「・・・本日は皆さんに御報告したい事があります。 既に顔見知りの者も少なくはありませんが、
私の横におる若者が孫娘の芹香と婚約しました藤田浩之君です。」
 照明が落とされた中、スポット・ライトを浴たお爺さまは、殊更誇らしげに御来場のお客様方へ浩之を
 紹介した。
 その側で、カチコチになった浩之と姉さんが、まるで一昔前のロボットみたいにお辞儀をしている。

 会場中に響く万雷の拍手と喝采、この良き日を祝うかの様に奏でられる慶びの調べ。
 会場中がお祝いムードで盛上る中、私はお客様方に目立たないようにして外へ出た。
 姉さんの妹として、浩之の友人として、一番祝ってあげなくてはいけないのに・・・。



  
題目   『 芹香の誕生日 −ふたつの想い− 』






「・・・義兄さん・・・か。」
 ポツリと呟いてみる。
 姉さんの旦那になるのだから、私にとっては義理の義兄さん・・・のはず。
 でも、そんなポジションに、浩之は居て欲しくなかった。
 出来れば、私の隣に・・・って。
 でも・・・。

(・・・判ってた事じゃない。 そんな事。)
 そう、そんな事は判っていた。
 しかし、覚悟をしていたとは言え、その現実を目の当たりにした事が、これほど苦しく辛い事とは思いも
 しなかった。
 私は、人通りの多い車寄せを避け、人目につきにくい場所を選びながら裏庭に来た。
 そこは、パーティー会場の喧騒がウソの様に静まり返った場所だった。

(・・・寒いわね。)
 私は噴水脇のベンチに腰を下ろすと、自分の肩を抱き、両足を組んで身を縮ませ、寒さに耐えようとした。
 この寒さは、人もいない、花々も枯れ果てた寂しげな庭園の所為かもしれないし、今年もあと僅かとなった
 夜中に、上着も着ずに外へ出て来た所為かもしれない。
 でも、この耐え難き寒さは、そんな外的要素だけではない事くらい判っていた。
 そして、この寒さを和らげられる唯一の手段も判ってはいたけど、それが決して手に入らない事も承知して
 いた。 決して望んではいけないモノだって事も。

(・・・義兄さん・・・か。)
 もう一度だけ胸の中で呟いた。
 浩之に”義兄さん”なんて呼べるだろうか?
 呼べないだろうなぁ〜 きっと。
 小恥ずかしいのは勿論だけど、やっぱり浩之は浩之なんだから、浩之って呼ぶのが一番しっくりくる。
 ま、姉さんはともかく、お爺さまやお父さま方は眉を顰められるでしょうけど・・・コレぱっかりはねぇ・・・。

(ふふふ・・・義兄さん・・・。 義兄さん・・・か。)



 ○   ○   ○   ○   ○   ○


「・・・。(あ、綾香ちゃん。)」
 私の誕生パーティー兼クリスマスパーティーにて、御来場のお客様方に、浩之さんを御紹介すると聞かされた
 のは、パーティーが始まるほんの数時間前のことでした。
 それは私だけで無く、浩之さんも御存知無かったらしく、セバスが迎えに行った時、浩之さんは研究所の中で
 仮眠をしていらっしゃったとか。
 何でもこの一週聞、ほとんど毎日徹夜続きだったそうで、セバスによると、浩之さんのお姿は、それはそれは
 酷いありさまだったそうです。

 ・・・って事は、去年に引続き、また今年も私の誕生パーティーに来るつもりは無かったって事でしょうか?
 それはそれで、ぷんぷんです。

 ま、それは良いんですが、お爺さまが浩之さんをご紹介して下さっている最中、広いホールの端から綾香ちゃん
 が外に出て行くのが見えました。

 本人は気付いていませんが、私だって、実の妹である綾香ちゃんの気持ちくらい判っているつもりです。
 その気持ちの大きさも、想いの深さも、私に負けないくらいだって事も。
 浩之さんが私を選んで下さった後も、綾香ちゃんの気持ちが変わっていない事だって。

