ガラガラガラ・・・・。

「舞〜。ただいまぁ・・・。ごめんね遅くなって。」

「・・・ほぇ? 舞? 電気も点けずに如何したの? お部屋の中真っ暗だよ。」

 ぱちっ。

「・・・ほぇ? 舞? 何処・・・なの? あ、判った・・・かくれんぼなんだ。」

「どこかな・・・。あれ・・・・机の上に手紙・・・・。」

「『佐祐理へ  暫く家を出ます。 探さないで下さい。 舞』 って・・・。」

「これって・・・もしかして家出?」

「舞! 舞! 何処に行っちゃったの! 舞! 舞〜〜〜〜!」




  

題目   『  ありがとうの言葉に替えて   』






「・・・・・と、言う事。」
 ソファーに座った髪の長い女の子は、それだけポツリと呟くと、無表情のまま冷めかけた紅茶を一口すすった。
 その姿を見つめる家人約2名は苦笑し、俺は頭を抱え込んだ。

「・・・なぁ、舞。何が、『・・・と、言う事。』なんだ? そもそも、どうしてこんな時間に来たんだ? 佐祐理さんにはちゃんと言って来たのか?」 
「祐一。 そんなに問い詰めないの。」

「だってよう。人の家に夜遅く訪ねて来てだぞ。ソファーに座って30分。俺達が見詰める中、漸く口を開いたかと思えば、
『・・・と、言う事。』だけじゃ、訳判んないだろ。」
 俺の隣に座る名雪にそれだけ告げると、マグカップに入っているコーヒーを一口飲んだ。
 名雪は、口を尖らせながら、『でも・・・。』とか言っているが軽く無視。
 そんな俺の態度が気に食わないのか、『う”ぅ〜〜!』とか唸りながら頬を膨らませている。
 きっと、名雪の名雪たる所以だと思うけど、そんな拗ねた顔しても、ちっとも怖くない。
 むしろ、可愛いとさえ思ってしまうのは、名雪に惚れているせいなんだろうけど、癪だから素直には教えてやんない。 

 そんな、この家では日常茶飯事となりつつある、俺と名雪とのじゃれあいを、『名雪、祐一さん。お客さまの前ですよ。』と、軽く窘めてから、この家の家主であり、唯一の大人の女性である秋子さんが、舞に向かってにこやかに口を開いた。

「了承!」
 秋子さんは、専売特許とも言える短い言葉を重々しくのたまわった。
 これがバラエティー番組だったら、間違いなくこかされていたに違いない位の絶妙なタイミングで。

 おいおい、奥さん。いきなり何を言い出すんですかい?
 舞は、まだ何も言って無いでしょ。お願いされる前から『了承!』は無いんでないかい?
 なんて突っ込みをしようとした時、隣から眠り姫の声が聞こえた。

「お母さん。今日は一段と『了承!』の声が早いね。」
 こらこら、ねこ娘。
 幾らなんでも、突っ込み所が違うだろ? 

 ・・・奥さんも、にこやかに親指立てないの!
 それをまた返すんじゃないっちゅーの! この猫娘は!

「舞さんも、きっと色々な御事情があるのでしょう。祐一さん、お友達なら、そう言う所は察して差し上げるものですよ。 
御事情は、話せる様になったらで構わないじゃないですか。」
 包み込む様な優しさに溢れた台詞。
 その声を聞いただけで、反論をする術も、その気さえも無くしてしまう様な声。
 決して強制ではなく、突き放すわけでもなく、自主性を尊重してくれて、でも温かく見守っていてくれる。
 とても、さっき親指を立てていた人と同一人物とは思えない。

「・・・ありがとう。 でも、今日はお願いがあって来た。」
「「「お願い?」」」

「・・・私に、私に料理を教えて!」
 佐祐理に食べさせてあげたいからって。





 それから更に一時間。
 舞は、自分の気持ちを言葉に変えて、ぽつぽつと俺達に語った。
 
 高校を卒業して、すぐに佐祐理さんと一緒に暮らす様になった。
 生活面での細々とした事は、2人で決めて、二人で分担してやっていた。
 家事とは全く無縁な人生を歩んできた舞にとって、それは全てが不慣れで失敗の連続。
 
 でも、佐祐理さんは、舞を咎めるでもなく、何時もの笑顔を湛えながら手伝ってくれる。
 その行為自体は素直に嬉しい。多分、佐祐理さんも嫌とは思っていないはず。
 でも、世話になりっ放しの自分が、どうしても許せない。
 何かの形に変えて、感謝の気持ちと共に、佐祐理さんに何かをしてあげたかった。

