「藤田さん! 見て下さい、このお魚とっても可愛い。」
見上げるほど高い大きな水槽の中で、気持ち良さそうに泳ぎ回る色鮮やかなお魚を見ながら、藤田さんを手招きします。
藤田さんは、少し困ったような、複雑そうな表情で私に近付いて来てくれます。

放課後に、無理を言って藤田さんと来た水族館。
平日の、しかも夕刻近くの水族館は人影疎らで、どんなに騒いでも他のお客さんに迷惑をかける事はありません。
と、言う訳では無いのですが、水族館に着いてからの私は、まるで子供の様にはしゃいでいます。
だって、仕方有りません。
大好きな藤田さんと二人きりで、水族館に来ているんですから。
少々浮かれてしまうのも無理ないです。

「琴音ちゃん、そんなに急がなくったって、魚は逃げないって。」
「でも、急がないと閉館になっちゃいます。」
少しだけ口を尖らせて言ってみます。
でも、ホントに拗ねている訳じゃないですよ。
そこの所は、藤田さんなら、きっと判ってくれていますよね。

「見て下さい、このお魚可愛いですね。 なんて名前なのでしょうか。」
「さあ〜。 魚の名前は詳しくないからなあ・・・。」
二人して、水槽の手前を見てみます。
水槽の手前には、その中に入っている魚の名前が写真付きで紹介されています。

「う〜〜ん、あれ・・・ですかね。」
「どれどれ・・・。」
「あの7番目の・・・・。」
「どれどれ・・・。 でも、ちょっと色目が違がわねぇか?」
「そう・・・・ですか・・・。」
そんな他愛の無い会話をしながら、藤田さんと二人で人影疎らな館内を歩いて回りました。

「藤田さん、イルカさんのプール、行きませんか?」





     題目  『  水族館の片隅で   』







この水族館の中には、ガイア、マッシュ、オルテガと言う3匹のバンドウイルカさんがいます。
その3匹と、オキゴンドウクジラのマチルダちゃんとの楽しいショーは、アザラシさん達のショーと並んでこの水族館の目玉です。   
人や、物を運ぶのが大好きなマチルダちゃんや、ガイア、マッシュ、オルテガのジャンプは、1匹でジャンプして見える程息の合った素晴らしいものです。

ショーの無い時間は、子供とイルカとの触れ合いを増やすために、『触れ合いのプール』と呼ばれるプールに4匹はいます。
今、私と藤田さんはその『触れ合いのプール』の傍に来ています。
ここからでも、4匹が気持ち良さそうに泳いでいる姿が見られます。

「ガイア、マッシュ、オルテガ、マチルダちゃん!」
私は、イルカさん達を呼ぶと、プールに手をつけてパチャパチャと水面を叩きます。

「・・・琴音ちゃん・・・危ないよ。」
「大丈夫ですよ。」
なおも、水面を叩いていると、イルカさん達が顔をだして私の方に近付いて来てくれます。

「今年も来たよ。  みんな元気だった? ・・・そう、それは良かったね。」
代わる代わる、私の所にやって来るイルカさん達を撫でてあげます。
ガイアなんて、身を乗り出してきて、私の頬を舐めまわしたりします。

「きゃ・・・。 擽ったいよ! もう・・・ガイア止めてったら・・・。」
ガイアがそんな事をするものですから、マッシュとオルテガまで・・・お陰で私の制服がビショビショになってしまいました。

「もう! オルテガ、マッシュ、私の服が濡れちゃったでしょ。」
私は、ちょこっとだけ怒った顔をして、マッシュとオルテガの頭を、ぺちっ!っと叩きました。
すると、マッシュとオルテガは、2匹とも反省したようで、しゅんとなってしまいました。
ちょっと可哀相な事をしました。

「・・・ぷっ! ふふふ・・・。 ごめんね、怒ってないから、元気出して。」
途端に明るい顔になったマッシュとオルテガ。
私は、2匹の頭を優しく撫でてあげました。

「・・・なあにマチルダちゃん・・・・・え?  そんな事ないですよ。 ・・・・・え・・・・・えっと、私の先輩で、『藤田浩之』さんって言うんですよ。」
マチルダちゃんたら、私が連れてきた人 −藤田さん− に興味を覚えたようで、『誰?誰?』って聞いてきます。
『もしかして彼氏?』とか聞いてきた時には、ちょっと照れてしまいました。
藤田さんには、私が真っ赤になったの・・・見付かってないですよね。