 それでも綾香ちゃんは、私達を応援してくれました。
 私が戸惑っている時には適切なアドバイスをしてくれたり、悩んでいる時には相談にも乗ってくれました。
 時には、私の背中を押してくれたり、私達のために、お父さまやお爺さまの間に入ってくれた事だって
 一度や二度では有りません。

 いつでも、綾香ちゃんは私達の良き理解者でした。
 それが、悲しいまでに自分の気持ちを押し殺し、痛々しい微笑を浮かべながら、意に反し矛盾と戦っていたとしても。
 だから、私達の幸せは、常に綾香ちゃんの犠牲の上に成立っているって事、私は忘れた事はありません。
 だから、綾香ちゃんに、この姿を見て欲しいと願う気持ちと、そんな酷な事はしたくないと思う、相反する想い
 が私の中にあるのは事実です。
 ドアを開け、静かに退出して行った綾香ちゃんを追いたい気持ちと、退出してくれた事に安堵する私。

 ただ判っている事は、もし、今綾香ちゃんの後を追ったとしても、綾香ちゃんに掛けてあげられる言葉は私には
 無く、また、どんな言葉も、綾香ちゃんを傷付けるだけだという事を。


 ○   ○   ○   ○   ○   ○


「・・・セリオ?」
 差出されたティーカップから香る、芳醇な香りに、半ぱ落ちかけていた意識が再ぴ呼戻された。
 あぶない、あぷない。 もうちょっとで、自分の屋敷の中で遭難する所だった。

「・・・私、お茶なんて頼んだかしら?」
 差出されたティーカップを震える手で受取りながら、憎まれ口を叩いてみる。
 実際、温かいお茶を滝れてくれたのには感謝するが、独りになりたくて此処に来たのに、それを邪魔された
 って事には憤慨しているから。

「いいえ。」
 表情を変えず、一言で否定するセリオに私は苦笑した。
 これが生身の人間であれぱ、気の利いた台詞の一つも期待したい所だけれど、残念ながらセリオはメイドロボ。
 私を気遣ってくれた事を褒めてあげるべきか、これが限界と思って諦めるべきか。
 ソーサーからカップを取ると、左手をカップに添えた。
 カップ伝いに紅茶の温もりが伝わって来て心地良い。
 私は、ふ〜ふ〜って、2,3度息を吹きかけると、カップの縁に冷え切った唇をつけ、琥珀色の紅茶を一口畷った。

「・・・ん? あれ、これって・・・。」
「はい。 ブランデーを 14.5mml 程入れてあります。 冷えた身体を温めるには、効果が高いと思いまして。」
 セリオの言葉を聞き終えた後、もう一度紅茶に口をつけ、そして全て飲み干した。
 温かい液体が身体の隅々にまで行き渡り、冷え切った身体をじわりじわりと温めていくのが判った。

「おかわりをお持ちしましょうか?」
「ここに居なさい。」
 カップを受取ったセリオに、強い口調で命令をした。
 ”友人”として接してきたセリオに、これほど強い言葉をかけた覚えはない。

「・・・お邪魔ではないのですか?」
「良いから、ここに座りなさい。」
 逡巡するセリオに、私の隣に座るよう、ベンチをペタペタと叩いてみせた。
 側にトレーを置いたセリオは、私の求めるまま、私の隣へと座った。
 私は何も言わず、セリオの胸に顔を埋めた。

「・・・あれ? 温かい。」
「はい、放熱温度上昇させ、体外温度を上げました。 通常よりバッテリー消費は高くなりますが、あと8時間37分27秒
ほど現温度を維持可能です。」