 その『何か』が判らず、もんもんとしていた時、ふと気がついた。

 そう。 3日後に迫った佐祐理さんの誕生日の事を。

 舞は考えた。
 佐祐理さんの誕生日に、舞の手作りの料理で祝ってあげたいって。
 きっと、佐祐理さんは喜んでくれるに違いない。
 
 そう考えたら、いてもたっても居られなくなった。
 敬遠しがちな台所。それでも料理の練習をするために、何度も何度も一生懸命に練習した。
 でも、残念ながら家庭科・・・特に調理実習をこの上なく不得意としていた舞にとって、それはRPGで、いきなり
 ラスボスに出会ったくらい無謀な戦いだった。
 元食材だった物たちが、何か異質なモノに変わって、ゴミ箱の中に消えて行った。

 人切り包丁を扱うのは得意でも、菜っ切り包丁は不得意。
 なぜか、ミート煎餅すら作れない有様。

 あ、アレは失敗作の代表か・・・。

 まぁ、何にせよ、ゴミ袋を何袋か作った頃、漸く自分の無力さに気付き、このままでは佐祐理に料理を楽しんでもらえない事が判った。
 そこで一念発起、ご町内で料理が上手いと評判の水瀬親子に教えを請うため、合宿覚悟でやって来たそうだ。
 一緒に暮らす、一番の親友に感謝とありがとうの気持ちを送るために。



「舞さん。うん、判ったよ。及ばずながら力になるよ。」
 何時もならスリーピングタイムに入っているはずの名雪が、ハンカチを片手に舞に向かって力強く応えた。

「ええ。そういう話なら私も協力させてもらいます。」
 秋子さんも、目頭を押さえながら快諾する。

「・・・ありがとう。」
 舞は、名雪と秋子さんの答えを聞いてから、無表情のまま頭を下げた。
 あ、でも、一般人には気付かないかもしれないけど、結構喜んでいた。 
 ホッペも赤かったし。

「舞さん。きっと祐一も協力してくれるから、明日から頑張ろうね。」
 ・・・うん、うん。
 ん? 
 こら! ちょっと待て、ねむり姫! 今、何を寝言ほざいた! 
 俺が舞に料理に協力?
 俺が舞に教えてやれる事と言えば・・・・・(コホン!)。
 今更声を大にして言う程の事じゃないが、たった一つしか無いぞ。

「そうね。祐一さん、試食、頑張って下さいね。」
 あ、そう。
 そりゃそうだよね。
 カップ焼きそばすら満足に出来ない俺が、舞に料理なんてな。
 そりゃ、幾らなんでも無理だもんな。  
 



  ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○





 と、言う事で、料理は明日からって事になって、その場は解散となった。
 で、もって、そろそろ遅い時間だからって事で、部屋の割り振りって事になった。
 そして、当然の様に名雪は舞を自分の部屋に連れて行く。

「あれ? 舞は名雪の部屋で寝るの? 隣の部屋空いてるじゃん。」
 素朴な疑問を投げかけてみる。

「あれ〜〜? 祐一は、どうして舞さんを一人で寝かせたいのかなぁ〜〜?」
 どきぃ!
 ど、どうしてって言われても・・・。
 ただの素朴な疑問ですってば・・・。

「ねぇ〜〜。どうして〜〜?」
 そ、そんな、変な下心なんかある訳なくて。
 ただ、こう毎晩名雪ってのも嫌じゃ無いんだけど、そろそろ飽きって言うのかなぁ・・・違う肌も恋しいかなぁ、なんてね。
 例えるなら、毎日、高級有名和牛の霜降りステーキを食べるのも良いかもしれないけど、偶にはあっさりとタラコのお茶漬けも捨てがたいってこと。
 決して浮気ってわけじゃなく、名雪の良さを再確認する為にも、久しぶりに舞と親密がお近づきになりたいと・・・・。

「ゆういち・・・。」
 だから、下心なんて・・・ちょっとしか・・・。
 俺の額に、季節外れの嫌な汗が、つつつ〜っと、流れた。
 
 だって、名雪にこやかな顔してるけど、目、笑ってないんだもん。

「・・・名雪、もうそれくらいにして。真琴の部屋でも良いんですけど、お布団は名雪の部屋に持って行きますね。」
 お、奥さんまで・・・。や、ヤダなぁ・・・。
 助けてもらって、こう言うのは何ですが、もうちょっと、貴方のお姉さんのご子息。いわゆる『俺』って存在を信用して
 欲しいなぁ・・・。
 