「・・・違いますって。  ・・・・・・・マッシュ・・・残念でした。 藤田さんには、ちゃんと彼女さんがいらっしゃるんですよ。」
それでもマッシュッたらしつこく聞いてくるから、藤田さんには神岸先輩がいる事を教えてあげました。
そうしたら、神岸先輩の笑顔が脳裏に浮かんでしまって・・・。
私ったら、その時に少しだけ寂しい顔をしたのでしょうか、マッシュが『元気を出して!』って、励ましてくれます。
とっても、優しい子です。

30分ほどみんなとお話をした頃でしょうか。
無情にも、閉館を知らせる放送が流れてきました。
「あ、もうそんな時間なんだ・・・。  ごめんね、ガイア、マッシュ、オルテガ、マチルダちゃん。 また来年来るから・・・。」
イルカさん達は、名残惜しそうに悲しい声を出して、水面をバシャバシャ叩きながら、お別れをしてくれています。
私も、後ろ髪を引かれる思いで、何度も何度も振り返りながらその場を後にしました。



「琴音ちゃんって凄いね、イルカと話しが出来るんだ。」
『触れ合いのプール』から少し離れてから、それまで黙っていらした藤田さんが、徐に口を開かれました。
藤田さんは、少し驚いた様な顔で私を見ています。

「そんな・・・大した事ないですよ。」
「そんな事無いよ。 誰でもできる事じゃないんだから、もうちょっと自分に自信を持った方が良いって。」
「はい。藤田さんが、そう仰るなら。」
そう言って、私は藤田さんから視線を戻します。

(・・・自信を持て・・・か。)

私は、自分の足元を見ながら、藤田さんの言葉を反芻します。

「今日来たのは、イルカと約束してたからか?」
「え? どうして・・・ですか?」
「だって来た時には、『〜今年も来たよ。』って言ったし、帰る時には、『また来年来るから・・・。』って言ったじゃないか。」
私が、何気なくイルカさん達とお話ししていた言葉を、覚えていてくれた藤田さん。
声色まで真似てくれたのは嬉しいんですが、私、そんな声してますでしょうか?
・・・ちょっと複雑です。

「もう10年近く、毎年この日に・・・。」
「そうなんだ・・良いねえ。」

「・・・良くないですよ。」
「・・・え?」
思わず眩いてしまった言葉を、藤田さんに聞かれてしまいました。
まさか、私からそんな言葉を聞くとは思わなかったからでしょうか。
驚いた顔をしていらっしゃる藤田さん。
もう、どんなに取り繕っても駄目みたいです。
私は、諦めました。

「御免なさい。 ホントは藤田さんに言う心算は無かったのですが・・・実は、今日私の誕生日なんです。」
「え、そうなの?  それなら、もうちょっと早く言って欲しいな。」
ホントに残念そうな藤田さん。
私が思った通りの反応だったので、思わず微笑んでしまいました。

「ふふふ・・・。 そのお気持ちだけで充分です。」
「でも・・・。」
更に残念そうな藤田さん。

「・・・じゃあ、恥ずかしいですけど告白しますね。」
「私、自分のお誕生日会ってした事無いんですよ。 勿論、他の人のお誕生日会にも呼ばれた事無いですけどね。」
「・・・え!」
「私、藤田さんも御存知の通り、例の能力のせいで小さい時から友達なんていませんでした。  だから、毎年誕生日が来るのって嬉しくなかったんです。  勿論、お父さんとお母さんからは、『お誕生日プレゼントだよ!』て、何がしかの物は貰いましたし、ケーキにロウソクを立てて御祝いもしてくれました。   ・・・でも、それだけだったんです。 
誰も、心から私の誕生日を祝ってはくれていない・・・元々、その能力のせいで、両親からも、親戚からも疎まれていましたから、当然と言えば当然かもしれません。」
「・・・琴音ちゃん。」

「ふふふ・・・。  藤田さん、そんなに心配なさらないで下さい。  そんな私でも、心から祝ってくれる子達がいたんです。
この水族館に訪れた時に心を通わせた、イルカのガイア、マッシュ、オルテガ、マチルダちゃんです。  あの子達は、私の誕生日を心から祝ってくれたんです。」
ニコニコ笑っていたつもりなんですが、思わず涙が零れてしまいました。
泣くつもりなんてなっかったんですが・・・・恥ずかしいです。
藤田さん、変に思われなかったでしょうか。