「ふふふ…バカね。 ちょっとだけで良いのよ。」
 私は、セリオをギュッて抱締めた。

「・・・綾香お嬢様。 一つお聞きして宜しいですか?」
「・・・どうしたの?」

「今まで、泣いていらしたのですか?」
「ううん、泣いてなんて無いわ。 だって・・・。」

「・・・今から泣くんだもん。」



 ○   ○   ○   ○   ○   ○


『・・・芹香さんも芹香さんだよなぁ。 あんな奴の何処が良いんだか。』
『さっき挨拶したんだけどさ、別に家柄が良い訳でもないし、さして良い学校出てるわけでもないしなぁ。』
『藤田君の家は、典型的は中産階級らしいしね。 場違いも甚だしいよ。』
『あれだろ。 同じ高校でさ、偶然、出会っただけなんだろ?』
『”偶然”かぁ? ”偶然を装っただけ”じゃないのか?』
『あぁ、やだねぇ。 下賤な輩が考えそうなことだ。』
 お客様方への御挨拶も終わり、お飲物を取りに行かれた浩之さんを待つため、壁際のソファに腰掛けていた
 時、観葉植物の陰から聞こえてきたお話の内容は、私の耳を疑うものでした。
 私だって、この場にいらっしゃった全てのお客様から、心からの祝福を受けているとは思っていません。
 しかし、それが冗談だったとして、私の愛する浩之さんを ”下賎” 呼ばわりするだなんて、許せません。
 しかも、私達の出会いを、私達の素敵な想い出を侮辱するだなんて・・・。

『・・・でもよぉ。 あの鉄壁な芹香さんをよく落としたよなぁ。』
『そりゃぁ・・・・なぁ。  やっぱアレ・・・だろ?』
『って事は、藤田浩之って奴は、そうとう凄いんだろうなぁ。』
『判んねえぜ。 ど一せ、芹香さんだって初めてだったんだろ? 凄いも何も、比較対照が無いんだったら、
比べ様も無いだろ?』
『はぁ? じゃ、俺達が先に芹香さんを頂いちゃってたら?』
『こんな無様なキャスティングミスだけはしなかっただろうな。』

 ・・・・はぁ? あんですって? 浩之さんより先に私を・・・ですって?
 そんな事したら、全力を持って、生まれた事と生きていく事を後悔させてやりますよ。

 そんな事より、・・・・・・・・・酷いです! 酷過ぎます!
 キャスティングミスだなんて、酷過ぎます。

 ・・・でも、(コホン!) 浩之さんが凄いっていうのは認めてあげないでも無いですが。(ぽっ)
 ・・・そ、それでも、こんな形で、私達が辱められるいわれはありません。

 もうダメです。 自他共に認める温和な芹香ちゃんですが、私はともかく、愛する浩之さんに酷い事を言う、
 この人達だけは絶対に許せません!

 私はデバイスを持ってバトル・コスチュームに変わると、私専用の魔方陣を足元に召喚します。

「・・・(○イ○ン○・ハート、行くよ。)」
「Ok! my master 」
 こんな怒りの感情のまま魔法を使ったら、どうなるか保証出来ません。
 って言うか、私達を侮辱した事を、未来永劫、永遠に後悔させてやります。

「・・・止めとけ、芹香。」
 カートリッジを、バフン、バフンさせ、今まさに撃とうとした刹那、浩之さんに止められてしまいました。
 グレープ・フルーツ・ジュースと、オレンジ・ジュースの入ったグラスを持ちながら、苦笑いをした浩之さんに。



 ○   ○   ○   ○   ○   ○


 えぇ、その時、冷静さを欠いていたっていうのは認めるわ。
 それでもよ。 たとえその時私が冷静であったとしてもよ、あんな事言われたんじゃ、いくら柔和で温厚な
 私だって、黙ってなんていられないわ。

 裏庭から戻った私達は、直ぐに浩之と姉さんを見つけて近付いていったの。
 そしたら、二人して揉めてるじゃない。
 まったく・・・婚約発表をしたばかりだというのに、もうケンカしてるだなんて・・・。
 仲が良すぎるのも問題だわ、って思いながら二人を止めに入ったの。
 犬も食わないとは言え、誰かが仲裁しなくちゃ、他のお客様方に御迷惑でしょ。


 全く聞く気なんて無かったんだけど、浩之達に近付いた時、観葉植物の陰から聞こえてくる声に、私は耳を
 疑うしかなかったわ。
 馬鹿笑いする彼等の会話は、あまりにも幼稚で、下衆だったから。