 ・・・って、信用なんてしてる訳・・・無いよな。

 居候の分際で、同級生の従兄妹である実の娘と、毎夜毎夜2階で秘め事してる奴だし。
 しかも、こちらに越してきてからの友達と言えば、みんな女の子ばかりで。
 その女友達でさえ、『友達以上』の付き合い方してるって言う事くらい、薄々感づいてらっしゃるみたいですし・・・。  
 
 俺は、苦虫を噛み潰す思いで、布団の搬入作業を見送った。
 秋子さんに、信用されていない事への悲しさ。
 『あの』、名雪にからかわれた事への口惜しさ。
 そして、舞とご親密になれなかった事への寂しさ。

 ・・・くぅー! 全部終わったら、ベットの上で名雪に倍返しちゃるー!
 と、本気で思っている俺。

 あ、待てよ。 
 今なら『二人の味くらべが出来る・・・。』なんて、マジに考えちゃった、おバカな俺だったりしたわけだ。






  ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



 

 ・・・って、言うわけで今日は5月5日。
 佐祐理さんの誕生日です。

 ・・・え? こんなに長く振っておきながら、舞の特訓の描写が無いのは何故かって?
 そりゃ、簡単。 
 その描写を入れると、18禁・・・・イヤ、15禁くらいの指定を喰らいそうだから。
 きっとモザイク入って、『良い子は決して真似しないで下さい。』なんてテロップが流れてきそうだからな。

「(チョップ!)・・・祐一、酷い。」
 俺の隣を歩く舞が、絶妙のタイミング&絶妙な角度で突っ込み(手刀)を入れてきた。 
 ちょっと、舞さん。 
 突っ込みは延髄に入れるもんじゃないですよ。危うく落ちそうになったじゃないですかい。

「イヤ! アレは断じて『酷い!』と、言われながら突っ込みを入れて良いものじゃないぞ! 
大体何なんだ、あの食材入れてた・・・。」

「・・・あれは、持ち運びし易かったから。」
「持ち運びし易かったからと言って、食材を市指定ゴミ袋(45L(大))に入れて来る奴があるか!」
 そう。 舞は食材を市指定ゴミ袋(45L(大))3袋分持って来たのだった。
 ま、その殆どは舞の手を介して、完全なゴミと化してから再度袋詰めされた訳だが・・・。

「大体俺は、アレの試食をさせられたんだぞ! 『食べ物を粗末にしてはいけません。』って言ってる秋子さんが、
『アレは食べ物じゃ有りませんから、すぐに捨てなさい!』って言ったアレだぞ! 今日この日に、こうして日の光を浴びていられる事を、どれだけ神に感謝したかお前に判るか?」

「・・・祐一。 終わった事。 一々細かい。」
 ま、舞ちゃん?
 ホントにそう思ってらっしゃいます? 殺されそうになったんですぜぃ。
 まだ短い人生だけど、一息に殺してくれた方がいっそ楽、ってマジに考えたんだぞ!
 
 俺の隣にいる名雪は、聞こえないフリでもしているのか、先程から黙ったまま素知らぬ顔して歩いている。
 おめーだって同罪だ!
 笑いながら、俺の口の中にあんな物流し込みゃ-がって!
 こうなったら、今晩にでもベットの上で・・・(以下略)。
 
 そんなバカ話をしているうちに、佐祐理さんと舞が暮らすアパートにたどり着いた。
 3階まで階段で上り、部屋の前でドアの鍵を回そうとした時、舞は『おやっ?』って顔をして手の動きを止めた。
 そうして、徐に鍵から手を離すとドアノブをゆっくりと回した。

「・・・開いた。」
 3人で顔を見合わせた。
 開け放たれたドアの向こう側は、昼前だというのに妙に暗かった。
 急に嫌な予感が胸をつき、誰言うともなく部屋の中に駆け込んだ。 

 玄関に近いキッチンを見ると、綺麗好きな佐祐理さんにしては珍しく乱れていたし、ほのかに異臭が漂っていた。
 冷蔵庫の前に置かれたビニール袋が放置されていたから、その中にあった生物が痛んだと思われた。