「・・・ぐすっ。  御免なさい、如何したんでしょ、気にしないで下さいね。」
「・・・琴音ちゃん・・・俺・・・。」

「ごめんなさい、ホントに気にしないで下さい。  藤田さんには、今までも沢山御迷惑をお掛けしていますし、それに・・・。」
「それに?」

「藤田さんには、夢・・・叶えて貰いましたから・・・。」
「夢って・・・俺、何もしてないぜ。」
「いいえ、藤田さんは、私の夢を叶えてくれました。  つまらない夢ですが、今此処にこうしている事です。」
「此処にいる事が・・・夢なのか?」
「はい。  今まで、お誕生日に”友達”と居た事なんて有りませんから、”友達と何処かに行けたら"ってずっと考えてました。
それを、その・・・・・・・・大好きな・・・・・・藤田さん・・・・・と・・・二人っきりでなんて・・・夢のよう・・・です。」

 ばふっ!

・・・・い、言ってしまいました。
藤田さんに、私の気持ち伝えてしまいました。
最後の方は、ごにょごにょっと、小声になってしまいましたし、俯いたままで藤田さんのお顔も見られませんが、確かに気持ちを伝えちゃいました。

私、きっと、耳まで真っ赤です。
自分の胸のドキドキが聞えてきます。

私達、向き合ったまま身動き一つ取れません。
藤田さんも言葉を選んでらっしゃるのか、なかなか話し掛けてくれません。
妙に緊張した空気が二人を包みます。

「琴音ちゃん・・・俺・・・・。」
「ごめんなさい、藤田さん。 今のなしです! 忘れてください。」
藤田さんが口を開けられた途端、私は藤田さんの言葉を遮っていました。
決して始まる事のない私の想いだとしても、藤田さんの口から『終わり』を告げられるのは酷ですから。
判っているとはいえ、現実を思い知らされるのは辛いですから。
私の中で、私の気持ちを終らせてあげたいですから。

「だから、その・・・・。  藤田さんには夢を叶えてもらいましたから・・・・私、それで充分です・・・。」
「俺に出来る事は、他に無いかな?」
他に出来る・・・こと・・・ですか?
他に出来ること・・・。
他に・・・・・・。

「お願いです!  私のお友達でいて下さい! 今までのように、これからもずっと・・・。」
私が一番欲しいもの。
それは、私を理解してくれるお友達・・・。
藤田さんの一番じゃなくても構わない。
これからも、ずっと、ずっと、お友達でいて欲しい。

「え? お友達って・・・今までだって、これからも、ずっとそのつもりだったぜ。」
「そ、そうですか・・・良かった・・・。」
私は、胸を撫で下ろしました。
私の想いを伝えた事で、私が想いを拒否した事で、藤田さんとの関係が壊れるのが怖かった。
何よりも、私の事を一番理解してくれている藤田さんが、私から離れていくのが怖かった。

「じゃぁ、今から俺に、琴音ちゃんの誕生日のお祝いをさせてくれ。」
「え? はい・・・えっと・・・。」

「今から、家に行こうぜ。」
「え〜〜〜〜!」

え? え? え?   
いきなりそんな・・・。
藤田さん・・・えっと・・・そのぉ・・・・決して嫌じゃないんです。
嫌なんかじゃないんですけど・・・・私にも・・・その・・・心の準備って言うものが・・・。
色々な事も考えてしまいますし・・・。

私はモジモジしながら、藤田さんの顔をチラッと見ました。
何時もの優しい笑顔。
その優しい笑顔を見ているだけで、胸のドキドキも不安も消えて、幸せな気持ちに満たされます。
藤田さんになら、お任せできそうな、そんな気分になりました。

ホントに強引な藤田さんです。
でも、それがなんだか、藤田さんらしくって・・・とっても嬉しかったです。(ぽっ)

・・・ピッポパポ。

って、浩之さん?  携帯取り出して、何やってらっしゃるんですか?