 何も知らない、赤の他人の第三者が、二人の事を侮辱し、辱め、悪意のこもった言葉で笑いものにしていたの。
 二人の想いを、そして、その想いを支えていた私の気もちが、踏みにじられた気がしたわ。

 両手が戦慄き、沸々と怒りが込み上げてきたのよ。
 エクストリームの大会でも、他流試合のリングでも、これほど闘志を剥き出しにした事なんてないわ。
 闘志と言うより、殺意に近いかもしれないわね。

 だって、少なくとも、私の中のリミッターは既に切れていたから。


「止めて下さい、綾香お嬢さま!」
 私を制するセリオの声も、既に私の耳には届かなかった。

「どきなさい、セリオ!」
 私はセリオを払い除け、なおも前進を試みる。
 何度払い除けられても、私にしがみ付き、追い縋って止めに入るセリオ。

「何してるんだ、綾香、落ちつけって。」
 その時漸く、私の異変に気がついた浩之が止めに入ったわ。

「浩之、あんたこそ何悠長な事言ってんの! 奴ら、浩之と姉さんの事侮辱してんのよ!」
 浩之に両手を、セリオに腰を掴まえられた私は、流石に身動きがとれないでいた。
 二人に蹴りを入れて沈黙させても良かったんだけど、今回だけは止めて上げることにした。
 だって、嫁入り前のうら若き乙女としては、カクテルドレスで足を上げるのは、ちょっと憚られたから。

「侮辱って大袈裟な。 パーティー会場でのちょっとした冗談だろ。 目くじら立てる事でもねえよ。」
「大袈裟ですって? ちょっとした冗談ですって? 信じられないわ! 浩之の大切な人が馬鹿にされたのよ、
どうして怒らないの!」

「そんな事で、一々怒ってたんじゃ身がもたねえ。 腹が立たないって言えぱウソになるが、見なかった、聞か
なかったって事にすれぱ、それで済むだろ?」
「でも、現実に見ちゃったし、聞いちゃったの! それを今更無しになんて出来ないわ!」

「綾香、これ以上騒ぐな! 他のお客様に迷惑だ。」
「私の口を塞ぎたかったら、1分でいいから目を隠して、耳を塞いでなさい。 そしたら黙ってあげるし、永遠に
黙らせてあげるから。」

「無茶苦茶言ってんじゃねぇ。 綾香、お前今日ちょっと変だぞ。」
「私、無茶苦茶なんて言ってないわ! 私はいたって普通よ! 変なのは浩之の方よ!」

「落ちつけって。 何熱くなってんだ。 大体陰口叩かれたのは、俺と芹香であって綾香じゃないだろ? 
綾香には関係ねぇだろうが!」
「・・・か・・・関係・・・ない・・・って・・・。」
 浩之の口から出た信じられない言葉に、私の体中からカが萎えて行き、知らず知らずの間に、私の頬を一筋の
 涙が零れ落ちた。
 その後も、裏庭で泣き慣れた所為か、涙腺が緩んでいるみたいで、後から後から涙が溢れ出して来た。

「・・・酷いよ、浩之。 関係無いだなんて・・・私・・・いっぱい・・・いっぱい我慢して来たのに・・・私・・・いっぱい
・・・いっぱい頑張ってきたのに・・・それなのに・・・それなのに・・・関係・・・無いだなんて・・・。」
 浩之の無神経な一言は、今まで我慢してきた浩之への想いや、今まで隠しておいた浩之への気持そのものが、
 完全に否定された気がしてならなかった。

「・・・私だって・・・私だって・・・。」
 心の奥底に押込め、鎖で拘束しておいた浩之への想いが、流れた涙で融解していった。
 葛藤と戦い、自分にウソをついてまで押し留めていた浩之への想いが、鎌首をもたげ、秘密の言葉を紡ごうとし
 ている。
 その言葉を口にしたら最後、浩之や姉さんとの関係が崩れる事くらい充分理解している。
 でも・・・もう、理性で、それを押し留める事なんて出来なかった。
 