「佐祐理! 佐祐理!」   
 舞が、半泣きになりながら居間に向かう。
 俺達もその後に続いた。

 舞が勢い良く居間の扉を開けた。
 と、そこには・・・。

「佐祐理!」
 駆け出して、倒れていた佐祐理さんを抱き起こす舞。
 身体を揺さぶり、泣きながら佐祐理さんの名前を何度も何度も呼び続けた。
 
 俺と名雪は、ただただ二人を見詰めるしか無かった。
 たった2日半。たった2日半、舞がこの部屋を留守にしたばっかりに、こんな・・・。

 自然と涙が零れてきた。
 大事な人がこの世から消えてなくなる・・・。
 この場にいた者全てが、そんな理不尽さを感じ始めていた時、舞に抱かれたその人の指先が微かに動いた。

「・・・舞。・・・あはは。見つけた。」
 うっすらと目を開け、力ない笑みを溢した佐祐理さんは、それだけ言ってまた目を閉じた。






  ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



   
「・・・おいしい。」
 再び目を覚ました佐祐理さんに、舞はお粥を食べさせていた。 
 湯気が立つお粥を一さじ掬い、食べ頃になるまでふーふーして冷まし、佐祐理さんの口に運ぶ。 
 佐祐理さんは、運ばれてきたスプーンを口に入れ、良く咀嚼してから飲み込んだ。

「美味しいよ、舞。もしかして、これ舞が作ってくれたの?」
「・・・はちみつくまさん。私が作った。」
 どうやら佐祐理さんは、舞が家を出てから心配で、食事も水も、ろくに口にしていなかったらしい。
 目を閉じても見るのは悪夢ばかりで、夜も殆ど眠れなかったそうだ。

「ありがとう。今まで食べたお粥の中で、一番美味しいよ。」
「・・・ごめん。」

「どうしたの、舞?」
「・・・私。」
 惜念に駆られたのか、俯く舞。
 そんな舞の頬に、佐祐理さんの手がそっと触れた。

「佐祐理・・・舞に嫌われたのかと思っちゃった。」
 舞が佐祐理さんを嫌う筈がない。でも、佐祐理さんはそうは思わなかった。
 舞が自分の前からいなくなったのは、自分を嫌いになったから・・・そう信じ込んでいた。
 もう舞は、二度と自分の前には現れないと思っていた

 だから、目覚めた時に、目の前の舞を本物だとは思わなかった。
 また夢を見ているんだ、と。
 誰もいない公園で、延々と友達を捜し求める夢の続きだと。

「・・・そんな、佐祐理を嫌うだなんて、私、佐祐理の事大好き! だから・・・。」
「だから?」

「・・・だから、大好きな佐祐理に、私の手料理食べて欲しかった。一生懸命作った料理、食べて欲しかった。」
 佐祐理さんは、くすっと笑うと、舞の手を両手で取った。
 まるで大切な宝物でも扱う様に、優しく、優しく。

「舞。頑張ってくれたって事、判るよ。だって、こんなに手、怪我してるんだもん。」
 そう。兎に角舞は頑張った。
 確かに出来上がった物は出鱈目な物ばかりだったけど、朝早くから夜遅くまで、殆ど休み無しに料理を作り続けた。
 限りある時間の、しかも短すぎる時間の中で、舞は良くやった。
 それは舞の手を見れば直ぐに判る。
 慣れない包丁で切った痕や、油はねで火傷した痕などが、痛々しい程いたる所にあった。

「・・・・。」
 でも、舞は、傷だらけの手が恥ずかしいのか、急に手を引いた。
 佐祐理さんは、一寸驚いた顔をしていたが、上を向いて静に語り始めた。

「舞。 私ね、料理を作る時、食べてくれる人の笑顔を想像して作ってるんだよ。
舞や、祐一さんが、私のお弁当を食べてくれる時の『美味しい!』って、言ってくれるときの笑顔を想像して作るんだよ。
だから、できるだけ沢山愛情を降注ぐの。最後のエッセンスとしてね。舞の料理、とっても愛情こもってたよ。
きっと、佐祐理の事、いっぱい、いっぱい考えながら作ってくれたんだよね。」
「・・・はちみつくまさん。」

「だから、もう良いよ。舞がいなくなって寂しい思いしたけど、もう良いよ。戻って来てくれたから、もう良いよ。」
「ごめん。 もう、佐祐理に悲しい想いさせないから・・・ごめんなさい。」
 舞は、泣きながら佐祐理さんの胸に顔を押し当てた。
 佐祐理さんは、舞の頭をしっかりと抱締めた。
 限りなく、優しく、慈愛に満ち溢れた表情で。