「・・・・・あ、俺。   あかり今暇だろ・・・・・・・何?志保とお茶してる? おお、良いタイミングだ。  今からバースデーパーティーするから5〜6人分ぐらいの料理作ってくれ・・・・・・・・え〜〜じゃない!  頼むな!  あ、そうそう、ケーキは”ジェットストリーム”で買ってくから・・・・・・・・・う〜〜ん、そうだなぁ・・・後2時間くらいで帰れるから・・・・・・おう!頼んだぞ!また後で。」

・・・ピパポポポ。

「・・・・・雅史か? 俺だ。  後2時間位したら家に来てくれ。  バースデーパーティーだ・・・・・え?誰って?来てのお楽しみだ!  じゃ、また後でな。」        

・・・ピパポポポ。

「・・・・・お、いんちょか。  俺だよ、俺!  今・・・・え? 模試の真っ最中?  可哀想になぁ・・・塾終わったら俺の家に来いよ・・・・・・ああ、バースデーパーティーするからさ、息抜きには丁度良いだろ・・・・・・・ああ、遅くなっても待ってるって・・・・・・・・ああ、じゃ、後で。」

矢継ぎ早に電話を済ませる藤田さん。
私は、思わず呆気に取られてしまいました。

「ちょ、ちょっと待って下さい。」
2人っきりのバースデーパーティーじゃなかったんですか?
それで、おめでとうを言ってくれてる時に、手と手が触れ合ったりしちゃって、さっき私が藤田さんの事『好き!』って言ったから、藤田さんも私も妙に意識しちゃって・・・そしたら藤田さんに引き寄せられて、抱締められちゃったら、拒む事なんて出来なくって、それでも一応は・・・ホントに一応なんだけど、『藤田さんダメです・・・。』とか言うんだけど、藤田さんってば『・・・好きだよ、琴音ちゃん。』なんて言ってくれるのを期待していた訳じゃないんですけど・・・。

「私のバースデーパーティーのために、皆さんに御迷惑をお掛けする訳にはいきません。  それに、あかりさんには今から料理を作れだなんて・・・。」
色んな事を想像しながらも、尤もらしい事を言ってしまう私。

「ああ。 あかりなら大丈夫、あいつは料理作るの大好きだから。」
もう!藤田さん判ってらっしゃらないんですか?
あかりさんは、料理が好きなんじゃなくって、藤田さんの為に料理を作るのが好きなんですよ。
はぁ〜。  ホントに、女心を理解出来ない朴念仁さんなんですから・・・。

「誕生日ってさ、色々な意味が有ると思うんだ。  何年か前の今日生まれた事を祝うとか、一年間健やかに成長したり、元気に生活出来た事を祝うとか有ると思うんだ。  でも、もっと前向きに考えたらさ、姫川琴音と言う女の子が、16歳になる記念すべき第1日目を祝うって、考えられないかなぁ。」
「・・・藤田さん。」

「その大切な日を、俺達にも祝わせて欲しいんだ。」
「・・・はい、有難う御座います。」

「イルカだけじゃない、人間代表としてね。」
「・・・・・・・・・・・。」

















次の日・・・・・。

「・・・・うっぷ。  頭痛いですう〜〜。」
「俺もだよ〜参ったなあ・・・二日酔いだよ。」
「ねえ、みんな・・・朝御飯・・・いいよね。」
「私パス!  ねえ、あかり、お水ちょうだい。」

「僕も要らない・・・気持ち悪いよぉ〜〜。」
「何やあんた等、だらしないなぁ〜。  シャキッとしいや。」
昨晩、皆さんが私の誕生日を祝って下さいました。
ええ! そりゃあ、もう!呆れる程、しっかりと祝って下さいました!


部屋に入るなり、志保さんのリサイタルが始まったのには驚きましたが、これは何時もの事らしいので、まあ良しとします。
問題は、実はそれからなんです。
遅くに、保科智子さんと言う方がいらっしゃいました。
保科さんは、『土産や!』と言いながら、ワインを1本持参されました。

『ダメだよぉ〜私達、未成年なんだから・・・。』と言う神岸先輩の言葉はあっさり却下され、みんな一口ずつの約束でワインを戴きました。
初めて飲んだワインは、口当たりが良くって、ホントに美味しかったです。

『そう言えば、家にもあったな。』と言って、藤田さんが何本かのワインを持ってらっしゃいました。
一口づつ・・・・・の約束が、何時しかワインの試飲会の様になり、それに日本酒と焼酎が入り始めた頃には、ただの飲み会へと変化してました。

気が付けば、明け方近くまで、飲めや歌えの大宴会となっていました。
既に、集まった趣旨さえ忘れ去られた頃に始まった大宴会は、それはもう、凄まじい物でした。
僅かに残った記憶の断片を辿るだけでさえ、口に出すのも、いえ、考えるだけでも恥ずかしい事を、沢山したりされたりしました。
私・・・もう、お嫁に行けないかも知れません。

