹 :「何と言うか、鳶に油揚げって感じだな」

祐介 :「そうですね。でも、仕方ないよ。うん、仕方ない」

浩之 :「巨ちちだもんな。しかもパツキンだもんな。男だったら抗えないって」

和樹 :「経験者は語る、ってか?」

浩之 :「そこ! 経験者とか言わない!」

祐介 :「でも事実でしょ?」

浩之 :「…………(汗)
     ……え、えっと。
     ぱ、パツキンとかはともかくとして、裸ワイシャツは卑怯だよな。
     あれは抗えねーよ。志貴が襲いたくなる気持ちもよく分かる」

和樹 :「……経験者は語る、その2だな」

浩之 :「だ、だから経験者とか言うな!
     つーか! 裸ワイシャツだったら和樹さんもしてもらってるでしょうが!」

和樹 :「う゛っ(汗」

祐介 :「え!? そうなんですか!?」

和樹 :「い、以前……南さんに……その……」

祐介 :「えーっ!? それじゃ、どっちも未経験なのは僕だけ?
     うわー、なんだか置いてきぼりをくらった感じだよ。
     ……あ、ちょっぴり心の汗が」

浩之 :「なにも泣かんでも。
     祐介も沙織ちゃんとかにやってもらえばいいじゃん」

和樹 :「そうそう。今晩にでも頼んでみたらどうだ?」

祐介 :「む、無理だよ。特に今晩は無理」

浩之 :「なんで?」

祐介 :「だって、今晩は既に裸エプロンと裸体操着をしてもらう約束をしてるから(照」

浩之 :「…………。
     ……さ、さいですか(汗」

和樹 :「……な、なんだろう、この異様なまでの敗北感は(泣」






戻る