「・・・浩之!」
 私は、両手を浩之に掴まれ拘束されたまま、爪先立ちになって、自分から浩之の唇を求めた。
 驚きのあまり、目をまん丸に見開き、声も出せず、為すがままの浩之を他所に、私は浩之の唇を押しのけ、
 舌と舌を何度も何度も絡ませた。

 次第に、私の両手を掴む浩之のカが弱まった。
 私は、浩之の両手を振り解くと、浩之の頭の後ろに両手を絡ませ、更に濃厚なキスを求めた。
 何度も、何度も、夢にまで見た浩之とのキスを楽しむように。

「あ、綾香止めろ!」
 我に返った浩之が、私を押し退けた。
 私は、2,3歩、後ろによろめいた。
 
「判ってくれた、浩之。 私だって・・・私だって、浩之の事大好きだったの。 姉さんに負けないくらい、浩之の事
愛してたの。 だから、お願いだから関係無いだなんて言わないで。」
 少し前までの激昂状態とは違い、不思議な程、私の気持ちは穏やかそのものだった。
 ただ、その時の私には、私の投げ掛けた波紋が、後々これほど大きなうねりになるだなんて、思いもよらなかった。






−−−−−−−−−−−−−

あとがき

最後までお付合い下さいましてありがとうございます。
ばいぱぁです。

書いていて思う事は一つ、俺って、こーいったドロドロした話好きなんだなぁっと。
ん十年生きていて、未だに一度も見た事が無い、昼メロではありそうな、こんなシュチュエーション。
その当事者にはなりたく無いけど、見ている分には実に楽しいのでは無いかと。

ではでは






 ☆ コメント ☆

セリオ:「計画通りですね、綾香さん」

綾香 :「え?」

セリオ:「どさくさに紛れて浩之さんの唇を奪っちゃおう作戦」

綾香 :「……はい?」

セリオ:「陰口を叩いていた人たち。彼らは実は綾香さんが前もってセッティングしておいた協力者で……」

綾香 :「ちょっと待てい」

セリオ:「ナイス演技でしたよ、これからも何かあったらその調子で宜しく。
     といったワケで、後に彼らの口座には綾香さんから多額の報酬が支払われ……」

綾香 :「ないわよ!」

セリオ:「え? 支払わないんですか? では、踏み倒すおつもりなのですね。
     さすがは綾香さん、根っからの極悪人です♪」

綾香 :「いや、だから、本気でちょっと待て。
     あんた、あたしを一体なんだと?」

セリオ:「姉の婚約者を寝取ろうとする痛い女」

綾香 :「…………」(けりっ

セリオ:「はうっ」

綾香 :「…………」(ふみふみふみっ

セリオ:「はうはうはうっ」(泣

綾香 :「まったくもう。
     あんたね、馬鹿なことばかり言ってないで、少しは本編中のセリオを見習いなさい。
     気配りが出来て控えめで楚々としていて。あれぞメイドロボの正しき姿、あるべき姿よ」

セリオ:「失礼ですね。
     確かに普段のわたしは控えめじゃないような気もしますし、楚々ともしてない感じです。
     気配りもあまりしてないっぽいです」

綾香 :「一応自覚はあるのね、多少は」

セリオ:「ですが、わたしだって、ちょーっと本気を出せば『控えめで楚々な気配りさん』なんてらくしょーです」

綾香 :「本当にぃ?
     じゃあ、これからはずっと本気を出してくれないかしら。
     無理にボケたりしなくても……」

セリオ:「ごめんなさい、嘘つきました。
     わたしにはハードルが高すぎです」

綾香 :「いいから……って、せめて最後まで言わせなさいよ。
     いやまあ、正直なのは美点だとは思うけどさ。
     でも、三日坊主でいいから、少しくらいは頑張ってみても罰は当たらないんじゃないかと思うんだけど」

セリオ:「なんと言われようと無理なものは無理なのです、ハイ」

綾香 :「情けない事を胸張って言うな!」





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