「舞。もう、私をおいて何処にも行かないでね。」
「はちみつくまさん。」
    
「・・・約束だよ。」
「・・・約束する。」
 佐祐理さんと舞は、顔を見合わせながら、にっこりと微笑んだ。 
 その二人の笑顔が全てを物語っている。 
 もう大丈夫。俺は名雪の肩を抱きながら、ゆっくりと居間の戸を閉めて、二人のアパートを後にした。
 佐祐理さんへの、俺と名雪からの誕生日プレゼントを置いて。







  ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○






「・・・良かったね。」
「・・・ああ、そうだな。」
 さっきからそんな言葉しか出てこない。
 でも、それで良いと思った。だって、それ以外の言葉なんて思い浮かばなかったから。
 
「・・・祐一、そう言えばさ。」
「・・・・。」
 ・・・思い浮かばなかったんだけどな。
 
「佐祐理さんへのプレゼントって、何買ったの?」
「え?」

「・・・ほら、私と祐一からのプレゼント。祐一って、さっさと買いに行っちゃってさ。 私、何買ったのか知らないんだよ。」
「・・・ああ、そうだっけ。」

「そうだよ。」
「・・・ぬいぐるみだよ。」

「へぇ・・・そうなんだ。」
「ああ。舞の時は、オオアリクイのぬいぐるみだったからな。・・・でも、必要ないかも。」

「え? どうして。 何のぬいぐるみ買ったの?」
「バクさ。等身大のね。」
 悪い夢を食べるバク。
 でも、佐祐理さんには必要ないかもしれない。
 舞と一緒なら、悪い夢なんて見ないだろうから・・・。

                                                  おわり








00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00
あとがき


いつも読んで頂き有難うございます。
ばいぱぁと申します。

ちょっと遅れましたが、佐祐理さんの誕生日記念のSSを作成しました。
・・・の割には、佐祐理さんの出番が、めっちゃ少ないです。

今回のSSの出来上がりは、自分でも驚いています。
何がって?
そりゃ、勿論。 当初考えてたストーリーと、出来上がったSSの違いにです。
殆ど別物って言うか、全く別なSSになっちゃいました。

毎日、少しづつやってたのが、いけなかったのでしょうか?
不思議です。

では、また次も頑張って作りますので、読んで頂けたら幸いです。






 ☆ コメント ☆

綾香 :「あの置き手紙はやっぱマズイって。
     あれじゃ、どう見たって家出の書置きだもの」

セリオ:「ですね。まあ、実に舞さんらしいという気はしますけど」

綾香 :「それは……確かに。
     こういう不器用なとこって、如何にも舞さんって感じよね」

セリオ:「ええ。
     ――それにしましても……いいですよねぇ」

綾香 :「ん? 何が?」

セリオ:「舞さんと佐祐理さんがです。
     お二人の様な、親友という関係……憧れます。
     わたしも、お誕生日に料理を作って祝ってくれる親友が欲しくなってしまいますね」

綾香 :「マルチは?」

セリオ:「マルチサンハ『シマイ』デス。デスカラ、『シンユー』デハナイノデス、ハイ。
     シタガイマシテ、『リョウリ』ナドモッテノホカナノデス」

綾香 :「なんでいきなりカタカナになるかな? いやまあ、気持ちは分からないでも無いけど。
     …………。
     ……あ、あのさ、セリオ。それじゃあさ、もしよかったら、次のあなたの誕生日、あたしが……」

セリオ:「お断りします」

綾香 :「即答!?
     な、なんでよ!?」

セリオ:「お気持ちは嬉しいです。すっごく嬉しいです。
     ですが、綾香さんの料理も……ちょっと遠慮を……その……お腹壊しそうですし……」

綾香 :「なによ、失礼ねぇ。
     つーか、あなたはお腹を壊したりしないでしょうが。
     仮に変な物を食べたとしても、食あたりなんか、セリオには無関係でしょ!?」

セリオ:「食あたりはしませんが……物理的に壊されてしまいそうで……怖いです」

綾香 :「ぶ、物理的って……」

セリオ:「食べたら溶かされたりとか爆発したりとか」

綾香 :「するかぁぁぁっ!」

セリオ:「分かりませんよぉ。なにせ、『あの』綾香さんが作る料理ですからね。
     ある意味、マルチさんの料理より格段にデンジャラス? 舞さんだって敵じゃない?
     マルチさんを危険度レベル1、舞さんを3とするなら……綾香さんは……軽く見積もって、5?」

綾香 :「……あ、あんた……あたしを何だと……」




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