「みんな、顔でも洗ってそろそろ行かんと、学校に遅れてしまうでぇ。」
「智子! この状況を見て、それでも学校に行けと言うのか?」
「当たり前やろ。  学生の本分は学業や。  前日にどんだけ深酒しようが、ナニをしようが、けろっとして学校に行くんが当たり前やろ。」

「「「「「・・・…。」」」」」
申し合わせたように立てられる中指。
5人の冷ややかな目が、智子さんに注がれます。

「呑んでも、呑まれたらあかん言うんは、酒飲みの常識や。」

・・・・・・絶対、ばらしちゃる。
殺意って、こうやって芽生えるものだと、初めて知りました。



外に出ました。
頭がくらっとします。
私、黄色い太陽を見たの、初めてだと思います。

「う〜〜〜ん。    清々しい朝やなあ・・・・・・さあ、今日も勉強頑張ろうっか!」
多分、智子さんが、始めから最後まで一番飲んでらっしゃいました。
なのに何故この元気?

「藤田さんのお友達の方って、個性的な方が多いんですね。」
志保さんを初めて見た時に、うっすらと感じた、でも今は強く感じた事を、あかりさんに小声で言いました。

「はははははは・・・・。」
あかりさんは、力無く、ただ乾いた笑いをするだけです。

「・・・・まだね、普通な方・・・かな。」
最後に、ぼそっと小声で眩かれた言葉、私は聞き逃しませんでした。

・・・これが、普通な方?
急に、藤田さんが哀れな存在に見えてきました。
こんな環境で今まで・・・。

「・・・今に・・・わかるよ。」
あかりさん・・・・。  引きつった笑顔で言われても、何の説得力もありません。
私、決心しました。
私、藤田さんを、この悲惨な環境から必ず助け出して見せます!
ええ! 頑張りますとも! 超能カ美少女姫川琴音の名に賭けて、藤田さんをこの人達の魔手から救い出して見せます!
私は、乾いた笑いを繰り返すあかりさんの隣りで、両手を難く握り締めて、黄色い朝日に向かい強く強く誓いました。

                                                             おわり




PS

あかり  はぁ・・・・。

浩之   あかり、如何した?

あかり  ・・・昨晩は、パンピーを引き摺り込んだ気がして、ちょっと気が引けたけど・・・。
      
浩之   ・・・引けたけど?

あかり  琴音ちゃん、順応できそうで良かった・・・。

浩之   ・・・だろ。

あかり  でも・・・この中では、私が一番まともだよね。

浩之   そうか?  くまチュウを見て『可愛い!』と言った瞬間にアウトだと思うぞ。

あかり  ・・・・うぐぅ!





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あとがき

ばいぱぁです。
ここまで読んで頂き有難う御座います。

次も(は)頑張りますのでよろしくお願いします。

                            





☆ コメント ☆

綾香 :「ジェットストリームアタックを仕掛けてきそうなイルカに祝福してもらう誕生日ってのも
     乙なものだけど、やっぱり大勢でワイワイ騒いだ方が楽しいわよね」

セリオ:「そうですね。
     尤も、琴音さんとしては浩之さんと二人きりの方が良かったでしょうけど」(;^_^A

綾香 :「まぁね」(^^;

セリオ:「それにしましても、この惨状、この面子でも『普通な方』とは……」(;^_^A

綾香 :「あ、あはは」(^^;

セリオ:「でもまぁ、綾香さんがいませんでしたからね。物理的被害も少なかったでしょうし。
     そう考えますと確かに『普通』だったかと」

綾香 :「ちょい待ち」

セリオ:「なんです?」

綾香 :「あのねぇ。物理的被害って、人を人間台風みたいに言わないでよ」

セリオ:「……え? ち、違うんですか?」(@@;

綾香 :「違うわよ!
     まったくもう。
     ToHeartの登場人物の中で一番の常識人であるあたしに向かってなんて言い草よ。
     失礼しちゃうわ」

セリオ:「わたし、今から琴音さんへのお誕生日プレゼントを買ってきますね。
     それじゃ、さよなら」

綾香 :「サラッと流すな! あからさまに目を逸らすな! そそくさと逃げ去るなぁ!」(ーーメ




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